米国民はなぜトランプを選んだか?ー生活者の視点から -- このエントリーを含むはてなブックマーク

これを書き始めた時点でトランプ大統領決定の報はまだ出ていないが、もう書かずにはいられない。私は2004年に初めて米国に足を踏み入れてから今までの12年間、ウィスコンシンとミシガンにほぼ半分ずつ住んできた。そして、今回の大統領選ではこの2州での共和党の予想外の勝利が、大統領選の結果を大きく左右したと言っても過言ではない。

今回の選挙結果は米国の現実を突きつけ、私の米国に対する見方を変えた。もっとも心に刺さったのは、著名な経済学者クルーグマンの以下のツイートだ。佐々木俊尚氏の邦訳とともに引用したい。



実際のところ私が米国で過ごしたこれまでの12年間、英語が不自由で体の小さなアジア人の私に対して殆どのアメリカ人はとても友好的だった。農村部やブルーカラーの白人の怒りなど感じることなど皆無と言ってよかった。

最初に住んだウィスコンシン州のマディソン市は超リベラルな大学町で、外国人にはとても親切だし、大学内で共和党支持を公言する人など見た事がない。外国人留学生はほとんどがみな質素な生活をしていたこともあり、住民は留学生を暖かく見守る雰囲気があった。私たちが、家の中で日本語で過ごしている娘の事を案じてプリスクールに入れた際も、妻がボランティアをする代わりに授業料を大幅に安くしてくれたこともある。そんな時も、「全く英語を知らない娘が言葉を理解するようになりました」などと感謝の報告を書くと、職員は我が子のように喜んでくれたりした。

大学院を修了しデトロイトで職を得たときは少し状況が違っていたが、やはり国籍や人種のせいで差別されるような事は基本的に少なかった。デトロイトは1967年に人種問題の暴動があり人種的に複雑な街で、そのうえ土地が広いので、人種や所得、教育水準などによってかなり細かく住み分けがされている都市圏である。私は、注意深く人種構成や所得水準、教育水準などを調べいま住む街を選んだ。ここは、比較的リベラルで高収入のホワイトカラーの白人と、高学歴で移民一世のアジア人が多く住む街だ。大きな大学町ほどリベラルではないが、少なくとも外国人が嫌いな住民はあまり多くない。例えば、高収入ホワイトカラーだが外国人嫌いの白人が住む街というのはまた別にあるのである。結果として、少なくとも市の住民との間で外国人であることに起因するトラブルに巻き込まれることは基本的にない。

夏に日本に帰国した際に、かつて習っていた英語の先生と再会し差別の話をした。彼はMBA持ちの黒人ニューヨーカーで元々人種差別には敏感な方なのだが、私が「差別を感じることはほとんどない」と言うと、彼の中西部に対するステレオタイプともあいまってとても意外そうな反応をした。もう20年近くも日本に住んでいる彼に、外国人でさえオープンに受け入れる今のアメリカの状況を話すのを私は少し誇らしく感じた。

少し個人的な話になるが、働き始めて、自分のアメリカでの立ち位置に対する感覚は徐々に変わってきた。英語が不自由で米国で勉強させてもらってる外国人から、曲がりなりにも米国で必要とされている労働者になったという意識を持つようになった。確かに米国は今でも白人の知識階層が幅を利かせている国であらゆるところでリーダーシップを取っているけれども、おそらくその次に必要とされているのは、アジアや旧ソ連、東欧諸国などからくる外国人や高度移民である。いまやグーグルやマイクロソフトのCEOですらインド系だし、大学教員のかなりの割合が中国人だ。パキスタン人の医師やフィリピン人の看護師も大量に流入している。高度移民は、実際、多くの白人アメリカ人よりも高い給料を貰い、良い暮らしをしている。私の住む市では高級スーパーのホールフーズで買い物をするインド人が凄い勢いで増えているし、外国人や移民の多くが高級ドイツ車やレクサスを乗り回す。いまや市内の高級住宅の買い手のほとんどは、中華系とインド系だ。多くの子供は米国籍か少なくとも永住権を持ち、おしなべて成績優秀だ。アジア系米国人は、ハーバード大の入学選考がアジア人を差別しているとして裁判を起こしている。

私にとっては、21世紀のアメリカではそういう状況が当たり前なのだと思うようになっていた。しかし、そうではなかったのだ。

今回のミシガンの選挙は、知識階層の多く住む地域と黒人が大半のデトロイトでは引き続き大多数が民主党を支持したが、変わったのは面積で大多数を占めるそれ以外の地域だ。白人の工場労働者や農業従事者がほとんどの地域である。これらの地域では4年前の選挙に比べ、圧倒的に民主党支持が減っている。クルーグマンが指摘するように、やはり田舎に住む白人の怒りは本物なのだろう。

大統領選で選挙区ごとの投票結果を見ると、いつも面積では圧倒的に共和党が勝利する。支持者の数ではほぼ半々だが、民主党は大都市という「点」、共和党はそれ以外の「面」を支配する。私が見て来たアメリカは所詮、数々の「点」とせいぜいそれを結ぶ「線」でしかなかったのだ。

米国中西部というのは広大な土地があるので田舎に住む人口が思いのほか多い。例えば、ウィスコンシン州の人口は580万人ほどだが、周辺部まで含めても最大都市圏のミルウォーキーに150万人(市内は60万)、州都のマディソン都市圏に50万人(市内24万)ほどである。それ以外は、かなり小さい都市や農村に住んでいる。おそらく、両海岸の大都市に住む米国人でさえ、ウィスコンシンの中でもド田舎に400万人近く住んでいるということは想像しがたいのではないか。

私も、「面」としてのアメリカに立ち寄ることが全くない訳ではない。旅行で州内の小さな観光地を訪れたり、別の都市を訪れる際に小さな町に休憩で立ち寄ることがある。そこには普段見ない人達が生活している。いや「おそらく生活しているはずだ」という言うべきかも知れない。街は閑散としていて、あまり人気(ひとけ)はない。1960年以前に建ったと思われる痛んだ家や古いアメ車、街の中心部にある昔ながらの地元の小さな商店街が目に入る。貧しい生活しか想像できない。東京からの旅行者が、国内の貧しい過疎地域の住宅地とか中国や東南アジアの田舎の風景を見たときの感覚に近いと思う。車を降りることはなるべく避けるが、あるとすれば、ガソリンスタンドか昼食に困ったときに入るSUBWAYのフランチャイズ店だ。店員は逆に親切だったりすることも多い。それが米国の田舎流のホスピタリティだし、普段外国人と直接の利害対立を感じないせいもあるだろう。しかし、グローバル化や一向に改善しない暮らしに対して不満を持っていないかといま改めて考えれば、そうではないのだろう。

ともかく、1年のうちに数回しか体験しない「面」としてのアメリカを自分はあまりに軽く見過ぎていたと思う。

幸い、トランプ氏はアジア系を中心とする高度移民の問題をそれほど先鋭化させているわけではない。しかし投票結果を見るに、白人低所得者層の怒りとその影響力は世論に敏感であるはずのマスコミや政治家でさえも想像できなかったほど大きく、その一部は確実に私たちにも向けられている。その現実を重く受け止めてこれからの4年間を過ごしたい。

それでも4年後に2016年の選挙はグローバル化の中の一時的な揺り戻しだったのだと振り返られることを願っている。


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海外在住者の里帰り出産は泥棒と同じなのか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

投稿者の釣りに全国の保守派が全力でマジレスしてくれる人気サイト、発狂小町じゃなくて発言小町で海外在住者の里帰り出産が叩かれている。


投稿内容は以下の通りだ。(私の投稿ではない。)

海外からの里帰り出産。健康保険に加入するなと言われました

現在40歳、海外在住中です。今秋里帰り出産を予定しています。(諸事情により現地での出産は考えておりません)

先日、実家から「里帰り出産はいいけど、国民健康保険に加入しないでね。日本に迷惑だから自費でがんばってね」と言われました。里帰りは半年程度を予定しており、期間が長いため国民健康保険に加入するつもりでした。正直なところ想定外の出費です。

皆様にお伺いしたいのは
1健康保険無しで妊娠出産した場合、入院前の検診や検査の費用はいくらぐらい見積もっておけばいいのでしょうか

2出産後の検診や予防接種も自費負担になると思います。いくらぐらいかかるのでしょうか。

3日本の迷惑になるとは分かっていながらも、実はできれば健康保険に加入したいのですが、何か実家を説得できる方法はないでしょうか。同じような経験をされた方がいらっしゃっいましたら、お話をお聞かせください。

よろしくお願いします。


回答の中には肯定的なものも多くあるが、案の定、多くの回答が海外からの里帰り出産を激しく叩いている。「ふだん保険料を払っていない者が治療や出産目的で国保に加入するのはずるい」というのがその主な理由だ(注1)。

まずはトップバッターから。

海外在住で税金すら払ってない人が国民保険に入れるんですか????
海外在住で国民年金も払ってないのに???
戸籍があれば、住んでなくて税金払ってなくても国民なの???


いきなりカウンターパンチ。国外に住んで日本に税金も年金も払ってないと国民とは言えないらしい。国外に住んでると税金の恩恵も年金の受給もないからプラスマイナスゼロのはずだが、「国から出たら非国民!」

次の意見。

今、日本政府は借金で首が回らない状態です。
トピ主さんが保険に加入し、保険から出してもらうお金は、将来への借金なんですよ。
そして、それを返していくのが、今、日本にいる子供達です。(中略)
つまり、トピ主さんは恩恵だけ受け、その被害を被るのは、
現在、日本にいる人たちなんですよ。


日本人の次世代が生まれないと国の借金返せないんだけど。
そもそも、次世代が生まれないとあなたの年金もないよ?

はい、次。

国保は市役所で加入を断られましたよ。
「あなたのように、帰国時だけ都合よく使われるのは迷惑です。
これは日本在住の人のためのものですから、加入は認めません」と
はっきり言われましたし、私もその時反省しましたね。


出た!「お上が言ってるから正しい」という意見。この人は市役所で
「あなたみたいに低所得だと納税額が少なくて自治体に迷惑なので死んでくれませんか?」
って言われたらその場で切腹するのだろうか?

