グローバル・ソブリンをお勧めするこれだけの理由 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

金融業界にいないほとんどの方はあまりご存じないかも知れないが、
国際投信・投資顧問が運用するグローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)
(以下、グロソブ)という4兆円もの運用資産を抱える巨大な投資信託がある。
4兆円といえば国民一人当たり3万円以上持っていることになる。
また日本の投資信託市場は、大雑把に言って50兆円くらいなので
このファンドがいかに大きいかが分かるだろう。
こんなに人気のあるファンドには、隠された秘密がたくさんあるに違いない。
そこで、この投資信託の魅力を探ってみよう。


1.高い手数料に裏付けられた運用力

この投資信託を購入するには、1.575%もの手数料が課される。
通常、日本の株式を購入するに必要な手数料は売買金額の0.1%程度だし、
国債であれば大抵手数料はかからない。
しかし「タダより高いものはない」という金言が示す通り、
優れた商品に投資する手数料が高いのは致し方ないであろう。

更に驚くべきことに、このファンドの保有者は
毎年1.3125%もの信託報酬を払わなければならない。
日本の10年物国債の利回りは1.3%だから、
国債市場である程度の金利変動リスクを取った場合の
期待利回りは1.3%程度である。
これを打ち消してあまりあるほど高い信託報酬は
運用会社の自信の表れとも言えるだろう。

なお投資信託の常としてファンド保有する証券の売買手数料は
これとは別に、運用資産から随時支払われているのは言うまでもない。


2.心理学を駆使した顧客満足度向上の仕組み

投資の初心者は、金融商品というのは利益が出さえすれば良い
と思いがちだが、実際はそうではない。
来月から毎月受け取れる配当のようなものは
何年後に返ってくるかどうかも分からない元本よりも
ずっと満足度が高いものなのだ。

あなたが人生に求めるものはお金だけではあるまい。
あくまで、お金を通じて満足感を味わうことが目的では
ないだろうか?
そうした観点から、、
行動経済学と呼ばれるいわば心理学的な手法を駆使して
顧客満足に細心の注意を払う運用会社には本当に頭が下がる。


3.社会貢献1:日本の財政を支える

あなたが、もし運用できる資産があるような富裕層であれば
自分が満足を得るだけでなく、投資を通じて社会貢献できれば
更に望ましいと思うだろう。
その点でも、グロソブに抜かりはない。

通常の日本の金融商品は利益に対して20%程度の税金がかかる。
しかし、自分の利益が出たときだけ税金を払うというのは、
福祉の観点からはやや自分勝手であろう。
金融市場が暴落に見舞われたような時ほど、
社会的弱者は失業や医療費の支払いによって苦しめられるのだ。

その点、グロソブは、毎月の分配金に対する課税を通じて、
損失が出ていても一定額を国に納税する仕組みになっている。
運用会社は日本らしく控えめに「毎月分配型」と謳っているが、
これを前面に出すなら「毎月納税型」あるいは
「毎月社会貢献型」投信と呼べるであろう。
4兆円規模のファンドが毎年4%を分配すれば、
20%の税額だけでも毎年約320億円になる。
そうしたお金は、公共事業、生活保護の支給、公務員の賞与、
不振の金融機関や航空会社の救済などのために
大切に使われているのだ。


4.社会貢献2:世界経済を救う

グロソブが「グローバル」と謳っている以上、
そうした商品に投資するグローバルな視点を持った投資家は、
世界に貢献できれば、と考えるのが自然であろう。
もちろん、運用会社としてもその点は考えているようだ。
それは、世界の金融システムの安定という崇高な理想だ。

このファンドは、つい昨年11月末まで運用資産の4.3%を、
債務危機が囁かれるギリシャに投資していた。ちなみに、
ユーロの中心国であるドイツ国債には1.3%しか投資していないので
ギリシャへの投資は、ドイツへの投資の3倍以上だったことになる。
ちなみにギリシャの経済規模(GDP)は、2009年現在で、
2500億ユーロとドイツの約10分の1だ。
これほど偏った投資には理由があるに違いない。
すなわち、それは巨大なファンドの社会的責務として、
世界経済を無用な混乱に陥れないよう
ギリシャ国債を買い支えるという英断であろう。

もちろん、運用報告書でもこうした金融のシステム安定に
資する姿勢はゆるぎない(以下、引用文):

ギリシャは世界的な景気後退の影響は比較的軽微とみられていましたが、
今年10月の政権交代直後に、旧政権時代に発表された経済統計に
不備があったとして財政赤字見通しが拡大修正されたことを契機に、
財政状況の悪化が指摘されていました。



あたかもこれまでギリシャには問題がなかったような口ぶりである。
私は、この解説にノブレス・オブリージュという言葉を連想させられた。
この後、ファンドは12月16日にはギリシャの全国債を売却したようだ。
これは、A格以上の債券を組み入れるというファンドの方針との
兼ね合いで致し方ない面があったのだろう。

だからといって崇高な理想が失われた訳では決してない。
最新の運用報告書によると、現在では資産を配分しなおし、
スペイン・ポルトガル・イタリアといった、
混乱の続くユーロ圏でも比較的信用力の弱い国に重点的に
投資することによって、その責任をしっかりと果たしているようだ。


5.運用実績をものともしない顧客満足度

肝心の運用実績はどうだろうか?
これは、上で述べた顧客満足のための施策を裏付けるものとなっている。
すなわち、運用実績は過去10年間でベンチマークを25%ポイントも
下回っている。高い信託報酬を持ってしても、この差はせいぜい13%
に留まるはずである。この大幅にベンチマークを下回るパフォーマンス
の下でも、運用資産を数十倍に激増させているのは、もちろん営業担当者
の真摯な姿勢も大きいのだろうが、やはり上記で述べたような
顧客満足や社会貢献を追求する姿勢が評価された証だろう。


6.みんなで渡れば怖くない安心感

ここまで大きなファンドになるとみんなが買っているという安心感もまた
大きなメリットになるだろう。タイタニックは、巨艦であったがゆえに
沈没の間際まで乗客は安心して楽しむことができたという。船が沈むか
どうかは客が決められることではないから、最後まで船旅を楽しもう、
というのは非常に合理的な考え方に思える。

さらに良いニュースは、この投資信託の信託期間が無期限であることである。
万一、一時的に―あるいは永久に―為替差損が出て
あなたの虎の子に傷がついてしまったとしても、
配当を貰いながら幸せな一生を送って
元本は墓場まで持っていけばいいだけの話だ。
近頃、遺産をめぐる骨肉の争いも耐えないが、
資産が少なければそうした心配も起こらない。
そもそも、お金というのは自分で働いて稼いぐものであり、
あなたの相続人がそんなことを心配しているなら
むしろ叱責すべきことだろう。


私は、海外にいるので残念ながらこの投資信託を買うことができないが
日本に住む方々、特に富裕層の方々には是非お勧めしたい金融商品である。
もちろん、あなたの近くに、この投信を買おうとしている人がいれば
わざわざこのエントリーを紹介するまでもないだろう。
「釈迦に説法」という諺がその理由を示している。


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テーマ : 投資
ジャンル : 株式・投資・マネー

娘の算数教育2 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

…といっても、トランプで遊んでいるだけだ。

一時、娘(4歳2ヶ月)に苦戦していた神経衰弱だが
私の集中力と記憶力が改善したらしく
私の方がほとんど負けなくなってきた。
娘も飽きてきたらしく最近弱くなっているような気がする。
なお、おそらく我が家でもっとも強い奴は最近私との対戦を拒否している。

