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日本人の米国大留学がペイしない理由 -- このエントリーを含むはてなブックマーク


グローバル化が進み米国の大学に大量の外国人が押し寄せる中、近年日本人の米国留学が減っている事が話題に上る事が多い。下のグラフを見れば、留学する年齢層の人口減少以上に米国への留学生が減少していることが見て取れる。

この現象について日本のマスコミは「若者の内向き志向」などと繰り返し若者を批判してきたが、むしろ原因を国内的な要因に無理矢理帰結させることの方が「内向き」な姿勢と言えるだろう。

続きはnoteにて公開中!
https://note.mu/willyoes/n/n4e1d9910cef3



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留学や海外就労で人生リセットはできません -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本での留学・海外就労についての相談やアドバイスを見ると、「今の生活に行き詰まりを感じてるので留学したい!」、「人生リセットしたいなら留学がベスト!」などという意見を目にするのだが、十数年アメリカに住んだ経験からすると、この手の考え方は的外れどころか全く逆だ。むしろ、留学や海外就労を目指す場合、これまでの自分の経験に縛られることが増える。

1.語学のハンディと自分の強み

海外で語学のハンディを乗り越えるには自分の強みを活かすしかない。私が米国で就職するに当たり、18歳以上になってから経験した事で無駄になったことはほとんどない。数学科で6年間を過ごした事は数学科で働く上でもちろんプラスになっているし、教えるのが好きで予備校で講師を経験した事は、大学で授業する上で最も役に立っている。日本でモデリングや統計の仕事をしたことは、自分のリサーチのみならず、学生にトピックを与えて指導する上でも非常に役になっている。米国での就職では学位も重要になってくるし、持っている学位や分野、日本での就労経験によって取れるビザも違ってくる。更に私は、米国で就職活動する際に、日本で知り合いの大学教授から推薦状をもらった。海外では、自分が確かな人間であることを示すために、これまでのスキルや人の繋がりがとても重要になってくる。

日本でもスキルや人の繋がりはもちろん重要だが、語学や文化的なハンディがない分、過去の自分を断ち切って仕事を探す事はずっと容易だ。私は、日本の大学院では落ちこぼれだったので修士課程の後に就職活動をしたが、基本的にはどの会社も学部2年くらいまでの専門知識以外はほぼポテンシャルだけで内定を出してくれた。中央省庁の中には、公務員試験の名簿を使ったのか「大学院を中退してうちに来ませんか」と言ってくれたところもあった。米国に来てから、これはとても贅沢なことだったのだと感じている。

私が日本で就活した当時は、新卒カードという強力な武器があったのは事実だ。しかし、それを差し引いても、日本人が日本で新たな仕事にチャレンジするのは、米国で新たな仕事にチャレンジするよりもずっと容易だ。私も少し歳を取ってしまったが、今から全く違う新しい仕事、例えばマクドナルドのバイトから店長を目指したり、カーディーラーに入って車のセールスマンを目指すにしても、米国よりどの国より、日本で挑戦するのが一番成功する可能性が高いと思う。

もし人生をやり直したい日本人がいたら、日本でやり直す方がずっと簡単だし、これまでのしがらみを断ち切るのも易しい。


2.海外の日本社会はとっても日本的

もし、特筆すべきスキルはないがどうしても海外で働きたい、ということになれば、必然的に自分の日本人としてのスキル、すなわち、日本語がしゃべれるとか日本文化が分かるという強みを活かす事になる。そうしたポジションの大半は日系企業の現地採用だ。

日系企業は米国にも日本文化をそのまま持ち込んでいるので非常に日本的だ。米国に多い伝統的な製造業大企業はたいてい日本的だし、現地化した日系サービス業などは昔の日本的価値観を強く引きずっていてブラックだったりする。「日本に帰りたくない」という日本人は人気のある大都市では常に一定数いる(*1)ので、単純業務を行う末端労働者の労働環境は劣悪な事が多いのだ。

日本で新しくて進歩的な企業で働く方が、よっぽど人間関係も仕事もやりやすいだろう。

(*1)その点、日本人に人気のないデトロイト、シカゴ、トロント、その他日本企業が進出する中西部、南部の大都市は相対的にお勧めではある。



ネガティブなことばかり書いてきたが、それでも留学がプラスになる人もいるだろう。どういう人が海外就労や留学に向いているのだろうか。

(1) 若い
若ければ語学の吸収や文化への適応も早いし、現地就職の際のハンディも小さくなる。日本に帰ってきても25歳前後までなら新卒カードが切れるのでユニークな経験を活かして、有利になる可能性がある。

(2)年齢だけがネック
逆に専門能力は十分高いのに、年齢が高くなってしまったために日本の雇用慣行に阻まれて希望の職種につけないというケース(例えば35歳以上で非管理職など)では、海外に出た方が活路が見いだせるケースが考えられる。もっとも海外では成功しても、今度は日本に帰ってくるのが困難というケースもある。

(3)海外で需要の高い技術を持っている
理工系の技術者、研究者などは、海外では需要が高いので日本よりうまく行く可能性がある。特にIT分野では日米の賃金格差がかなり広がっているので、経済的には米国の方が得だろう。理数系の高校教員などもなり手が少ないので、今後需要が増加する可能性がある。学術的分野以外なら、おなじみの寿司職人は海外では需要が高いし、今ならうまいラーメンを作れる人なら米国で成功する可能性が極めて高い。飲食以外でも、日本人向けビジネスが見込める地域も多々ある。

(4)海外でしか学べない技術を学ぶ
例えば学問分野なら経済学。日本国内で海外での実績が評価されやすい上に、日本と英語圏諸国の実績の差がまだまだ大きい。職人分野なら、ヨーロッパで料理修行して日本に帰るなんてパターンもある。


もちろん、私の話は主に米国についてのものなので、新興国で新事業を立ち上げるとか、他にもチャンスは色々あるだろう。国際化した日本人が必要な国際機関に勤めるという手もある。ただ一言で乱暴にまとめるなら、海外で上手くいくのは「海外で人生リセット!」と明るく考える人より、色々と考えた末に「仕方ないから海外に行くか…」と考える人なのかも知れない。


テーマ : 就職・転職・起業
ジャンル : 就職・お仕事

米国で初めてTAをやる時の5つのポイント -- このエントリーを含むはてなブックマーク

米国の多くの大学では、新年度の授業が始まった。やや遅きに失した感もあるが、英語の得意でない外国人が米国の大学でティーチングアシスタント(TA)をやるための心得をまとめておこうと思う。

米国のTAは、主に大学院博士課程の学生が、学費の免除や健康保険料、生活費の給付を受けるかわりに務める教育ポジションである。その名前がイメージさせる範囲を超えて、教員の代わりに演習や講義を受け持つ。

ここでは、授業の出だしに話すことを決めておく、板書やスライドをきちんと準備しておく、といった基本事項ではなく、つい見落としがちな心得を書いていく。


心得その1:初めてのクラスにはギリギリの時間に行く

これは院生時代に日本人の上級生にもらったアドバイスだ。真面目な日本人はつい「初めて教室で学生の前で話すのだから、入念に準備して、時間に余裕を持って教室に・・・・・」などと考えてしまいがちだが、これは大きな間違いである。緊張した学生のたくさんいる教室に、緊張した英語の不自由な新人TAが10分前に教室に着いてしまったら、始まるまでの10分間、一体どう過ごせば良いのだろうか?初対面の大勢の学生を前に、世間話で打ち解けられる「コミュ強」は別として、普通の人なら沈黙が続いて気まずい事この上ない。ギリギリに来て、「間違えて隣りの教室に行っちゃったよ!」と言い訳するくらいが丁度良いのだ。教室のコンピューター機器の操作などが心配であれば、前日に教室に行って確認しておこう。

心得その2:学生の質問が聞き取れなかったら聞き返す

私も含めて、理系で東アジア出身の院生は特にリスニングが弱い傾向がある。そのため、学部生があまり考えずに早口で投げる質問は聞き取れないことが多い。教壇に立つものの責任感で、聞き返せずに質問に答えられなかったりする人がいるが、これは大変よろしくない。全部聞き取れないときは、キーワードだけでも拾う努力をして、遠慮なくもう一度聞き返せば良い。そもそも、英語は音が小さいとうまく聞き取れないので、ネイティブでも聞き返していることは多い。それでも正確に聞き取れないときは、「〜という質問ですか?」と確認すればいい。要は聞き取ることよりも、コミュニケーションが取れることが大事なのだ。

心得その3:堂々と話す

日本人は一生懸命やっている初心者に優しいところがあって、新人が自信なさそうに教えていても、一生懸命さに好感を抱いたりすることが多いが、米国では、自信に満ちた態度が聞き手を安心させることが多い。

