統計学の経済的付加価値 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

統計学をやっている人の生産性というのは
果たして他の分野と比べてどの程度で
将来的にはどのようになっていくのだろうか?

アカデミックな分野の労働生産性の比較という意味で
大学の教官の分野別の給与を考えてみよう。

ASA (American Statistical Association)は
毎年、統計学分野の大学教官の給与のサーベイを行っており、
これを先日紹介した
AAUP (American Association of University Professors)
による全分野(医学部除く)の平均給与と比べると、
統計学分野の賃金は全体平均よりも10%程度高いであろうことが分かる。

比較的近い数学分野の平均はほぼ全体平均と同じなので、
統計学の労働生産性は賃金水準で見る限り悪くないことになる。

おそらくこの差の直接的な原因は、バイオ統計や遺伝学などの
分野へNIH(National Institute Health)等から潤沢な研究資金
が与えられているということであろう。

もう少し一般化して考えるなら、
統計学は時代に応じて、生産性の高い
「旬の分野」への応用研究を行っている

ということがその理由ということになる。
その際、旬の分野ほどの生産性は得られないものの、
ある程度その恩恵に与れることは間違いない。

こうした一般論から考えていくと、
統計学はほとんど全ての分野で行き詰らない限り、
長期間に亘って平均をやや上回る程度の
安定的な生産性
を上げていくのではないか、
と予想することが出来る。

もっとも、こうしたコバンザメ的な学問が、
学問的に面白いかどうかというのは
意見の分かれるところではある。


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アフガニスタンの邦人殺害で感じたこと -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アフガニスタンで活動していた伊藤和也(31)さんが殺害された。

こういう時に出てくる意見は主に、
・「ご冥福をお祈りします」系
・「犯人許すまじ」系
・「危ないって分かって行ったから自業自得」系
・「政府が退避勧告したのに行くなんてけしからん」系
といった感じである。

それぞれの言いたいことは理解できるが、
私が今回気になったのはもうちょっと別のことである。

報道されているように、
伊藤さんは貧しい人・困っている人を救いたいと思って
NGOに参加した。
これはきっと事実だろうし、素晴らしい志だと思う。
しかし、なぜアフガンでないといけなかったのか?
というのを理解するのは容易ではない。
日本にも助けを必要としている貧しい人はたくさんいるし、
世界に目をやればアフガンより貧しい国はたくさんある。
そもそも、貧しい人を直接助けに行かなくても、
よりよい社会のために貢献する道はたくさんある。

これはあくまで想像にすぎないが、
本人が明示的に意識していたかどうかは別として、
伊藤さんは何かに追い詰められていたのではないか?
と私は考える。それは、
ボランティアとしてのより目立った業績、
といった直接的なものかも知れないし、
自分が社会の役に立っているという達成感
のためかもしれない。あるいは、
家族や知人に立派なところを見せたい
といったプライドのようなものかもしれない。

「ボランティアをするのに目的なんてない」と
言ってしまうのは簡単だが、突き詰めて考えれば、
全ての行動は必ず自分のためにとっているものである。
例えば、昨年のアフガニスタンでの韓国人拉致に関しても、
ボランティア活動が表面上の目的ではあったが、
背後には教会間の熾烈な布教競争があったと聞く。

確かに、私は彼の経歴についてはよく知らないし、
彼の個別事例に関しては私は見当違いのことを
言っているかもしれない。

しかし、今日の日本で社会的弱者と社会的強者のどちらが
アフガニスタンのボランティアに応募する可能性が高いか、
ということを考えて欲しい。
本来のボランティアは、強者が弱者を助けるところに
社会的な価値がある。しかし、アフガンのような極端な
ケースでは、社会的弱者が何かに追い詰められて
ボランティアをしているという疑念が払拭できない。

そう考えると、今回のようなボランティアの犠牲者は、
直接的には武装勢力の犯人にやられたのであるが、
間接的には日本社会が生み出した犠牲者なのでは
ないかと思ってしまう。

そういった可能性を考慮したとき、
和也さんのご尊父が述べた
「和也は家族の誇りだと、胸を張って言えます。」
という言葉に対しても、
完全な同意ではない複雑な感情が湧いた。

