マスコミの今後 ~ Google と AP通信が記事利用で合意 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ニュースと政治的な主張と広告をパッケージングして印刷して売る
という意味での新聞は、完全に詰んだ産業だ。

ニュースは、インターネットでより早く無料で入手できるし、
各種発表や統計に関しては一次ソースに当たることも容易になってきた。

政治的な主張や解釈は、学者、評論家、αブロガーなどが
無料で提供しており、むしろ新聞社の分析よりも質が高いことが多い。
大手新聞社も政治的な主張の部分でお金を取る気はないようで
社説はウェブで読めることが大半であるように思う。

マスを対象にした従来型の新聞広告は費用対効果が悪く、
ネット上の広告に大きくシェアを奪われている。

従来型のマスコミに唯一アドバンテージがあるとすれば
一次ソースにあたることが難しい記事を提供するサービスであろう。

こうした状況下で、マスコミの将来はどうなるのであろうか?
ニュースの内容の解釈が不要になっている以上、
各分野につき競合関係にある報道機関が2~3社程度
存在すれば事足りるように思われる。
お金の払い手は、情報を流すインターネットのポータルサイトだ。

そういう意味で、今回の グーグルとAP通信の合意は
象徴的な出来事といえるだろう。


元記事はこちら:
Google, AP strike new deal on Web licensing rights
GoogleとAP通信など、ニュース記事のWeb利用でライセンス契約


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テーマ : マスコミ
ジャンル : 政治・経済

社会保障問題:世代間対立は無意味。分断工作を。 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

高齢化に伴う年金や医療を初めとする社会保障問題は
深刻で基本的には世代間の負担の問題である。
しかしながら、日本では現実的に世代間対立を先鋭化させる
ことによってこの問題を改善することは不可能だろう。


日本の人口動態を見れば、日本の高齢化に伴う社会保障問題が
発生する事は80年代前半から予測できたはずなのに、
これまでに行われた制度の微調整は、年金保険料を上げたり
一部を税方式にして徴収能力を強化したりといった
むしろ制度を肥大化させるものであった。
今後、有権者の高齢化が進めば、世代間の公平性を
上げるための改革は一層難しくなる。

高齢者がマジョリティーになる社会では、
経済問題も高齢者間の利益配分を中心に話が進む。
若年層が世代の利益を確保するには、
この利益配分争いにうまく付け入るしか方法がない。

仮にあなたが年金問題の世代間不公平を
改善させたい社会派の新聞記者だとしたら、
「高齢世代は、将来世代のために応分の負担を」
といった記事ではインパクトが弱く失敗に終わるだろう。

もっと、個別の層にターゲットを絞るべきだ。

例えば、裕福な高齢者の生活を分析し、
こんなにたくさんの年金支給が必要なのだろうか?と問いかけ、
「厚生年金の報酬比例部分の支給は切り下げるべき」と議論を持っていく。
そうすれば、多くの若年層だけでなく
富裕層以外の高齢者の賛同も得やすい。

あるいは、70代で元気に働く高齢者を紹介し、
元気なお年寄りが多い今、65歳で引退する必要があるのか?と疑問を呈し、
生活保護の稼動年齢の基準は70歳にすべき、と持っていく。
仕事確保のため、役所の単純作業を割り振るのも一案だ。
事実上、一部の人件費がタダになるので、
多くの有権者の支持を受けられるだろう。

年金生活者の支出は年齢と共に減少していくことを根拠に
有権者の平均余命より後の部分について年金の段階的削減を提案するのも一案だ。
生活に困窮する場合のみ別の制度で保護すればよい。
生涯の年金収支を生存年数別にグラフにしておけば、
多くの人は「長生きの人はこれだけ得をしているのだから」
と納得する可能性が高い。
身元不明の超高齢者がニュースになった今はチャンスだろう。

健康保険については、例えばタバコの販売をID管理し、
喫煙者の肺疾患は保険でカバーしないといった方法も考えられる。

こうした策略に満ちた社会は寛容性が低下しており
望ましい社会とは言えないだろう。
しかし、硬直化した高齢化社会の民主主義が陥る必然であるように思える。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

「手段=目的」という美しい等式 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

mixi の「大学院留学」コミュに
「就職活動はするべきか?」というトピックがたった。
大学院に落ちた時のための保険として就活する、という話ではない。
「就職活動を一切しないとなると、大学院を出た後に
就活という大きな壁にぶつからないかという不安
があるので就活活動をしたい」
、ということらしい。
そして、賛成のレスが結構ついている。

