ニュースの読み方:関越道バス事故 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

世の中には二つの利害が対立していることが多く、
そのせいで、良い悪いは別として世の中の仕組みはなかなか変わらない。
ただしこうした綱引きにはいくつか例外がある。
一つのパターンが、何かをきっかけに一方のサイドの立場が弱くなる場合だ。
そうした時には、雪崩を打ったように一気に世の中の仕組みが変わる。

今回の関越道バス事故はその一つとなるだろう。
ご存知の通り、ゴールデンウィークに入って間もなく、
関越道でバスの事故があり7人の方が亡くなった。
この事故が悲しい出来事であることには変わりないものの、
日本では年約4800人(2010年警察庁調べ)、
つまり毎日約13人の方が交通事故で亡くなっている。
新幹線や鉄道の事故は滅多に起こらないため、
その大半が自動車やバイクの事故によるものであることは
暗黙のうちに誰もが知っているはずだ。
今回の死者は毎年亡くなる人数の0.1%に過ぎない。

バスの運転手はスケジュール的に厳しい勤務であったようだが、
運輸業従事者の勤務実態として常軌を逸していたかどうかの判断は難しい。
しかし、その判断がどうなったとしても
今回の事故を各関係者なりに総括すると次のようになるだろう。

鉄道・航空会社:
(これを機に長距離バスを規制強化して鉄道・飛行機の需要を拡大したい)
→ 「過酷勤務だ!勤務条件を改善しろ!」

バス運転手:
(これを機に労働条件を改善して欲しい。)
→ 「過酷勤務だ!勤務条件を改善しろ!」

官僚:
(もう一度似たような事故があれば責任問題になる)
→ 「過酷勤務だ!勤務条件を改善しろ!」

一般市民:
(もし自分が乗っていたらと思うと心配だ)
→ 「過酷勤務だ!勤務条件を改善しろ!」

マスコミ:
(市民も官僚も規制強化賛成なら便乗しない手はない)
→ 「過酷勤務だ!勤務条件を改善しろ!」

バス会社:
(今は逆風。大人しくしているしかない)
→ 「分かりました。改善します。」


通常時であれば、安い利用料金を享受している一般市民と
バス会社が規制強化反対の声を上げるだろうが、
これだけ大々的に犠牲者が出ている中で声を上げるのは難しいだろう。

労働条件改善派が世論を見方につけたければ、泣いている遺族の映像でも流して
「規制強化反対論者は、強欲なバス会社のために尊い命が犠牲になっても良いのか!」
とでも言えば、9割の人は「そうだそうだ」と賛成してくれるだろう。

乗り合いバス市場は2002年に運賃許認可などの点で規制緩和され、
高速ツアーバス連絡協議会によると、データのある2005-2009年の
4年間だけで20倍に増えたという。
各関係者の思惑を考えると、こうした流れが
ここで逆流をし始める可能性はかなり高いと言えるだろう。

一人の運転手の一瞬の居眠りが世の中を変え、
5年後には新幹線並みの値段の高速バスが走っているかも知れない。
社会とは本当に予測不能で儚いものだ。


続きを読む

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

コーラが好きだけど嫌いなアメリカ人 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

商品やブランドに対するイメージというのは国によって違うので面白い。

例えば、マクドナルドやウォルマートは低所得層向けに
粗悪な商品を売る企業としてイメージが定着している。
雑誌の記事では、マクドナルドのハンバーガーのパテを
大量生産しているところを大写しにして、
「ピンクスライム」などと罵倒して視聴者の目を釘付けにする。
最高級の神戸牛だって大量にひき肉にして製造過程に
乗せれば同じ画になるはずだが人々はそんなことには関心が無い。
人々は、ステレオタイプに合った画像を見て、
「あー、やだやだ!インテリな俺は決してマックなどに行くものか。」
という思いを強くする。
行くのは、料理もできない低所得者層か、
悪い習慣から抜けられない低学歴層というイメージである。
ヘルスコンシャスな知識階層をアピールするには、
お腹が空いても昼はサラダで我慢するのがアメリカ流である。
太ったアメリカ人が昼に大きなサラダを食べているのを見ると、
「サラダを食べているヘルスコンシャスな俺かっこいいオーラ」
が出ていて苦笑しそうになる。