心得その4:アイコンタクトが大事

講義している時にずっと黒板を見ていても、学生の方を見ても、別に分かり易さは変わらない、というのが数学をやっている日本人などの典型的な態度で、論理的にはこれは正しいように思うのだが、そういった態度は一般の米国人には通用しない。アイコンタクトは重要な要素である。私のある授業では、10点満点の小テストで、毎回1点や2点を取る学生がいたので、気まずくていつも目をそらして答案を返していたのだが、授業評価に「アイコンタクトがない!」と文句を書かれてしまったことがある。

心得その5:簡単な質問を投げる

米国人は、授業はインタラクティブであるべき、と考える傾向が非常に強い。そのためには学生とコミュニケーションを取る必要があるが、言葉の壁があると気の利いた質問を投げかけても、学生の反応を聞き取れなければ場の雰囲気が壊れてしまう。そこで、まずは簡単なサーベイを取ってみるとか、答えが限定されるような質問を投げるなどして、インタラクションを増やしていくと良い。

日本人が米国の大学で教えるには、言葉の壁も文化の壁もあるので、どうしても軋轢は生じてしまうが、取り敢えず上に挙げたような簡単にできることから初めてみてはどうだろう。


複雑怪奇な米国の大学の学費 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日、渡辺由佳里氏が娘をコロンビア大学に通わせるのに「わが家は年に600万円以上支払った」とブログに書いて話題になったので、米国の大学の学費について知っている範囲で少し書こうと思う。

米国の大学、特に名門私大の学費に関しての特徴は、人によって払っている額がまちまちだという事だ。日本人の大好きなハーバード大の来年度の正規の学費は寮費を含めて64400ドル(約792万円)だが、年収6万5千ドル以下の世帯の子供は持ち出しなしで通えると謳われている。実際には世帯収入の他、世帯の資産、そして学生の資質によって、奨学金の額が決まってくる。多くの大学が謳う"need-blind admission"が実際に行われているかどうかはかなり疑わしいとの議論があるし(そもそもどの項目を考慮しなければ need-blindと言えるのか?統計的には郵便番号だけでもかなりの情報が得られてしまう)、仮に admisson が本当に need-blind であっても financial aidが学生の能力評価に依存しないとまで言っている大学は殆どない。その全体図を知る事は、名門私大のアドミッションオフィスにでもいない限り非常に難しい。

中流世帯にとって一番大きなジレンマは、子供を良い大学に行かせるにはお金を貯めなければならず、一方でお金を貯めてしまえば大学からの奨学金が減らされてしまうという事だ。奨学金を貰える場合、その額は必要な費用から家族が負担すべき額(Expected Family Contribution, EFC)を控除して算出されるが、通常、親が持っている資産の約5.6%を毎年拠出するようにというルールになっている。子供一人が4年間通っただけでも資産の23%、子供二人が通えば資産の約半分が「貯蓄のペナルティー」として大学に行ってしまう計算である。米国にも、携帯電話も持たないで子供の学費のために節約するような層もおり、こうしたルールは倫理的でないとの批判も根強い。

さらに、こうしたルールに抜け道がないとも言い切れないのが、不公平感を助長している。

奨学金や学費ローンの申請にあたっては、FAFSA(Free Application for Federal Student Aid)という書類を出す必要があり、私立の有名大に関しては更に詳しい内容を記したCSS Profileという書類を出す必要があることも多い。これらの書類は確定申告の情報ともリンクされるので虚偽の報告は難しい。しかし、FAFSAによる連邦政府からの奨学金には、リタイアメントアカウント(401K/IRAなど)の残高や自宅資産はカウントされないし、家族が所有する会社の資産もカウントされない。こうした「資産隠し対策」をきちんとして、フローである世帯年収さえ低ければ通りやすいというずさんな審査内容になっている。もちろん、自前の奨学金を用意する名門私大は、CSSで更に詳しい経済状況を把握して慎重に決めているだろうが、資産のどこまでをカウントするかによって結果は異なってくるので、より多くの情報を持つ応募者が有利なことに変わりはない。更に言えば、申告範囲外の親族に贈与をして資産を消してしまうのが合法かどうか、というのもはっきりしない。

要は、米国の学費支払いは、税制と同様に、支払い能力の低い人の経済的負担を軽減するというより、金融リテラシーの高い人が他の人を出し抜く事ができるというシステムになっている。

米国の大学は入学選考が複雑なだけでなく、学費の支払いにおいても日本の様に「一律54万円」などと簡単には割り切れないのが実情のようだ。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

米国の学部で学ぶために一番大切なこと -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ここ5年ほど、日本でも海外留学への関心が高まっている。経済的に敷居の高い日本から米国への学部留学も増加する可能性がありそうだ。そこで、一大学教員として、米国の学部教育の現場で感じていることを書いておこうと思う。

アカデミックな意味で大学生活を成功させるためには、有名大学に入れるかどうかとか、入ってから一生懸命勉強するかとか、いろいろな要素がある。しかし、私は「入学までにきちんとした基礎知識をつけてくるかどうかが成否のほとんど全てを決めると言っても過言ではない」と考えている。それは入学時の基礎学力が、大学のリソースをどこまで活用できるかを決めてしまうからである。

米国の多くの大学では、日本の大学生と比べて入学者の学力のばらつきが非常に大きい。超名門校においても下位層の学力は日本の一流国立大の足許にも及ばないし、私のいるWS大に至っては「学部生の半分は100の平方根が50だと思っている」という笑い話があるほどだ。一方でWS大においても、私より優秀なのでは?と思うほどの博士課程の学生もおり、そんな学生もWS大の学部で学んでいたりするのだ。つまり、日本で言う東大レベルの学生もいればFランク大レベルの学生もいるということだ。当然ながら、学生によって取る授業は入学当初から全く異なる。

私は数学科に属しているので、うちの大学で学生が履修する数学科目がどのようになっているのか説明しよう。ちなみに、うちの大学では全ての学生は数学科目を一科目は履修しないと卒業出来ない仕組みになっている。

最も数学ができない学生が取るのは、0番台と呼ばれる授業で、0900のような0で始まるコース番号がついている。これらのコースは大学の単位として認めてもらえないので、学生は小中学校の復習のためだけにお金を払っているようなものだ。授業は整数の四則演算から始まり、分数、小数、百分率、と言わば小学校で習うことから復習していく。それだけでも驚愕ものだが、更に問題なのは、たった一学期の授業で、方程式や不等式、多項式の計算や、グラフの書き方までやることだ。私には、18歳にもなって小学校の算数があやふやだった学生が、一学期間でこれら全てを習得できるとはとても思えない。結局のところ学生は、曖昧な理解のまま、次のコースを目指して博打を打つ、という全く救いようのない状況なのである。

なんとか日本の中1レベルのことが出来る学生は、1000番というコースを取る。クラスは200人の大教室で、内容は無理矢理作ったカルチャー講座のようなものだ。乱数表から数字を取り出して度数表を作ったりと意義を疑いたくなる問題をやらされたり、かと思えば、いきなり中心極限定理を紹介されたりする。ともかく数学をきちんと理解させようと作られたコースではないので、一生懸命勉強しても、次の数学のコースを取るにはほとんど役に立たない。10ドルの古典的な啓蒙書でも一冊真面目に読めば、十分に同等の知識を得られるだろう。研究で忙しいTA達が、試験問題の数字だけ入れ替えた問題をともかく学生に繰り返しやらせて、形式的に点数を取らせるだけの科目でもある。

もう少しできる学生は、中学・高校で習う数学を復習するコースを取る。これも1000番代のコースである。日本の中学レベル+三角関数に相当するレベルと、指数や対数なども含む日本の高1レベルのものがある。この2科目を取るだけでも、6クレジット程度になるので、大雑把に言って1年の4分の1を高1までの尻拭いに使うと言っても良い。授業は30〜40人の中規模のクラスで行われ、教えるのはTAや易しいコース専門のインストラクターだ。

なお、ここまでのコースは、基本的に取る必要のないコースである。自分で復習して学科のテストにパスすれば免除される。つまり「自分で復習ができない学生」のためのコースと言っても良い。

理工系に進む学生のうち、まともな学生は2000番台のコースを初年度から取り始める。多くの学生が最初に取るのは、微積分入門である。しかし進度は早く、1学期間で簡単な微積分は終わらせてしまう。試験もそれなりに厳しいので、単位を再三落とす学生や、CやDなど将来に響く成績(米国の学部の成績は進学の際にとても重視される)を取る学生が少なくない。実のところ、多くの学生は真面目にやっているにもかかわらず、良い成績が取れない。米国の大学というのは基本的に優秀な学生以外は途中で振り落とすという仕組みでやっている。「真面目にやれば報われる」という日本の学校制度とは趣が異なるように思う。結局のところ、高校で一度、微積分を学んだことがあるかどうかによる差が大きいようだ。