そんなわけで最近は他のトランプゲームをやっている。

1)スピード

ルールは少し前に覚えたが、最近はずいぶん早くなってきたので
もしかすると80歳以上の人とはいい勝負かも知れない。
逆に言えば普通の大人にはまだとても勝てない。
続けて「7→8→7」とか、「Q→K→A」など続けて出せるようになってきた。
私の方に出せるカードがあると「6出せるよ!」と催促したり、
娘が「4」の上に「5」を出してから「パパは3が出せたのに」
と言ったりするなど進歩してきた。
もっとも、ごく稀にJの次にKを出してしまったりすることがある。jk
幸いまだ飽きていないのでもう少しスピードアップできると良いと思う。

2)七並べ

奴(*1)を加えて3人でやっている。
パスは5回までで、KとAが連続しているとみなすルールを採用している。
また、6回パスをして破産(?)した人が手札を場に放出した場合でも、
「7」から繋がっていないカードは出せないルールでやっている。
娘は一応基本的なルールは覚えているのだが、
まだたくさんのカードを手で持つのが少し難しいのと、
最後のルールのあたりがまだ完全には理解出来ていないので
手札を全て見せてやっていることが多い。

娘と自分が一番・二番をとり、奴がビリになるように努力するのだが
この加減がちょうどよいらしく、わりと白熱する。
もちろん、娘はいじわるして止めたりはしないが、
「ジャックだせるよ?(出してよ)」
などと言ったりはするようになった。

3)大貧民

奴を加えて3人でやっている。
やや単純化したルールを採用。
連番、革命、8切り、11バック、縛り、順位によるカード交換、
都落ち、スペ3 といった特殊ルールは無し。
2が最強というのはやや難しいので、Kを最強として読み替えている。
ハンディとして、娘は、私と妻から一枚ずつ一番良いカードをもらい、
一番悪いカードを一枚ずつ渡すことにしている。
まだ娘は完全にルールを理解していないと思われるので
これもまだカードを公開してやっている。
良いカードを出しすぎるのはもったいないと言う事は
理解しているようだが、まだ大人の作戦からは程遠く、
最後の方は助言しながら進む感じだ。

4)ドカン11(オリジナル)

娘に足し算を定着させるために独自に開発した二人用ゲーム。
4種類のスーツのエースから5までの計20枚を用いる。

- 各人にカードをランダムに10枚ずつ配る。
- 順番を決め、1枚ずつ任意のカードを表にして出して行く。
- 場に出た数字の合計(Aと3と4なら合計は8)が
 11以上になったら最後にカードを出した人の負け(*1)
- 勝った人が全てのカードを回収する(回収したカードは使わない)。
- 勝った人から順に、同じ手順の繰り返し。
- 最後の回は、数字の合計が11に満たなければ双方ともカードを取れない。
- 多くのカードを回収した方が勝ち。

(*1) この時、娘を喜ばせるため大きな声で「ドカーン!」
と言う事にしている。そのあたりの演出が大事だと思っている。

明らかに先手が有利な気がするのだが、
もともと教育用に作ったゲームなのでそのあたりはあまり気にしていない。
もっとも、完全情報ゲームなのに、必勝法を理解していない私は
数学科の教員として失格かも知れない。

5)N-ババ抜き (オリジナル)

これまた足し算を定着させるためのゲーム。
Nには、2から26までの任意の数が入る。何人でもプレーできる。

以下では、N=7の場合について説明する。
この時、使うカードは各スーツの1(A)~6までとジョーカー1枚の
合計25枚である。ルールは基本的にババ抜きと同じだが、
普通のババ抜きは「ハートの5」と「クラブの5」など
同じ数字が2枚揃った時にカードを場に出せるのに対し、
この「7-ババ抜き」では、
同じ色の2枚のカードの合計が7になった時にカードを出せる。
例えば、「ハートの3」と「ダイヤの4」が揃えば場に出せる。
1ゲームの中で同じ足し算が4回(一部は2回)出てくるので、
1ゲームやるだけでも最後の方になると娘も自然に答えが
分かるようになるようだ。
このゲーム、寝ている間に考え付いて、
朝起きてから試しに娘とやってみたのだが
教育効果が高そうだと
今のところ自画自賛している(笑)。

(*1) 妻のこと。

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娘の算数教育
双方向イマージョン教育とは



テーマ : パパの育児
ジャンル : 育児

アメリカの大学の授業料はどこまで上がるのか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカの大学の授業料は過去30年間、もの凄い勢いで上がっている。
US News (日本でいうサンデー毎日みたいなもの)などの週刊誌でも
これは毎年の様に取り上げられる国民的な関心事である。

本日の、アイオワからの報道によると
1982年に1,000ドルを超えたアイオワ大学(U of Iowa)の年間授業料は
2010年度には年間7,417ドルとなる予定だそうだ。
28年間に約7.5倍にもなったことになる。
これはアイオワに限ったことではなく、全米的に見られる傾向だ。

米労働統計省(Bureau of Labor Statistics)によると
この間にアメリカの消費者物価は約2.25倍になっているが、
物価変動を除いた実質で見ても約3.30倍である。

アメリカで子供を育てている身としては、
今後もこんなに凄い勢いで授業料が上がるのかどうかは
大変気になるところだ。
順調に行けば娘が大学に通っているはずの
15年後のアメリカの大学の授業料はどうなっているのだろうか?

私立大学は寄付やその収益が景気と共に大きく変動する上、
奨学金のシステムが複雑で平均的な学費を分析するのが
難しいこともあるので、ここでは州立大学に関して考えよう。

もちろん、アメリカの大学の予算に教育のもの、研究のもの、
その他のものと色々あるが、授業料が関係している一般教育予算
(General Education Fund)は比較的単純で、
収入側は「授業料収入(Tuition and Fees)」と
「州政府からの補助金(State Appropriations)」で9割超を
占めるのが普通だ。
そして、支出側は例えばアイオワ大学の例では、
教員やスタッフの人件費が7割程度、設備費が2割程度、
奨学金などが1割程度を占めている。

上の記事にある過去28年間の間に授業料が高騰した最大の
理由の一つが、この一般教育予算における州政府からの補助金
が減り、授業料の割合が高まったことだ。

以下のグラフは、アイオワ大学の一般教育予算における
授業料収入と州政府からの補助金の割合を示したものだ。
授業料収入の割合は、1981年の20.8%から上がり続け
グラフには含まれていないが直近では54%となっており、
一方で州政府からの補助金は38%になっている(*1)。

(*1)アイオワ州は、全米で11州しかないS&Pによる信用格付けがAAAの州の
一つであることからも分かるように財政状態は悪くない。従って、
こうした補助金の割合が特に低い、あるいは、下がっている州ではないようだ。
例えば、オレゴン大学ではこの割合は5年前の時点で既に30%を切っている。


StateAppropriation.jpg

つまり一般教育予算が実質ベースで変化していないとしても、
授業料は約2.60倍になったと考えられる。
実際に上がった3.30倍と2.60倍の比である1.27倍が、
28年の間に大学の一般教育予算が拡大した倍率だとみなすことができる。
従って年率で見ると、年0.9%の割合で大学の教育費用は
一般物価の上昇よりも早く増大していることになる。


それでは、州政府からの補助金は今後どうなるであろうか?
アメリカは日本と異なり、州の財政には国の保証がついていない。
そのため、州政府は財政を均衡させる必要性が非常に高く、
今後も高等教育を受けるような社会的に恵まれた層に対する
補助金を増やすのは政治的に難しいだろう。
これを定量的に予測するのは難しいが、
例えばミシガン州では近年名目で見た補助金の額がほぼ横ばい
となっているようなので、これを前提に試算してみよう。
名目で補助金が横ばいだと、
近年(最近8年間)の物価上昇率が年2.5%、
一般教育予算の実質伸び率が年0.9%と仮定した場合、
この補助金の割合は年率3.4%程度の割合で減少することになる。
すると 現在38%を占める補助金は、
15年後には23%程度にまで低下すると予想される。
これが全て学費に転嫁されるとすると
学費が一般教育予算に占める割合は15%上昇して69%となる。