有名ブランドに対する負のイメージは、
相対的に一部のブランドの価値を押し上げている。
例えば、アメリカの大規模小売店の Target は
Walmart の負のイメージのせいでかなり得をしている。
Targetは Walmart等の量販店よりもおしゃれで
少しだけ高級というイメージで売っている店である。
Walmartを日本の大手スーパーに例えるなら、
Targetは、西武系のロフトのような雰囲気の店を目指していると言って良い。
アメリカではプレゼントをする際に
ギフトレシートというレシートを付けて
貰った人が返品可能にしておくという習慣があるので、
例え同じ商品であってもウォルマートで買ったものを
プレゼントすることはネガティブなイメージを与える。
そのため、娘がもらった誕生日プレゼントは
ターゲットのレシートが付いているものが多かった。
私が住んでいるT市は平均所得が高いので、
ウォルマートはいつもガラガラである。

コーラとジンジャエールの関係も面白い。
両方とも、健康への影響は対して変わらないと思われるが、
アメリカ人は、ジンジャエールは大人のおしゃれな飲み物で、
コーラは不健康で子供っぽい飲み物であると考えているようだ。
スーパーに行くと、コカコーラにせよペプシにせよ、
コーラは一番の人気商品で、大量に陳列されている。
それに対してジンジャエールは、
見つけるのが困難なこともあるほど少量しか陳列されていない。
圧倒的多数のアメリカ人がジンジャエールよりも
コーラを好んで飲んでいることは間違いない。
一方で、飛行機の中やレストランなど公共の場では
ジンジャエールを頼んでいる人の割合は極めて高い。
コーラに匹敵するか、凌駕すると思われるほどだ。
母集団が同じではないと言えばその通りだろうが、
あそこまで極端な違いを見ると、
「ついジンジャエールを頼んじゃう大人の俺かっこいいオーラ」
を感じてしまう。
ちなみに、ダイエットコーラを飲んでいる人は、
日本で言う禁煙パイプを使っている人と同じだ。
「健康に悪い習慣だと分かっているけど止められないんだよね」
という哀愁が漂っていて、そこに妙な見栄はあまりない。


一見、周りを気にしない米国人も
どうでもいいところで結構見栄を張っているのである。


高校時代はアイデンティティを育てるための期間 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

WS大では昨日で冬学期の授業が終わり、期末試験を残すのみとなった。
今日は授業も試験もなく、学生にとって期末試験に向けて準備するための日だが、
大学は高校生をキャンパスに招いて宣伝のための講演会を開き、
教員はあちこちの部屋に分かれて分野別に講演をした。

高校生がどのくらいこのブログを読んでくれているか分からないが
講演の前に高校生に伝えたことを書こう。


僕は高校生の頃、数学が大好きだった。
ともかく難しい問題を解いたり、難しい本を苦労しながら読み進めるのが好きだった。
得意だったどうかは別として、それが自分のアイデンティティであった。

予定通り大学の数学科に入った僕は、純粋数学を6年間勉強した。
代数的整数論という、いわば純粋数学の花形的な分野である。
しかし、いつ頃からか、おそらく努力と才能の両方が不足していたせいで
理解できないことが増え僕は数学に対する興味を失っていった。

僕は次第に、金融や経済の分野に興味を持ち、金融機関に就職した。
職場で実際にやったのは、主に実体経済や計量モデル、経済統計などに関する調査だった。
いずれも希望して就いた仕事だったし、学ぶところが多かったが、
経済学にたくさんあるアプリオリな仮定にはあまり馴染めなかったし、
統計の仕事は僕の興味からはやや実務的過ぎた。

次第に統計分野に理論的な興味が湧いてきた僕は、
統計学科の博士課程で学び、統計屋として今の数学科の仕事についた。
せっかく大学で働くのだから理論的なことをやろうと考えていたが、
数学者の同僚に比べあまりに数学のできない自分に絶望する事が多く、
やはりもうすこし応用分野に絞らなければ、と感じる今日この頃である。