次は、すごく日本っぽいやつ。

問題は、親御さんが、それを潔しとしていない。
もし後ろ指を指されたら、立場が辛いものになると考えているのでしょう。


子供が里帰りして出産したら
「あのお宅、娘さんが海外から里帰り出産したのよ!私たちの税金でいやぁねえ!」
なんて立ち話なんかされちゃうのかね。ほんと嫌な国になっちゃったね、日本。そもそも被保険者期間がどのくらいかなんて他人には分からないと思うけど。それに税負担って昼間に立ち話してるおまいらじゃなくて、一部のお金持ちが主に負担してるんじゃないの?

最後は、専門家もどきの意見。

国保関係の仕事をしていたものです。
そもそも国保の制度はみんなが普段から
保険料を払っているから成り立っている制度です。
一時帰国の時だけ恩恵を受けるというのは制度の趣旨とは反しますし、
不公平だと思います。


里帰り出産する人って今まで一度も日本に保険料納めてないんですかね?将来もずっと納めない?
仮に日本に20年以上保険料納めないと出産費用がペイしない計算だったら、40年しか住まない人が3人子供産んだ時も不公平ですよね?そんなに公平にしたいなら国保の制度自体やめた方がいいんじゃないの?

以上の様に批判派の人達はいまいち理屈が通っていないものの、とても狭量であることだけはよく分かる。


さて、ネトウヨの意見に突っ込むのはこのくらいにして
「実際のところ、海外から里帰り出産の保険ってどうなってるの?」
と疑問に思う方もいると思うので、少し実情を書いて行きたい。
一口に海外からの里帰り出産と言っても、いくつかのケースに分けられる。

まず、駐在員の奥様方などが里帰り出産するような場合は、日本の会社の健康保険に入っていることがほとんどなので海外に住んでいることは国や自治体の負担と関係がない。

次に、留学や現地での仕事など自らの意思で海外に出ている人の中にも、日本に住民票を置いて国民年金や国保に加入したままにしている人もいる。国内所得がないので保険料は安めだが、正式にずっと加入している以上、文句を言われる筋合いはないだろう。

問題は、日本の非居住者だが出産のために一時帰国したというケースだ。国保に加入するには住民票を入れなければならないが、1年未満の滞在予定の場合には自治体が住民登録を断ることができる。これは自治体が保険金負担を防ぐためだ。従って里帰り出産が1年未満なら自費で出産しろということになる。しかし、実際には健康保険がなければ出産する病院を探すのも難しいし、難産になった場合に費用が青天井に膨らむ可能性もある。したがって実態としては、海外で加入している保険を使う人を除き、多くの人が再出国の予定を告げずに住民登録をして国保に入っていると考えられる。

要するに、実態は本人が入りたければ入れるという状態である。自治体が住民登録を断るとは言っても、単に正直が馬鹿をみる状態を作って何となく仕事をした気分になっているだけなのだ。本当に断りたいなら国保加入から1年経ってから出産一時金や保険金を支給する制度にすればよいのに、要するに誰も真面目に考えていないのである。

日本人であれば誰でも国保に加入できることは分かったが、それではこのパターンの里帰り出産は、経済的、倫理的に問題があるのだろうか。結論から書けば、問題はほぼ見当たらない。経済面、倫理面に分けて見てみよう。

まず経済面を見ていくと、里帰り出産が「日本生まれ日本育ち」に比べて国の財政にとって負担が大きいのかどうかは疑わしい。

例えば、出産半年で海外に引っ越し3年経って帰国した場合、日本にいれば支給されるその間の児童手当だけで51万円となり、出産費用に匹敵する。更には保育園の公的助成、また学齢期になれば公教育に少なくとも数百万円の公費が使われている計算になる。ちなみに、在外子女に国から支給されるのは教科書だけだ。海外で育った子のうち3人に1人でも大きくなってから帰国すれば日本にとってはかなり良い人的投資になる。

グローバル人材とやらも、TOEIC800点超の一流大卒が採れるような大手企業を除けば使い物になるのは帰国子女くらいであることも付け加えておこう。

次に倫理面だが、そもそも里帰り出産が制度の悪用目的と考えるには無理がある。

日本非居住者として海外で生活している人は現地で税金を納め各種保険や年金に加入している。出産も大抵の場合はその保険でカバーされる。それを使わずにわざわざ日本で国保に加入して出産しても、個人としては別に得しない。

出産は一人で全部完結させることはできない。わざわざ日本に帰って出産するのは、親族のサポートとか、言語環境とか、医療水準とかの問題であって、国保の良いところ取りをしたいから、というのは単なる言いがかりだろう。


このように真面目に考えていくと、海外在住者の里帰り出産を叩くのは単なるネトウヨの妄想であることが分かった。日本へ一時帰国しての出産を考えている人は、堂々と2人でも3人でも、日本の公的負担で元気な子供を産んでいただきたい。


(注1)正確に言えば通常の出産であれば国保に加入していても保険適用はないのだが、出産一時金という形で実質的に費用の大半が支払われるし、帝王切開などで多額の医療費が生じた場合は保険が適用される。


大学入試対策の労力はペイするのか?ー米国のデータから試算 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

「一流大学を卒業しても必ずしも豊かな人生を送れるとは限らない」
との意見を頂いたので、米国の大学受験対策の費用対効果を推定してみよう。

米国は教育投資収益のデータ収集が日本に比べてとても進んでいる。
リンクは、Pay Scaleがまとめた大学進学の教育投資に対する卒業後20年間の
高卒に対する超過収益である。

地域によって物価や賃金水準が違うのでマサチューセッツ州を例に取って、
授業料や寮費を差し引いた純収益を比べてみると次のようになる。

マサチューセッツ大アマースト校(州立トップ校):33万4千ドル
ハーバード大:41万9千ドル
マサチューセッツ工科大:57万4千ドル

ハーバード大を卒業しても、アマースト校を出るよりも
20年で8万5千ドルしか多く稼ぐ事ができない。
この差は人々が想像するよりもはるかに小さいのではないだろうか。
しかもこの差は、ハーバード大に入る子が元々優秀であったり、
家族が強いコネを持っていたり、という点を考慮すれば、
むしろ若干過大評価されていると考える方が自然であろう。

この差を受験準備にかかる時間で割ってみよう。
仮にハーバード大に入るために高校の最初の3年間で
毎日3時間多く勉強や課外活動に使う必要があるとするなら、
合計で約3300時間を投資していることになる。
一時間当たりに直すと26ドルほどだ。
マクドナルドで小遣い稼ぎをするよりはマシかも知れないが、
個人的には、前途有為な少年少女が貴重な青春期に
いわば「残業」して稼ぐ額としては案外少ないのではないかとも思う。
前提を少し変えて、毎日2時間の投資で済んだとしても
一時間当たり39ドルにしかならない。

一方、マサチューセッツ工科大に行くと、
ハーバード対比で超過収益は15万5千ドルとなる。
人気やブランド力、入学難易度ではハーバード大の方がやや上なので、
これは主に専攻分野の差で説明される。
科学工学分野の卒業生の年収は、社会科学や人文科学、
美術などの専攻の卒業生に比べて高いからだ。
ハーバードでは科学・工学を専攻する学部生は約4割だが
MITではほとんどの学生が科学・工学を専攻する。
この60%の差が15万5千ドルの所得差に繋がるというわけだ。
科学工学分野を学ぶ高校生が、
仮に1日の勉強時間の過半、5時間程度を数学、物理、化学などに
振り向ける必要があるとしてみよう。
これは3年間で5500時間になるので、
15万5千ドルを60%で割り、更に5500で割ると1時間当たり47ドルとなる。
この金額は「残業代」ではなく、
文学や歴史の代わりに数学や物理を1時間勉強する時の報酬だと考えればいい。
この報酬が多いか少ないかは個人の好みによるだろうが、
これらの分野に少しでも興味がある学生なら
かなり魅力的に映るかも知れない。

ラフにまとめると、いくつかの前提の下、米国の高校生は
国語や社会、外国語を勉強すれば追加1時間あたり26ドル、
数学や物理、化学を勉強すれば追加1時間あたり26ドル+47ドルで73ドル
の報酬が得られるのと同じという試算が可能ということになる。

勉強の付加価値はそれなりに高いが、驚くほどの金額ではない。
誰もが一流大学を目指す必要はなく、
あくまで個人の価値観に沿って判断する方が人生の満足度を高めるのではないだろうか。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

一流大を目指すアメリカの高校生の生活 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

公立学校の学年末も近づき娘の小学校も半日授業だったので、
大学に連れて行って私がオフィスで打ち合わせをしている間、隣りで本を読ませていた。

打ち合わせをした相手は、
エンジニアリングスクールの助教授でアジア系アメリカ人の女性だ。
地元出身のようで、ミシガン大で学士、修士、博士を取って
スタンフォードでポスドクをした後、
うちの大学のテニュアトラックにのって現在に至る。

1時間ほど打ち合わせをした後、
ミシガン大に行きたいと言う娘が興味を持つかと思い、
「何か娘にアドバイスはある?」と聞いてみた。

「まだ小学生だからあまり気にすることはないけれど」
と前置きしたあと、彼女が始めに言ったのは予想通り
「高校の成績と標準テスト(SATかACT)はきちんと高いスコアを出しておいた方がいい」
ということだった。
州立大学は入学選考に一流私立ほどのリソースを割けないし公平性も重視される。
だから成績とテストスコアが重要であるというのはよく言われていることである。

しかしその後に彼女が話していた事はちょっと私の想像を超えていた。
結論から書けば、
「あとは課外活動とかいろいろあるけど時間もかかるから一生懸命になりすぎないで」
ということだ。
しかしそれは、彼女自身が高校生の時には必死に色々やり過ぎた、
という思いからのアドバイスだそうだ。
楽器やスポーツをいくつも掛け持ちし、ボランティアをして、
ナショナル・オーナーズ・ソサエティ
(勉強も社会奉仕もしてリーダーシップのある模範的高校生を認定する機関)
にも入って・・・、と必死で大学入学のために準備をしたらしい。
大体、午後10時まで学校で様々な課外活動をし、家に帰ってから午前2時まで勉強。
午前5時には起きて、朝練に行くという生活だったらしい。
さすがに大学入学後に一時燃え尽きてしまっていたという。
極端な友人の中には、自分の履歴書をよく見せようと運動部を3つ掛け持ち
している人もいたという。

米国の大学入学選考は holistic approach と呼ばれ
学力だけでなく総合的に人物を評価する。
一部ではそれが素晴らしい事のように言われるが、
一流大に行くことを切望する高校生の生活スケジュールは上のように殺人的なものになる。
一方で学力だけに力を入れる訳ではないので、
そこまでやっても学力では東大生の足下にも及ばない学生がたくさんいるのである。
こうした選考方法が望ましいのかどうかは、賛否両論があるだろう。
少なくとも、日本の大学入試を改革する際には
日本の将来を担う高校生たちにどんな生活を送って欲しいかという視点で
考えることが大切であるように思う。