すると実質ベースで見た15年後の学費は
この上昇分と年率0.9%の実質伸び率を加えて、

(69%/54%) × 1.009^15 = 1.46

となり現在と比べ1.46倍となることが分かる。
つまり2010年度に年間7,417ドルのアイオワ大学の学費は
15年後には現在の通貨価値に直して約10,900ドル、
年2.5%のインフレ率を仮定するなら15,700ドル程度になる。

もちろん、この試算はあくまで他の諸条件を一定とした場合のもの
であって実際には学費の上昇は、大学入学者の需給や
大学教育による賃金上昇の程度といった点に大きく依存するだろう。
また、短期・中期的には連邦政府がどの程度の補助金や奨学金を
提供するかといった点にもかなり依存する。

しかし、そうした点を考慮したとしても、
・今後も大学の学費の一般物価に対する相対的な上昇は続くこと
・ただしそのペースは伸び率で見れば長期的にはかなり緩やかになること

は比較的確度が高いことではないかと思う。


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米国の有名私立大学の学費に大きな変化
弱小大学の方がお得なアメリカ
アメリカの学校情報 (高校以下)


テーマ : 教育問題について考える
ジャンル : 学校・教育

アメリカでの異人種間の結婚の統計 -- このエントリーを含むはてなブックマーク


以前に、アメリカは melting pot ではなくて color TVだと思う、と書いた。
つまり、一見人種が融合しているように見えるが、実際には生活の領域では
それぞれ分かれて暮らしているということだ。
と同時に、カラーに見えさえすれば白黒テレビよりも良いのだから
文句をいう人もいないだろう、という意味も込めた。

それでは実際問題として、異人種間の結婚というのはどうなっているのだろうか。
アメリカのセンサス局には人種間結婚(interracial marrige)に関する統計がある。
以下は2006年時点の統計だ。

______________White_Wife__Black_Wife___Asian_Wife___Other_Wife White_Husband_50,224,000_____117,000_____530,000_____489,000 Black_Husband____286,000___3,965,000______34,000______45,000 Asian_Husband____174,000______6,000____2,493,000______13,000 Other_Husband____535,000_____23,000______41,000_____558,000


Othersの内訳は詳しくは分からないが、
それを除けば圧倒的に多数の人々が同じ人種間で結婚している。
唯一の例外は、白人の男性とアジア人の女性という組み合わせだ。

白人女性は例えば日本女性に比べて柔軟だが、
非常に自我が強いように思われる。弱い女性を好む白人男性が、
アジア人女性を好むのも自然な成り行きだと考えられる。
「立ち居振る舞いの美しさ」と「空気を読む能力」において
卓越した水準にある日本女性に特に人気があるのも不思議ではない。

一方、女性が比較的抑圧された日本ですら大人しい女性を好む日本人男性が
アメリカで相手を見つけるのが難しいことは想像に難くない。

ここで登場するのが、前回のエントリーと同様「両極端理論」である。
まずアメリカであっても、
言語や文化の壁をものともしないくらい社交的な人は上手くいくだろう。
逆のケースはどうだろうか。
日本人はアメリカであまりモテないし、
オタクは日本の中ですらあまりモテない。
しかし、日本人のオタクはアメリカで案外モテるかも知れない。

私がW大M校にいたとき、
履修した数学のクラスにとてもかわいい女の子がいて
住んでいる場所も近くだったのでバス停で会う度に
拙い英語で一生懸命話しかけていた。
2~3回目の機会に彼女はこう言った。

「わたし、日本について知ってるのはアニメのことだけ。
でも日本のアニメが大好きなの。」

昔からドラえもん以外のアニメに興味が無かった私は
友達と話が合わなくても意に介さなかったが、
この時ばかりは少し後悔した。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

ある数学者がアメリカに来た理由 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日、うちの数学科のRafail Khasminskii 教授(Distinguished Professor)
の引退記念パーティがあった。

彼は、Moscow State University の出身でKolmogorov と Dynkin の弟子であり、
確率解析における(パラメータ推定の)漸近理論などで大きな業績を残した。
MathSciNet という数学の論文データベースによると、
彼の論文が引用された数は1000回を超えているそうだ。

そんな優れた業績の数学者が
1991年頃にWS大に移りたいと言ってきた時は
WS大でも驚きを持って迎えられたらしい。

どんな理由があったのだろう、と興味深かったのだが、
本人がスピーチの中でその理由を述べていた。
その理由はなんと、娘がアメリカに移住すると決めたことだと言う。
もちろん、ソビエト崩壊直後にアメリカへの移住を決心することは
現在の日本の女性が「アメリカで働いてみよう」と決めるよりも
ずっと大きな決断だったかも知れないが、それにしても
そうしたビッグネームがそれをきっかけに
アメリカに来ることを決断したのは驚きである。
(もちろん彼の発言をありのまま受け取るかどうかは考え方次第だ。)

彼は当時既に60歳で、自分の生まれ育った土地が好きだったし、
友達もおらず言葉も違う異国の地にくるのはあまり乗り気では
なかったそうだ。
渡米後もきちんと研究が続けられるかどうかは分からない、
と思ってWS大にきたそうだが、
実際には案外その後も充実した研究が続けられて良かった、
とスピーチを結んでいた。



あくまで私の印象だが、日本から海外に行く人というのは
割と積極的で社交的なタイプが多いような気がしている。
しかし、積極的で社交的なタイプというのは得てして
世の中との繋がりを元に生きているので、
海外に出る時にそうした事を再構築するのに必要なエネルギーは案外大きいはずだ。
逆に、ニート、ひきこもり、オタク、数学者みたいなタイプは
もともと世の中との繋がりが希薄なので、
海外に行くための敷居が実はあまり高くないのではないかと思う。

例えばニートの海外就職日記などを見てもそのことはよく分かる。

私が見てきた限り海外で生活することが苦にならないタイプには2種類いると思う。
一つは、言葉や文化の壁など物ともしないバイタリティのあるタイプで
もう一つはもともとあまり積極的でなくマイペースなタイプだ。

海外なんてイケイケのギャル(超死語)が行くところ、などと思わず、
引きこもりがちの人もネットで海外の事を調べると良いかも知れない。

ブログ内の関連記事:
― 社会人の大学院留学の機会費用とリスク3(適応リスク)
― 勝負師から学ぶ留学の心得


テーマ : 海外生活
ジャンル : 海外情報

どの大学の公募に応募するか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカには大学は星の数ほど…というのは大げさにしても、
Carnegie Foundation による調査によれば2年制のところを含めて
約4391校(うち2年生の大学が約1840校)もあるらしい。
もっとも、日本の大学の数は文科省の学校基本調査によれば、
平成21年現在で、大学773校、短大406校で1200校くらいだから、
日米の人口の差を考慮すれば
アメリカの大学の数が滅茶苦茶多いわけではないのかも知れない。

いずれにしても、
普通の人が全ての大学の質を把握するのは不可能なので
公募に出す際は統計的に情報を処理して応募先を選んだ方が効率が良い、
と私は思う。

私が一番簡単で良いと思う方法は、
AAUP (American Association of University Professors)のサイト
Doctoral Institutions (分類:I, 要するに研究大学)
かどうかで判断するというものだ。
何故かというと、AAUPというのは要するに大学職員の組合だから
労働環境(研究環境+教育環境)で大学を測るという意味では
一番信頼できると考えられるからである。
この基準だと、アメリカの研究大学は約230校だ。
ちなみにこのデータベースは大学別の平均給与のリストが同時に
ついてくるので、現金な人には便利だ(笑)。
このデータの唯一の問題は、年毎に調査漏れ(恐らく未回答)の大学が
あることだが、2~3年分検索すれば大抵は出てくる。