こうして順を追ってみると、これだけ思考錯誤しながらも
いかに自分の適性を判断するのが難しいかということを改めて認識させられる。

当然ながら、
数学科に行けば周りは全て数学の才能に恵まれた人ばかりであり、
経済関係の仕事に就けば周りは経済学に造詣の深い人ばかりである。
これは私が経験した分野に限らず、
ミュージシャンは音楽が得意な人ばかりだし、
翻訳や通訳の分野は語学が得意な人ばかりだろう。

そんな中で、迷い無く自分のアイデンティティを長期間にわたって維持するのは
私を含めた大多数の平凡な人々にとっては容易でない。


思えば高校時代は様々な友人に囲まれ、
自分がどんな人間であるのかを客観的に知ることができる
最後にして絶好の機会であったように思う。
進路に迷った時、いつも一瞬高校時代を振り返る事で
自分の原点に帰って考え直すことができる。

高校時代に、様々な個性の友人と出会うことは
その後の人生でアイデンティティを確立するための大きな財産である。


テーマ : 高校生活
ジャンル : 学校・教育

娘のIT教育 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

娘が日本語補習校の小学1年生になったので、これを機会にノートパソコンをプレゼントした。
といっても、新品ではなく、私が以前に使っていたThinkpad X61s のお下がりだ。

子供用のパソコンのおもちゃは以前から持っていたのだが、
親と一緒に学校の宿題の調べ物をネットで調べたりしているうち、
本物のパソコンが欲しくなったようだ。
「なんでパソコン欲しいの?」
と娘に聞いたところ、
「おもちゃのはアクティビティとか決まってるし、Googleとか使えないでしょ」
ということらしい。
娘には何とかコンピューターの扱いに早くなれてほしいと思っていたので、
与えるにはちょうどいい機会だと思って渡した。
いまや、早い家では3〜4歳からパソコンを与えると読んだ。

取りあえず、Google Chrome と MARUOエディタ(秀丸英語版)しか入れてないが、
お絵描きソフトやテーブルゲームなども入れてあげようと思う。

ただし、やはり利用時間や有害コンテンツのことは心配である。
ウイルス対策ソフトのESETに入っているペアレント・コントロールとGoogleのセーフサーチで、
取りあえず、アダルトや犯罪コンテンツは最低限規制したが、
例えばこのくらいのレベルのお色気写真は表示されてしまう。

自分や友達の名前を画像検索して、
同名のグラビアモデルが表示されてしまうというパターンが多い。

もっと心配なのは、ネット掲示板やチャット等で個人情報を答えてしまうことだ。
このあたりはフィルターで概ね解決できるとは思うが、
やってはいけないことはきちんと教えなければいけない。
自分が子供の時に無かったものだけに、いろいろと試行錯誤が必要だ。

使いこなせるようになったら、
是非とも「統計学+ε」のアクセス数を超えるブログを書いて欲しいものである。


テーマ : 育児
ジャンル : 育児

娘にオセロで負ける -- このエントリーを含むはてなブックマーク

一時、娘に算数を教えていたのだが、
あまり好きでも得意でもないようなので
昨年末頃に思い切ってやめて、
とりあえずテーブルゲームをやることにした。
算数は、学校で少し進んだら再開しようと思う。

オセロ、チェス、バックギャモン、将棋、はさみ将棋、
ダイヤモンドゲーム(アメリカではChinese Checkersと言う)などをやっている。
娘は基本的にパターン認識が苦手で思考速度も遅いので
ちょっとその頭を心配していたのだが、
なぜかゲームは結構強いので、最近は少し安心している。

ダイヤモンドゲームとバックギャモンは大人と互角の勝負をする。
ポーカーやバックギャモンのような確率的なゲームは娘は大抵好きだ。
将来、麻雀好きになることは間違いないと思っている。