2000番台の科目にも、なんとか背伸びして無理に登録して来る学生が多くいる。こうした学生の中には本当にやる気のある学生もいるのだが、残念ながらやる気だけでは数学はできないようだ。不十分な基礎知識では、いくら勉強しても、きちんとした成績でパスすることができず、逆に時間を無駄にする学生が多い。先学期もノイローゼ気味になるまで成績の事を心配して勉強しながら、結局学期途中でドロップアウトした学生がいた。日本では、米国の大学で単位の認定が厳しいことを美化する風潮があるが、実態は基礎知識が不十分なために、いくら一生懸命やっても成績が付いて来ない、ということなのである。

高校で真面目に勉強した学生は2000番台のコースもいくつかの免除を受け、3〜4年になれば、5000番台の学部上級/修士向けのコースを履修する。そうした学生が、数学専攻の学生というわけではない。単に、高校までで真面目に勉強してきたかどうかの違いである。このレベルのコースは、多くとも10数人程度の少人数のクラスが多く、専任の研究教員が自分の得意分野を教えるので、講義の内容も深く、面倒見も良い。成績評価も教員の裁量に任されるので、学生も成績を過度に心配せずに、知的好奇心を持って授業を受けられる。教員の方も「演習問題が載ってるページが分からない」とか「練習問題と試験問題が違うので困る」などと文句をいう困った学生がいなくなるので、講義内容に集中できる。せっかく大学に来るなら、このレベルの授業を受けなくては損だし、逆にこのレベルの授業であれば必ず授業料という投資に見合うだろう。


巷の大学ランキングを見れば、ハーバードやイェールなど有名私立大が上位に並ぶ。そうした大学は、学生のテストスコアも高く、卒業率は高く、教員一人当たりの学生数は少なく、専任教員は多く、クラスは少人数制だ。いいこと尽くめのように見えるし、実際、優秀な学生が多い事は事実だろう。しかしいずれにせよ、学生の基礎知識が不十分であれば、どの大学でも同じように教えられている初歩のコースを受けることになる。

逆にWS大のような並の州立大学であっても、きちんとした知識を持って入学すれば上級レベルのコースを多く履修でき、結果として、学力の高いクラスメイトに恵まれるし、卒業も心配がなく、クラスは少人数で、専任の研究教員が教える授業を取れるのである。卒業後の進路にしても、医学部(米国では学部卒業後に進学)への進学にあたっては地元出身者、同一大学出身者は、有利な扱いを受けているようだ。大学院も人材が不足気味なので、優秀なら引き合いがある。


こうして見ていくと分かるように、大学で対価に見合った教育を受けたければ、ともかく高校までの勉強をしっかりやってくることに尽きる。これは、どこの国でも基本的には変わらないだろう。そして、米国ではその事が特に顕著である。この事に比べれば、ハーバードに行くか、州外の人が聞いたこともないような地元の州立大学に行くかは、二次的な問題と言ってよい。

近年は日米とも大学進学率が非常に高まり、大学に進学することがペイするかどうかに疑問が呈されるようになった。だが、真実はとても単純なことのように思える。高校まできちんと勉強し、大学で新しい事を学ぶ気があるのなら、大学は依然として素晴らしいところだ、という事である。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

日本人を米国一流大学院に大量に送り込む方法 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

近年、日本は国を挙げて「グローバル人材の育成!」
なんてかっこいい事を言っているけど、要は
「日本国内は空洞化してもうそんなに雇用を確保できないんだよね」
ということだろう。

大学についても国や地方の財政悪化と少子化が相まって、
20世紀末までの規模の研究者を国内で維持することは不可能だ。
国としては「日本の大学の国際競争力を強化する」
という方針を立てないと国策として話が閉じないのは分かるのだけど、
現実問題として日本人研究者を質・量ともに維持していくためには、
海外の大学に籍をおく研究者を増やすしかない。
それに、そうやって海外に広がったネットワークが、
日本のためにならないとは思えない。

しかし日本人に限らず、例えば、米国の大学に就職する研究者の大半は、
米国の大学院を修了しているという現実がある。
つまり、日本人を海外の大学でどんどん活躍させるためには、
海外の大学院、特に一流大の大学院にどれだけ人を送り出すかが
肝心になってくる。

30年前であれば、中国、インド、韓国など他のアジア諸国から
留学する学生も少なかったので、
日本人が一流大学院に留学するというハードルは、
情報が不足しているという点を除けば、今よりも低かったと思う。
しかし世界中から優秀層が殺到するようになった現在では、
日本人が英語圏の一流大学院から入学許可をもらうこと自体が非常に難しくなっている。

日本の政府や一流大学は、この状況を打開するために、
もう少し頭をひねるべきではないだろうか。

一流大学院に留学するにあたって、日本人に欠けているのは英語力とコネだ。
政府は、日本人の子供の英語力を底上げすることは真剣に考えだしたが、
コネの方については全く手つかずの状態と言っていい。

私は、統計学科の博士課程に進んだが、
米国の統計学科には元々日本人が非常に少ないため、
日本人の志願者がいても、大学側がそのレベルを判断できずに落とされる、
ということが結構あるようなのだ。
日本人が持っているコネと言えば、
日本の大学にいるごく少数の著名な研究者からの紹介状くらいで
非常に細いものになってしまっている。

それでは、どうやってコネを作っていけば良いだろうか。

まず理解しなければならないのは、米国でキャリアに関するコネとは、
有力政治家の息子であるとか、学長の娘であるとかいった類のものではなく、
相手にどれだけ自分の事を知ってもらっているか、
という非常に日常的なものであるということである。

例えば米国大学院の修士課程に1年間在籍した韓国人の学生Aが、
同じ学科の博士課程に出願したとしよう。
その学生の修士時代の成績は4点満点で3.7点。悪くないが特別優秀でもない。
出願者は全部で4人で、他の3人B,C,Dは他大学からの志願者だ。
Bは中国からの志願者で成績は4.0点、
Cはインドからの志願者で3.8点、
Dは米国の他大学からの志願者で成績は3.5点。
大学側は誰を合格させるだろうか。
もし大学が、Aには博士課程の学生の平均以上のポテンシャルがある、
と思ったならばAを合格させるだろう。
もしかしたらBが一番優秀かも知れないが、
Bの出た中国の大学の成績は当てにならないかも知れないし、
TOEFLのスコアが高かったとしても、実際にどのくらい英語ができるのかは分からない。
場合によっては、CやDが合格する可能性もある。
Cと同じ大学の卒業生が博士課程に在籍していて、特別優秀だったらどうだろう。
同じくらい優秀であることを期待して、Cを採用するかも知れない。

いずれにせよ、米国では先に内部に入り込んでしまった者が圧倒的に有利なのだ。
実際に、アジア諸国の富裕層はそうやって時間をかけながら、
したたかに良いポジションを獲得していく。

そういった状況を考慮して、例えば、日本政府や一流大学は、
大学3年の9月、あるいは1月から半年〜1年間、米国等の一流大学の学部に
短期留学させる制度を作ってみてはどうだろうか。
学位を得るための正規の学生ではないから入学試験も回避できるケースが多いし、
費用的にも、半年なら学費と生活費合わせて1人3万ドルくらいで送り出せるだろう。
国が年間千人の枠を作っても、3000万ドル(約30億円)で済む。
安くはないかも知れないが、年間30億円でどのくらい道路が作れるかと
比べれば十分に効果の高い人材投資だろう。
しかも90年代にやった大学院重点化とは違って、後処理が必要ない。

日本の一流大で2年半みっちり勉強した学生なら
いきなり専門科目を履修できるだろうから、米国の学部3年生と比べれば、
ほぼ確実に抜きん出た専門能力を見せつけることができるだろう。
そこで教授とコネを作っておけば、その大学の大学院に入るにも、
他の大学の大学院に入るにも有利になる。
運良く、博士課程の入学許可が下りれば、多額の財政援助が付いてくる。
たった半年の期間と3万ドルでそれだけの効果が得られれば、費用対効果は抜群である。
むしろ個人で金を払って行っても良いくらいだろう。
日本人の米国博士号取得者は年間500人くらいだったと思うが、
こうした「作戦」がうまく行けば倍増も夢ではない。

中国人やインド人が米国の大学を席巻しているが、
大半の学生は、コネも金もなく、ビザの取得も難しい中で、
自分の能力だけを頼りに大学院の入学選考で勝負しているのが現状だ。
そうした方法がうまくいくのは、
教育レベルが高く経済的に貧しい大勢の国民が
豊かさを求めて激しい競争を繰り広げる場合に限られるように思う。

中国やインドの10分の1の人口しかいない上に語学の上でもハンディを抱える日本人は、
潤沢な資産やビザの取得が容易であるというメリットを最大限に利用して、
彼らが羨むような全く別の方法で、コネを構築して戦うべきではないだろうか。



テーマ : 留学
ジャンル : 海外情報

日本で英語学習の密度を上げる方法 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

社会に出てから英語が必要になり、英語を勉強しようと思う人は結構多い。
必要になった時に勉強するというのは最も効率良い勉強方法だと思うが、
いかんせん社会人には時間がない