いずれにしても、彼の冥福をお祈りしたい。


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学部生向けの授業 -- このエントリーを含むはてなブックマーク


9月から学部生向けの講義を持つことになった。

本来は、今までのコンサルティングの仕事を続けることになっていたのだが、
少し疲れたし、卒業までに新しい経験もしておいた方が良いだろうと思って
一学期間限定で学科長に頼んだためだ。いずれにしても、健康保険料や学費
の免除や、生活費を受けるためには、州立の大学では何らかのパートタイム
の仕事を持たなければならない。

テキストの選び方は良くわからないので、とりあえず、先学期に別のインスト
ラクターが使っていたものをそのまま使うことにした。ざっと内容を見てみたが、
驚くほど易しい。一応、検定や回帰分析まで触れているものの、きちんとした
数学を使って証明していくわけではない。たぶん、日本の理系の高校1~2年生
なら理解できるだろう。

一方で、アメリカの大学のいいところは、
みっちり宿題や試験を課して
きちんと理解するまでやらせるところ

だと思う。日本の大学では講義がやたらと難しくて、
誰も理解できていないがなんとなく単位だけ取得、
ということはままあるが、こちらではそういうことはあまりない感じである。

少し不安はあるが、日本の塾で数学を教えたのを参考にしつつ、
なんとか、うまい講義をしたいものだ。


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金融市場の動きはランダムか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

週末から、金融時系列モデルの推定をやっていた。

金融の長期時系列のデータを少し扱っていると気付く事だが、
金融市場のデータは年を追ってランダムに近づいている。

例えば、かつては連続する二日間の株価の変化率には、
結構強い正の相関があった。平たく言えば、株が値上がりした
日の翌日ほど、値上がりしやすかったということである。
現在の先進国のマーケットではそのような傾向は見られない。

同様に、金融市場には値動きの激しい日の翌日は値動き
が激しいことが多いという経験則があり、それは今でも
健在なのだが、その「記憶」の強さは近年弱くなってき
ているような推計結果が得られた。

実際、過去にブラックマンデーの翌日・翌々日には大きく
株価が上昇したが、近年ではNYダウで400ドル程度の変動の
日では翌日は何も無かったように小動きになることも多い。

こうした市場の長期的な変化には、
市場参加者の増加、技術の向上、取引コストの低下、
情報伝達の高速化、といった様々な要因が絡んでいる。

統計学科でマシン・ラーニングを研究している教授が、
「株価は元々ランダムなのではない。
人々がランダムにしているのだ。」
と言ったと友人から又聞きした。
なかなかの名言だと思う。


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アメリカの大学教官の給料事情 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

まあ、日本でもどこでも給料というのは、
みんなの一番の関心事のひとつだし、
ビジネス誌が特集を組めば、その号は売り上げが伸びると聞く。
一方で、話題が話題だけにtouchy な話題でもある。

米国はこの手の統計が充実していて、
例えばメジャーリーグの選手の年俸は、
USA Today がデータベース化して、
誰でもダウンロードできるようになっている。

今日、ふとしたことから
米国の大学教官の給与は
年度別・大学別にデータベースがある
ことを知った。
ここから、見ることができる。
これは、AAUP (American Association of University Professors)
つまり、アメリカの大学の教員組合によるサーベイ
なのだが、関心のある人にはなかなか楽しめる。
例えば、"Harvard"と入力すると、
教授の平均年俸(9ヶ月契約)が184,000ドル、
准教授が106,000ドル、助教が95,000ドルと出てくる。
もちろん分野によって給与は異なるので、これだけでは、
知り合いがいくらもらっているのかまでは知ることはできない。

実質ベースで考えると、生活費も考慮に入れる必要があるだろう。
そこで、こんなページも見つけた。このページは、
全米各都市の生活費を比べることができる。
もっとも、マーサー社の世界各都市の物価調査でもそうだが、
ただ、この手の調査は、住宅費の見積もりにどうも
差がつきすぎていて、実感に合う数字が出てこない。
モンタナとニューヨークで
同じ広さの家に住んだ場合の生活費を
比べるのはナンセンスだと思う
のだが、うまい調整方法がなかなかないのだろう。