そして、昨日ついにオセロで負けてしまった。
暗記系や運のゲームなどならともかく、
数学系の研究者が6歳の子供にオセロで負けるのは
かなり情けない感じがするが、娘の成長がうれしくもある。
ちなみに我が家の第一回リーグ戦の結果は以下の通り。

---------------------
勝  スコア  負
---------------------
娘  39ー25 自分
奴  50ー14 娘
自分 34ー30 奴
---------------------

最近、僕は奴にはほとんど負けていないのだが、何故か娘に負けた。
二人で研究しているので手を読まれやすいのかもしれない。
娘は序盤が正確で、きちんと一番いい場所に「中割り」してくるし
「辺」の確保も定石通りしっかり打ってくる。
終盤はまだ読みと経験が足りないようだ。
序盤が弱く終盤が強い「奴」とは正反対だ。

今回は全員1勝1敗というはっきりしない結果に終わったので、
大人げなく次回はきっちり2勝したい。
先日、本も買ったので、もう少し娘と研究して
少なくとも奴を2敗に追い込むという意気込みでやろうと思う。


テーマ : 育児日記
ジャンル : 育児

米国発日本行き航空券が安い件 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今年の夏に日本に一時帰国するために航空券を取った。

6〜7年前は為替や原油価格のせいもあるが
500ドル台でチケットを取る事ができたのに対し、
近年の日米線のチケットは概ね1500-2500ドル前後で推移しており、
価格は3倍以上になった。
航空券が高くあまり帰国できなくなったという人も多く、
世界の距離が縮まる時代に、望ましくない所で距離が広がった。

少し調べたところ、今年の夏は運の良い事に
デルタのデトロイトー羽田便が復活し、
6月末までキャンペーンを打っているようでかなり安く予約できた。

ちなみにデルタのサイトで料金を調べると、
6月30日の出発だと $1184.60、7月1日は $2614.60 である。
え?と目を疑った方もいると思うのでもう少し詳しく書いてみよう。

6月24日(日)発 $1184.60
6月25日(月)発 $1134.60
6月26日(火)発 $1134.60
6月27日(水)発 $1134.60
6月28日(木)発 $1134.60
6月29日(金)発 $1184.60
6月30日(土)発 $1184.60
7月01日(日)発 $2614.60
7月02日(月)発 $2515.60
7月03日(火)発 $2515.60
7月04日(水)発 $2515.60

キャンペーンとはいえ、一般企業ではあり得ない雑な価格設定だが、
潰れても国が守ってくれる企業だとこうなってしまうのだろう。
破綻した大手航空会社は、今すぐにでも全部潰すべきだ。
飛行機会社が潰れても存在する飛行機の台数は一台も減らないし、
困るのは不当に高い賃金を貰っていた従業員と経営に失敗した幹部だけである。
米国内では航空券の価格を上げるために便を減らすということも
一般的に行われているようなので、レガシーコストの高いキャリアが
減れば航空券の価格は下がるだろう。

燃油サーチャージなどと言われると、
航空券が高い理由は原油高だと思ってしまうが、
燃油サーチャージを上げるのは、他の業者に払うコミッションの計算方法や
マイレージによる無料航空券の価格を操作するためなどの形式的な手段であり、
実際には、米国の大手航空会社の高コスト体質(特に人件費の高さ)が
価格支配力を通じて、航空券の価格を押し上げている部分が大きい。

ちなみに理由はよく知らないが、
日本行き航空券はなぜかいまだに日本の旅行会社の方が安く券を手配できる。
まとめて安く買い切って分割して販売したりしているためだろうか。
前回も今回も、子供用のチケットは大幅に安く、
大人用のチケットも若干安かった。
大手旅行会社は JTB USA、HIS USA、IACE USA、アムネット USA
あたりだろうか。

来年以降は、チケットがどれだけ高くなるか分からないので、
今年は日本を楽しんでこようと思う。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

大学内のグラント -- このエントリーを含むはてなブックマーク

時々、企業で働いている日本人などに驚かれるのだが、
数学科のように教育メインで経営が成り立っている貧乏な学科は、
夏休みの3ヶ月間は給料が出ない。
リスは冬に備えて秋までに木の実を溜め込んで冬眠するが、
大学教員は夏に備えて春までにお金を貯めておかなければいけないと言う事だ。
しかも夏はずっと寝ているというわけでもない。