もう一つの似た方法は、上で述べたCarnegie Foundation による調査の
データベースをダウンロードして、
大学分類が15~17(研究大学)のところを選ぶというもの。
レベルは、15、16、17の順に高く、
日本人が知っている総合大学は大抵、分類番号15である。
この分類の問題点は、PhDの排出輩出人数で大学を分類しているため、
一部の学部が大きめの博士課程を持っていると、
普通のティーチング・カレッジでも研究大学に分類されてしまうことだ。
実際、この定義ではアメリカの研究大学は280校くらいある。
実は私はこの基準で出願したら、
リベラル・アーツ・カレッジから面接のオファーが来てしまい、
行ってみたら全然研究とかする環境ではなかった、という苦い経験がある。
特に分類17のところはかなり微妙なのでAAUPのサイトで調べた方が良い。

ところで、なぜ研究大学にこだわるのかというと理由は3つくらいある。

一番大きな理由は、アメリカの4年生の大学は大雑把に分けて、
1. 教員が学期中に研究と教育を50%ずつやる研究大学 と
2. 教員が学期中は教育に100%エネルギーを傾けるティーチングカレッジ
の二つに分かれているからだ。
数学系だと、
フルタイムの授業コマ数は週12時間(3~4科目)(*1)
というコンセンサスがあって
研究大学ではその半分の週6時間(2科目)
というコンセンサスがある。
それ外の方式をとる大学は少ない(*2)。
トップクラスの大学とかビジネススクールのようにお金のある学科だと
週3~4.5時間(年間で3科目)くらいのところもあるが
それはいわば特別な感じだと思う。
州立の統計学科は貧乏なので週4.5時間なのは
私の知る限り University of North Carolina-Chapel Hillくらいだ。

二番目の理由は、ティーチングカレッジだと、
人事評価が教育で決まってしまうから
「純日本人にはちょっと不利なんじゃないの?」ということ。
もっとも、ティーチングカレッジは相当な人材難の模様なので
そんなに気にすることもないかも知れない。

三番目の理由は給料が良くないことである。
数学系だと、ティーチングカレッジの助教の給与は
税込で年5万ドルくらいなので
税金が高いことや車が必要なことを考慮すると
独身でないと長期間やっていくのはかなり厳しいだろう。

というわけで要点は、
アメリカの公募に出すとき
超優秀な人はアイビーとかUCBとか有名な大学だけ出せばいいけど、
そこまで自信がない人は、
エクセルとかで公募を分類して条件に合った所は
サクサク全部出しちゃいましょう、
ということだ(*3)。


(*1)
実際には、50(分)×3(回)×4(科目)みたいな感じ。

(*2)
ちなみに私のいる学科はそれが週8時間なのだがこれは特殊なケースだ。
もっとも、教える科目の大半(7割程度?)が教養科目なので
教育負担は週6時間のところとあまり変わらないかもしれない。)

(*3)
もちろん、アラスカは嫌だ、とかいうのはアリだと思う。
私はいわゆるディープ・サウス(アラバマ、ミシシッピー、ルイジアナ、アーカンソー)
はあまり気が進まなかったけれど、結局応募はしたし、面接のオファーが来たら
きっとホイホイと行ったと思う。友人がアーカンソー大に就職したが
別に不満はないようだ。むしろデトロイトより良いかも知れないw

ブログ内の関連記事:
アメリカの大学教官の給料事情
アメリカの大学ポストへの応募
電話インタービュー from 某大学
大学の公募のスクリーニング
ジョブ・マーケット・インタビュー(大学)



テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

アメリカの就職面接の食事について -- このエントリーを含むはてなブックマーク

面接される側に立つとノン・ネイティブスピーカーにとって
ちょっと辛いのが学科の選考委員との食事である。

通常、昼と夜を合わせて3~4回くらい食事をする機会があるのが普通だ。
ランチは普通に食事をしにいくと言う感じだが、
ディナーは、学科長や選考委員の長など主要な人物2~3人と
一緒にとることが多い。時間としては2時間弱くらいのことが多い。
私が就職面接を受けた際には、
学科長、その配偶者と選考対象者でが来たことも2度ほどあったので、
小さめの学科だとこれも割と一般的な方式なのかも知れない。

この食事の目的は主に、
― 応募者が人間としてナイスな奴かを見極める
― どのくらい来る気があるのか見極める
― 配偶者や家族の情報について聞き出す
― 状況によっては専門分野の一般的な知識をちょっと見てみる
ということだと思う。

別に英会話の試験ではないので、
そこまで緊張して消耗する必要はないのだが、
私のような英語ダメダメ日本人の場合の戦略として
お勧めなのは、予め、ネタをたくさん用意しておくことだ。
例えば、私はかつて車が割と好きだったので、
デトロイトにあるWS大で面接を受けた時は車の話ばかりしていた。
事前にWikipediaで地元の情報を調べておけば、
いろいろ出てくるだろうから、
それに合わせ下調べしておけばネタも探しやすい。
住環境などの地元情報について、たくさん聞いても良い。
ただ、あまり強引に持っていくと、
自分勝手な人だと思われる可能性もあるので
そのあたりは注意が必要ではあるだろう。

英語が苦手だからバレないように静かにしておく、
というのは最悪の選択肢だろう。
英語力なんてどっちみち少し話せば分かってしまうし、
単に社交性のない消極的な奴だと思われてしまうと思う。

また、私はウ*ィスコンシ*ンにいた時、
ボランティアの会話パートナーと月に2~3回会って
他愛のない会話をしていたのだが、
普段ひきこもりがちな人(理論分野の人など)は
そういう経験を積んでおくと役に立つかも知れない。

家族関係については、
法律上は選考する側が質問してはいけないことになっているので、
一応自分から申告するのが望ましいだろう。
ただし、どっちにせよ聞いてくることが多い。
家族持ちなのか独身なのか、
家族持ちの場合、配偶者の仕事についてどうするつもりなのか、
ということが説明出来れば良い。

細かいことだが、家族持ちの場合、
大学から出たオファーを断るのにもっとも問題が少ないのは
「配偶者が反対している」という理由
なので、
その切り札を使いたい場合は逃げ道を作っておいた方が良いと思う。
例えば、デトロイトなら、
面接の時は「教育環境が良いので家族にいいと思う」と言い、
断る時は「市内が危険なので配偶者が反対している」と言うことができる。

私は英語があまりしゃれべないのだが、
昨年7回もフライアウトに行ったたくさん会話をしたので
その直後は少し流暢に会話ができるようになった。

タダで英会話の練習ができるというくらいの気楽な
気持ちで行くくらいがちょうど良いのかも知れない。


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ジョブ・マーケット・インタビュー(大学)



テーマ : アメリカ留学
ジャンル : 海外情報

統計学とは意味を考えずにデータを処理する方法 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

Apeescape さんにリンクを紹介して頂いた xkcd の
「学問分野を純度の順に並べてみた」の一コマを見て
統計屋の観点から一つコメントしておきたくなった。

XKCD-purity.png

このマンガにおける
「社会学 < 心理学 < 生物学 < 化学 < 物理 < 数学」
という順番は、左側が右側の分野の応用になっているという関係になっている。
ここで注目すべき点は、左側は右側から演繹的に導けると仮定している点にある。
しかし、実際にはノイズの問題や、計算量の問題、実証の規模の問題があり、
社会学をこの経路をたどって数学を使って演繹的に導くことは事実上不可能だろう。

ここで、統計屋が取るのが以下の方法だ。
「社会学 <- 統計学 < 数学」
ここで、"<-"は演繹的ではなく帰納的な方法によっている。
簡単に言えば、観察された事象の意味は考えずに分析するということだ。
こうした方法によって、統計学は途中のステップを飛ばすことができる。

