日本からの留学生の減少
最近日本からの留学生が減っている印象がある。
それは実際統計にも表れていて、1999年には日本の留学生は
約46,400人で一番大きな勢力だったのだが、昨年のランキングは、
順位 国名 人数 前年比
1.インド 94,563 (+13%)
2.中国 81,127 (+20%)
3.韓国 69,124 (+11%)
4.日本 33,974 ( -4%)
5.カナダ 29,051 ( +3%)
6.台湾 29,001 ( -1%)
7.メキシコ 14,837 ( +7%)
(出所: Institution of International Education)
となっていて、ここ9年間で約27%も減少している。
一番の原因と考えられるのは日本の少子化で、
例えば各時点での20歳の人口を比べてみると
1979年生まれが164.3万人で、1988年が131.4万人なので
約20%の減少している。
しかし少子化要因を除いても、8~9% 程度減少して
いることになる。グローバル化が進んでいる現在、むしろ
留学する人の割合は増えてもいいはずで、やはり日本の
留学生は、減少傾向にあると言ってよさそうだ。
昨年の東洋経済の記事では、「日本の成熟化」や「アメリカ
での娯楽の少なさ」が原因とされているが、私にはかなり
疑問である。そもそも、1999年と2008年を比べると、日本の
経済的地位は相対的に下がっているし、日本国内での娯楽は
むしろ内向きになっている。
やはり、日本の経済的地位低下や世界への関心低下が
留学生数を押し下げていると考えるほうが自然だ。
例えば、2000年に円高だった時点(1ドル102円)と比べると、
日米のインフレ率には差があるので、現在の為替レートが
1ドル=80円程度になっていなければ同じ購買力にならない。
為替は常に変動するが、今、日本経済が1ドル=80円で正常に
機能するかと言えば恐らく無理だろう。これが経済地位低下
の現実であると思う。94~95年頃と比べれば更に違いは
明白となる。
博士課程の留学事情はどうだろうか。
説得力のある統計はないが、実感としては日本人のプレゼンスは
上の統計に表れるよりはるかに小さいように思う。
経済的視点から考えても、
日本はインド・中国に比べて経済的に圧倒的に豊かなので
親からの資金援助を元にした語学留学や学部留学の割合が
高いと考えられる。
しかし、博士課程に関して言うと、減少率はともかく、
日本の留学生が少ない原因はそれだけではないと思う。
日本社会は博士号に対する評価が非常に低い。
理学系や社会科学系の博士など取ってこようものなら、
まともな就職すらままならない。
新卒一括採用主義(しかも原則25歳まで)という
日本の特殊な雇用慣行が原因であろう。
上位3カ国の学生が、アメリカで就職しても良いし、
母国に帰ればかなり良い待遇の職を選べるのに対し、
日本人留学生は(一部の社会科学系を除き)コネがないと
日本での就職が厳しい、というなんとも不利な立場に追い込まれる。
この点に関しては、他国の留学生にはなかなか理解してもらえない。
また、米国での就職にしても、小学校から英語で勉強している
インド人等に比べた場合の語学力でのハンディはいかんともし難い。
こんな理不尽な状況では、留学生が増えないのは仕方ないだろう。
博士課程における日本人の少なさは、
日本より資金が豊富な生命科学系のポスドクや、
先端の医療を学ぶための医師の研究留学などが多いこと
と比べると対照的である。
UCLA出身のK東大教授は、
「別にアメリカがなんでもすぐれているとか,
みんなでこぞってアメリカに行くべきだとかはちっとも思いませんが,
一般的に言って日本の数学の学生でアメリカに留学する人はあまりに少な過ぎで,
もう少したくさん行った方が本人のためにも日本の数学のためにもいいと思います.」
と書いている。正にその通りで、これは他分野にも大抵当てはまると思う。
応用分野や日本が出遅れている分野であれば、
なおさら現地に行って他国の研究者と交流することは必要なはずだろう。
日本がはやく社会構造的な障害を取り除いて、
活発な人材交流を促進することを願ってやまない。