よく考えると、就活の究極の目的は就活自体なのかも知れない。
それどころか、日本にある全ての苦難の目的はそれ自身だと
言っても過言ではない。

大学受験は、ともかく誘惑に負けずに楽しくない勉強をする
という努力の過程そのものが一番大切だ。例え、希望の大学
や学部に入れなくてもその経験は必ず役に立つ。

就活で大切なのは、世の中の厳しさを知ることや
アイデンティティを確立することだ。例え、希望の企業の
内定が取れなくてもその経験は必ず役に立つ。

婚活
で大切なのは、自分磨きをして自分を魅力的な人間に
するとともに、自分の価値を見つめなおすことだ。
例え思い描いていた結婚相手を見つけられなかったとしても、
前よりもずっと魅力に溢れ迷いの無い自分になることができる。

一生懸命働くのは、パンを買うためではない。
事実、輝かしい業績を残したサラリーマンが
十分な蓄財をして引退しても、ぬれ落ち葉などと呼ばれるはめになる。
働くこと自体が大切なのだ。
無論、働きすぎて過労死してはいけない。
そんなことになったらそれ以上働けないからだ。

そう考えていくと、僕は今まで非常に不真面目な人生を送ってきた。
明日からもっと真面目に、数学をやるために数学をやろう。


テーマ : キャリアを考える
ジャンル : 就職・お仕事

変わる専業主婦像 ~ グローバル化時代の専業主婦 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

Chikirin さんの先日の記事、「変わる家族形態」が面白い。
社会がものすごい勢いで変化するなかで、
家族形態も急激に変化せざるを得ない事は想像に難くない。

そんな中、専業主婦という職業、専業主婦世帯という家族形態は
ここ数十年、都市化した社会で常に主要な形態であった一方で
社会における意味は大きく変わってきた。

戦後の日本では、社会保障制度面の後押しなどもあり、
専業主婦は(年収百数十万以下の兼業主婦を含めると)
都市部の女性にとって特殊でない唯一の選択肢であったと
言っても過言ではなかった。

一方、女性のキャリア選択が多様化した現代では、
多くの経済力のある男性、高学歴な男性、社会的地位のある男性は
相手の女性にもキャリアや学歴、経済力を求めるようになり、
双方が高い能力や経済力を持つ「強者連合」が生まれるようになった。
その結果、専業主婦像は二つに分離したように思える。
一つは「経済力や知力の低い家族のかたわれとしての専業主婦像」であり、
もう一つは「働く必要の無いほど裕福な専業主婦像」である。

しかし、社会がグローバル化する中で、
「グローバル型専業主婦」ともいうべき
もう一つの新しい専業主婦像が存在しうるのではないかと思う。

Chikirin が記事で述べているような
「23歳で就職したら3年後にはインドに行き、26歳から31歳まで
ムンバイ勤務。日本に帰ってきて3年後、ケニアに赴任。」
というような男性はどのような女性と結婚すれば良いのだろうか?
一つの可能性は、一人でもやっていける経済力があって別居にも
抵抗感がない女性だが、そういう女性はまだまだ少ないし、
男性の側も別居しても良いという人ばかりではないだろう。
そういう時に需要があるのは、次の条件を満たす主婦希望の女性だ。

1.いかなる環境にも適応する

どこの国には行きたくないとか、
結婚相手のせいで不自由な生活を強いられるようになった
と考える配偶者は働く側にとっては都合が悪い。
いまや「条件が良いから」というだけの理由で、
先進国から中東諸国に就職する人がいる時代だ。
配偶者から「他の国で働くことになった」と聞いたとき、
「決まってしまったなら行き先を聞いても仕方ない」
というくらいの人が望ましい。

2.お金に執着しない

専業主婦世帯は、単純に考えて収入が共働き世帯の半分である。
したがって、時間がある分、収入は半分でも仕方ないよね、
と割り切れる人であることが望ましい。

3.家族の結びつきに重きを置く

環境面と経済面での不便に対する見返りとして、
家族の結びつきを重視している人が望ましい。
そもそも、僻地や外国では必然的に家族関係は強まるし、
家族で過ごせる時間は増えるからだ。