彼女はアカデミアに進む選択をした今では、
「高校生のうちからそんなに殺人的なスケジュールで生活を送る必要はない」
という結論に達している。
なんでもこなした彼女の人間的な魅力は、
数学をやる以外は家でゴロゴロしてドラマとか見ていた私よりも上なのかも知れないが、
別にそれはキャリアに必須なことではない。

話が一段落して、
「ミシガン大には実家から通ったの?」
とたずねると
「最初の2年は実家からその後はアパートを借りた」
と答えたので、
「親は近くにいると安心だろうね」
と同意すると、ぽつりと
「私はボストンに行きたかったんだけどね」
と言った。
きっと、どうしてもハーバードかMITに入りたかったが、
あれだけやっても入れなかったか奨学金が下りなかったということなのだろう。
確かにそれだけの難関校を目指していたのであれば、その高校生活もうなづける。

現在、米国の大学人気トップ5は
ハーバード、イェール、プリンストン、スタンフォード、MITの5校と言われ、
「HYPSM」などと略される。
入学定員の合計は約7200名で約400万人いる米国の18歳人口の0.18%程度だ。
日本の18歳人口(約120万人)に換算するとわずか2160名となる。
日本では東大と国立医学部の定員の合計はちょうど8千人くらいなので、
HYPSMは、その約4分の1の狭き門だ。
そこを目指す高校生は、きっと上に書いたような超多忙な高校生活を送っているのだろう。

日本人も米国人も一流大学のブランドは大好きだが
そこを目指す高校生も子供を入学させたい保護者も、
大学入試にそこまでのエネルギーを使う価値があるのかどうか
よく考えてから挑戦した方が良いのではないかと思う。


テーマ : 大学
ジャンル : 学校・教育

飛び級かあるいはその逆か?〜米国の親達の計算 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

米国で子供を育てる多くの日本人が驚くことの一つは、近年、教育熱心な親の多くが子供を飛び級させるのではなく、逆に子供の学年を遅らせていることだ。米国では義務教育は5歳の年長(Kindergarten)の学年から始まるが、6歳になるまで待つケースがかなり頻繁に見られる。ウォールストリートジャーナルによると、全米で6%の保護者が子供にそうした選択をさせており、その割合は貧困地域で2%であるのに対して、富裕層の多いでは27%にも上る。富裕層の割合が高いのは、米国の高い保育料を1年間余計に出せるのは富裕層だけという側面もあるが、教育熱心な家庭が学年を遅らせているという側面も強い。

あいにくきちんとした統計を持ち合わせていないが、近年そうした傾向は強まっているように感じられる。40〜50歳前後の米国人に聞くと、優秀だったので飛び級したという例を多く聞くように感じられるからだ。

飛び級が grade acceleration とか grade-skipping と呼ばれるのに対し、学年を遅らせるのは米国では (academic) redshirting
と呼ばれる。Redshirtは、スポーツ選手が着るシャツのことで、大学スポーツなどにおいて大会出場のチャンスを増やすために学年を遅らせる戦略をとる人がいることに端を発しているようだ。

なぜ教育熱心な親は、子供の学年を遅らせるのだろうか?彼らの多くが主張することは、子供にリーダーシップとか他の子より秀でているという自信を身につけさせたいということである。リーダーシップをとった経験のような非認知能力が、子供の人生に長期間にわたって影響することは広く知られており、こうした主張にはある程度の説得力がある。

しかし、本格的な調査研究の結果は必ずしも redshirting に肯定的なものではない。入学を遅らせた子供達は、小学校段階においては(1年分早く成長してるので当然ながら)クラスメイト達よりも優れた成績を取る。また、リーダーシップのような能力に関しては、高校においてもそうした効果は認められるようだ。しかし、最終的な学力に対する影響は概ねゼロか逆にマイナスになるというものである。スポーツにおいても、出場機会が成長に繋がるような限られたケースでのみ効果が認められるということのようだ。

それでも、米国人の親達は redshirtingを諦め切れないようだ。「比較的最近のスタンフォード大学の研究者による研究によれば、確かに学力の点ではメリットは小さいかも知れないが、精神的な安定に対しては redshirting は大きく寄与している」と昨年のシアトルタイムズは伝えている。

そんな研究まで持ち出して、なぜ米国の親達は子供の学年を遅らせたいのか。恐らくそこには、有名大学入学を目指す親達の計算があるのだろう。米国では日本と異なり、大学に入るために浪人することは一般的ではなく、入学選考においては9年生〜11年生(日本の中3〜高2に相当)の成績や、高3時点でのテストスコア、それに加えて課外活動や部活動でのリーダーシップの経験などが重視される。「テストスコアを上げるために1年浪人しました」などという言い訳はアイビーリーグには通用しない。だから、逆に予め学年を遅らせておけば自分の子供が周りの子供達より年上なので有利になる、という計算なのだろう。

もしかすると、そうした作戦は個人レベルでは意味があるのかもしれない。実際、有名大学卒の肩書きは米国でもそれなりのブランド価値があるからだ。一方で、社会にとっては、才能に恵まれた子が緩い環境で1年間を無駄にすることは好ましくないように思える。また、能力があるのに勝手に学年を遅らせることは、教育現場に負荷をかけることにもなる。

米国の教育には問題が山積しているが、子供に選択肢を与えるという点で一見好ましく見えるこの制度も問題を孕んでいるようだ。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

アメリカ迷惑電話対策事情 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本でもアメリカでも迷惑電話が好きな人はいないだろうが、アメリカの迷惑電話の回数は極端に多い。ここでは主に家の電話の話をするが、携帯も同様だ。理由は色々とあるだろう。米国では、電話帳に自分の電話番号を載せないという選択をすることができるが、なんと電話会社から「載せないための手数料」を取られる。これは米国に引っ越して来た時にびっくりした。また、各種手続書類に電話番号を記入すると、グループ会社間でそれを共有されてしまい、色んな所から電話がかかってきてしまうということも多い。要するに、個人情報保護が日本ほど徹底していないのである。

電話の内容は様々だ。単なるセールス、教会や慈善団体の寄付のお願い、各種アンケートから、
「UPSで現金500万ドルを自宅に送りましたが届きましたか?」
などという訳の分からないものまである。ロボットで自動的にたくさんの家にかけてつながってからオペレーターを割り当てるものや、そもそも人を使っておらず自動音声で
「Congratulations! You got a free Bahama cruise!」
等と語りかけてくるものなどイラっとくるものも多い。

こうした迷惑電話を防ぐにはどうすれば良いのだろうか?

一応、アメリカにはアメリカ連邦取引委員会(FTC)の運営する Do not call registry というサービスがあり、テレマーケティング業者は、このリストに登録した消費者に電話をかけてはいけないことになっている。この仕組み、迷惑電話の80%をブロックできるという触れ込みなのだが、実効性はかなり微妙だ。私もこのリストには登録しているのだが、少なくとも2〜3日に一回はマーケティングの電話がかかってくる。

ブロック機能がついている家庭用電話機ものもあるが、私の持っている電話機は30件しか登録出来ないし、登録した番号からかかってきても一度は電話機が鳴ってしまう。

実は、私はOomaと言うインターネット電話サービスを使っているので、家庭用の電話料金は払っていない。正確に言えば、政府が課す手数料だけ払っているが、月に4ドル程度だ。Oomaは、月9.99ドルで迷惑電話をブロックできるサービスをやっているが、詳細が分からないし、少々高くて二の足を踏む。私はともかく、毎月かかるような費用が嫌いなのだ。スポーツクラブはとうの昔に辞めてしまったし、携帯電話は月3ドルのプリペイドだ。

そんなわけで、古典的なアプローチではあるが、コール・ブロッカーを買う事にした。少し調べたところ、家庭用電話に取り付ける売れ筋のコールブロッカーには2種類あって、一つはブラックリスト方式。迷惑な番号を自分で登録してブロックするもの(例えばこれ)。個別の番号もブロック出来るが、例えば、246−810で始まる全ての番号をブロックすることもできる。例えばフロリダ州オーランド(リゾート関係の迷惑電話が多い)をまとめてブロックしたりできて便利だ。ただし新しい迷惑電話をブロックできないのは心もとない。もう一つの方式は逆に、登録した番号の着信のみを受け付けるホワイトリスト形式だ(例えばこれ)。迷惑電話は基本的に100%ブロックできるが、今度は全ての電話番号を登録するのが面倒だ。

とりあえず、ブラックリスト方式のものを買って取り付けてみた。今の所、在宅中に迷惑電話を取ったことはないので、まあ機能していると言える。

もっとも、多くの人が、機械学習を使った優秀なスパムメールフィルターを利用している現状と比べて、このコールブロッカーの現状はまだまだとても原始的だ。スマホのアプリに関しても機械学習を使っているものは無いわけではないようだが、あまり普及しているようには感じられない(私が情弱だから見つけられないのだろうか)。特にネットワークと接続されない家庭用電話機に関しては、情報の便利な更新方法がないのかも知れない。程度問題だが、いたちごっこにもなるだろう。

しかし、迷惑電話を自動的に拒否出来るような仕組みはもう少し充実して欲しいものだ。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

高齢者がアメリカに住むのは大変だと実感した出来事 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今朝、シャワーを浴びた後で朝食を食べようと一階に下りると、妻が
「もう聞いてよ!朝から大変だったよ。」
と話しかけてきた。なになに?と思って話を聞いてみると、コンドミニアムの向かい側のユニットに住んでいるお年寄りの女性が膝を痛めて歩けなくなり、這って助けを求めに来たそうだ。彼女はずっと一人暮らしで、親戚や知人等が訪れてくるところも見た事がない。年齢は70歳前後だろうか。5年前に我々がコンドに越してきた頃はずいぶん元気そうだったが、2年ほど前に病気で入院した際にずいぶん痩せて近所を心配させていた。その後、病気からは回復して元気になったように見えたが、最近は体重が増えたせいか、膝を痛めたのだろう。

彼女は「運転はできるから、駐車場まで歩くのを手伝って欲しい。」と妻に頼んできた。距離は20〜30メートルくらいだろうか。私が手伝えれば多少は良かったのだが、たまたまシャワーを浴び始めたところだったので、妻は「今、夫はすぐには来れないので、私がやります。」と言って体を支えて何とか車まで連れて行った。途中でバランスを崩して一度倒れてしまい、妻はアザまでできてしまった。妻は妻で大変だったが、その女性も歩けない体で運転して病院まで行くのはかなりに大変だっただろう。無事に病院までたどり着いていれば、病院の車寄せから助けを呼んだのだろうと想像される。

実は彼女は、2〜3ヶ月ほど前にもどこかを痛めて歩けなくなったことがあり、救急車が来ていたことがある。意識はしっかりしていたし、助けがあれば何歩か歩くことはできたので、今回と同じような状況だったように見えた。何故今回は、救急車を呼ばなかったのだろうか?