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米国統計学会~プレゼン編~ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

JSMにて、15分のプレゼンを行った。
発表時間がタイトなので、
時間に収まるように一人で10回近く練習をしてしまった。
その甲斐もあって、発表はきっちり15分
(指導教官の計測では14分だと言っていた)。
もっとも自分の英語力では、
1分あたりスライド一枚説明するのが精一杯である。
英語での学会発表は実は初めてだったが、
質問タイムもなかったので何の問題もなく終了した。
発表の一番の難所は、
内容の難しい質問を聞き取りにくい英語で言われた時なので
質問時間がない発表というのは実はそんなに難しいものではない。

プレゼンの反省点は、
発表を簡潔にするために説明が形式的になってしまい、
証明のアイデアなどを分かりやすく紹介できなかった点である。
準備をたくさんすると発表自体はスムーズに行くのだが、
却って説明が分かりにくくなる

というのはよく見る失敗なので気をつけようと思う。

発表内容は7月中にどこかのジャーナルへ
submitをする予定だったのだが
予定外に手間取って間に合わなかったため、
指導教官はちょっとネタバレを気にしている。
いずれにしても、近日中にsubmitしなければならないと思っている。


話はそれるが、
「日本人はプレゼンが下手だ」という話をよく聞く。
しかし、私はそうは思わない。
日本人のプレゼンは細部を省いて
要所をきちんと説明していることが多いし、
プレゼン用のファイルも大抵きれいにまとまっている。

確かにアメリカ人の中には
抜群にプレゼンのうまい人はいるが、
一方で、プレゼン用のファイルの作り方の基本の
なっていない人もたくさんいて、
平均するととても褒められたものではないと思う。
中国人は、
まとめるということを分かっていない人が多く、
ひたすら多くの内容を羅列してしまうことが多いように思う。

これからプレゼンの機会は増えそうだが、
英語力を、プレゼンテーションの巧さで
なんとかカバーしたいものだ。


テーマ : 研究者の生活
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統計モデルは正しいか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日のエントリーで取り上げたように、
「統計学=数学的基礎+モデリング」
という風に考えてみると、
モデリングというのは数学的に厳密でも何でもなく、基本的には
「データにうまく当てはまれば良い」
ということに過ぎない。この点で統計学は、
例えば経済学などの、
モデルに予め理論的な制約を課す学問とは哲学を異にする
のだと思う。

例えば、データの正規性(normality)を確保するために
Box-Cox 変換という変数変換の手法がある。
要するに適当なλを選んで、xをx^λに変換することで
変数が正規性を満たすように変換したりするわけだが、
この時のλなどはデータに最も合うものを選べばよい。
(「λが1.24などの中途半端な値では説明が付かない」
という向きもあるが、個人的には別に構わないと思う。)

だれが始めに言ったのか知らないが、統計学には、
"No model is correct, but some are useful."
という金言がある。
統計学では、モデリングをする際に、
そのモデルが正しいかどうか、そのモデルが最良かどうか、
ということはあまり問題にならず、
データとモデルが矛盾しないかどうか
(テストが棄却されないかどうか)、
誤差がどのくらいか、
ということが重要なのではないかと思う。


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米国統計学会 ~就職面接のまとめ~ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

8月3~7日に行われたJoint Statistical Meetingだが、
後から振り返ると、現地についてからの体力の配分は、
就職面接に4割、テクニカルセッションに3割、
自分の発表に2割、その他1割、といった感じであった。

本来おまけのはずだったジョブ・インタビュー(就職面接)に、
もっとも多くのエネルギーを取られたのは、
誤算ではあったが良い経験になったとも思う。
結局、5つの大学、3つの金融機関、2つの企業、
計10箇所の面接を受けた。

大学に関しては、とりあえず今回は説明を聞く程度であり、
正式なアプライは、推薦状(3-4通)やteaching statement、
research statement 等を揃えて後日することになる。
本格的な選考は年明けの2月頃から、と思っていたのだが、
今回JSMに来ていた大学は、年内に選考をしてオファーを
早めに出し、人材を確保したいという思惑があるようだ。
従って、正式なアプライも9月末までにはした方が良いと
いうことらしい。