婚活世代の女性が憧れる「働く必要の無いほど裕福な専業主婦像」は
理想的だろうが、現実には高嶺の花だ。

よほどの美人だとか、人の心を掴むのが抜群に上手いとかいう
優位性がないとなかなかチャンスを掴むのは難しい。

一方で、上の3条件も全ての人が満たせるわけではないが、
容姿や能力、キャリアに関わらず適性次第で十分にチャンスがある。
専業主婦のポスト争いが熾烈になるなか、
こうしたニッチ市場の存在を気に留めておいても
婚活世代の女性にとって損はないだろう。

男女を入れ替えて考えると、専業主夫はさらなるニッチ市場なので、
こうした市場に目をつけておくことは一層重要だろう。


テーマ : 結婚
ジャンル : 結婚・家庭生活

書評:子どもの貧困-日本の不公平を考える(阿部彩) -- このエントリーを含むはてなブックマーク




本書は、日本における子どもの貧困の存在や、格差の固定、
子供の貧困に対する社会保障の不足といった論点に始まって、
母子家庭の問題、国の再分配機能全体の問題、
学歴社会に対する考察、国民の貧困に対する意識、
そして最後には筆者なりの子どもの貧困に対する処方箋まで
取り上げられており、教育の機会平等を考える上で
極めてインフォーマティブな内容となっている。
教育関係者のみならず未成年の子どもを持つ全ての親にとって有用な一冊である。

筆者は人口問題研究所の管理職についており、
本書の執筆にあたっても厚生労働省の補助金を受けているが、
本書はセクショナリズムに基づいた視野の狭い本ではなく
筆者の考える、あるべき社会の姿が理性的に描かれていると感じられる。
2008年末という執筆時期も合わせて考えると、
厚生労働省の民主党政権を見据えたポジション・トーク
との懸念がすぐに頭に浮かんだがそれは杞憂であった。

特に出色の出来なのは、
「子どもにとっての"必需品"を考える」と題した第六章である。
多くの場所で貧困が「相対的貧困」と言った抽象的な定義を基に
語られる中、本書では「最低限必要なもの」を社会調査で調べる
ことによる「合意基準アプローチ」を用いることによって
「相対的剥奪」と呼ばれる指標を算出し、
日本社会の貧困防止についてのコンセンサスを導き出している。
調査の結果は、
日本人が全ての人にとって必要だと考える生活水準は
イギリス・オーストラリアなどの調査に比べて非常に低い、
というものであった。

その背景は必ずしも明らかでない。
著者が言うように、日本社会に根強く残る
「総中流神話」「機会の平等神話」「貧しくても幸せな家庭神話」
といったものが影響している可能性も否定できない。
しかしながら結果をそのまま受け止めれば、
日本人は社会的弱者の保護には寛容ではなく、
コンセンサスは米国型の自己責任の社会になっている。
やはり心の底では「努力せぬ者、食うべからず」というのが
日本人の価値観ということになるだろう。

こうした興味深い分析結果は、一方で、
筆者の理想とする社会と日本国民のコンセンサスとの乖離を
浮き彫りにしてしまっている側面もある。
筆者の提示する政策的な処方箋は、
子どもへの社会保障の更なる充実を理想とすれば建設的なものだが
経済成長を重視する人々に対する訴えかけとしては
インパクトに欠けるのも事実だ。

例えば、筆者は「少子化対策ではなく子ども対策を」と訴えているが、
政策が少子化対策に偏るのはその経済的な便益が明確だからだ。
子どもの貧困対策を訴えるのであれば「教育の機会平等」の
先にある人的資本の蓄積や国家の繁栄への道筋を示さなければ、
この国の大多数の人を説得する事はできないだろう。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

Japan as No. 1. That is a problem! -- このエントリーを含むはてなブックマーク

2010年第二四半期のGDPは遂に中国が日本を抜いて世界2位になったそうだ。
YSJournal さんのブログ記事でも紹介されたように、このニュースをウォール・ストリート・
ジャーナルは Japan as Number Three として取り上げた。

「世界3位じゃダメなんですか?」
と蓮舫なら言うかも知れないが、
むろん、2位でも、3位でも、4位でも、大した問題ではない。
むしろ、グローバリゼーションが進む中で人口が日本の10倍以上も
いる中国のGDPが日本より小さいかったことの方が不自然なのだ。