その答えは、9割方明らかである。救急車を呼ぶのにお金がかかるからだ。そのコストは地域差や移動距離による違いはあるものの大雑把に言って、500〜1000ドルくらいと言われている。確かによほどのことがない限り、庶民が自腹で払おうと思える額ではない。

健康保険はないのだろうか。米国の65歳以上のお年寄りの多くは、国が提供するメディケアと呼ばれる保険に入っている。いわば、65歳以上限定の国民皆保険制度である。しかし、医療価格が日本の5倍とも7倍とも言われる米国では、メディケアの財政は急速に悪化しており、保険がカバーする範囲は最低限に抑えられている。救急車を呼んだ場合の自己負担は20%となっているようだが、保険が適用されるのは心臓発作を起こしたとか、大事故に遭って出血多量というように生死に関わる緊急の場合に限られる。

そう考えていくと向かいに住むその女性の状況は、大体想像がつく。数ヶ月前に膝を痛めて歩けなくなり救急車を呼んだ。入院して治療を受け家に帰ったが、後にその救急車の費用が全額自己負担になると知って仰天したのだろう。今回タクシーすら呼ばずに自分で運転していくことを選んだ事を考えると、かなり経済的に困窮しているのかも知れない。

彼女のような状況は決して珍しくなく、むしろ米国で一人暮らしをするお年寄りの典型的な姿だろう。経済レベルは中の下、下手をすれば中の中くらいなのかも知れない。古くて小さなコンドミニアムとはいえ持ち家があり、新車をリースし、元気だった4年前にはイタリア旅行に行く、と1週間あまり出かけていたこともある。物腰も柔らかく、そんなに貧しい生活を送ってきた人のようには見えない。

米国の医療制度に関しては、国民皆保険でないことが話題にされることが多いが、自由価格の制度のもとで医療費が異常に高騰した米国は、もはや皆保険が達成されただけでは、どうにもならないところまで来ているというのが実態なのだ。




米国のデビットカードを使って国外で現金引き出し -- このエントリーを含むはてなブックマーク

海外によく行く人にとっては現地通貨をどうやって手に入れるのが一番得か頭を悩ませることも多いだろう。空港や銀行で現地通貨に換えるのは簡単だが手数料は非常に高い。また、日本の金融機関が発行するデビットカードを海外のネットワークで利用する事もできるが、ほとんどの場合、3〜4%の為替手数料をとられる。

しかし、米国発行のデビットカードの場合は、うまく選ぶと海外(米国外)での現地通貨引き出しがほぼ手数料なしで行える。2年ほど前の記事のようだが、Nerd Wallet が主要な銀行ごとのATM引出手数料をまとめている。

この分野でもっとも定評のある Charles Schwab Bank を使うと、ATM手数料、為替手数料とも一切かからない。実際には、Visaがチャージする手数料を Schwabが負担しているということのようだ。同様に Fidelity Investments のデビットカードも手数料がかからないと報告されている(ただし、物品の購入には1%の為替手数料がかかる)。これら二つの金融機関はいずれも VisaのATMネットワーク(PLUS, STARS, Interlink等)を使っている。Capital One 360 もインターネットで口座を開いた顧客は手数料なしでATMから現地通貨を引き出せる。こちらは Mastercard のネットワークを使っている。

無料で使えるとは言っても、一日に下ろせる金額はそれほど大きくない点には注意が必要だ。デビットカードの規約次第だが、例えば私の持っているデビットカードの引き出し限度額は一日500ドルである。手数料が無料なのも、少額の現金が必要になった場合の付加的なサービスという位置づけだからなのだろう。

また、米国のデビットカードでも発行する金融機関によって手数料は大きく異なる。例えば、Chase、Citibank、Bank of America などおなじみの大手行のデビットカードでは、手数料は2.5〜5ドル+3%と日本の金融機関と大差ない。例えば、1ドル=120円の時に日本で1万2千円を引き出せば、代金の100ドルに加えて、ATM手数料として5ドル、為替手数料として100ドルの3%で3ドルかかるので、108ドルということになる。

海外に行く事が多い人は、海外での現地通貨引き出し手数料のかからない銀行口座を作っておくと、お得だろう。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

カナダと米国のレストランの圧倒的な差 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

以前、ウィスコンシンに住んでいた頃、質素な生活をしている米国人の友人に「米国のレストランで出る物はまずいね!」と言ったところ「それはお前が日本の味に慣れているからだろ」と言い返された事があるが、ニューヨークやカリフォルニア、高級リゾート地の有名レストランならともかく、米国中西部のレストランのレベルは非常に低いと自信を持って言える。その根拠の一つが、米国からカナダへの国境を跨いだだけで、レストランのレベルが段違いに上がることだ。ヒューロン湖の南端、ミシガン州ポートヒューロン(米国側)とオンタリオ州サーニア(カナダ側) の間には橋がかかっているが、その両側の安いレストランを比べただけでも明らかに差があるほどだ。

そんな訳で、年末にデトロイトからトロントへ家族でグルメツアーに行ってきた。カナダは5回目。ちなみに、3泊4日の海外旅行にも拘らずエンゲル係数は55%だ。

初日、娘が楽しめそうな Ontario Science Centre に行った後、夜はホテルのレストランで簡単に済ませようかと思っていたのだが、案外高かったので急遽、ホテルの近くにある大衆的なイタリアンレストラン、Alice Fazooli's へ。シーフードのフェットチーネと、チキンのリゾット、トスカーナ風サラダ。妻と「どれも美味しいねえ」と言ったあと、「普通に調理したらこういう味になるよね…。米国のレストランって多分、ちゃんとしたシェフを置かずに、出来合いの食材で作るからああなるのかね。」と早速、中西部のレストランに対する不平が。ちなみに、パスタは米国のよく知らないレストランで頼んではいけないメニューの一つ。「パスタはイタリアの名産物だが茹で過ぎパスタは米国の名産物」と言って良いだろう。

二日目の昼は、蟹肉入りの塩味のヌードルが美味しいと日本語のガイドでも知られているいう中華街のSwatow Restaurantへ。このヌードルと雲呑麺、ローメイン(平麺で作ったソース焼きそば風の料理)を3人でシェア。蟹肉入りヌードルは確かに美味しかった。雲呑麺はごく普通のファストフードという感じ。

二日目の夜は、フォーシーズンズのいわば本店にあたるのFour Season's Toronto のメインダイニング、Cafe Boulud のフレンチ。フォーシーズンズホテル内ということでお高くとまった感じかと思ったら、割とカジュアルな雰囲気。炙ったフォアグラを前菜に、野鳩のグリルをメインに注文。フォアグラは、表面は強火で焦がしてあり、中はトロトロ。付け合わせの野菜もスパイスで一つ一つ味が付けてあり、フォアグラの脂がしつこく感じられないように工夫してある。野鳩も部位によって、パイ生地の包み揚げとレアなローストの2種類の方法で調理してある。ミシガンではオニオンスープとサラダとステーキだけで同等以上の値段を取る店(Capital Grille とか)も多い。「米国のレストランに大金払うのは損!お金貯めて日本かカナダに行った方が良い」と再認識させられた晩であった。


三日目の昼は、パンとケーキの評判が高い Rahier でサンドイッチとケーキの昼食。まずサンドイッチのバゲットが美味しい。米国は、ベーグルの国なのでバゲットのようなパンであっても実際は中身の詰まった「バゲーグル」という感じなのでがっかりさせられるのだが、カナダでは今まで行ったどの都市でもまともなバゲットを売っている。具も強めのチーズと林檎という王道の組み合わせなのだが、米国のカフェで見る事は少ない感じがする。フランス風のサクサクのペイストリーも、米国だとほとんど手に入らないので貴重だ。ケーキや焼き菓子については、カナダが美味しいというよりは米国が変と言った方が正しいだろう。米国の甘過ぎて塩っぱ過ぎるケーキにうんざりしている人は国境を越えると良い。もっとも、ケーキのレベルはフランス語圏のケベック州の方が高いように感じられる。

三日目の夜は、ポルトガル料理のChiadoへ。前日の Cafe Boulud とは打って変わって重厚な雰囲気。シーフードがメインのレストランで、ポルトガルから空輸したと思われる魚介類を見せていろいろ紹介してくれた。月曜日で空いていたので、食材のロスが多くなってしまうのでは、と心配するほどである。結局、サーディンの前菜と、海老とロブスターのビスク、メインにはたこのグリルを注文。サーディンは、二匹出たのだが、一匹は生、一匹はグリルにしてもらった。生のサーディンは(当たり前と言えば当たり前だが)日本の美味しい寿司屋で出る鰯と同じ味だ。"It's so good!"と言った後に、ウエイターにそのように説明したら"Iwashi!"と言ってくれたのだが、後で娘に、「"so good"ってなんか普通だよね。そういう時は "significant" とか言わないと。」とダメ出しされて凹んだのだった。

最後の昼には、飲茶(dim sum)を食べに。カナダの特に英語圏内は、香港、台湾、中国本土などからの移民が非常に多く、中華パワーは絶大である。案内板なども、英仏中併記のものや仏語を除いた英中併記のものが目立つ。トロント市内の中華街にも有名店があるが、たまたま中華系人口の多いMarkhamのホテルに泊まったこともあり、新しくて小ぎれいなdim sumレストラン、Royal Teahouse へ。デトロイト周辺では Sh***** La がdim sum では評判が高いが、はっきり言って中華系人口の多いトロント周辺の料理のレベルとは比較にならない。

こうして、最後まで圧倒的なレベルの差を感じながら、カナダを後にしたのだった。米国人にとってのカナダは、東京にとっての埼玉みたいなところというイメージだが、文化の微妙な違いや移民政策の違いにより、レストランの質にここまでの差があるのは興味深い。