途中のステップを飛ばしている以上、
「データの意味を考えずに分析する」という事は、
統計学では特に重要なことである。

例えば、得られた1万件のデータのうち、異常値が5件あったとしよう。
個別にこの5件を調べれば、なんらかの理由が見つかるかも知れないが、
各々理由をつけてこの5個を除くのはいかにもad hoc だ。
5件だけを個別にいわば「演繹的に」処理し、
残りの9995件を「帰納的に」処理しているのが理由である。

9995件を帰納的に処理するのなら、
5件についても何らかの純粋に客観的な手続きに従って
除くべきだろう。

統計学では、データの意味を考えてはいけないのだ。


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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

アメリカの食材 (とPolish Market ) 【デトロイト】 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカは建国当時はヨーロッパの移民で成り立っていたはずなのに、
なぜか西洋の料理や食材のレベルが極端に低い。

例えば、アメリカ人は一応パンが主食のはずなのにそのレベルは低い。
まあ日本もフニャフニャの変なパンが多いので、平均すれば客観的には
アメリカより微妙に上という程度だろうが、少なくとも東京などの
おいしいパン屋を知る人にはアメリカのパンは不満だろう。

また、ソーセージとか、サラミとか、生ハムといった加工肉のレベルもあまり高くない。
アメリカ産のサラミや生ハムは品を選べば日本製より上だと思うが、
イタリアやドイツ産には遠く及ばない。
ソーセージに至っては、日本と比べてもかなり低いように感じられ、
味覚に障害がないとおいしいと思えないレベルだと感じる。

そんな中、最近知り合いに教えてもらって行ってみたのが、
いま住んでいるト口イ市の外れにある、Polish Market だ。
辺りには、ポーランド系の本屋やらレストランやら集会所(?)やらが
たくさんあって、すっかり Polish Space Town といった感じである。
スーパーは、ちょうど日本の普通サイズのスーパーくらいで、
アメリカの大手スーパーの店舗よりはずっと小さいが、
アメリカによくあるアジア食材店よりはだいぶ大きい。
比較的大きめのケーキ・パン売り場、肉売り場がある他は、
ポーランドやドイツ、その周辺地域から輸入した缶詰や菓子類など
補助食の売り場が大半を占めている。

早速、目についたソーセージ類をいくつか買ってみたが、
アメリカ製品との対比ではもちろん、日本製品と比べても
レベルが高いようだ。

パンも、Polish系の店なのでいわゆるフランス系のパンはないが、
ホールフーズなどの高級スーパーで買うよりは格段にクオリティが高く
値段も3~4割安いのではないかと思う。

アメリカのパンとソーセージ類のレベルの低さに飽き飽きしている人は
足を運んでみる価値のある店だ。

(*1) ちなみに私が東京で一番好きなパン屋は代々木八幡にあるルヴァンだ。
ここには10席ほどの小さなカフェ、ル・シャレもあるので、相方がパン好きなら
休日にゆっくりとブランチでも取ってデートをするにもいい店だ、
と個人的には思うがポシャっても責任は取れない。

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テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

労働者の権利は義務でもある -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカで働く上では自分の業務範囲や労働条件を
きちっと主張するということが大事だ。
それは、長い目で見れば世の中のためにもなる。

それを理解するために、今日は
日本の労働者の考え方(*1)がいかに異常かということを
例を使って考えてみたい。
というのも、日経ビジネスオンラインに
「あまりにも」という記事が載ったからだ。

(*1) あるいは労働者に期待されている考え方

題名は
「もうこれ以上、医療を支えられない - 看護師の35歳女性のケース」
日本で深刻な社会問題となっている医療崩壊関係の記事である。

記事によると、看護師の松田裕美さん(仮名、35歳)は
看護師の激務の中で切迫流産を経験した。詳細はこうだ:

動けない患者の体位を変えたり支えたりすることで、
妊娠中の体に負荷がかかり、お腹が強く張っていた。
張り止めの薬を飲みながら勤務したが、そのうち出血が始まった。
産婦人科医に診てもらうと「切迫流産」(流産する危険のある状態)と診断され、
勤め先の産婦人科病棟に入院して流産を防ぐ治療を受け、
24時間点滴を打ちながら絶対安静の状態が続いた。
しばらくして出血も止まり、切迫流産の状態から抜け出せたと思ったら、
また救命救急の現場に戻された。
仕事を始めるとまた出血し切迫流産となり、再び入院。

こうした問題は深刻で、日本医療労働組合連合会の「看護職員の労働実態調査」(2005年)
では、看護職員2万9000人(平均年齢35.1歳)が回答した中で、
31.1%と3人に1人が「切迫流産」を経験している。


聞いているだけで大変痛々しい。
看護師がいかに劣悪な環境で働いているかがひしひしと伝わってくる。
しかし、問題はここからだ。

労働基準法や男女雇用機会均等法により、
妊産婦の夜勤免除や業務軽減は、本人が申請すれば認められる。
しかし、そうはいかないのが現状だ。

子供の命の危険を犯してまで、
法で守られた権利を主張しないのはなぜだろうか?

医労連の田中千恵子・中央執行委員長は
「本人による申請では、人手不足で言い出しづらい労働環境にあり徹底しない。
かといって比較的、規則正しい生活ができる外来はパート化しているため、
病棟から外来に移ることを希望しても叶わないケースも多い」と指摘する。


この主張は大きな矛盾をはらんでいる。
看護職が本当に人手不足ならば、労働交渉では労働者側が有利になるはずだ。
本当は人手不足でないか、労働者側の考え方がおかしいかのどちらかだ。
何を根拠に「言い出しづらい」と言ってるのか全く理解に苦しむ。

ピアニストや芸能人のようになりたい人が日本中に溢れていて
不平を言ったらすぐ他の人に仕事が移って職を失うというような仕事と比べて、
どちらが「言い出しづらい」だろうか?

あるいは「人手不足」の現状と「看護師が10万人余っている」状況を
比べてどちらが労働条件の改善を言い出しづらいだろうか?

要するに「言い出しづらい」ということを認めることは
「日本の労働者はいかに自分に有利な状況下でも
疲労困憊するまで働くべきだ」
と言っているに等しい。
田中氏は医労連という鎧を着て経営側の目線で発言して
日経ビジネスの sweatshop 奨励運動に加担している様に見える。

さらには、妊娠や出産で夜勤ができないとなると、
正職員からパートに雇用形態を変えられるという、
労働条件の不利益変更まで行われているという。


辞めたくなるような仕事の欠員はどこで埋めるのだろう?
人手不足なら経営側が多少の要求を飲んでも現職を引き止めると
考えるのが自然ではないのだろうか。
また、これは労働基準法違反になるが、病院側がリスクを犯してまで
そうした扱いを一般化させているという根拠はなんだろう。
そういえば、つい一段落前まで統計を使って断定的に説得していたのに
この段落だけは「行われているという」で終わっているのも不思議だ。


夜勤明けは休みにカウントせず、次の日を休日とするべきなのだが、
人員がギリギリな状態で、夜勤明けが休みとなり、
体の疲れが抜けないまま、翌日からまた日勤に組み込まれる。


確かに経営側は人員が足りなければそうしたいと思うだろうが、
その条件をのむかどうかは労働者側の自由だ。


収入増を狙った看護師争奪戦が起こったため、
人気のある病院に看護師が偏在する問題が深刻となった。



看護師が足りないのなら人気のない病院が条件を改善すればいいだけだ。
それが無理なら看護師は不足していないのだ。


過労死寸前でバーンアウト(燃え尽き)して辞める看護師が後を絶たない



彼女(彼)等が身を粉にして人一倍働いたのは間違いないのだろう。
その結果、何人かの患者の命を救ったかも知れない。
しかし、彼女(彼)等が過労死寸前で辞めた後には、
過労死寸前まで働かないと回らない空きポジションが大量に残るだけだ。
そしてこの負の連鎖は、どんどん続いていく。