それでは日本のもっとも深刻な問題は何なのであろうか?
私は、むしろ日本がいろいろな分野でNo.1になってしまっている
ことが問題である
と思う。

1.高齢化世界一

先進国はどの国も今後、社会保障の維持が問題になっている。
これは二十世紀に各国政府による問題の先送りという側面が
大きいが、少子高齢化は問題を顕在化させる大きな要因だ。

年金額を削る、支給開始年齢を上げる、社会保障負担を上げる、
大量に移民受け入れる、といった様々な選択肢があるが、
日本はこうした問題を他国に先駆けて解決しなければならない。

2.デフレ世界一

デフレの原因はいろいろと議論されているが、
日本が世界の主要国の中で最も深刻なデフレに陥っているのは明らかだ。

金融政策、財政政策の両面から対策が必要だろうが、
伝統的に行われてきた政策を打つだけでは事態を打開するのが
難しくなってきている。諸外国の政策や過去の事例に倣っている
だけでは問題は極めて長期に渡って解決しないだろう。
日本は、他国に先駆けて解決案を自分で考えなければならない。

3.財政赤字世界一

国や地方の債務の総額はGDPの200%に迫っており、
これまた主要国の中でダントツである。
「日本の財政はこのままだと5年以内に破綻する」
というようなことを言う人がいるが
これは、証券会社のポジショントークか週刊誌の売り込み文句を
ナイーブに信じてしまったおめでたい人たちだ。

一番の問題は、実際問題として財政赤字がどの程度まで維持可能なのか
誰にも分からないことにある。またGDP比での債務残高や財政赤字だけが
信頼に足る指標であるとは考えられない。
こうした状況下では、いくつかの指標で先頭を走る国は
それなりのリスクを負わなければならなくなるので
その対処方法を自ら考えなくてはならない。

4.言語的な孤立世界一

日本語を公用語として話す国は日本だけである一方、
日本人知識階層の英語力は世界で最低レベルにある。
このこと自体は、言語構造の違いといった問題を
抜きにしたとしても、特段奇妙なことではない。
技術をベースに世界2位の経済規模を達成してきた日本には
日本語での知識の蓄積が大量にあり、日本語だけを使って
経済的に発展することが容易だった。

しかし、グローバリゼーションに伴う英語の標準語化や
日本経済の規模縮小に伴って、現在の言語の使用状態を
維持することのリスクが増大していることは確かである。


日本は、安定した冷戦体制下で大きな障害を体験することなく
経済成長してきた。特に1930年以降に生まれたほとんどの日本人には
一生懸命汗を流せば豊かになれるという価値観が染み付いている。
しかし、今後の日本に求められるのは、多くの社会問題を
世界の先頭に立って解決できる創造力だろう。





テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

米国統計学会=JSM (お国事情観察編) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今回は、少し柔らかい話。
バンクーバーなんてシアトルからスープが冷めない距離にあるので
アメリカっぽい雰囲気かというと全然そんなことはない。

1.アジア人のプレゼンスが大きい

例えば、私が5年間住んだマディソン市などはリベラルでも
大学町だけにやっぱり「外国人はお客様」みたいな雰囲気があるのだが
バンクーバーはアジア人が文字通り市民権を得ている雰囲気である。
アジア系の女子の色気も白人に負けていないし
アジア系男子も結構健闘している感じがある。

2.ついでに日本人も多い

ジャパレスの店員に日本人が多いのにまず驚いた。
道で日本語を話している若者も多い。某氏によると
ワーホリ(もちろんworking holidayの方)の日本人がたくさん来ているらしい。
ついでに、JSMの会場でも日本語を話している人が
前回より明らかに多かった。
ワーホリでカナダに来たあと統計学の重要性に気づいた
日本人が大挙してJSMに押し寄せたのだろう。

3.相変わらず不動産市場がバブっている

実は私が旅行に行って楽しみにしているものの一つは不動産情報誌だが、
「2014年まで支払い無し!」とか
「年収の10倍の家を買おう!」とか
「今年3件購入して、2年毎にレバかけて倍々にしていこう!」
みたいな話がいっぱい載っている。これはアメリカでは今やあり得ない。
調べてみたら、バンクーバー都市圏の人口は
1981年 116.9万人
1991年 160.2万人
2001年 198.6万人
2006年 211.6万人
とうなぎ登りに増えているようだ。
まだバクチを打ちたい人は今のうちにバンクーバーへ。