<今回訪れたレストラン(お勧め順): 店名、評価(5段階)、価格>
1. Chiado:    ☆☆☆☆☆ (D$100*)
2. Cafe Boulud:   ☆☆☆☆☆ (D$125*)
3. Royal Teahouse: ☆☆☆☆ (L$15)
4. Rahier: ☆☆☆☆ (L$15)
5. Alice Fazooli's:☆☆☆ (D$30)
6. Swatow: ☆☆☆ (L$10)
料金(カナダドル)は税•サービス料込み、大人一人あたり。
L=昼食、D=夕食、*=ワイン一人1杯含む。


駐在員の現地体験を活用できない日本の電機メーカー -- このエントリーを含むはてなブックマーク

月曜日の米国は、レーバーデーで休日。ちょうど、キッチンのオーブンと食器洗い乾燥機の調子が悪くなっていたところに、レーバーデー・セールで家電が安くなっていたので、実店舗を少し見た後、ネットで注文した。ちなみに両方とも米国メーカー製。AV機器では日本メーカーのものが同じ値段であれば買うようにしているが、白物家電は全くと言って良いほど日本製は見当たらない。

欧米の白物家電市場における日本メーカーのプレゼンスの無さは目を覆いたくなる程だ。金融市場ではおなじみの加藤出氏が、「欧米の白物家電市場に“姿”なし 韓国勢の後塵拝す日系メーカー」 と題して、ダイヤモンドオンラインによくまとまった記事をアップしている。

米国の白物家電市場は、米国メーカーと韓国メーカーの寡占市場となっていて、ここにHaier などの中国勢が低価格攻勢で殴り込みをかけている構図である。3000ドル前後の高級冷蔵庫が飛ぶように売れる米国の白物家電市場が、儲からないマーケットであるはずがない。なぜ、日本メーカーは、不戦敗を喫しているのだろうか。

その一番の理由が、加藤氏も述べているように、マーケットリサーチの不足である。米国の白物家電は、トレンドが非常に重視されており、内容が大して変わらない製品でも、トレンディーとされている商品に大きなプレミアムがつく市場だ。冷蔵庫で言えば、何の変哲もない大型冷蔵庫は400ドルで買えてしまうが、少しだけ大きくして、観音開きにして、ドアパネルをステンレススチールに換えただけで、3000ドルになってしまう。あるいは食器洗い機では、つい1年ほど前まで、操作パネルが扉の前面にあるか上の縁にあるか、というわずかな違いだけで数百ドルの違いがあった、というような不思議な市場なのである。

韓国のサムスン電子が、現地に莫大な数のマーケティングリサーチ要員を配置し、トレンドを掴んで成功しているという話は加藤氏の記事でも触れられている通りだ。一方の日本メーカーが不戦敗を喫した理由は、まさにその裏返しであろう。

私が住んでいるデトロイトの日本人社会は、自動車や、自動車部品、自動車向け電気製品の会社の駐在員が大半を占めている。そこにいて、非常に歯がゆく感じていることは、そうした日本メーカーからの駐在員やその家族が、現地で暮らす米国人と同じ暮らしをしておらず、その結果、得られる可能性のある現地の貴重な情報を、みすみす見逃してしまっているのではないかということだ。

一番問題だと思うのは、日本メーカーの日本人社員の殆どが家賃補助を受けて借家に住んでいることである。衣食に関する関心が比較的低い米国では、マイホームの取得が人々の経済活動や生活に与える影響が非常に大きい。家の値段そのものは安くても、広い家に置く電気製品や家具、機械類、おもちゃ、車などにはかなりのお金をかけるからだ。娘の家庭教師の家では、今日から3週間かけて家族総出でキッチンのリモデルをするらしい。マネジメント的な立場の駐在員に、実際に家を買わせて、こうした現地の生活を体験させないでおくのは、将来のビジネスチャンスにわざわざフタをしているようなものである。

米国では、中古不動産の売買が頻繁であり、不動産価格と賃料の比も小さいため、4〜5年住むのであれば、自宅を買うことは経済合理性に叶うことが多い。現地を去った後も賃貸に出せば資産として活用できる。しかし、近年、日本メーカーの多くが、日本国内勤務者との公平性確保のために、駐在員が現地での不動産の購入を禁止していると聞く。これは例えるなら、「公平性確保のために部活をやっていない中学生に午後6時まで勉強することを禁止する」というルールを作るのと同じくらい馬鹿らしいものだ。

実際に、自分で家を買い家電を揃えてみなくては分からないこと、というのは、たくさんあるように思う。外を走っている自動車ならともかく、電気製品や家具は家に入ってみなければ分からない。

例えば、私は古くて狭いコンドに住んでいるので、家電を探す時にいつもサイズに苦労する。例えば、コンロの上部に設置する電子レンジの設置スペースが狭い。電子レンジが普及する以前に作られた家だからだ。うちの回りの家も全てがそうなっているはずだが、このサイズに合う電子レンジを作っているメーカーはほとんどない。結局、Haier社のものしか見つからなかったのでそれを購入した。こうしたニッチな製品は、小さいメーカーや新規参入者には良い出発点になるかも知れない。

日本の電機メーカーは4Kテレビの開発に熱心だが、米国の大きな家のリビングルームに行って、画面の大きさと画面からの距離の比を測ったことがあるのだろうか。それと合わせて、米国人がパソコンの画面を見る時に異常に画面に近づく癖を考慮するなら、4Kが先に必要なのは、テレビではなくパソコン画面であることはすぐに分かるだろう。

こうした細かい洞察の一つ一つを、実際に社員や調査員が米国の大多数の人が持つような家に住んでみる事なしに、経営レベルまで上げられるとはとても思えない。

日本メーカーはこれまで、技術者を比較的安い賃金で日夜働かせて素晴らしい製品を作り、それを海外にも持って行って売ろうとしてきた。しかし、多くのライバルが現れた今、現地の生活に即した商品を作らなければ太刀打ちできない。そのためには、経営的な視点を持つ駐在員なり現地採用社員なりを、より現地の生活に馴染ませ、そこからの情報をマーケティングリサーチに活かす事が、今後の成功の鍵ではないだろうか。


関連記事
-- 日本メーカーは白物家電の北米市場で成功できるか (2012/10/11)


口コミ情報は日本にとってのビジネスチャンス? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

会社の職場環境や、マンションの住み心地、結婚式場の満足度など、今までいわば「セルサイド」の情報から知る事ができなかった情報を提供する口コミサイトが人気のようだ(参考記事)。インターネットビジネスでは概ね米国に遅れをとる日本だが、もしかすると口コミサイトのノウハウでは米国に先んじることができるかも知れない。

私が米国に来てカルチャーショックだったことはあまり多くないのだが、そのうちの一つが米国人が口コミを使わないことだった。10年前、私がはじめて米国に来たとき、米国人の独身中年女性のアパートに1ヶ月ほど部屋を借りた。その女性は家賃が1000ドルほどの3ベッドルームのアパートに常時2人の短期留学生を受け入れ、それぞれから月375ドルずつとって自分は安く住む代わりに、留学生の世話を焼くことを楽しみにしているような人であった。ある日、私が中古の自転車を買ってくると「ヘルメットを買った方が良いわね」というので、「どこか良い自転車屋さんはないですか?」と私が尋ねると、「ここに電話張があってね、たくさん自転車屋さんが載っているわよ。」と、とても親切そうに答えるのだ。もちろん、電話帳なりインターネットなりを使えば自転車屋が探せるのは知っているのだが、日本人が「どこか良い自転車屋さんはないですか?」と聞くときは、そういう情報ではなくて口コミ情報を探している。しかし、米国人にはそういった意識が希薄なようだ。日本が村社会で、米国が移民の国であることを考えると、そうした感覚の違いも納得がいく。


米国では、単に口コミの重要性が低いだけではなく、消費者が口コミ情報を伝える事も苦手であるように映る。米国の文化は相手を褒めることを基本としている上に、米国人は日本人ほど細かい点を気にしないことから、大して良いサービスでなくても、他の人に勧めてしまうのである。妻が親しくしていた娘の友達の母親は、親戚が全てミシガンにいるような典型的なミシガン人だった。妻が「良い歯医者はいないか」とか「きちんとした家の検査技師はいないか」など色々な相談をすると、その度に、彼女は自分や家族等が使った業者を紹介してくれるのだが、それが良かった試しがない。大したサービスでなくても、トラブルがなく、愛想の良い業者であれば、勧めてしまうのだろう。実際、米国のウェブサイトには「専門家以外が推薦する業者など何の意味もない」と言ったアドバイスはあちこちに見られる。

逆に米国人は、一線を越えて不愉快な体験をするとともかくそのサービスをこき下ろすようになる。日本には、バランスを取って両論を併記するという文化があるが、中立的な意見ほど貴重な口コミ情報にとって、それがプラスに働いているということもありそうだ。

米国ではサービスする側も、口コミや社会での評判をあまり重視していないように感じられる。私が今住んでいるデトロイトの郊外は、以前に住んでいた大学街に比べて人の出入りが少なく、人口5百万の大都市圏ながら村社会に近い。しかし、そこで重視されているのは、口コミのようなゆるやかな情報よりも直接的な人の繋がりのようだ。私が住んでいるコンドミニアムは築40年以上経っていることもあり、たびたび修理やリフォームの必要が生じる。管理組合が修理業者のリストを作っているが、依頼をしなければならない時は、まずコンドミニアムのオフィスに長くいる事務員にどの業者が良いかを聞きに行く。大規模なコンドであるため、それなりの情報が集まるようで、評判の良い業者を教えてくれるので、そこに電話をかける。その時にほとんど毎回、業者に聞かれるのが「誰かの紹介か?」という質問だ。「管理組合の推薦です」と答えるのだが、そうやって雇った業者にはこれまで一度もハズレがない。一方で、たまたま管理組合を通さずに使った業者は大抵良くないのである。元々、良い業者と悪い業者はあるのだと思うが、人と人との直接のつながりは、米国でも日本同様に重視されるということだろう。


米国に比べ日本社会で口コミが重視されるのは、村社会としての成り立ちによるところが大きい。一方で、インターネットはどんどん人々の距離を縮め、世界を一つの村社会にしてしまいつつある。日本のような村社会が培った口コミの利用が、ネットを通じて米国のような国でもこれから重要性を増すに違いない。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