NSF (National Science Foundation)などが提供する研究費を獲得した研究者は、
一般的に研究費から2ヶ月分の給与を支出することができるが、
私はまだ獲得したことがない。

うちの大学は、そうした若手のために、
給与あるいは研究費にあてるための1万ドルの資金を
年間15〜20件程度与えているのだが
今回、運良くその資金をもらえることになった。

例年応募倍率は概ね4〜5倍程度だから、
大学が学科に若手一人当たり2000-2500ドルずつ支給する
ということも可能なのだが、
「競争にして一生懸命やってそうな人にあげた方が研究が捗るんでは」
との思いつきでそのようになっているのだろう。

しかし、応募する方としてはこれが結構面倒くさい。
NSFの応募締め切りの1ヶ月後にこのグラントの締め切りはあるので
基本的にはほぼ同一内容の提案書を出すことができるのだが
ページ数が約半分になる上、審査をする人が分野外の人になるため、
説明文も変えなければならない。
結局、同じアイデアを元に、
どの学科の人が読むか考えながら受けの良さそうな例を加えたりして、
レターサイズ(A4相当)でびっしり8ページの作文をもう一度し直すはめになる。
確かに審査する側からみれば、
専門家が読む前提で書かれたNSF向けの15ページの提案書を丸投げされても困るわけで
そういう要件になっていることもよく理解できるのだが、
応募する方が面倒なことに変わりはない。
まあ、僕は資金をもらう側だから別にそんな文句を言う必要もないのだが、
両側で手間をかけた挙げ句に資金が学内を移動するだけで大学側はいいのだろうか、
と少し考えさせられる。

そんなわけで、毎年いまひとつ腑に落ちないまま作文をしていたが
今年は学科が結構頑張ってくれたようで
平凡な作文にも努力賞がもらえることになって
とりあえずめでたしめでたしである。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

アメリカのプロはど素人 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカのサービスのレベルが始まったのは今に始まったことではないが、
これは単に店員の態度が悪いということに留まらず、
そもそも能力がない人がやっていることが多い。

夏に、米国大使館でビザスタンプをもらうために申請書を準備しているのだが、
たった1枚の証明写真の要件が異様に細かくA4で5ページにも及ぶ。
ちなみに、デジタルのファイルとプリントアウトしたものの両方が必要。
主な点をあげると、

ー 写真は2インチ×2インチ
ー 目の高さは写真の下辺から測って写真の高さの56-69%
ー 顔の長さは写真の高さの50-69%
ー 顔は全体の中央
ー 背景は白
ー 顔や背景を影で遮っていない
ー 不鮮明でない
ー 色彩は自然な肌色を写している

ー デジタル画像はJPEGまたはJFIF形式
ー サイズはアスペクト比1:1で各辺600-1200画素
ー ファイルサイズは240KB以下
ー 色はsRGB色空間
ー 圧縮比20:1以下

というような感じだ。
ちなみに、カラー写真が必須で色も自然でないと通らないが、
ビザの写真は白黒である。
規定にある「不適切な例」の一つはビザと同様の白黒で印刷すると
「適切な例」と見分けがつかない。
また以前は、顔の面積が全体の50%という条件がついていたので
上記の条件と合わせると論理的には顔が横長の人でないとビザを取れない、
ということになっていたがこの条件は流石に削除されたらしい。

ともかく、いろいろと面倒なのでプロにとってもらおうと思ってでかけた。
影が映り込まないというのは以外と難しいが、
日本の写真屋だったらこんな簡単な条件を満たせないとは思えない。


1件目:ドラッグストアの写真サービス

僕「USビザ用の写真を撮って欲しいんだけど。要件はここに書いてあるから。
  米国大使館は極端に規定にうるさいからくれぐれも気をつけて。」
店員「(適当に読み流して)OK。問題ないよ!」