4.食べ物がおいしい

その辺の店でフランスパンとか買っただけで段違いに美味しい。
娘によると、
「カナダのパンはおいしいからずっと居たいけど、
縫いぐるみが家で待ってるからそのうちアメリカに帰らないと行けないね」
ということらしい。

5.物価が高い

レストランに入ると、"カナディアンダ・サイズ"(アメリカン・サイズの半分)
にも拘わらず値段は同じくらいであったりする。
食後にマーケットでペイストリーを買ったら4ドル近くした(確かにおしいかったけど)。
また、観光地の公園に入るだけで30ドルくらいしたりもする。
大学生の時に友達が言っていた
「ドーナツ屋に入ってドーナツとコーヒー買って70円とかだよ」
というカナダは遠い過去のものである。

バンクーバー周辺都市の平均所得を調べてみると
案外4万~8万ドルくらいだったりして
デトロイトの郊外よりもずっと低い。
観光客だから、割高なものを買っているということものだろう。
そういえば、ダウンタウンの安いレストランは異常に並んでいることがある。
みんなお金持ちというわけではないようだ。


それにしても、都会に来ると歩く機会が多くて健康的だ。
アメリカの田舎だと、100%車の移動が前提になっていて、
歩いていると車を買えない人だと思われる。
歩いているだけで職務質問される地域もあると聞く。


テーマ : カナダ
ジャンル : 海外情報

米国統計学会=JSM (学会編) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

8月6日まで、カナダのバンクーバーで開かれたJSM
(Joint Statistical Meeting=米国統計学会)に参加してきた。
まずは真面目な話から。

感覚的には今回は計量経済系のセッションが結構多く、
その結果、専門に勉強している時系列の構造的な話なんかも
結構あって個人的には楽しめた。
前回は、就職活動なんかもしていて(下記参照)
なんだかストレスだったが、今回は発表も初日に終わってしまい
あとは好きな講演を聴くだけだったのでリラックスできた。

JSMはセッションの参加人数で
分野の流行り廃りが結構分かったりするのだが、
とりあえず感じた事は、
― 統計学科で時系列をやってる人は近年とても少ない
― 金融統計関係は香港・シンガポールの大学のプレゼンスが
  とても大きい(全体の約9割)
ということであった。

マイナーな時系列のセッションの中で割と盛り上がっていたのは、
離散的な値を取るデータを扱う Count Time Series のセッション(#101)と
Frontiers of Financial Statistics と題されたセッション(#604)であった。
やっぱり、オーソドックスなモデルはやりつくされているので、
ちょっと新しい趣が必要だということだろう。

Frontiers ... のセッションは、やはり高頻度データの分析がメインであった。
例えば株式市場には非常に多くの銘柄が存在するので、
その共分散行列は巨大になり正確な推定が難しいが、
データ頻度を上げていくとともに推定する行列も大きくしていったとき、
どんな推定方法の効率が高いかということを考察したりしていた。
一方で、高頻度データと言ってもあまりに高頻度になると金融時系列では
microstructure noise が大きくなってしまうので、
5分毎くらいで留めておこうというのは現在のところ、
割とコンセンサスっぽい感じであった。
これはなんだか腑に落ちない。

その他のセッションでも、個別に面白いと思った発表もいくつか。
今後のネタにするために内容は省略させていただく。

ブログ内の関連記事:
米国統計学会(2008) ~就職面接のまとめ~
米国統計学会(2008) ~プレゼン編~


テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

専攻分野による賃金格差が大きいアメリカ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本は相変わらず、就職した業界や企業によって賃金が決まって
しまう傾向が根強いが、アメリカは例え学部卒であっても
専門分野によって大きな給与格差が生じる。
アメリカに来ようと思う人は、自分の専門分野によって
どの程度の差が生まれるのかを考えておいた方が良い。