オペレーションがダメ過ぎるバンカメ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

バンカメ(バンク・オブ・アメリカ)のクレジットカードを持っているのだが、
オペレーションが相変わらずダメすぎて頭にくる。

ずっと使ってないカードに、
利用$500までポイントが5倍になるキャンペーンが実施されたから、
いきなり$500使おうとしたところレジでエラー。
なんという自作自演ぶり。
そんなことされると、公衆の面前で、信用に問題のある貧困層だと思われるんだけど。
ボーナスというよりは嫌がらせキャンペーンのようだ。

その後、すぐにバンカメの詐欺検知システムから電話がかかってくるが、
3〜4コールくらいで切れる。そんなに早く取れないし。
数時間後にも電話がありまたすぐ切れる。
翌朝、3回目の電話でようやく出たが、
自動メッセージで、
「指定する電話番号にかけ直してXXXXXX(数字6桁)と入力しろ」
とのこと。勝手に電話をかけといて別の番号にかけ直せとは本当に謎だ。

仕方がないので電話番号にかけ直すと、
「ZIPコード(郵便番号)か、社会保障番号の下5桁を入力しろ」
との指示。
誰からかかって来たかも分からない電話に個人情報入力するのが、
危険なのがバンカメには分からないんだろうか。
まあZIPコードくらいなら、と仕方なく入力する。

次の質問で、4と5を間違えてプッシュしたところ、
エラーが出てオペレーターに自動的につながれるが、
中々出ないので取りあえず切ってかけ直す。すると、
「そのアクセスコード(前出のXXXXXX)は無効です。」
だと。

「オンラインでも確認可能」とメッセージが流れたので、
オンラインバンキングをチェックするが確認できず。
ちなみに、このIT時代にメールでの警告も来ない。

バンカメのオペレーションがダメなのは今に始まった事ではないが、
ここまでダメだと経営に影響が出ないのだろうか、
と他人事ながら心配してしまうレベルである。

米国の大手金融機関のオペレーションは、
AMEX >> CHASE > CITI >> Bank of America
という感じなので、
今回の様なくだらないことに巻き込まれたく無い人は、
金融機関選びを慎重にされると良いだろう。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

アメリカは住む都市によって経済的リスクが違います -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカに来て働こう!さてどの都市で?と考えた時に、
日本人がまず気にするのは、気候のこと、治安のこと、
町の雰囲気とかなんじゃないかと思う。

ウォールストリートやシリコンバレーに求人が集中している
ような分野の人なら考える必要がないけど、
例えば統計分野なんかでも求人は結構各地にばらけている。
もちろん過半数の大学ポストは僻地にあるし、
民間の求人もかなり各地にばらけている。

気候で選ぶのならカリフォルニアやフロリダ、
町の活気だったらニューヨーク、
治安だったらダコタとか?(笑)が良いかも知れない。

で、そんな楽しい空想に耽った後に、例えば、
実際にニューヨークで仕事のオファーもらって、
年俸7万ドルとか言われたりして、うーん家族で暮らして行けるのかな、
と今度はお金のことが気になりだす。
幸運にもインディアナ州あたりの田舎で年俸6万ドルのオファーも
もらったりして、実はこっちの方がお得なんじゃね?
と考えたりもする。

実際、米国に住んでいる限り、ハワイやアラスカを除けば
食費や光熱費なんかはどこに住んでも大して変わらないけど、
家賃や家の値段は都市によってかなり違う。
学生や駐在員なら家賃だけ比べてコストを計算すればいいが、
何年も働くなら買った方が安いかも、ということも検討しなければならない。

何年分の家賃を払えば家が買えるか(P/R ratio)、
というのは都市によってかなり違っていて、
中西部の田舎なら6倍くらいからあるが、
シリコンバレーとかだと30倍くらいしたりする(下表参照)。
もともと大都市の家賃は高いのに、更にこの倍率も高いとなると差は相当なものである。
ただこれは、必ずしもシリコンバレーが割高ということではなくて、
将来の値上がり期待の高い都市の不動産は割高に見えるという話だ。
成長期待の高い企業の株価が割高に見えるのと同じ理屈である。

じゃあ結局、割安で買えるけど不動産が上がらない都市と、
割高だけど不動産が上がりそうな都市ではどっちが得なの?
というのは興味深いので、
「2000年に買った家が13年間分の家賃込みで2013年にいくらになっているか?」
というのを計算して見ると、以下のようになった。

米国不動産価格

(*1) Case-Shiller 指数を使用。
(*2) CNN Money 調べ。正確なデータがないため、
89-03年の平均P/Rと13年のP/Rからいくつかの仮定を置いて
13年分の家賃を計算。

最高は3.1倍になったワシントンDCで、
最低は1.8倍にしかならなかったアトランタだが、
面白いのは、現在最も不動産が割安なデトロイトと、
最も割高なサンフランシスコの収益率が結果的にほぼ同じだったことだ。
(この間には、ITバブルの崩壊とGM、クライスラーの破綻があった。)
また最近13年間では、DC、ロス、ニューヨークといった大都市が
地下の上昇を背景に上位に入ったが、これはたまたまという側面も強い。
実際、ワシントンDCの住宅価格は1991年から2000年の9年間では
12%しか上がっていないのに対し、デトロイトでは72%、
ミネアポリスでは56%上がっていた。

つまり、成長期待の高い大都市(サンフランシスコ、ニューヨークとか)は、
現在割高な不動産価格と値上がり期待がバランスしていて
結局、得でも損でもないということ。
家賃を払う場合と違って、家を買う場合に大都市が損なのかどうかはよく分からない。

では個人にとって何が違うのかというと、それはリスクの大きさである。

例えば、10万ドル持っている人が家を買うとしよう。
デトロイト郊外で10万ドルの家を全額キャッシュで買って住むと、
価格が5割上下しても、5万ドルの損益しか出ない。
一方、カリフォルニアで50万ドルの家を買うには、
10万ドルを頭金にして40万ドル借りて買うことになる。
価格が5割上下すると、実に25万ドルの損益が出る。

投資理論的に考えれば、
カリフォルニアで家を買った人の方がたくさんリスクを取っているわけだから、
収益の期待値は高いはずだが、そういう事以前に、
住む場所を変えただけでリスクの大きさがこんなにも違う、
ということはとても重要に思える。
もちろん日本でも同様のことが起っているのだが、
一度買った家に一生住み続けるのが基本になっている日本と、
家を換金可能な資産と考える米国では、その重要度はかなり違う。

リスクというと、治安による凶悪犯罪のリスクなどに注目しがちだが、
確実に付いて回る経済的リスクの方が現実には重要なことが多い。
特に日本人にはリスク回避的な人が多いことを考えると、
勤務する都市を選べる人は、こうした経済的なリスクの違いも
考慮してみるべきだろう。



テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

バイリンガル教育と帰国時期 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

この7月でアメリカ生活も丸9年になり永住権も取得したが、
大学の教員という比較的転職の多い職に就いていることもあり、
どの時点で日本に帰国すると子供の教育はどうなるのか、ということをよく考える。
日本人家庭で、子供は生まれてからずっと、家では日本語、外では英語の生活を
していると想定すると、帰国時期によってその教育はどんな感じになるのだろうか。
個人差が大きいことは大前提として、
実際に見て来た例やバイリンガル研究の結果などを参考にしつつ、
独断と偏見で考えてみると、こんな感じになる。

小学校就学前に帰国:
英語はほとんど残らないと言われている。逆に言えば弊害もない。
ただし、私はこのパターンの子を知っているのだが、
帰国時(4〜5歳くらいだろうか)に兄弟で英語で話していたためか
あるいは、親や兄弟からの英語習得ノウハウの点で恵まれていたためか、
高校生になっても他の日本人の子よりは英語が得意であったようだ。

小1〜2で帰国:
帰国後の英語力の保持は相当困難と言われている。
発音や聞き取りが得意、簡単な会話ができるというレベルは維持できる可能性があるが、
それ以上はよほどの環境を整えないと忘れてしまうようだ。

小3〜4で帰国:
英語力は大人になるまである程度残ることが多いようだ。
特に発音や会話運用力では、大人になってから海外に来た人とは
明確な差があるように思う。

小5〜6で帰国:
帰国時年齢相当の十分な英語力を維持できることが多い。
ただし、大人になった時に年齢相応の英語を話すためには、
年齢相応の言い回しやボキャボラリーなどを補強する必要がある。
(英語に関しては、それ以上の年齢に関しても同様の傾向が当てはまる。)
なお、日本の中学入試を考えた場合、
小4途中以降で帰国すると一般枠での入試は準備が大変なイメージがある。
一方で帰国枠は少なく、また学校毎に帰国後1〜3年以内といった制限がある。

中学で帰国:
公立中に編入するか、私立中に編入するかという選択がある。
私立中への編入は募集が少ないため、あくまでケースバイケースだろう。
本人の学力や親の調査能力、地域次第だ。
兄妹とも超有名進学校に編入した人も知っているが特殊な例だろう。
高校入試は英語があるので中学入試よりは帰国生に有利だが、
中学で帰って来て国語の試験というのも辛いものがありそうだ。
帰国子女枠は中学よりは充実している印象がある。

高校途中で帰国:
高校への編入手続きで苦労することが多いようだ。
特に地方では受け入れ校が少ない。
こうした理由からか、子供が高校生の在外日本人駐在員家庭では単身赴任が多い。
義務教育ではないため、特に9月〜3月生まれの子の場合には、
学年の区切りの違いを理由に一学年遅れてしまう事もあるらしい。
ただしこれに関しては、海外での単位認定を早めてもらうよう交渉したり、
学年途中で編入したりといった色々な裏技もあるようである。

高卒後に日本の大学に進学:
9月〜3月生まれの場合は、よほど工夫しない限り1年遅れてしまう。
ただし、帰国子女の入学枠は大学が一番充実しているようである。
SATによる選考を導入している慶応大のボーダーラインは、
2400点満点のSAT I で1700点台(駿台調べ)とのことで、
米国での州立トップ校(日本の地方国立大レベル)の合格者平均が2000点前後、
州立2番手校(普通の大学)が1600〜1700点台ということを踏まえれば、
決して高くない点数のようだ。
なお、一般枠でも理系では多くの大学で国語や日本史の試験を回避できる。
むしろ、日本語の文章力をきちんと付けておく事の方が、
入学後は重要になってくるだろう。