写真ができてから、定規を持って細かく検証。

僕「この写真、目の位置が規定を満たしてないけど。
  あと耳の後ろ、影が映ってるよね。」
店員「これ影じゃなくて髪じゃない?」
僕「いや、そんなに髪長くないし。」
店員「じゃあ、返金します。」


2件目:プロの写真屋がやってる写真館

僕「USビザ用の写真を撮って欲しいんだけど。要件はここに書いてあるから。
  米国大使館は極端に規定にうるさいからくれぐれも気をつけて。」
インチキ写真家「余裕余裕。パスポートと同じだから(←全然違う)。
   まかせとけ。今、あそこで商談中だから20分待ってて。」
僕「顔は中央って書いてあるけど、上下方向に中央だと目の高さの要件を
  満たさない事が多いから気をつけて。この例を参考にして。」
インチキ写真家「分かった分かった(←聞いていない)。」

その後、無断で別の打ち合わせに入った写真屋、40分後に撮影開始。

インチキ写真家「できたけど。」
僕「サイズ違うし。2インチ×2インチっていったでしょ
  (しかも書面でマーカーで強調したものも2回見せている!)。
  これ、45mm x 35mm だよ。」
インチキ写真家「(プリントしなおして)はい、できた。2人分で20ドル。
   (←もうめんどくさくなってきている)。」
僕「(写真が不鮮明で、娘が撮った手ブレ写真のよう)
  うーん、一応サイズは合ってるけど…。はい、20ドル。」
インチキ写真家「俺、証明写真20年も撮ってるから、安心だぜ!」
僕「なんとかして、もっと影が無い写真撮れないものなの?」
インチキ写真家「無理無理。影ってのは必ず入るものなんだよ。」

→ 大使館のページで写真をチェックしたところ2枚ともピントズレで通らず。
そもそも、あんな暗い事務室で証明写真撮るの初めて見た。

奴「あの写真屋、態度でかいし、なってなかった。
  Willyはもっと文句言うかと思ったのに、意外と言わなかった。
  私が文句言おうかと思ってた。」

(電子メールにて)
僕「今日、撮った写真、ピントズレでpre-screeningすら通らなかったけど。
  通す方法知ってたら教えろ。」

→ 返信無し

(インターネットのレビューサイトにて)
「この写真館は結婚、出産、卒業記念写真なんかを撮っていますが、
  もしあなたがそういう目的でここを使うなら、証明写真の規定すら満たすことが
  できない写真家が芸術的な写真を撮れることを期待しなければなりません。
  幸運を祈ります。」


3件目:スーパー内の写真撮影場所

僕「USビザ用の写真を撮って欲しいんだけど。要件はここに書いてあって
  米国大使館は極端に規定にうるさいからくれぐれも気をつけて。」
おやじ「うーん、分かる分かる。そうだよね〜。」

使っていたのはやっすいコンパクトデジカメ!
15分後、写真ができる。

僕「これ、サイズ違うけど(しかも縁がぼろぼろになっている)。
  それに、この目の高さ低すぎ。肩の下数ミリまで入れないと
  規定を満たさないから。」

このスーパー、顔の大きさや目の高さも自動でチェックできる
システムがあるのに何故間違えるのか?!
サイズも枠があるのにいい加減に切っているから5mmも短くなっている。
しかもカッターがぼろぼろなせいか、まっすぐ切れてない。

おやじ「あ、いますぐ急いで取り直すよ。」

なぜか今度は5分後に写真ができた。
写真の左上2割ほどが暗くなっていて絶望的な写真。
あの設備でとったらそんなものだろう。

僕「あ、写真切らないで。自分で切るから。あれ、CD-ROMは?」
おやじ「同じ袋に入れといたよ!」
僕「早いね。どうもありがとう。」

→ CD-ROMの写真は取り直し前の写真!