しかし、焦って語学学校の先生に「効率の良い勉強方法はないですか」などと聞こうものなら
「地道に努力する事!」などとお叱りを受けるのが相場となっている。
大体、語学の先生というのはそういう精神論が好きだ。
すぐに出来ると思われては「出来るようにならなかった!」と
後から文句を言われるリスクがあるし、
そもそも本当にすぐに出来る方法があったとしても
そんなものを教えたら語学の先生は失業してしまう。
「地道に努力する事!」はセールストークのようなものと言って良いだろう。

そこで、私が自分の経験から得たいくつかのヒントを紹介したい。

1. 英語番組は英語部分をたくさん聞く

テレビやラジオの英会話番組は良質だが、ほとんどの時間を日本語の解説に取られている。
入門講座だと20分の番組でも下手をしたら英語を聞いている時間は3分もないだろう。
有料のCDを買えば説明が省かれたものを月単位で買えるので、毎日、2週間分くらいを
繰り返し聞けば、少なくとも漫然と一日20分聞くよりも効果的だ。


2.英会話は1対1で

かつての私にとって外国人とは宇宙人のような存在だった。
「英会話教室はスイーツ」などとバカにされがちだが、そんな英会話教室でも
外国人との会話に慣れるというメリットはそれなりにあると思う。
しかしある程度会話が成立するようになったら、英会話は1対1でやった方が良い。
インターネットで調べれば大都市圏では個人レッスンを頼めるネイティブスピーカーは
割と簡単に見つかるし、それを紹介してくれる業者もある。
英会話教室のグループレッスンでは共通の話題を見つけるのが難しく、
会話のパターンが限られて表現力が向上しない。
発言の機会も少なくなるし、同じ質問に生徒が順番に答えたりする展開は「即興性」に欠ける。
大雑把に言って習得速度は生徒の人数に反比例すると思って良い。
また最近は、オンラインで格安のものもあるので検討すると良いだろう。


3.複数の能力を同時に鍛える

語学の主な要素は、Listening, Speaking, Reading, Writing の4つだが、
複数の要素を同時に鍛えることが出来れば当然ながら効率が良い。初学者にとって
効率が良いのは「例文付きの単語集を聞きながら自分でも発音する」ことだ。
例えば私が最初にやったのは、
DUO 3.0 という本だがこれは中々良く出来ている。
続いてやったのは、速読速聴・英単語 Core 1900Advanced 1000 だ。




4.単語を覚える

一般的に日本人は単語を覚えずに英文の構造だけを理解しようとし過ぎだ。
例えば、300単語くらいの文章であれば、分からない単語はせいぜい10個以下
でないとストレスなく読めない。そもそも自然な語学習得パターンは、まず
基本的な単語をある程度身に付け、それを元に文法を理解することだ。
特にある程度の長期計画でやっている人は、どこかの時点で
例文付きの単語集を使ってかなりガリガリと単語をやる必要がある。

アルクは12000の単語リストを 4分冊
で出しているので、ガリガリやるのが得意な人には良いだろう。
自然でない例文も時々あるが、これは無理に複数の単語を短い例文に
組み込んだ結果と思って諦めるしかない。



5.英作文はネイティブに見てもらう。

伝統的な日本の英語教育を受けた人は、speaking や writing と言ったアウトプットが苦手だ。
大きな原因は、ほとんどの日本人の英語教師には、生徒がランダムにアウトプットした英語を適切に評価
できないことだろう。ライティングはネイティブに直してもらうに限る。

また、英語の作文は段落や論理構成に制約が多いので、TOEFLのWriting 対策用の本などは
意外と実社会でもそれなりに役に立つ(特にこれと言うものはないが、例えば こんなもの など)。

6.一度決めたら本は変えない。

英語の参考書は慣れるまでに何日かかかるが、慣れてしまったら本は変えない方が良い。
英語学習は繰り返し作業であり、経験的にはフォーマットに慣れてからの方が学習効率が高くなる。
もちろん良い本を選ぶことは大切だが、頻繁に本を替えると慣れるために労力の大半を使ってしまう。


英語学習は根気強くにやることが大事だが、少なくとも、
「辞書を1ページ目から順に丸暗記して"abandon" のところで諦める」
という昔のやり方よりは効率の良い方法がある。
電子辞書で読解の効率は劇的に上がったし、インターネットにより英会話も価格破壊が起きた。
今後もどんどんそういったイノベーションが生まれるだろう。
常に少しでも効率の良い学習方法を探求したいものだ。


テーマ : 英語・英会話学習
ジャンル : 学校・教育

夏休みは友人と勉強会をやろう! -- このエントリーを含むはてなブックマーク

何度か書いている通り私のいるWS大では冬休みは長くないが、
夏は5月初旬から8月下旬まで休みだ。
もっとも給料は出ないので休みと呼ぶべきか、失業と呼ぶべきかは分からない。

ともかく、その間に研究してください、ということなのだけど、
流石にだらけるのは避けられないので、今年はT教授、院生のN君と
3人でセミナーをやって確率過程を勉強し直している。
T教授と私は離散の時系列を主にやっていて、
院生のN君は多分 nonlinear programming か何かをやっているのだが、
確率過程もある程度きちんとやっておいた方がいいよね、
ということで興味が一致して集まった。
もっともT教授にしてみれば、
「おまいら、確率過程ももうちょっと真面目にやれよ」
ということなのかもしれない。

数学科の学生の特徴は、自分達でよく勉強会を開くことだ。
特に日本の数学科はその傾向は顕著だ。
数学は、理解するのに必要な能力と教えるのに必要な能力の差が
あまり大きくないので、この方法は概して良い勉強方法だ。
数学以外の分野でも、理論分野ではそれなりに成立するだろう。

2~6人くらいで週毎にスピーカーを決めて一週間に一度セミナーを開く、
というのが一番オーソドックスな形式だが、
学生時代に冗談半分でいろんな形式を試したので紹介したい。

1.毎日セミナー

学部生の時、東大出版の解析入門を読む時にやった方法。
夏休みは毎日みんな暇なので、月~金まで
毎朝9時に集まって午後3時くらいまで勉強会。
準備する時間はないのでその場でみんなで考える。
そのあと、みんなで喫茶店で雑談するなり遊びに行くなりする。

→ 仲良しグループでやると楽しい。男女のグループならなお良し。
1人で本を読むよりは長続きするが、ちょっとだらける。

2.一日おきセミナー

院生の時、早く読み終えないといけない本があって友人と二人でやった方法。
1週間は7日あるので、
準備 → セミナー → 準備 → セミナー → 準備 → セミナー → 休日
のローテーションで続けていく。
セミナーの日はあまり読み進めないので、実質復習・休息日と言える。
私が読んでた本だったので毎回自分が発表して、友人は聞き役。

→ 確かに早く進める。
ただし、私の能力では準備一日では要約している時間がないので、
ベタッと全部読む感じになる。また他に予定がある人には無理。
聞く側にとって良いかどうかは不明。

3.授業中セミナー

学部3年の時、あまりにつまらない授業があったので、
授業開始直前に同じ分野の人で別室に移ってセミナー。

→ つまらない授業に出るよりはまし。
授業時間中はみんな予定がないし学校にいるので人を集めるのが楽。
先生が怒るかどうかは不明。ご自分のリスクでどうぞ。

4.深夜のゲリラ・セミナー

学期中の土曜日の午後7時頃、いきなり友人から電話があり
「今、○×大の教室にいるんだけど、来ない?」
翌日曜日に集まる予定があったので、その前夜祭(?)として
双線形形式かなんかの本を読むことに。

→ 眠くて身につかない。そんなセキュリティーの甘い大学が
  現在もあるのかどうかも不明。

5.24時間セミナー

表題の通り、24時間連続のセミナー。交代でしゃべる。
大学では無理なので、自宅に模造紙のようなホワイトボードを持ち込んでやった。
おなかが空いた時は、近所のファミレスで一時休憩。

→ 気合を入れてくるせいか、最初の12時間は結構はかどる。
その後はしゃべっている人はいいが、他の人が順次居眠りという事態に。

いろいろやってみたものの、一番緊張感を保てるのは、結局、週に一回集まるという形式だ。


そのうちオンラインでの勉強会もやってみたいが、問題は黒板やホワイトボードが使えないことだ。
以前に、SAMSIという学会主催のWeb上のセミナーに参加した事があり、
発表者が手書きパッドのようなものを使っていたことはあったが、
複数の人がインタラクティブに使うのはまだ難しそうだ。

また、これは勉強会ではないが、
W大M校にいた頃に韓国人の女の子がよくやっていたのは、
2~3人で集まって監視し合いながら各々自習するという形式。
ただし、男女二人ではむしろ気が散る可能性が高いし、
男同士でやるとキモい感じになりそうだ。