以下の表は、Payscale社が調査した学部卒でフルタイムで勤務している人の
2年後の給料、15年後の給料の中央値を出身学科別にまとめたものである。

Major Starting Salary Mid-career Salary
Petroleum Engineering  $93,000  $157,000
Aerospace Engineering  $59,400  $108,000
Chemical Engineering  $64,800  $108,000
Electrical Engineering  $60,800  $104,000
Nuclear Engineering  $63,900  $104,000
Applied Mathematics  $56,400  $101,000
Biomedical Engineering  $54,800  $101,000
Physics  $50,700  $99,600
Computer Engineering  $61,200  $99,500
Economics  $48,800  $97,800
Computer Science  $56,200  $97,700
Industrial Engineering  $58,200  $97,600
Mechanical Engineering  $58,300  $97,400
Building Construction  $52,900  $94,500
Materials Science & Engineering  $59,400  $93,600
Civil Engineering  $53,500  $93,400
Statistics  $50,000  $92,900
Finance  $47,500  $91,500
Software Engineering  $56,700  $91,300
Management Information Systems  $50,900  $90,300
Mathematics  $46,400  $88,300
Government  $41,500  $87,300
Information Systems  $49,300  $87,100
Construction Management  $50,400  $87,000
Environmental Engineering  $51,000  $85,500
Electrical Engineering Technology  $55,500  $85,300
Supply Chain Management  $49,400  $84,500
Mechanical Engineering Technology  $53,300  $84,300
Chemistry  $42,400  $83,700
Computer Information Systems  $48,300  $83,100
International Relations  $42,400  $83,000
Molecular Biology  $40,200  $82,900
Urban Planning  $41,600  $82,800
Industrial Design  $42,100  $82,300
Geology  $44,600  $82,200
Biochemistry  $39,800  $82,000
Political Science  $40,100  $81,700
Industrial Technology  $49,400  $81,500
Food Science  $48,500  $81,100
Information Technology  $49,600  $79,300
Architecture  $41,900  $78,400
Telecommunications  $40,000  $78,300
Film Production  $36,100  $77,800
Accounting  $44,600  $77,500
Marketing  $38,600  $77,300
Occupational Health and Safety  $52,300  $77,000
Civil Engineering Technology  $48,100  $75,600
International Business  $42,600  $73,700
Advertising  $37,800  $73,200
History  $38,500  $73,000
Philosophy  $39,100  $72,900
Biology  $38,400  $72,800
Microbiology  $40,600  $72,600
American Studies  $40,900  $72,500
Fashion Design  $37,700  $72,200
Communications  $38,200  $72,200
Environmental Science  $41,600  $71,600
Global & International Studies  $38,400  $71,400
Geography  $39,600  $71,200
Business  $41,100  $70,600
Public Administration  $39,000  $70,600
Landscape Architecture  $43,200  $70,300
Biotechnology  $47,500  $70,100
Zoology  $34,600  $68,800
Drama  $40,700  $68,300
Nursing  $52,700  $68,200
Health Sciences  $38,300  $68,100
Radio & Television  $39,200  $67,800
Hotel Management  $37,900  $67,600
English  $37,800  $67,500
Forestry  $37,000  $67,200
Journalism  $35,800  $66,600
Hospitality & Tourism  $36,200  $65,800
Literature  $37,500  $65,700
Public Health  $37,800  $65,700
Liberal Arts  $35,700  $63,900
Public Relations  $35,700  $63,400
Anthropology  $36,200  $62,900
Psychology  $35,300  $62,500
Animal Science  $34,600  $62,100
Sociology  $36,600  $62,100
Human Resources  $38,100  $61,900
Kinesiology  $34,400  $61,600
French  $39,600  $61,400
Multimedia & Web Design  $40,100  $61,200
Photography  $35,100  $61,200
Health Care Administration  $37,700  $60,800
Organizational Management  $41,500  $60,500
Fine Arts  $35,400  $60,300
Humanities  $38,600  $60,100
Sports Management  $37,300  $59,800
Agriculture  $42,300  $59,700
Theater  $35,300  $59,600
Fashion Merchandising  $35,000  $59,300
Medical Technology  $43,800  $59,300
Exercise Science  $32,800  $59,000
Spanish  $37,100  $58,200
Criminal Justice  $35,600  $58,000
Visual Communication  $36,800  $57,700
Social Science  $38,100  $57,200
Art History  $39,400  $57,100
Music  $36,700  $57,000
Graphic Design  $35,400  $56,800
Nutrition  $42,200  $56,700
Interior Design  $34,400  $56,600
Interdisciplinary Studies  $35,600  $55,700
Education  $35,100  $54,900
Art  $33,500  $54,800
Religious Studies  $34,700  $54,400
Dietetics  $40,400  $54,200
Special Education  $36,000  $53,800
Recreation & Leisure Studies  $33,300  $53,200
Theology  $34,700  $51,300
Paralegal Studies/Law  $35,100  $51,300
Horticulture  $35,000  $50,800
Culinary Arts  $35,900  $50,600
Athletic Training  $32,800  $45,700
Social Work  $31,800  $44,900
Elementary Education  $31,600  $44,400
Child and Family Studies  $29,500  $38,400