4件目:スーパーの建物に入居している写真館

僕「ビザ用の証明写真撮りたいんだけど。」
おばちゃん「あー、もう4時だから店じまいだよ。」
僕「いま3時57分だけど、残り3分の勤務時間は何するの?」
おばちゃん「…じゃあ撮ってみるよ。」
僕「この規定に合わせてプリントし、、、」
おばちゃん「あー、無理無理。そのサイズにはできないよ。」

→ 4時になったらしい。


埒があかないので、写真好きの日本人の友人に相談。

友人「アメリカで証明写真って難しいんですよねぇ。とりあえず、
ー 日中、屋内で全体が明るい部屋、時間に
ー 目に影が落ちなければ部屋の明かりも全開に
ー カメラは三脚あるいは他のもので固定
ー フラッシュは発光禁止に
ー シャッタースピードを下げて明るく写るように
ー 顔が暗めに写る場合、照明を持って来て被写体を照らす
ー 被写体と背景との間に少し距離を空ける
ー いざとなれば映らないところにアルミホイルを置いてみる
ー フラッシュが必要な場合は、ティッシュや反透過性の紙をフラッシュに被せる
でやってみて下さい。」

→ 4件の写真屋、見事にどれも守っていなかった。

アメリカで言うプロとはお金をもらうために仕方なく仕事をやっている人、
と考えるのが妥当なようだ。

注)ちなみに僕はお金をけちったのではない。
「必要ならスタジオを使ってちゃんとした写真を撮って規定に合わせて欲しい」
と頼んだ。そうではなくて、彼らは
「ビザ用 → 証明写真 → USパスポートと一緒 → 楽勝」
と脳内で勝手に決めつけているのだろう。
20までしか知らない5歳児に
「80って知ってる?」
と聞いて
「知ってる知ってる!18のことでしょ。楽勝だよ!」
と返される状況、と考えれば分かりやすいかも知れない。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

日本で働くこと、米国で働くこと ―― 時間感覚と就労意識 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

僕が米国で働いているのは、米国で仕事が見つかったからであり、
それ以上でもそれ以下でもない。
しかし、どうして英語もロクに話せない自分が米国で働いているのだろう
と更に考えるともう少し抽象的な答えに行き着く。
それはアメリカ社会の時間や不確実性に対する感覚が
自分に割と合っていたということだ。


答えの糸口は小学生の頃にさかのぼる。
僕は、モーレツサラリーマンと専業主婦という典型的な昭和の家庭に育った。
そして今でも強烈な記憶として残っているのは、子供の頃、
自分の両親の生き方をどうしても自分と重ねられなかったことだ。

子供というのは大人から見ると一見能天気なように見えて
いろいろなことに悩んでいる。
友達、親、兄弟、先生といった人間関係は
自分では全くコントロールできないし、
将来自分がどうなっていくかということは想像もできない。
子供は圧倒的な不確実性の中に生きていて、
それが逆に生きているということの証でもある。

しかし、子供の僕から見た両親や世の中の大人は全く違って見えた。
父親は朝から晩まで一所懸命働いていたし、
母親は今の主婦より一所懸命家事をしていたと思うが、
大変だけれどもそこは完全な予定調和の世界であって
大きな不確実性も悩みも何も無いように思えた。
就職をし、結婚した時に一生の全ての予定はほぼ決まり幸せな人生を送ることができる。
悩むのは、どんな家に住もうか、どんな車を買おうか、どこに旅行に行こうか、
といった極めて形式的な事だけだ。

僕は自分がそういう大人になることが信じられなかったが、
同時に、それが大人になるということなのだ(!)と信じていたし、
そうした安定した状態をとても羨ましくも思った。
中学、高校、大学、社会人と自分が年齢を重ねていく中で、
人生の見通しが立つということに恐怖を感じつつも
大きな期待も持っていた。

しかし、めでたく就職して働く中で徐々に分かってきたことは、
僕にとっては、残りの人生で何をしていこうか、
という悩みの大きさがちっとも変わらないことだった。
自分の年齢が小学生だった頃の自分の両親に近づいて行く中で、
生きるということに対する感覚は
小学生の時の自分と大して変わらないままだった。
自分はアダルトチルドレンなのではないかと疑う事もあるが、
とにかく、自分にとってはこの先の何十年にもわたる人生の計画を
決めてしまうということが感覚として不可能なのだ、
ということが分かってきた。
結果として、同じ仕事をずっと続けるかもしれないし、
どこかでまた別の事をやりたくなるかも知れない。
確かに仕事に連続性は必要だが、
連続していることと固定していることは別問題だ。