日本もそろそろ夏休み。
学生でこの夏予定のない方は、勉強会の予定を立ててはいかがでしょう。


テーマ : 算数・数学の学習
ジャンル : 学校・教育

GRE Subject Test 対策 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

数学科の博士課程の入学選考に関して、GRE Math Subject Test の
結果が重要であるとのコメントを頂いたので、それに関して少し書きたい。

GRE Subject Test とは、
いわゆる基礎学力試験としての GRE general test
(Verbal, Quantitative, Analytical Writing の3科目)
とは別に、各専門分野の基礎知識を測るための試験である。
以下の7つの試験が存在しているようだ。

-- Biochemistry, Cell and Molecular Biology
-- Biology; Chemistry;
-- Computer Science;
-- Literature in English;
-- Mathematics;
-- Physics; an
-- Psychology

学科によって、特定のsubject test を必須としている場合もあるし、
何も必要ない場合もある。

数学科では、mathematics の subject test が必須であることが多く、
統計学科では特に必要ないことが多い
(ただし統計学科でも math subject test が必須の大学もある)。
試験は、日本の数学科の学部2年生修了程度の基礎知識が必要だ。
具体的には、微積、線形代数、複素関数論、位相程度の知識が
あれば十分であったと思う。

問題は直感的なものが多く多岐選択式である一方、
170分で66問の問題を解かなくてはならずかなりタイトだ。
日本の博士レベルの学生が受けても時間内に全問解ける人は
少ないと思われる。私は56問しか正解できなかったが、
それでも受験者の上位4%くらいであった。
処理能力の速さを見る試験という意味で
昔の国家公務員試験・数学職の1次試験に似ている。



私が対策に使ったのは、上の問題集だ。
基本的に計算問題を解くだけなので定理の証明などはほとんど載っていないが
効率的に試験対策をすることができる。
もっとも、もし全問正解を目指すのであれば、
この本だけでは練習量が足りないので
類題を別の本で探してきて、たくさん解く必要がある。

私は平日は仕事で時間がなかったので、
出願する年(入学の前年)の秋頃の土日を使い1ヶ月ほど掛けて
ファミレスで勉強したのを思い出す。
数学の問題を解いたのは5年ぶりくらいだったので
懐かしい感じがしたのを覚えている。

GRE Subject の試験は私の理解が正しければ今でもPaper-basedであり、
日本の会場は東京、福岡、沖縄の3箇所しかない。
また年に2~3回(10月、11月、4月)しか開催されない。
従って、ETSのサイトで事前によく確認する必要がある。
私が受験した時は確か、札幌、神戸、福岡、沖縄の4箇所
しかなかったので有休を取って旅行気分で
東京から神戸まで行って楽しかった。

米国の大学院には入試がない。
推薦状やエッセイ、学校の成績を除くと、
入学前に具体的に数学力を試される機会はこの試験だけだ。
模擬試験問題もついているので、
米国大学院に興味がある人は遊び半分でやってみると面白いだろう。


テーマ : アメリカ留学
ジャンル : 海外情報

米国留学とゴールデンウィーク -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本は、ゴールデンウィークの真っ只中だが、
アメリカの多くの大学では学年末試験の真っ最中あるいは直前で
学生にとっては最大の修羅場
を迎えている。

日本に恋人を置いてアメリカに留学している人はきっと一度は、
ゴールデンウィークに会えるかどうかで
揉めたことがあるのではないかと思う。
むしろ揉めたことがないならば、
それは別の二つのカップルが誕生していることを
意味しているのかも知れない。

米国に留学している日本人が日本にいる恋人と会うタイミングは通常
年末年始、春休み(3月~4月頃の一週間)、夏休み(5月中旬~8月)
の3回に限られる。頑張れば、11月のサンクスギビング前後に会う
ことも可能だろう。

いずれにしても国内の遠距離恋愛より大変なことは間違いないが、
留学生には働いているよりは時間があり、
手間と飛行機代さえ惜しまなければそれなりに会うこともできる

ということは、留学する人は考慮に入れておくと良い。

インタネットの掲示板などでは、20代後半の女性からの
「彼氏を取るか留学を取るか」という楽しそうな、
しかし本人にとっては真剣な人生相談が時折見られるし、
私自身も留学する計画を決めてから彼女と別れた(※)。
別れる直前の頃、彼女は
「Willyが待ち合わせに遅れると、
もうずっと会えないかも知れない、と不安になる」
と言っていた。
事前にもっと正確な留学事情が分かっていれば、
そうした悩みはある程度和らげられるのではないかと思う。

恋愛に限らないが、
留学することは日本での生活を全部リセットすることではないので
どのくらいまで繋がりを保てるのか、どこに限界があるのか、
ということは冷静に考えることが大事だ。


※じゃあ、なんで結婚してから留学してるんだよ、
って話もあるが、留学準備期間って結構長いのだ。


テーマ : アメリカ留学
ジャンル : 海外情報

ハーバード大の日本人入学者はなぜ少ないか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ハーバードの日本人学部入学者が毎年1人程度しか
いないことが先日、日本のメディア話題になった。

一方、中国や韓国は毎年、10人前後の入学者がいるようである。
こうした日本人入学者の減少を学生が内向きになったとか、
草食系がうんたらかんたらと言った要因に帰着する意見もあるが
そうしたことが本質的だとは思えない。
アメリカに住んでみれば一目瞭然なように、
その最大の理由は日本人のアメリカ社会への
浸透度が圧倒的に低いことだ。


例えば、デトロイトのあるミシガン州には
1万人強の日本人が住んでおり、2万人前後の韓国人、
3万人前後の中国人と比べても、それなりの規模を維持している。
しかし、日本人の多くは日本企業の現地展開のために一時的に
米国に滞在しているため、現地の大学へ進学する人は少ない。
アメリカにいても日本の方を向いており数年で帰ることの多い日本人と、
現地で同胞同士のコミュニティーを作って長期に渡って
居住することの多い中国人・韓国人では
当然ながら浸透度にかなりの差がある。
こうした浸透度の違いは、
国籍別の入学者数には大きく影響するし、
ハーバードで外国人入学者全体の3倍、毎年300人程度いる
アジア系米国人としての入学者数にも反映していると考えるべきだろう。

いわゆるトップ数%しか入学できないような一流大学の
入学者数には、入学可能性のある人数としての分母が重要だ。
例えば、私がこの先、娘を英語のネイティブ・スピーカー
として18歳まで育て、きちんとした教育を受けさせても
ハーバード大に入る可能性は非常に低い。
しかし、同じような環境の日本人世帯が20世帯くらいあれば
たぶん一人くらいは一流私立大に入れるだろう。
現状の日本人のアメリカにおける浸透度では
多くの一流大学に主なアジア諸国と互角の人数を
送り込むには分母が足りないということだ。


繰り返すと、米国の大学における日本人のプレゼンスの低さは
日本人の米国社会における浸透度の低さが根源
にあり、
若者の内向きのようなもっともらしい社会現象に帰着しても
事態はなんら進展しない。
国民のアメリカ社会への浸透度の圧倒的な違いを受け入れた上で
それでも何かすべきこと/できることがあるのかを考えるべきだ。


テーマ : アメリカ合衆国
ジャンル : 政治・経済

海外就労適性診断テスト -- このエントリーを含むはてなブックマーク

池田信夫氏のブログエントリーのように
日本の閉塞感や就職難から若者に海外留学を勧める向きが
ジャーナリストの間に増えてきている。
これは、私が留学した2004年頃にはまだ見られなかった風潮だ。
しかし、masayang氏が書いているように
海外留学と海外就労の間には大きな違いがあるように思う。
無責任に勧めるのは棄民を促しているのと同じだ。

「じゃあ、どんな場合に留学後の海外就労が有望なの?」
というと説明しにくいので独断と偏見で数値化してみた。
(もちろん、特殊な才能がある場合は別だ。)


<海外就労適性診断テスト> (全て Yes/No の二択)

1.旧帝大、東工大、早慶の上位学部、あるいは同程度の
  日本の大学に在籍していた事がある。あるいは受かる
  自信がある。

2.アメリカの大学に行くなら理工系あるいは生命系(*1)だ。
(*1: ただし医学部、薬学部、歯学部などの職業的学位を除く。)

3.アカデミック志望である。

4.女性である。

5.20歳未満の時に1年以上の留学経験がある。
  あるいは 帰国子女のため、日常英会話ができる。
  あるいは、留学予定時期が20歳以前だ。

6.TOEFLのスコア(iBT)は100点を超えている。

7.社交性では日本人の上位10%に入る自信がある。

8.日本のテレビが好きだ。

9.日本の食文化の豊かさは世界一だ。

10.コネで就職する人はずるいと思う。

11.頼まれると断れないタチだ。

12.中古車は当たり外れが多いので嫌いだ。

13.外国で働くなら日本に関係ない仕事がいい。

14.病気は少ないほうだ。



<採点基準>
Q1: Yes: +7, NO: 0
Q2: Yes: +15, NO: 0
Q3: Yes: +7, NO: 0
Q4: Yes: +8, NO: 0
Q5: Yes: +12, NO: 0
Q6: Yes: +4, NO: 0
Q7: Yes: +8, NO: 0
Q8: Yes: 0, NO: +4
Q9: Yes: 0, NO: +4
Q10: Yes: 0, NO: +5
Q11: Yes: 0, NO: +7
Q12: Yes: 0, NO: +4
Q13: Yes: 0, NO: +9
Q14: Yes: +6, NO: 0