それは実際統計にも表れていて、1999年には日本の留学生は
約46,400人で一番大きな勢力だったのだが、昨年のランキングは、
順位 国名 人数 前年比
1.インド 94,563 (+13%)
2.中国 81,127 (+20%)
3.韓国 69,124 (+11%)
4.日本 33,974 ( -4%)
5.カナダ 29,051 ( +3%)
6.台湾 29,001 ( -1%)
7.メキシコ 14,837 ( +7%)
(出所: Institution of International Education)
となっていて、ここ9年間で約27%も減少している。
一番の原因と考えられるのは日本の少子化で、
例えば各時点での20歳の人口を比べてみると
1979年生まれが164.3万人で、1988年が131.4万人なので
約20%の減少している。
しかし少子化要因を除いても、8~9% 程度減少して
いることになる。グローバル化が進んでいる現在、むしろ
留学する人の割合は増えてもいいはずで、やはり日本の
留学生は、減少傾向にあると言ってよさそうだ。
昨年の東洋経済の記事では、「日本の成熟化」や「アメリカ
での娯楽の少なさ」が原因とされているが、私にはかなり
疑問である。そもそも、1999年と2008年を比べると、日本の
経済的地位は相対的に下がっているし、日本国内での娯楽は
むしろ内向きになっている。
やはり、日本の経済的地位低下や世界への関心低下が
留学生数を押し下げていると考えるほうが自然だ。
例えば、2000年に円高だった時点(1ドル102円)と比べると、
日米のインフレ率には差があるので、現在の為替レートが
1ドル=80円程度になっていなければ同じ購買力にならない。
為替は常に変動するが、今、日本経済が1ドル=80円で正常に
機能するかと言えば恐らく無理だろう。これが経済地位低下
の現実であると思う。94~95年頃と比べれば更に違いは
明白となる。
博士課程の留学事情はどうだろうか。
説得力のある統計はないが、実感としては日本人のプレゼンスは
上の統計に表れるよりはるかに小さいように思う。
経済的視点から考えても、
日本はインド・中国に比べて経済的に圧倒的に豊かなので
親からの資金援助を元にした語学留学や学部留学の割合が
高いと考えられる。
しかし、博士課程に関して言うと、減少率はともかく、
日本の留学生が少ない原因はそれだけではないと思う。
日本社会は博士号に対する評価が非常に低い。
理学系や社会科学系の博士など取ってこようものなら、
まともな就職すらままならない。
新卒一括採用主義(しかも原則25歳まで)という
日本の特殊な雇用慣行が原因であろう。
上位3カ国の学生が、アメリカで就職しても良いし、
母国に帰ればかなり良い待遇の職を選べるのに対し、
日本人留学生は(一部の社会科学系を除き)コネがないと
日本での就職が厳しい、というなんとも不利な立場に追い込まれる。
この点に関しては、他国の留学生にはなかなか理解してもらえない。
また、米国での就職にしても、小学校から英語で勉強している
インド人等に比べた場合の語学力でのハンディはいかんともし難い。
こんな理不尽な状況では、留学生が増えないのは仕方ないだろう。
博士課程における日本人の少なさは、
日本より資金が豊富な生命科学系のポスドクや、
先端の医療を学ぶための医師の研究留学などが多いこと
と比べると対照的である。
UCLA出身のK東大教授は、
「別にアメリカがなんでもすぐれているとか,
みんなでこぞってアメリカに行くべきだとかはちっとも思いませんが,
一般的に言って日本の数学の学生でアメリカに留学する人はあまりに少な過ぎで,
もう少したくさん行った方が本人のためにも日本の数学のためにもいいと思います.」
と書いている。正にその通りで、これは他分野にも大抵当てはまると思う。
応用分野や日本が出遅れている分野であれば、
なおさら現地に行って他国の研究者と交流することは必要なはずだろう。
日本がはやく社会構造的な障害を取り除いて、
活発な人材交流を促進することを願ってやまない。
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