そういう人にとって、アメリカは日本よりも断然住みやすい。
アメリカ社会は非常に不確実で、
日本のような安定した社会に比べて割に合わないと思う事も多いが、
結局、今後の事を固定する恐怖が不確実性に対する恐怖を上回ってしまう。

僕は、昭和的な安定した人生が良くない、と言っているわけでは決してない。
正直言って、僕は両親が安定した人生を送ってくれたことに感謝しているし、
自分もそういう人生を送る事ができたら幸せだっただろうとも思う。
自分は娘に、両親が自分に与えてくれたのと
同じだけの安定や贅沢を与えることはできない。

言いたいのはそういうことではなくて、
生まれ持った時間や不確実性に対する感覚というのは簡単には変えられないということだ。
傾向としては日本人は安定した人生を送るのに適した性格の人が多いと感じるが、
そうではない人もたくさんいるはずだ。
幸い、今の日本はいろいろな時間やリスク感覚の人に対応したキャリアが存在しているし、
海外で働く事に対する敷居も下がってきている。

職業やキャリアパス、働く場所を決める上で、
それが自分の時間や不確実性に対する感覚に合致しているかということは、
仕事の内容とともに、とても大事だ。


テーマ : 仕事
ジャンル : 就職・お仕事

娘の英語文章力〜錬金術師への道 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日、娘の通うキンダーで保護者面談があり奴と一緒に行ってきた。
ちなみに、キンダーは1年生になる前の年に通う幼稚園のことで
小学校の中にある。

この学校は公立だが、教育熱心で
幼稚園にも関わらず毎日のように宿題が出る。例えば、
「Zで始まる単語を4つ書いて絵や写真を貼って提出」
というようなものだ。
娘は誰に似たのか他の子と同じ単語では不満らしく、
地球儀を見て Zimbabwe とか Zambia とか人によっては
一生使わないであろう単語を書いて満足している。

クラスでは、文章を書く練習も始まった。
娘は家では日本語を使っているので、
他の子に比べて少し言葉が遅れているのでは、
と心配していたが結構頑張っているようだ。

先週やったプリントの質問文は、
"If a leprechaun granted you one wish,
what would you wish for?"
というものだった。
ちなみに leprechaun とはアイルランドの妖精で
Saint Patrick's Day にちなんで登場したらしい。

多くのクラスメイトが、
"I want candy." (*1)
"I would like some gold." (*2)
"I wish for gold." (*3)
"I wish for an i-Pad". (*4)
などと書く中、娘は、
"I wish I had a leprechaun machine that makes gold."(*5)
と書いた。
「Goldだけじゃあげたら無くなっちゃうけど、
マシーンがあればまた作れるでしょ!」
ということだそうだ。
とりあえず奴と二人で娘を絶賛し、
「それはいいアイデアだ!よし、将来はMBAだ!」
と相変わらず親バカな我が家である。


注:
なお、幼稚園児なのでスペルは結構間違っている。
上の回答は、実際には、
(*1) I wont candy.
(*2) I wond like some gold.
(*3) I wish ?????? gold.
(*4) An I-Pad.
(*5) I wish I had a leprechaun mashn taet meks gold.
となっていた。


テーマ : 海外の子育て
ジャンル : 海外情報

プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。

検索フォーム
お勧めの本

1.マンガで分かる統計学 
―― 楽しく学べる統計入門。
   中学生から大人まで。


2.統計学入門
―― 概念的な説明が充実。
   大学教養向け。文系の方にも。


3.数理統計学
―― 体系的に学びたい方へ。
   大学2〜4年生向け。

全記事表示

全ての記事を表示する

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
訪問者数 (UA)
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
海外情報
15位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
北アメリカ
3位
アクセスランキングを見る>>
人気記事Top10


(はてなブックマークより)

RSSリンクの表示
お勧めブログ