こうして見ていくと、帰国年齢毎にメリット・デメリットがあることがわかる。
また、帰国後の英語力の維持は、本人と親、双方の努力に加え、
環境にも大きく左右されるだろう。
親がほとんど英語を話せず、外国人のほとんどいない日本の地方都市に住み、
子供は学校の英語の授業を受けるだけというケースと、
大都市圏に住んで日常的に外国人と接する機会があり、
親が英語のネイティブスピーカーを家庭教師に雇って英語力を維持させるのとでは、
全く結果が異なる可能性もある。

こう考えて行くと、
「帰国子女は英語が話せる」と一言では片付けられない、
様々なケースがあるということがお分かり頂けると思う。



テーマ : 子育て・教育
ジャンル : 学校・教育

日本人と違うアメリカ人のリスク感覚 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

娘の現地校の授業は、今日で終わって夏休みになる。
子供たちが「学校にゲーム機を持ってきたい!」と懇願した結果、
校長先生が、最後の日だけ持って来ていいことにします、と決めて、
今日は "electronics day"ということになった。
半日授業だが、最後の日なので休み時間も多めにあるらしい。

うちには、近所の銀行で景品としてもらった Kindle Fire があるので
娘は当然ながら「キンドルを持って行きたい!」と言い出したのだが、
私は「紛失の可能性があるのでダメ」と拒否した。
実は、故意か否かは別として、先日、
娘の弁当箱が学校で丸1日行方不明になったところのなのだ。
次の日には出てきたが、こうした事は珍しくないという。

しかも今日は半日授業であるため、学童保育で
希望者を募ってローラースケート場に行く遠足があり娘もそれに参加する。
慣例に従えば、児童が持って来たiPadやKindle、DSなどは
バックパックに入れられて、誰でも入れる校舎の廊下に長い時間
放置されることになる。
何か盗難防止措置を取るという説明は聞いていないし、
学校と学童保育では運営が別になっているのでその可能性はあまり高くない。

またキンドルは仕様上、アカウントと紐づけられているため、
万一盗難された場合には、私のクレジットカードアカウントから
ワンクリックで注文などもできてしまう。

日本人の私のリスク感覚からすると、そんな状況で子供に
そんなものを持たせて学校に行かせるというのはちょっと信じられない。

私が外にマックを持ち出すときは、常に肌身離さず持ち歩いている。
喫茶店のトイレに行くときも、財布とマックは必ず身に付けていく。
例外は、自分のクラスの複数の生徒が教室にいる時に教室を1、2分離れる時と、
大学の自分のオフィスに鍵をかけたときだけである。

しかし、米国人のリスク感覚は違うのだろう。

実際、いまいる喫茶店の隣の席の人は、
ノートPCをテーブルに放置したまま、しばらく戻って来ない。
散歩にでも行っているのだろうか。

同じように娘の同級生の大半も「たぶん大丈夫でしょ」というくらいの
軽い気持ちでタブレットを持って学校にくるのだろうと思う。

私が心配し過ぎなのか、娘の学校が楽観的すぎるのかの判断は難しいが、
様々な事件を見るにつけ、リスクに対する判断は
回りに左右されずにするのが賢いように思える。

感覚や文化の違いで楽しみが一つ減ってしまった娘がかわいそうな気もしたが、
今回は娘に我慢してもらうことにした。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

慢性的な財政問題を抱える米国の地方自治体 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ミシガン州では、2〜3月は固定資産税のための不動産評価の季節だ。
2月に市政府から固定資産税のための不動産評価額が送られてきて、
不満がある人は3月にアピールを行う。

米国で住民が負担する税金には大まかにいって
連邦税、州税、地方自治体の税(以下、市民税)と3種類があるが、
連邦税が主に所得税、州税は所得税と売上税、という比較的安定した
財源であるのに対して、市税などの地方自治体の税は主に
不動産価格の動向に大きく作用される固定資産税で賄われる。
これは法人に関しても同様で、法人が払う固定資産税が
市の主な収入となる。

地方自治体は歳入が不安定な上に、常に財政の均衡を強く求められる。
連邦政府は国債を発行することによって財政赤字を補填することも難しくないが、
地方自治体の債務には、日本と異なり実質的な連邦政府の保証がないため、
通貨発行権限がない地方政府が自力で資金を借り入れることが
難しいからである。

私の住むT市では、固定資産税のための不動産評価額は基本的に
過去2年間の売買情報を元に計算される。
そのため、1〜2年の遅れはあるものの、
地価の変動が税収にかなりダイレクトに反映されることになる。
現在住んでいる不動産の過去の固定資産税額を調べて見ると、
不動産バブル直後の2007年頃には税額が年3300ドル程度だったのが
昨年は年2000ドル程度まで下がっている。

市政府は激減した歳入から、公立学校の運営や消防、警察といった
生活の根本的な部分を担わなければいけないという状況になっている。
その結果、公立学校では1クラスの人数を増やしたり、
授業日数を減らして人件費を削ったり、
小中高の授業時間をずらして通学バスの台数を減らしたり、
といろいろな施策を打っている。
高校では授業開始が早くなりすぎて、寝不足になる生徒も多いという。
(なお高校の授業開始を一番早くしたのは午後にアルバイトを
しやすいというのが一つの理由のようだ。)
図書館や公共施設は閉鎖になったり時間を短縮したりしている。

良いニュースは昨年あたりから米国の不動産市況が
回復してきたことだが、問題の解決はそう簡単ではない。
例えば私が住んでいる家の固定資産評価額は今年8%上がるが、
税額の上昇率はわずかに約2%ほどである。
これは「継続して居住している住民の税額は物価上昇率を
超えないようにする」という法律があるためだ。
つまり市況が回復しても、新たに住宅を購入した人の数が
増えなければ、実質的な税収は増えない。
しかも、需給逼迫で住宅の流動性は低下している。
当面の間、歳入が低い水準にロックインされてしまったということだ。

なぜ、このようないびつな税制にになってしまっているのだろうか?
結局の所、その理由は不動産神話にある。
先日、学科の年配の同僚と話した際に彼は
「地方政府の財政は連邦政府とか州に比べれば安定してるんだけど、
最近は不動産が下がっちゃったから大変だよね。」
と言った。

「あれ?」というのが私の最初の感覚だった。
不動産価格が不安定なものという意識が米国人にはなかったようなのだ。
皆が不動産価格は物価を上回って上昇すると固く信じていた。
そうした仮定の下では、一番生活に直結する地方自治体の財政が
固定資産税で賄われるという税制は理にかなっていた。

不動産バブルが崩壊して、そうした前提は
あまり機能しなくなったように思える。
近年、将来の買い手である米国の若者は親に依存する傾向が
強まっており、なかなか一人暮らしをはじめない。
また、若者の借金に対する姿勢が慎重になっている
という調査結果も出ている。
人口増加率もここ数十年の最低水準で推移している。
こうした状況は、将来の不動産価格の上昇が
必ずしも約束されているわけではないことを示している。

先週、米国の平均株価は史上最高値を更新したが、
財政の構造的な問題の解決にはほど遠いというのが現状である。


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アメリカの事務手続きの不確実さ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今日、移民局に提出するための書類を医師からもらってきた。
ちなみに数日前に医師の記入ミスがあったため、
昨日訂正されたものを受け取って来たばかりなのだが、
今日は何故か「もう一度準備したから受け取りに来い」という連絡があった。
結局もう一通もらってきたが、どちらを提出しても良いとのこと。
何がなんだか分からない。

書類は厳封されているのだが、
今回は内容を確認できるようにそのコピーが添えてある。
書類はレターサイズで4枚のはずなのだが、
コピーを見たら2枚目が抜けており、
全然関係ない別の人の検査結果が4枚目の後に入っている。

仕方が無いので、厳封されたうちの新しい方を開けたところ、
コピーにはなかった2枚目もちゃんと入っており、
誤ってコピーされた書類は、ホッチキスの痕跡から
新しい方だけに入っていることが推察されたので
昨日のものは問題ないと判断しそのまま出すことにした。

今回の件に限らず、米国の事務手続きの不確実さには枚挙に暇がない。

-- 勤務先の大学には出版社から教科書が届くのだが、
過去、きちんと手元に届いたのは約半分である。

-- 自宅から送受信した手紙等が、過去何度か紛失している。
紛失に気付かないことも多いから、
実際にはもっとなくなっているだろう。

-- 娘が生まれた際、子供と親の名前が地元の新聞に小さく載ったが、
親の名前のスペルが間違っていた。

-- 不動産を買う際、書類1枚の不動産契約書にはほんの数箇所しか
記入するところがないのに、不動産エージェントが頻繁に間違えていた。
しかも、購入する不動産の住所が違うとか購入者の氏名が違うなどの
重大な誤りである。

-- カナダに行って、米国に再入国した際、
入国審査官が記入したビザステータスと有効期限が両方間違っていた。
私の時はその場で気付いて直してもらったが、
知り合いは同様のケースで気付かずに次の入国の際に揉めたらしい。

-- 妻は食料品店で買い物をするとレシートをチェックするが、
しょっちゅう打ち間違いがある。
間違いを見つけるたびにサービスカウンターに訂正を依頼するが、
あまりに頻繁なため、サービスカウンターの対応が
段々おざなりになったそうだ。

一般的に言って、米国人はやることはそんなに遅くないが、
正確性は恐ろしく低い。
米国では、事務が確実に行われたかどうか確認すること、
なるべく依頼を単純化し介在する人数を減らすこと、が大事である。

電子メールやWeb上の手続き、電子商取引などが米国で早く普及したのも、
こうした事務の不確実さが理由の一つになっているのだろう。


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日本発売前にKindle Paperwhiteで電子書籍を買ってみた -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ついに米国のAmazonに注文していたKindle Paperwhiteが家に届いた。
米国でもこの機種はバックオーダーで数週間待ちだが、
キャンセル等も結構出ているようで予定より3週間ほど早い到着だ。

これで日本の本も米国からクリック一つで入手できるようになる。
海外から利用する際の技術的な問題とその解決策は、
こちらのサイトに詳しく解説されている。

価格は119ドル、なぜか日本より2割ほど高い。
おそらく日本ではコボとの対抗上、値段を下げるということなのだろう。
日本で売っているKobo gloは7980円だが、米国では同じ物が129ドルで、
キンドルより更に価格差が大きくなっている。
ただ一消費者の立場から見ると、この戦いは端末の価格差よりも
紙の書籍やその他の商品を合わせたサイトとしての利便性で
決まってしまうのではないかという感じがしている。
紙の本と電子書籍を別のサイトで選びたいと思う消費者は非常に少ないからだ。
米国でDVDの宅配レンタルからストリーミングに移行したNetflixを見れば、
その意味が分かって頂けるのではないかと思う。