80点~ → すぐにでも海外留学
60点~ → 海外留学を本格検討
40点~  → 海外留学も選択肢に
40点未満 → やめとけ
(ちなみに私の自己採点は64点。)

40点以上の方、どんどんアメリカに来てください。


テーマ : 海外生活
ジャンル : 海外情報

米国大学院・博士課程のコースワークの大変さ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

みなさんは、財務省の職員の子供には10月生まれが多い
という逸話をご存知だろうか。
その理由は、激務の財務省職員がゆっくりできるのは
正月休みくらいだということである。

別に博士課程のコースワークが
それと同じくらい大変だとは私は思わないが、
私の周りでは似たようなことが起こった。

私がW大M校の博士課程2年生の時、
私の娘と、友人Aの子供、友人Bの子供の3人は
ほぼ同じタイミング、12月のある2日間に生まれたのだ。
別に特別なパーティーをやったわけではない。
ただ、3人の子供達が生まれたその9ヶ月前は
1年目の厳しいコースワークの中でつかの間の春休みだった。

今日、友人AからFacebook経由で数年ぶりに連絡をもらった。
外国人の新入生同士、一緒に昼ご飯を食べながら
授業の話をしたり、冗談を言い合ったのを覚えている。
忙しかったがとても充実した楽しい日々だった。


テーマ : アメリカ留学
ジャンル : 海外情報

アカデミックとインダストリーの狭間で -- このエントリーを含むはてなブックマーク

My Life in MIT Sloan の Lilac さんがブログを再開した。
再開を心から歓迎したい。
いつの間にかタイトルもMy Life `after' MIT Sloan に変わっている。
在学中の彼女のブログを読んで初めて
MBAプログラムの面白さを理解できたが、
卒業後のブログではどのようなトピックを扱っていくのか
今から楽しみである。

再開後はじめのエントリー(「私が人生の進路変更をした本当の理由」)は
アカデミックとインダストリー(企業部門)の間の進路選択に関して
多くの示唆を与えていると思う。

労働市場の閉鎖性をもち、
アカデミックとインダストリーの垣根が高い日本社会は
アカデミックを志す人にとっては非常にやりにくい。
Lilac さんの決断は結果として正解だったように思えるが、
不確実性のなかで決断したことに変わりはないだろう。

私が数学科の学生であった頃、
アカデミック・ポストは神格化されていると言っても過言ではなかった。
数学科における典型的なアドバイスは、
「数学に本当に興味があるなら数学者に向いているかも知れないが
数学者になりたい人は数学者には向いていない。」
とか、
「親類が大反対したくらいで諦めるなら最初から
数学なんてやらない方が良い。」
といった極端なものであった。
理想論としては正しいだろう。
しかし、ブッシュ元大統領が、
「国民の幸福を本当に望んでいるなら大統領に向いているか知れないが
大統領になりたい人は大統領に向いていない。」
と言ったら米国民はどう思うだろうか。

こうした極端なアドバイスは、
中途半端な決意の人にアカデミックの道を
諦めさせるというプラスの面がある反面、
アカデミックに残る決心をした人の人生設計を無茶苦茶にしたり、
優秀な人をアカデミックから遠ざけたりしているように思う。

僕が東大の数学科にいた頃、
天才と思えるほど数学ができる人もいた。
彼らに迷いはなかったように僕には思える。
しかし仮にそうであったとしても、そんな人は本当に一握りだ。
多くの人は、自分が本当にしたい仕事は何なのか自問し続け、
知的好奇心と安定した生活を天秤にかけて悩んでいるはずだ。

そして、それは若い頃の一時点で
結論がでるほど簡単な選択ではないように思える。
経験によっても条件は変わるし、分野が違えば適性も異なるだろう。

僕は昔から数学の研究者を夢見ていた。
修士の時に自分に数学の研究者は無理だと気づいて金融機関に就職。
その後、分野を変えて再び大学に戻ってきたが、
アカデミックが本当に向いているのかどうは今でも全く自信がない。
だめだったらもう一度別の道を選ぶことになるが、
その時はその時で18歳で大学に入学した時のように
また新しい気持ちで頑張りたいと思う。
高い給料はもらえないかも知れないが、
日本でも大学一年生は貧乏でもたいてい幸せだろう。
W大M校の私の同期(PhD)は10人ちょっとしかいないが
卒業から1~2年のうちに
一人は既にアカデミックから民間に転進し、
一人は既に民間からアカデミックに戻ってきた。
一人目はPhDを二つ持っており企業への就職は少なくとも2回目だ。
二人目は大学院に入る前にもウォール街でエンジニアの経験がある。

しかし日本は、そういう「自由な生き方」が依然として
非常に難しい場所のように思える。

博士修了者なりポスドク全員を教授にする必要は全くない。
しかし、日本は今、限られた人材資源の潜在能力を
最大限に生かせる仕組みをそれぞれの立場の人が
真剣に考えるべき時代だ。


テーマ : 仕事
ジャンル : 就職・お仕事

米国の大学のティーチング・アシスタント(シップ)について -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今日はTA(ティーチング・アシスタント)との打ち合わせのため、
今年初めて出勤した。そこで、今日はTAについて書いておきたい。

1.TAの仕事

統計学科や数学科で多いのは、
演習の授業を週2~4回(1回1時間程度)教えるというものだ。
アメリカの大学のコースは週に2~3回の講義があり、
問題演習をやるクラスがそれに付随していることが多い。

演習クラスのほかに、小テストの採点、宿題の採点、学生の質問係
などをやることになるのが普通だ。

2.TAの労働環境(公式)

超一流私立を除くほとんどの大学では、
理論分野や人文系などお金にならない分野の大学院生は
学費や生活費をカバーするためにTAをやることになる。
通常、学生ビザ(F-1)での就労は週20時間までに制限されているので、
TAの契約は週15時間とか20時間のことが多い。

アメリカの大学院は、
きちんとしたコースを3つとれば自由時間はあまり残らないので、
これにプラスして週15~20時間の労働というのはかなりの
負担になる。

3.TAの労働環境(実質)

資金力に余裕がある大学では、TAの労働負担は契約よりも軽く
その分の時間をコースワークなり研究なりに割くことができる。
そして、そうした時間的余裕の差は、研究内容や就職に大きく
影響を及ぼすことになる。
もちろん大学院を待遇だけで決めるわけにはいかないが、
待遇も大事な側面だということは大学院選びの際に
理解しておく必要がある。

私がいたW大M校はTAの負担が重いことで悪名高かった。
週20時間の契約に対して、平均的なTAの労働時間は
15時間(±5時間)程度であったと思う。
私の大学院時代は、TAの代わりに統計解析の下請けを
した期間も長かったが平均すれば時間的な負担は同程度であった。

もっとも、TAをやっている大学院生の生活はタイトなので、
実質の労働時間が契約を超えるようなら
しかるべき担当者に相談すべきである。
伝統的な日本人の労働観(笑)に基づいて、
サービス残業をしていたのでは身を滅ぼす。

4.TAの役割

あくまで講義に沿った形で、学生の理解を深めるということが大事だ。
しかし、一連の内容を複数の人で教えるという形式が本当に
望ましいのかは私には疑問
ではある。

アメリカの学部では、少人数クラスというのが大学評価の重要な指標に
なるので、少人数の演習クラスをにしてTAに持たせて解決!
という弥縫策としての側面も否定できない、と個人的には思う。

また、講師に比べれば学生に近いので、
より細かい質問に答えるのも役割の一つだろう。

5.TAの使い方

TAを使う側としては、優しさ7割、厳しさ3割で接するという感じだろう。

TAはフルタイムの労働者でないので、
あまり働かせすぎるのは大学院の利益にも反する。
一方で、あくまでコースの方針は守らせる必要がある。

以前私についたTAの中には、
講義と違う定義を使ってで演習の授業をし、
期限前の宿題の答えをそのまま演習の授業で黒板に書き、
講師の依頼を自分の都合で断る、というTAもいて参った。
あくまで個人的な意見だが、某国出身のTAに問題のある人が
多いと思うのは私だけだろうか。

6.TAと学内政治

権力のある教授が勝手にTAを使ってしまい他の教員に
TAが割り当てられないという学内政治的な問題もあるようだ。
またTAのマッチングにもいろいろな人間関係が渦巻いていそうだ。

7.TAの採用

TAを雇うために大学から配分されるお金は、
学科が院生を確保するための重要な資金である。
そのため、通常は学科内の人の雇用が最優先される。
稀に、人数不足で他学科の院生が雇われることがある。