私はこのあたりに「クソ労働環境」の秘密が隠されていると思う。


短期的には、労働者が踏ん張った方が多くの問題を解決できる。
患者が助かったり、顧客が満足したり、会社が儲かったりする。
しかしその結果、長期的には望ましい社会や会社の仕組みが築かれない。
それが何年、何十年と積もれば社会の資源配分はどうしようも
ないくらい非効率なものになり、
過労死するまで働いても患者を助けられない病院や
過労死するまで働いてもモノが売れない企業が発生する。

特に医療現場では、患者という生身の人間を扱うので、
本能的・倫理的に従事者にとっては
「とりあえず今は力を振り絞って頑張ろう」
というインセンティブが湧きやすいのだと思われる。
悪い言い方をすれば思考停止して
近視眼的な行動に走りがちだということだ。

政府と厚労省があれだけ医療費を削っているのは
そうした特殊要因を背景に、
医療業界はかなり労働環境が悪化しても持ちこたえられるだろう、
という冷徹な計算があるような気がしてならない。


看護師不足が病院経営の危機すら招くことを改めて問い直し、
労働環境の改善を急ぐ必要があるのではないか。



首相や厚労省の官僚にとって、
看護師の労働環境の改善を急ぐためには
かなりのインセンティブが必要だろう。
劣悪な環境で長時間働いてくれる素晴らしい医療従事者たちがいるのに
わざわざ彼らに報いるためだけに予算を消化しても
支持率は上がらないし、省益にもならない。
インセンティブが沸くとしたら、
市民の目に見える形で医療が崩壊し始める時だろう。

つまり、労働環境を改善するためには、
看護師は労働環境がおかしいと思うならどんどん注文をつければいいし、
それでも改善しないなら辞めればいい。
それよりも有効な方法を思いつかない。


看護師不足から必要な配置基準を守ることができず、
病棟閉鎖する病院も全国で散見されている。



その結果、病棟を閉鎖する病院は一時的に増えるだろうし、
その結果病院不足で死ぬ人も一時的に増えるかも知れないが、
医療をどの水準で維持するかには国民的なコンセンサスが生まれるだろう。
結局、平均的に看護師が労働条件にわがままを言うようになっても、
数年すれば医療はその水準まで回復して、
やや高い医療コスト負担と見返りに
適正で維持可能な労働環境が達成されるはずだ。


こうした問題は、医療業界で特に目立つというだけであって
基本的にはどの産業でも起こっている。

労働者が労働環境にNOと言う事で
短期的には世の中にとってマイナスになるが、
長い目で見れば労働力が最適に配分され望ましい世の中になる。

もちろん、アメリカのように労働者がNOと言い過ぎるために
ひどいサービスしか提供されないという失敗も起こりうるが
日本の場合は労働者がYESと言い過ぎることによる
負の影響の方が大きいように思われる。

例えば、あなたが安月給で3年間有休も取らずに連日徹夜で働いたとすれば、
引退後に自費出版する自伝でモーレツぶりを自慢するには便利だが
後任者は陰であなたのことをどうしようもない奴だと思うだろう。


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仕事を生きがいにせざるを得ない人達
労働市場で複数の選択肢を持つ優位性~TA/RAの経験から


テーマ : お仕事
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教育の機会平等と選抜 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

松本徹三氏がアゴラで日本の教育問題、特に中学受験の問題に関して発言して、
それに対して金融日記の藤澤氏が噛みついている。

ごく簡潔に構図を説明すると、松本徹三氏が教育方針に悩む知人の例を挙げて
「良い中学に入るために塾に通い詰めて受験勉強をしなきゃいけないのはおかしい」と主張し、
それに対して藤沢氏が「中学受験こそ日本の教育システムの肝」と反論している。
それぞれの主張に、もっともなところがあり、疑問なところもある。

教育を国全体として考えたとき、重要なことは、
1) 全ての子供に平等に機会を与える一方で、
2) 前途有為な子供を選抜して教育リソースを重点配分する
ことであると思われる。
もちろん、全ての子供に最高の教育を受けさせることができれば一番いいが
地方自治体の決算や私立学校に掛かっているコストを見れば、
それが経済的に非現実的だということはすぐに分かるだろう。

私は日本とアメリカ以外のことはあまり知らないが、
結論から言うと、1) と 2) のいずれの点でも、
日本のシステムは比較的優れていると思っている。

まず、機会平等の観点から見ると、
全ての科目を教える通常の学校を運営するには相当なコストが
かかっていることには注意が必要だろう。
アメリカではこの部分で、公立学校にしか通えない中流以下の層と
充実した教育を受けられる一握りの上流階級が分かれてしまっている。
公教育にしても、所得によって居住地域が異なり、
それによって教育環境は異なってくる。
上流階級の子供は日本より良い初等・中等教育を受けられるかも知れないが、
その結果、選抜においても生まれ持った環境の占める比重が高くなり、
必ずしも能力に優れた子供が選抜されないので
リソースの配分も非効率的になる。

日本では、小学校までは全ての子供に比較的公平に初等教育が施されている。
中学受験という選抜で有利な立場に立つには
確かに進学塾に通うなどして相当な準備をしなければならないが、
そうした教育を受けるために必要な経費は恐らく2~3百万円ほどで
中流階層までのかなりの割合の子供がこのチャンスに恵まれる。
完全な平等からは程遠いものの、
学校教育に全てを託すのに比べれば
機会は広く公平に与えられているのではないだろうか。

少なくとも、経済力で良い学校に通えるどうかが決まる社会よりは
教育リソースは有効に配分されているだろう。

日本の教育の問題は、教育リソースが重点配分されたあとも
更なる選抜のためにリソースが費やされていることだと思う。

超一流の私立中高に入った生徒は、
再び超一流の大学に入るためにエネルギーを費やし、
大学に入ってからは希望の学科に進めるようにエネルギーを費やし、
更に超一流の企業や官庁に入ったり、難関の資格を取るためにエネルギーを費やす。
今や会社に入ってまで、各種検定試験を受けさせられる
ところも珍しくない。

確かに中学受験の入試問題を見れば12歳の子供の思考力を
試すのに十分な、趣向を凝らした問題に感心させられる。
一方で、例えば国家公務員I種試験の問題を見ると、
子供の思考力を試すような幼稚な問題に呆れさせられる。
確かに、頭の回転の早さや記憶力のようなプリミティブな能力を
試すには適した問題かも知れないが、
あの試験を作っている人達は日本の将来の一端を担う人たちに
12歳から22歳までの10年間に何を学んで来てほしいのか、
私には全く見えてこない。

学校に入るための選抜はあくまで教育リソースを最適に配分するための手段だ。
配分されたリソースは将来を支える人材を育てるために
有効に使われるべきである。

そもそも日本は米国や中国などと比べれば元々規模が小さい上に
少子化も進んでいる。選抜にかけるコストをある程度小さくしても
教育資源をうまく配分できてしかるべきだ。

個人的には日本の中学受験のシステムは結構よくできていると思っている。
経験的には、日本の難関中高(例えば上位10校程度)の出身者は、
頭の回転の早さや理解力という点において
平均すると一流大卒の平均的な人たちよりも優れていると感じる。
もし中学受験のシステムを今のまま維持するのであれば、
彼らの一定の潜在能力を認め
トップ数校の入学者に対しては大学入試を免除して、
その代わりに全人的なエリート教育を施すのも一案だろう。

いや、それは少々極端かもしれないが、
教育リソースをひたすら次の競争のためだけに使うのは
そろそろ辞める時期なのではないだろうか。


テーマ : 教育問題について考える
ジャンル : 学校・教育

レモンの糖度を測ろう -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカの果物は美味しくない。
なんでも一つ一つが大きくて立派なのだがとにかく水っぽくて味が薄いのだ。