さて、到着した段ボールを開けてみると、
パッケージは数学の専門書一冊(A5よりやや大きい)程度の大きさ箱で
中に入っているのは、本体と充電用USBケーブルのみである。
説明書もチラシも一切無い。

早速電源を入れてみと、どうやら充電済みのようで、
右上に電池の残りが6時間程度と表示される。

すぐに言語選択画面が出たので日本語を選択。

少し日本語でメッセージが表示された後、Wifi接続の設定に入る。

自宅で使っているwifiのパスワードを入れてすぐに接続できた。

次にアカウントの登録録画に移る。
どこから紐づけたのか分からないが、
自分の米国のアマゾンのアカウントが自動的に選ばれていたので
登録を解除して日本のアマゾンのアカウントを登録する。
その際、日米のサイトで同一メールアドレスを使っていると
面倒なことになるので、予めメールアドレスを変更しておいた。
問題なく登録が終了。

続いて、FacebookやTwitterとの連携画面になるが取りあえず後回し。

その後、数分のデモが始まったので適当に流す。

デモが終わると、通常画面に戻り、
買い物をしたり、アマゾンのクラウド上にある
書籍をダウンロードしたりできるようになる。

取りあえず、Oxford English Dictionary をダウンロードしてみる。
クリックすると、すぐにダウンロードが始まり10秒程度で完了した。
なお、家のWifiのインターネット接続の速度は実質12Mbps程度である。

次に、無料書籍の「蟹工船」をダウンロードしてみる。
まずは自宅のMACから注文してみると、購入後Kindle端末にも
1〜2秒で反映されて自動的にダウンロードが始まり、
1〜2秒程度で完了した。

画面サイズは日本の文庫本より若干小さいが、
余白が若干小さく設定できるため
文庫本を読んでいる感覚に非常に近い。
6インチで1024x768(推定)と解像度が高いため、
漢字を明朝で表示しても気になる事は全くないレベルだ。
戸惑った点は、画面左下に表示される番号がページ番号になっておらず、
3, 12, 22, 30, ... ととびとびに表示される点である。
どうやらデータ容量をもとにインデックスが振られているようで、
フォントの大きさによって1ページの量が変わることに起因する問題のようだ。
単語を長押しすると、ポップアップでデジタル大辞泉が出てきた。
どうやら米国で購入した Paperwhite でも日本語辞書が使えるようだ。

続けて、有料書籍を購入してみる。
なぜか実物書籍とは異なり、ワンクリックでの購入のみしか選べなくなっている。
読もうと思っていた「マネー・ボール」を購入。
同じく、1〜2秒でダウンロードは完了。2秒で500円(文庫は798円)。
電子書籍の無限の可能性を感じさせる。
紙の本と違って、読み終わったら売ってしまうということができないので、
少々高い様な気もするが、まとめ買いして結局読まない、ということが
なくなるので、案外無駄が少ないのかも知れない。

今度は、洋書も買ってみよう。
ダウンロードできるのは大抵古典なので「The Time Machine」をダウンロードしてみる。
えーっと、"expounding"って何だっけ?と思ってクリックしたら、
プログレッシブ英和中辞典が出て来た。英和辞典も利用可能のようだ。
要するに Kindle Paperwhite を買うと、1万6千冊の(英語の)洋書が
単語解説付きで無料で付いてくると言ってよい。

最後に、コミックもダウンロードしてみよう。
無料のものは今のところないようで、最安値は「せいふく!10 」という、
なんで18禁でないのかがよく分からない84円のマンガである。
84円はお買い得なのかも知れないが、何となく買う気がしなかったので
とりあえず、サンプルだけ配信してもらう。
3ページしか読んでいないが、普通に読む分にはストレスはなさそうだ。
画像を指2本で拡大することもできるが、
処理に多少時間がかかるため実用には堪えない感じである。
とりあえず、好きなマンガの新刊が出たら買って読んでみたい。

なお、米国のアマゾンだとKindle向けのゲームもたくさんあって
暇つぶしにオセロをやったりできるのだが、アマゾンジャパンのサイトには
今のところないようだ。

強引にまとめると、
液晶などに比べて圧倒的に軽くて読みやすいこのキンドル・ペーパーホワイト、
1.海外に住んでいる
2.小説を読むのが好き
3.英語学習に興味がある
4.旅先で本を読むことが多い
5.書店で買いにくい小説やコミックを読みたい
のうち一点でも当てはまる人は、まず買って損することは無いだろう。



テーマ : 新製品情報 家電・AV器機・周辺機器
ジャンル : コンピュータ

米国で使われる単位の日常的感覚 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカに住んではじめに戸惑うことの一つに
未だにメートル法ではなく英国式の単位を使っているということがある。
学生に時々「1マイルは何フィートかね?」などと聞くと、
実際答えられない学生が多いので、英国式が便利だとは思えない。

もちろん辞書を引けば簡単に換算はできるが、
感覚的に英国式単位を説明するとこんな感じになる。


●長さ:
1 feet: A4(レターサイズ)の縦
1 mile: 歩いて行ける
10 mile: 車なら近い
1,000 mile: 車で旅行できる

●面積(sqft = square feet):
500sqft: 1ルーム(1K)アパート
1000sqft: 2ベッドルーム(2LDK)アパート
2000sqft: 40年前の家族用一軒家
3000sqft: 最近の家族用一軒家

●体積:
1オンス = コップの水位で1cm分
12オンス = 缶ジュース一本
1クオート  = マックの特大容器一杯
1/2ガロン = 一升瓶一本
1ガロン   = 特大牛乳容器1本(米国)

●気温(華氏):
 0F :激寒い
 70F :快適
 100F:激暑い

●体温(F、華氏):
 100F:病院へGO

●燃費(mpg= mile/gallon):
10mpg: クソ悪い
20mpg: 普通
30mpg: 良い
40mpg: クソ良い

●速度(mph= mile/hour):
50mph : 一般道(違反)
75mph : 高速(違反)
100mph : 高速(超違反)

●重さ(lb = pound):
1 lb: 食パン一斤
3 lb: モバイルPC
200 lb : デブ

●金額(USD=米ドル)
100K (=10万): 専門職の年俸
1M (=100万): 持っていると富裕層
1B (=10億): 持っていると大富豪
1T (=1兆):米国の年間財政赤字額


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家族旅行が高い日本、安いアメリカ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

夏に久々に日本に帰って思ったことの一つは、
「とにかく旅費が高い!なんだこりゃ!」ということだった。
妻の親戚をたずねて家族3人+義母で名古屋まで2泊3日で行ったのだが、
新幹線代だけで4人だと往復約8万円、
宿泊費は豪華な朝食付きだったが4人×2泊で約9万円と
交通費と宿泊費だけで17万円もかかると知って、
「うわっ、17万?!」
「飛行機でバケーションに行く訳じゃあるまいし!」
と奴と二人で改めて驚いてしまった。
今回は目的がはっきりしていたから良かったが、
観光だけが目的だったらコストセンシティブ(=貧乏)な
我が家は間違いなく計画を断念していただろう。


ところで、我が家では毎年冬休みに買い出しを兼ねて
シカゴ旅行に行くのが恒例になっている。
中西部の田舎の小さな大学町で5年間を過ごした私達家族にとって
休みに華やかな繁華街と日本の店があるシカゴに行くのは、
冬の少ない楽しみの一つだった。その習慣は今も続いている。
デトロイトからシカゴまでは約300マイル(480キロ)、
日程は2泊3日なので、物理的には名古屋旅行とあまり変わらないか
むしろ遠いくらいである。

さてここで問題。
この家族旅行の予算(交通費+宿泊費、税込)はいくらでしょう?

あ) 2100 ドル (17万円弱)
い) 1400 ドル
う) 700 ドル

正解は・・・









え) 250ドル。

ちなみに内訳は、ガソリン代が往復で100ドル、
ホテル代が一泊75ドル(税サ込)。
ただし朝食はついていない。

なんでこんなに値段が違うんだ?と考えてみると
要するに日本は何でも一人当たりで費用がかかってくるのが理由だ。
シカゴのホテルは今回は郊外に取ったので特に安いが、
2人用ベッド×2(キング+クイーン)の部屋で
何人泊まっても料金は変わらない。
1人でも子供連れの4人家族でも一泊75ドルだ。
ちなみに、日本で泊まったホテルより古いが
部屋の設備自体はあまり変わらない。

移動も車なので4人までなら何人でも費用はほとんど変わらない。
日本の新幹線と米国の車旅行を比べるのはフェアでないかも知れないが、
通勤用に車が必須のアメリカと日本の都市部では事情も異なる。
日本の都市部では車を維持するのには
駐車場代、自動車税、車検代と多額の費用がかかり、車両の値落ちも早い。
東京から京都までの高速料金はETC割引を使っても往復で1万円、
ガソリン価格も米国より約70%高い。
マイカーで旅行するための費用も実はかなり高い。


一言でまとめると、日本の旅行事情は人数の多い家族に厳しいということだ。
しかしこの料金体系が妥当なのかどうかはかなり疑問だ。
例えば日本で、
20代独身、30代DINKS、40代4人家族、60代老夫婦
という4パターンを考えてみよう。
余暇のために消費できる金額が家族一人当たりで多いのはどのパターンだろうか。
おそらく
60代老夫婦 = 30代DINKS > 20代独身 > 40代4人家族
の順ではないか。

家族の人数が多く住宅ローンと教育費を抱えたオトーサンたちに
そんなに余裕があるようには見えないし、
過去15年ほどの賃金低下で一番影響を受けたのは
40〜50代あたりのはずである。

旅館やホテルが、40代4人家族から
30代DINKSや60代老夫婦の2倍の料金を取ろうとするのが
賢い商売だとはあまり思えない。

新幹線にしてもごく一部の繁忙期を除けば結構空席が目立つ。
国が有休取得の強化などを促して需要をもう少し平準化させることも大事だが、
利益を損なわずに空席を埋めるための手っ取り早い方法は、
こうした顧客の階層ごとに価格差別を行うことではないのか。


大家族で気軽に旅行もできない社会では、ますます少子化も進む。
日米の対照的な例を見て、
もう少し家族に優しい日本社会になると良いなと願う、
コストセンシティブな30代家族持ちなのであった。


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プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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