また、最低限として英語のテストスコア
(今なら TOEFL Speaking スコアだろう)が要求される。
私がなった時は学科いい加減でチェックしていなかったように思えたが、
そういうところは段々厳しくなっているだろう。
また、学費の高い私立大学や、学生の授業評価が厳しい西海岸の大学
などでは、英語の要求水準が高いように思う。


個人的には、一つの科目は一人で教えるのがベストだと思うが、
TAという制度が米国の研究大学と切り離せない
ものであることも確かである。


テーマ : 海外留学
ジャンル : 学校・教育

アメリカ大学院留学までのスケジュール -- このエントリーを含むはてなブックマーク

謹賀新年。

新年に目標を立てる方も多いと思うので、
今日はアメリカ大学院留学を目指す人のスケジュールについて書きたい。

周りに経験者がいないと留学のスケジュール感を掴むのは案外難しい。
例えば日本国内の大学入試で、高校3年の1月になってから、
「東大に入りたいのですけど」と真顔で予備校の窓口に
相談に来る人はいないだろう。
しかし留学に関しては情報不足からそういう事が起こりがちである。

全てのスケジュールは最終目標から逆算して考えるべきだ。

2012年9月から大学院に留学したいとしよう。
準備期間を考えると渡米は7~8月あたりだろう。
ビザの申請は6月くらいで、そのためには5月上旬くらいには
大使館の予約をした方が良い。
そのためには4月中に進学先を決めるのが理想的だ。

通常、一流校の願書締め切りは前年末だから11年12月だ。
合格発表は2012年の2月から4月上旬頃となる。

願書のフォームは11年10月くらいには公表されるはずなので
この時期には推薦状の具体的な依頼や、エッセイの執筆を
始めなくてはならない。

そのためには、11年10月までには標準テストの受験を終えておく
必要があるだろう。PhDプログラムなら、TOEFLとGRE、
MBAプログラムならTOEFLとGMATだ。
これらのテストは多岐選択式のコンピューターテストにも関わらず
結果が出るまでに一ヵ月半くらいかかることにも注意が必要だ。
分野によって提出が必要なGRE Subject testは
毎年、春と秋(4月と11月?)にあるので春に受けておいた方が理想的だ。

もしGRE (general test)のような時間のかかるテストに本気で
取り組むなら少なくとも11年5月くらいから準備が必要だろう。

すると、TOEFLの方はその前にスコアを出しておくべきだから、
その3~4ヶ月前の11年1月頃には準備を始めなければならない。
(もちろん英語力によって一般的な英語の勉強はもっと前に
始める必要があるだろう。)

2011年の初めは、12年秋からの留学を志すために
決して早すぎることはないタイミングである。

私も2003年の正月に留学準備を始めて、
2004年秋から留学した事を思い出す。

これから大学院留学を目指す方の成功をお祈りしております。


テーマ : 海外留学
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英語が上達したと思うのはどんな時か?~米国生活編 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日、日本で最初に卒業した大学のOB会で、
在米2年弱の駐在員の方から
「英語が上達したと思うのはどんな時か?」
という話題を振られた。

はっきり言って、
英語圏は英語を勉強するところではなく
英語で生活するところなので、
はっきりと英語の上達を意識する機会は少ない。
今、TOEFLを受けさせられたとして
スコアは予想もつかないが、おそらく
留学開始時と大差ないのではないかと思う。

そんななか、これまでの生活を振り返ってみると、
実践的な英語力が少し上達したと思うのは、
どうしても自分でやらなければいけないことをやった時
だ。
主な例をいくつか挙げてみる。

1.出願・入学手続き(留学前)

留学する多くの人にとって出願や入学手続きは、
初めて「きちんと」英語を理解しなければいけない経験だ。
難解なところは多くないが、間違えれば自分に跳ね返ってくる
という意味で、試験の英語とは異なるはじめの貴重な体験だといえる。

2.現地での生活のセットアップ

僕が留学した2004年当時、一番難関と言われたのが、
固定電話の開通手続きだ。留学生はSSN(社会保障番号)なしに
電話を引かなければならないので、電話でオペレーターと
延々と数十分話した後、証明のための書類を送ったりしなければ
ならなかった。
他にもアパートの契約、インターネットやテレビの契約、
銀行口座の開設(これは流石に楽勝だったが…)など
面倒なことはいろいろとある。

3.ホーム・パーティー

アメリカはホーム・パーティーが多い。
長い時間、複数の人と話題を見つけて話し続ける
というのは案外難しいものだ。

4.授業で発表

理論系の大学院の1年目はコア・コースと言われる
宿題のたくさん出る授業があり、あまり自分でoutput を
する時間はない。それが2年目になると、自分で準備をして
発表する機会も増えてくることになる。

5.TA(ティーチング・アシスタント)

大学院留学で、一番語学の勉強になるのはこれだろう。
TAは自分の言葉で教えなければならないし、
聞いている学生はTAが英語に不自由であろうと
理解しなければならない、という状況は会話の練習には最適だ。
僕は、リサーチアシスタントでコンサルティングをやった時期も
長かったがこれも英語の運用力を上げるのに一役買った。

6.学会での発表・会話

発表はよりフォーマルな場なので流暢に分かり易く話さなければならない。
また、学会は一日中誰かの話を聞いているわけで
ヒアリング能力の向上には持ってこいだ。
夜はみんなでディナーを食べるし、
ある学会では学生は相部屋だったので
起きてから寝るまで英語で過ごした。

7.就職活動

就職活動における語学のプレッシャーは半端ではない。
全ての人が自分の一挙手一投足に注目しており、
語学力がなければ即不採用が決まる。
質問の頻度や鋭さも普段の比ではないし、
現地の空港に着いてから帰りの飛行機に乗るまでの
1~3日間は、この上ない英語の訓練だ。

8.グラント申請

自分の英語力はライティングが一番ましだと思って
いたのだが、就職後、グラントを申請する段になって、
自分の文章の拙さに愕然とした。
初めに数学科で数年先輩にあたるトルコ人の助教から
サンプルをもらったのだが、文章の格調が全然違うのだ。
この時から、せめてライティングだけは教養のある
ネイティブに遜色ないレベルにまで高めたいと強く
思うようになった。

学部生にエッセイを提出させることがあるが、
残念ながら自分の文章力は、ボキャブラリーが少なめの
大学生と同じくらいのレベルだと思う。
しかも冠詞は、どうしても間違えることがある。

9.不動産購入

不動産は一例に過ぎないが、複雑な調べ物をすると、
いろいろな文章に触れなければならず、英語を読む
時間も増える。いろいろと調べることでボキャブラリーも
増えるのだろう。

例えば、引越しに伴って最近は家具をずいぶん見たが、
同じ茶色でも、Oak, Cherry, Walnut, Chocorate,
Espresso, Cappuccino, Java 自然と使い分けるようになる。
(ただし、この例は素材と色がごっちゃになっているものがある)。


簡潔に言えば
語学では、必要は成功の母、ということだろう。


外国語上達の一番の早道は国際恋愛をすることという意見があるのも
本能的に伝えることが必要になるからに違いない。
僕は残念ながら既婚者なので、
その不足分は最近、英語でぶつぶつしゃべっている娘に
でも期待することにしよう。


テーマ : 英語・英会話学習
ジャンル : 学校・教育

専攻分野による賃金格差が大きいアメリカ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本は相変わらず、就職した業界や企業によって賃金が決まって
しまう傾向が根強いが、アメリカは例え学部卒であっても
専門分野によって大きな給与格差が生じる。
アメリカに来ようと思う人は、自分の専門分野によって
どの程度の差が生まれるのかを考えておいた方が良い。