例えばいちごなどが良い例だ。
粒が大きくて中まで赤いが、甘さも酸っぱさも両方足りない。
昔はそうではなかったらしい。
M校にいたときにいた一番年上の友達と話したら、
「昔のイチゴはもっと濃厚な味がしておいしかった」
と言っていた。

私がアメリカに来たのは6年前だが、
最近6年の間にもブルーベリー、ラズベリーは
明らかに大きくなり、味が薄くなった。
今朝食べて気づいたのだが、ついにアメリカン・チェリーも
大粒で味の薄いバージョンが出始めたようだ。
巨大なリンゴを売っている店もあるらしい。

品種を改良しても、植物が果実をつけるのに費やせるエネルギーは
変わらないわけで、収量を多くしようとすると、必然的に味は薄くなる。

要するにスーパーに並べた時に、
重さあたりの価格が安い方が売れるから、
品種改良でどんどん大きくして味は二の次なわけだ。

もちろん、消費者が安いものを求めているのであれば
それは仕方がないわけだが、
私はどうも違うのではないかと思っている。

例えば牛肉などではブランドや部位による差別化ができているおかげで、
必ずしも高いものが売れないわけではない。

果物も量あたり単価以外に消費者にアピールできる統計量(指標)を
一つか二つ用意することができれば、
廉価品と差別化した商品を売ることができ、
生産者・消費者双方にとってプラスなのではないかと思う。


これは果物の市場だけに限らない。
日本メーカーの車のスペックは20年くらい前には
既に他国のメーカーを凌駕していたと思う。
しかし日本車はスペックに現れる部分だけは一番でも
他のクオリティーはかなり怪しかった。
それは数値化できない、塗装の技術であったり、
安全性の技術だったりした。
しかし、安全性が騒がれるだして
指標として数値化されるようになってから
日本車の安全性は明らかに改善したように思う。


統計や数字が嫌いな人は、何かあるとすぐに、
「大事なのは数字じゃない。」
「数字だけで本質は分からない。」
と言い出す傾向にあるが、
むしろ統計や数字をもっと使うことで
本質に近づける場合がほとんどだ。


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学力偏差値の功罪
政策目標にできるインフレ指標とは


テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

アメリカの就職面接のプレゼンについて -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今年、うちの数学科は、代数か解析の人のtenure-trackを1名ということで
選考しており、1月の3週目から2月の1週目にかけて6人の候補者を
週に2人ずつキャンパスに呼んでプレゼンや面接による審査をしている。

数学やその周辺分野ではおそらく、一流大学のフライアウトがおそらく
概ね2月にあるので、ランクの落ちる大学はそれより前に選考するか、
後に選考するかという感じになる。選考委員の責任者は、良い人が取れる
かどうか、相当なプレッシャーがかかるようだ。

ただし、基本的にはオファーを出しても来るかどうか微妙、というくらいの
人を面接し、ダメだった場合は諦める、という方針で採用活動をする大学が多い。
特に私立の一流大などは、特段目につく人がいなければ採用しないケースが
多いように感じられる。

今年の採用に関しては私は分野違いではあるのだが、多少分野の近そうな
解析のプレゼンを今のところ二人分聞いた。

一人目は珍しくスライドを使わずに、ホワイトボードだけでのプレゼンだった。
これは、数学科でもあまり一般的でないと思うのだが、
やはりあまりお勧めの方法だとは思えない。
というのは就職面接のプレゼンは、聞く人の半数くらいは専門外の人(*1)なので
コンセプトや主結果を中心にかなり濃淡をつけて説明する必要がある。
しかし、全てホワイトボード(or 黒板)で説明ということになると
あまり重要でないところも時間をかけて書かなければならず、
全体のバランスを取るのが難しいように思う。


(*1) 例えば数学であれば、代数/幾何/解析/応用数学と分けた時に
別のカテゴリーの人。

逆に、PDFやパワーポイントを使ったプレゼンの場合は、色々な情報が
盛り込める分、細かいところを突っ込まれることが多くなるので、
その点を入念に調べておくことが大事
だ。
二人目の候補者のプレゼンテーションファイルは洗練されていたのだが、
細かな質問(主結果と関連する定理の証明のアイデア等)にあまり答える
ことができず、おそらくマイナスの評価につながったのではないかと思う。

まとめると、就職面接のプレゼンの要点は:

― 専門外の人にも分かりやすい丁寧なIntroductionを付けること
― 内容自体は同分野の人に自分の結果をアピールできるようにコンパクトにまとめること
― 最後に主結果の要点を専門外の人にも分かるようにレビューすること
― 事前になるべく多くの人にプレゼンを聞いてもらい質問を想定しておくこと


という感じになるだろうか。
専門外の人として聞いた場合、
introductionとsummaryが不十分なケースが多いように思う。
特にsummary は、途中で質問がたくさん出たりして時間がおしていると
ちゃんと説明するのが難しくなるので、
あらかじめ本論の細かい技術的な点など
省いても構わないスライドを考えておいた方が良いだろう。

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アメリカの大学ポストへの応募
米国アカデミックでの就職活動のまとめ
大学の公募のスクリーニング


テーマ : アメリカ留学
ジャンル : 海外情報

相撲は真の日本の国技だ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

朝青龍引退が引退するそうだ。
横綱審議委員会が(1名の欠席はあったもの)満場一致で引退勧告を決定し、
朝青龍は協会に引退を届け出た。

私は、この一連の事件を見て相撲は真の国技であると確信した。
相撲は外国人が日本を理解する上で今後も素晴らしい教材であり続けるだろう。

まず、横綱審議委員会の引退勧告書を見てみよう。

---
朝青龍関引退勧告書
平成22年1月16日未明に発生した横綱朝青龍関の一連の不祥事は、
畏敬(いけい)さるべき横綱の品格を著しく損なうものである。
示談の成立は当事者間の和解にすぎない。
横綱に対する国民の期待に背いた責任を免れるものではない。
よって横綱審議委員会規則の内規5、ロ、の「横綱としての体面を汚す場合」
により横綱引退を勧告する。
平成22年2月4日 鶴田卓彦

---

トッププレーヤーの朝青龍が暴行事件を起こしたことは、
もちろん重大な問題であるし、事件を隠蔽することなく、
きちんとした調査をした上で処分をすべきだろう。
刑事罰が課されるようなことがあれば、別途定めた規定に
従って、懲戒解雇などの措置を取るべきだ。
今回の朝青龍の事件はどうだろう。
被害者と示談が成立し、民事訴訟にすらなっていないそうだ。
引退勧告は「国民の期待に背いた」ことらしい。

ちなみに、若手力士を組織的に集団で監禁・暴行したあげく
死亡させた時津風部屋の事件においては、親方が逮捕される直前まで
なんの処分もなかったと記憶している。

「国民の期待」とは何なのだろうか。
国民投票を行ったという話も聞かないので、
単に横審の総意で決定したということに過ぎないのだろう。

横審は、業界関係者であるマスコミから5人と、
有識者と称した素人7人で構成されている。
私には作曲家や映画監督が相撲界の有識者である理由がよく分からない。
ちなみに、定例会や稽古総見など
決まった活動は年に10回程度しかない。
また、横審は理事長の諮問委員会でありながら、
協会と意見が食い違うことはほとんどない。
横綱昇進に関し、相撲協会理事長が諮問して昇進が否決された
ことは、過去40年間に一度しかない。それも、貴乃花の横綱
への昇進が少し遅くなったという程度の影響しか与えなかった。
ようするに横審は、御用学者を抱えて「国民的な議論を尽くした」
ことを示すための日本政府の委員会と同じだ。

多くの昇進が満場一致で決まるのも、
「12人くらいの委員会なんだから空気読めよ」
という「日本文化」を象徴していると言えるだろう。


引退勧告という制度は、日本企業の希望退職の制度にそっくりだ。
朝青龍は自ら引退を届け出たことになっているが、
実際は引退を届け出なければ解雇であったという。
こうした形を取ることで、協会は各方面からの批判を回避するのに役立つ。