アメリカの大学は、
PhDプログラムを持つ研究大学、
Mastersプログラムまでを持つ大学、
学部教育に特化した大学
という感じにランクが分かれている。
米国の大学のコースは
50分の講義が週3-4回、あるいは
75-90分の講義が週2回あるのが普通だが、
今回、話を聞いた感じでは、
研究大学では毎期2コース、
それ以下の大学では3~4コースを教える

というのが標準になっているようだ。
なお、ASA(American Statistical Association)によると、
研究大学の新卒助教の平均給与はおよそ年7万ドル、
学部教育主体のカレッジでは年5万5千ドル程度
となっている。
これは、PhDの平均給与に比べると随分安いが、
実質的な労働期間が7.5-8.5ヶ月程度
しかないことを考えると、特段悪いとは言えないだろう。

一方、民間企業のジョブ・インタビューのプロセスであるが、
学科の友人によると、
多くの企業ははじめに電話インタビューやリクルーター
によるインタビューでスクリーニングを行う。
その後、通過者は本社に呼ばれて、
様々な人(6人くらい)との面接を一日中受け、
約1時間のプレゼンテーションを行って合否が決まる、
というのが標準的らしい。
面接に呼ぶには企業側にもコストがかかるのだが、
呼ばれれば採用有望とも言い切れないようだ。
優秀な友人も何度も面接に行ってようやく決まったりしている。

卒業間近になってからでないと選考を行わない企業もあるので、
今回受験した企業のうち結果がすぐ出るのは3社程度ということになる。
1社でも次のステップに進むことができれば御の字である。

気になる民間企業の給料だが、企業側の説明では
製薬会社は"very good"、
金融機関は"competitive"
と言ってくることが多い。
大体の予想だが新卒の統計PhDの場合、
製薬会社でボーナス込みで年10万ドル、
金融機関で年8万ドル程度ではないか
と踏んでいる。
一見日本よりもかなり高いが、
税率、年金、賃金カーブなどを考慮すると
必ずしも高いかどうかは明らかでない。

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米国統計学会~米国金融機関の面接~ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

デンバーでJoint Statistical Meeting に参加。
一応、参加人数は5千人とも1万人とも言われているが、
本当にそんなにいるのかどうかは怪しい。
重複の延べ人数か何かで数えて水増ししているのかも知れない。

今日は、1時頃までは、同じ大学から来た友人と広場で
適当にだべった後、2時間ほどのセッションを聴講。
どうでもよいプレゼンテーションが多かったが、
最後の目当てのプレゼンテーションは自分の研究との
関連も深くなかなか面白かった。
早速セッション終了後に、関連論文を教えてもらい
スピーカーに名刺を渡して、プレゼンテーションの
ファイルを送って欲しいと頼んでおいた。
ついでに、明日の自分のプレゼンテーションの宣伝もしておく。

夕方には、卒業後の仕事の面接。
まだ1年も先の話なのであまり切迫感はないが、
サブプライム問題以降、産業界の求人が減っているうえ、
H1Bビザ(外国人向けの労働ビザ)の発給が厳しくなっている。
同じ学科の1~2年上の友人も、仕事が見つかり次第卒業、
という人も多く、就職状況はなかなか厳しい。

今日は金融機関との30分の面接。
「信頼区間95%の意味を正確に説明せよ」、
「多重線形性について素人に分かりやすく説明せよ」、
「500000人の顧客データベースと1000の変数があるときに
DMの応答率を予測するモデルを作るにはどんな手順を踏むか」
といった質問に答えさせられた。
よく考えればそんなに難しい問題でもないのだが、
はじめてのせいもあり、日本の面接と趣向も違うので
思うようにきちんと答えられなかった。

結果は、1週間後に連絡があるそうで、
選考に通ると、本社に呼ばれて一日中、面接や
プレゼンテーション。それで合格になると、
内定となるらしい。

まあ、今日はウォーミングアップと思って、
明日また気持ちを切り替えて他の面接で頑張るとしよう。


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プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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