以下の表は、Payscale社が調査した学部卒でフルタイムで勤務している人の
2年後の給料、15年後の給料の中央値を出身学科別にまとめたものである。

Major Starting Salary Mid-career Salary
Petroleum Engineering  $93,000  $157,000
Aerospace Engineering  $59,400  $108,000
Chemical Engineering  $64,800  $108,000
Electrical Engineering  $60,800  $104,000
Nuclear Engineering  $63,900  $104,000
Applied Mathematics  $56,400  $101,000
Biomedical Engineering  $54,800  $101,000
Physics  $50,700  $99,600
Computer Engineering  $61,200  $99,500
Economics  $48,800  $97,800
Computer Science  $56,200  $97,700
Industrial Engineering  $58,200  $97,600
Mechanical Engineering  $58,300  $97,400
Building Construction  $52,900  $94,500
Materials Science & Engineering  $59,400  $93,600
Civil Engineering  $53,500  $93,400
Statistics  $50,000  $92,900
Finance  $47,500  $91,500
Software Engineering  $56,700  $91,300
Management Information Systems  $50,900  $90,300
Mathematics  $46,400  $88,300
Government  $41,500  $87,300
Information Systems  $49,300  $87,100
Construction Management  $50,400  $87,000
Environmental Engineering  $51,000  $85,500
Electrical Engineering Technology  $55,500  $85,300
Supply Chain Management  $49,400  $84,500
Mechanical Engineering Technology  $53,300  $84,300
Chemistry  $42,400  $83,700
Computer Information Systems  $48,300  $83,100
International Relations  $42,400  $83,000
Molecular Biology  $40,200  $82,900
Urban Planning  $41,600  $82,800
Industrial Design  $42,100  $82,300
Geology  $44,600  $82,200
Biochemistry  $39,800  $82,000
Political Science  $40,100  $81,700
Industrial Technology  $49,400  $81,500
Food Science  $48,500  $81,100
Information Technology  $49,600  $79,300
Architecture  $41,900  $78,400
Telecommunications  $40,000  $78,300
Film Production  $36,100  $77,800
Accounting  $44,600  $77,500
Marketing  $38,600  $77,300
Occupational Health and Safety  $52,300  $77,000
Civil Engineering Technology  $48,100  $75,600
International Business  $42,600  $73,700
Advertising  $37,800  $73,200
History  $38,500  $73,000
Philosophy  $39,100  $72,900
Biology  $38,400  $72,800
Microbiology  $40,600  $72,600
American Studies  $40,900  $72,500
Fashion Design  $37,700  $72,200
Communications  $38,200  $72,200
Environmental Science  $41,600  $71,600
Global & International Studies  $38,400  $71,400
Geography  $39,600  $71,200
Business  $41,100  $70,600
Public Administration  $39,000  $70,600
Landscape Architecture  $43,200  $70,300
Biotechnology  $47,500  $70,100
Zoology  $34,600  $68,800
Drama  $40,700  $68,300
Nursing  $52,700  $68,200
Health Sciences  $38,300  $68,100
Radio & Television  $39,200  $67,800
Hotel Management  $37,900  $67,600
English  $37,800  $67,500
Forestry  $37,000  $67,200
Journalism  $35,800  $66,600
Hospitality & Tourism  $36,200  $65,800
Literature  $37,500  $65,700
Public Health  $37,800  $65,700
Liberal Arts  $35,700  $63,900
Public Relations  $35,700  $63,400
Anthropology  $36,200  $62,900
Psychology  $35,300  $62,500
Animal Science  $34,600  $62,100
Sociology  $36,600  $62,100
Human Resources  $38,100  $61,900
Kinesiology  $34,400  $61,600
French  $39,600  $61,400
Multimedia & Web Design  $40,100  $61,200
Photography  $35,100  $61,200
Health Care Administration  $37,700  $60,800
Organizational Management  $41,500  $60,500
Fine Arts  $35,400  $60,300
Humanities  $38,600  $60,100
Sports Management  $37,300  $59,800
Agriculture  $42,300  $59,700
Theater  $35,300  $59,600
Fashion Merchandising  $35,000  $59,300
Medical Technology  $43,800  $59,300
Exercise Science  $32,800  $59,000
Spanish  $37,100  $58,200
Criminal Justice  $35,600  $58,000
Visual Communication  $36,800  $57,700
Social Science  $38,100  $57,200
Art History  $39,400  $57,100
Music  $36,700  $57,000
Graphic Design  $35,400  $56,800
Nutrition  $42,200  $56,700
Interior Design  $34,400  $56,600
Interdisciplinary Studies  $35,600  $55,700
Education  $35,100  $54,900
Art  $33,500  $54,800
Religious Studies  $34,700  $54,400
Dietetics  $40,400  $54,200
Special Education  $36,000  $53,800
Recreation & Leisure Studies  $33,300  $53,200
Theology  $34,700  $51,300
Paralegal Studies/Law  $35,100  $51,300
Horticulture  $35,000  $50,800
Culinary Arts  $35,900  $50,600
Athletic Training  $32,800  $45,700
Social Work  $31,800  $44,900
Elementary Education  $31,600  $44,400
Child and Family Studies  $29,500  $38,400


もっとも高いのは、石油工学、航空工学、化学工学を初めとした工学分野、
続いて高いのが数学を多用する応用数学、物理学、経済学などだ。
逆に低いのは、教育分野、芸術分野、そして神学などの趣味的分野などだ。

世の中に役立つということも重要であるが、
誰でもできる分野の賃金は低くdisciplineが求められる分野の
賃金が高いという傾向がアメリカでは特に顕著である。
Economics (48,800ドル)よりも Business (41,100ドル)の方が
賃金が安いのはそういう理由だろうし、Mathematics (46,400ドル)の
学部卒が、Elementary Education (31,600ドル)より有用だとは
個人的には思えない。学問に王道なしと昔から言われているが、
給料の高い仕事にも王道はないということだろう。

もっとも、医学部進学者の多い biology, biochemistry の賃金が
低いなど、学部卒のみに限定したことのセレクション・バイアス
のようなものは存在しているのかも知れない。

日本についての専攻分野別の賃金水準のデータは見つからなかったが、
実感としてここまで大きな格差はないように思われる。
大学で見につけた高い専門性を利益に結びつける仕組みを
持った企業が少ないのが原因だろう。
そして専門性から利益を引き出せる経営者が少ないのは
経営を行うジェネラリストの資質の問題であると同時に
経営センスのあるスペシャリストが少ないせいでもある。
ジェネラリストとスペシャリストで
責任をなすりつけあってもあまり建設的な議論にはならない。


テーマ : キャリアを考える
ジャンル : 就職・お仕事

アメリカへの留学生の所得税法上の区分 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

F, J, M, Q ビザを持つ学生は、連邦税制上5年間は非居住者として
扱われるが、その後は、Substantial Presence Test における条件を
満たせば、米国居住者扱いになる。
この6年目以降の学生は、いわば、
「例外の例外」で勘違いしやすいので注意する必要がある。

居住者扱いになると、social security tax の納税義務が生じたり
全世界所得の申告義務が生じたりと面倒になる反面、所得控除が多く
認められて税率が下がったり
アメリカの年金受給資格が発生したり
するので全体としてみれば、メリットの方が大きいと思われる。

米国非居住者扱いだと、TAのような額の小さい報酬であっても、
結構な額の税金を払わなけれない。「まだ住民としての権利を
認めてもらえないのだな」
と思ったのを思い出す。

昨年から米国の連邦税制上のステータスが米国居住者に変わったので、
遅ればせながら日本の預貯金も非居住者扱いとしてもらう(*1)ため
W-9フォームを出そうと思って日本のシティバンク銀行(*2)に書類を請求した。

そこに、US Person (米国居住者と似た概念)となるための条件の
解説があったのだが、この例外を見逃しており記述が間違っていた。

なお、留学生の多いW大M校の事務は流石に正しく処理していたが、
WS大の事務もこの点を間違って処理していたので
後から指摘して訂正してもらった。

こうした点は、IRS(歳入庁)のウェブサイトに行けば分かることなので
不明な点がある場合は確かめた方が良い。
また、日本語情報では、以前に紹介したとおり
米国公認会計士・若菜さんのサイトが非常にためになる。

ちなみにシティバンクのフォローも少ししておくと、
日本人が海外に住む場合はシティバンク銀行を使うといろいろ便利だ。
ステートメントも海外で受け取れるし、海外送金手数料も安い。
ほとんどのことをオンラインで行えるし、電話も24時間受け付けている。
やはり、そのあたりのノウハウは他の銀行より一枚上だと感じる。

(*1) 引き続き日本で源泉徴収を受け、アメリカでは二重課税を避けるために
税額控除を申請するということになるので実際の納税額は変わらない。

(*2) 変な名前だが銀行法では名称に「銀行」を
つけなければいけないらしい。


テーマ : アメリカ留学
ジャンル : 海外情報

F-1 OPT 期間中の海外旅行 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

6月に一時帰国することになった。
ビザの更新もないので必ず帰らなければ行けない理由もないのだが、
4年も帰っていないのでそろそろ帰っても色々な人に会うべき
頃だろうというのが主な理由だ。

娘も4歳半になったので、今年帰れば色々なことを忘れずに覚えられるだろう。
娘は日本でダンゴ虫と蝶を見るのを楽しみにしているようだ。

以下は、F-1 OPT 期間中に帰る人が携帯すべき書類のリストだ。

1) パスポート
米国再入国予定日の6ヵ月後まで有効なもの

2) 有効な F-1 ビザ

3) I-20
過去6ヵ月以内 のtravel signature が入っているもの。
I-20は卒業と共に失効するがそのI-20に有効なtravel signatureが
入っていれば良い。

4) EAD card
OPTに対して付与される移民局(USCIS)からの労働許可カードのこと。

5) 仕事のオファーのレター


ちなみにソースはミシガン大のウェブサイト
W大M校の留学生事務所にも確認した。
いずれも留学生の多い大学なので信頼して良いだろうが、
実際にアメリカに再入国する方は必ず自分で然るべき部署に確認して頂きたい。


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プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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