相撲協会では横綱というのは特別な存在で、
「力量」だけでなく「品格」も抜群でなければならない。
今回の引退劇も、朝青龍が横綱であったことが大きな理由である。
横綱に対してだけは協会は横審を通して生殺与奪の権利を握っている。
一言で言えば、協会には「出る杭を叩く権利がある」ということだ。
これは、ある意味分かりやすくて良い。
日本も総資産1000億円以上の企業オーナーを「横綱」と認定し
いつでも逮捕できるという法律を作っておけば、ホリエモンのような
人物を逮捕した時も、「横綱だから仕方ないか」と「国民の総意」が
取り付けられるに違いない。


相撲協会にこれほど、外国人が増えたのは別に相撲協会が国際化を
進めたいからではなくて、各部屋が強い力士を部屋で育てることで
協会から資金を獲得できるからだ。
一方で外国人勢力が強くなってくると
横綱昇進の基準を微妙に厳しくしたり、
「外国人は各部屋に一人まで」とお得意の自主規制を作ったり、
二つの部屋を合併(二子山部屋と藤島部屋)させて外国人に対抗したりと
セコイ参入障壁を作るのは日本のお家芸だろう。


相撲協会の運営があんなにだめなのは、
内部からしか人材を登用しないサラリーマン組織だからだ。
しかも組織内での昇進は土俵という「現場」での実績で決まる徹底した現場主義だ。
経営者としての能力というのはあまり重視されない。
もちろんいくら強くても最初は序の口(大卒は幕下)から
全体主義のクソ労働環境で修行を積まなければならない。
「若い頃の苦労は買ってでもしろ」という諺があるからだ。

はたから見ていると、
スポーツ界や芸能界に多くの知人を持つ朝青龍は、
協会の発展にずいぶん貢献しているように見えるが
もちろん、日本ではそういう派手な活動はご法度だ。
大学の教官がテレビや政界に進出すると
やっかみから同僚から袋叩きにされる国が日本である。


日本の社会の仕組みというのは外からは少し分かりにくい。
これをきちんと世界に示すためには
伝統・文化という隠れ蓑のもとに
ある程度、本音を建前として表に出す必要があるだろう。
その意味で、
相撲界は日本の仕組みを世界に発信するのに
極めて重要な役割を担っている。


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テーマ : 朝青龍、引退表明!どう思う?
ジャンル : スポーツ

双方向イマージョン教育とは -- このエントリーを含むはてなブックマーク

YS Journal さんの
「バイリンガル教育講演会 2方向イマージョン教育」
というブログ記事でも触れられているが、
先日、デトロイト郊外の Livonia 市で
日英バイリンガル教育についての講演会が行われた。
講演者は、トロント大の中島和子名誉教授である。
講演会に行くまで知らなかったのだが、この人は
日米のバイリンガル教育の第一人者の一人のようだ。

日英バイリンガル教育を専門に研究されている方なので、
実体調査と考え方の両面から大変ためになるお話であった。


アメリカの比較的大きな都市に住んでいる日本人の子女の場合、
平日は現地校に行って授業を受け、土曜日に補習校に行って
主に日本語で国語と算数を習うというパターンが多い。
2か国語を学べるのは子供にメリットがある反面、
一方の言語が苦手になることで
様々なストレスを受ける可能性も高く、
場合によっては、ダブル・リミテッドと呼ばれる
「両方の言語ともきちんと使えない状態」
になる恐れもある。

そんな中、近年、イマージョン教育という二つの言語を
効率的に習得するためのプログラムが注目されている。
このシステムでは、あるクラスでは午前中は全て英語を使い、
午後は全て日本語を使うという方式である。
2つの言語を一つの学校で学ぶので、年齢に合わせて
使用する言語の比率を最適化することで効率的に学べる
ということが一つのセールスポイントであるらしい。

通常、イマージョン教育はアメリカであれば例えば、
「英語圏の子供が英語と日本語を学ぶ」
ということになるが、さらに、
英語が母国語の子供と日本語が母国語の子供を混ぜて行うようなケースを
「双方向イマージョン教育」と呼ぶ。
日本語と英語の双方向イマージョン教育は、講演会によると
たったの3校(フロリダ、イリノイ、バージニア)でしか
行われておらず、今年の秋からミシガン州 Livonia に新たに
イマージョンスクールを作る計画、とのことである。


しかし、私は双方向イマージョン教育に関しては
今のところあまりポジティブな見方をしていない。
イマージョン教育では、両言語とも高度なレベルでの
言語習得が難しくなるという意見も聞くからだ。


講演の中で中島氏もイマージョンスクールに通わせたとしても、
日本語は補習校のような日本語ネイティブを前提とした水準には
達しないということを認めておられた。
イマージョン教育が、二言語をほぼ平等に扱うという前提に立てば
日本人がこのプログラムに参加しても、現地校の英語レベルには
遠く及ばないことになる。
授業が、最大公約数的に行われるとすれば、他の科目の教育も、
言語面で制約を受けるので、ある程度の負の影響は免れないだろう。

また、双方向イマージョン教育を実施した場合、
生徒間の人間関係が母言語に依存して分かれることも予想されるので、
敢えて同じ学校で二言語を教えることが
デメリットになる恐れも大きいように思われる。

私はアメリカでは tenure-track という
一時滞在でも永住でもない曖昧な立場にいるので
娘にはやはり日本語と英語の両方を
きちんと使用出来るようになって欲しいと思っているが、
今のところ、
日本語教育はなるべく全員が日本語ネイティブの環境で
英語教育は日本語をしゃべれる人がいない環境で

受けて欲しいと思っている。

この方針が妥当なのかはよく分からないが、
一応、そうした考えを元に、住まいを決める際も、
センサスの2000年調査で日本人比率が
1%以下の学区を選んでおいた。

ただ、日本語に関しては5歳から週一回の補習校だけに
なってしまうので、どこできちんと教えるのかは
「現在、深く考慮中」wである。

ブログ内の関連記事:
― 初等教育を丸投げする米国(教育制度比較1)
娘の算数教育


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数学と処女率 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

前回、出産に関する記事を書いたところ毒之介さんから

>僕が学部の時にも妊娠していたTAがいて、
>後半の数週間他のTAと代わってもらっていたことを思い出しました。
>そういえばこのクラスも数学でした。数学者って結構お盛んなんですね。

という指摘があったが、統計上はそうなっていない。
Wellesley College というアメリカでもっとも有名な女子大学が取った
専攻科目別の処女率という統計があり結果は下図の通りだ。

処女率

図から分かるとおり、数学専攻の女性の処女率はもっとも高い。
おおよその傾向として知能指数が高い専攻の方が処女率も
高いという傾向があるそうである。

もっとも、この統計はある程度留保してみる必要があるだろう。
すなわち、男女共学の総合大学では、数学、化学といった分野は
男性の比率が高いので、労働市場の求人倍率とのアナロジーで言えば、
女性に対する求「愛」倍率が高くなり、処女率は他の専攻対比で
低くなる要因もあるように思われる。

話はそれるが、こんな統計が存在することからも
アメリカでは様々な統計が比較的簡単に取られ
公表されていることが想像出来る。

日本の有名女子大で同じアンケートをしたら、
プライバシー侵害で人権問題になる可能性もあるだろう。

アメリカの多くの大学に統計学科があり
私の知る限り日本に一つしかない(*1)のは、
そうした統計のavailability の違いも影響している。

(*1) 統計数理研究所 

ブログ内の関連記事:
婚活で成功したい女性はまず数学を専攻すべき
統計学に興味を持った理由
数学とは自然科学と恋愛の道具
家族連れ留学と出産2


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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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