もっとも高いのは、石油工学、航空工学、化学工学を初めとした工学分野、
続いて高いのが数学を多用する応用数学、物理学、経済学などだ。
逆に低いのは、教育分野、芸術分野、そして神学などの趣味的分野などだ。

世の中に役立つということも重要であるが、
誰でもできる分野の賃金は低くdisciplineが求められる分野の
賃金が高いという傾向がアメリカでは特に顕著である。
Economics (48,800ドル)よりも Business (41,100ドル)の方が
賃金が安いのはそういう理由だろうし、Mathematics (46,400ドル)の
学部卒が、Elementary Education (31,600ドル)より有用だとは
個人的には思えない。学問に王道なしと昔から言われているが、
給料の高い仕事にも王道はないということだろう。

もっとも、医学部進学者の多い biology, biochemistry の賃金が
低いなど、学部卒のみに限定したことのセレクション・バイアス
のようなものは存在しているのかも知れない。

日本についての専攻分野別の賃金水準のデータは見つからなかったが、
実感としてここまで大きな格差はないように思われる。
大学で見につけた高い専門性を利益に結びつける仕組みを
持った企業が少ないのが原因だろう。
そして専門性から利益を引き出せる経営者が少ないのは
経営を行うジェネラリストの資質の問題であると同時に
経営センスのあるスペシャリストが少ないせいでもある。
ジェネラリストとスペシャリストで
責任をなすりつけあってもあまり建設的な議論にはならない。


テーマ : キャリアを考える
ジャンル : 就職・お仕事

アメリカの奨学金残高の拡大と日本社会への示唆 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ウォールストリートジャーナルによると
アメリカの student loanいわゆる日本で言う貸与奨学金(*1)の額が
消費者ローン(主にクレジットカード・ローン)の総額を上回ったらしい。
消費者ローン残高の8265億ドルに対し
student loan の残高は8298億ドルとなったという。
金利の低いstudent loan は利用者にとって返済の優先順位が低いので
クレジット・カードローンよりも残高が膨らみやすいとのこと。
クレジットカードと異なり、高学歴層だけが抱えるローンだけに
債務者一人当たり残高はクレジット・カードよりもずっと
大きいかもしれない。

student loan の金利水準自体は低いものの、
このloanによる自己破産が認められないなど
法律的に厳しい面も持ち合わせている。
student loan は富裕層以外に高等教育のチャンスを与えるという
社会的意義も大きいが、一方では元来、国や州政府が担ってきた
教育コストを家計に負わせ貧富の格差をますます固定化させる
という負の面もある。

確かにアメリカでは、ながらく教育は投資であると考えられており、
投資額と回収期間を考えると十分にペイすると考えられてきた。
しかしながら、学費の高騰や学歴インフレによって
今後も投資としてペイするかどうかは不透明だ。


日本の状況ははどうだろうか。
少しデータが古いが6年前の文部科学省のデータによると、
日本の奨学金の規模はフローでアメリカの15分の1の規模だという。
奨学金が充実していないとも言えるし、
親が教育費を負担する文化を反映したものだともいえる。

ひょっとすると、今後
これまで親が出してきた教育費を奨学金で置き換えることが
日本の社会保障制度の最後の打出の小槌として
利用されることになるかも知れない。
団塊世代の年金と医療費負担に苦しみ、
将来の社会保障は尻すぼみになることが確実な
現在40歳以下の人々にとって
子供の教育費を将来世代に先送りできるという案は
極めて魅力的に映るのではないか。
しかも、貧困層にもある程度
学歴獲得のチャンスを開くことができる。

もちろん、最終的な帰結は決して望ましいものではない。
堅実に銀行預金や国債で蓄財に励む富裕層はほくそ笑み、
将来世代に更なる経済格差をもたらすことになるだろう。

(*1)
アメリカかぶれの日本人の中には「アメリカで奨学金といえば
給付と決まっている。大半の奨学金が貸与の日本は恥ずかしい。」と
言う人がいるが、これは単に、schalarship という単語が給付奨学金に
対応しているだけのことである。貸与奨学金については、
主に政府が補助金を出して、民間金融機関に融資させているので
student loan という名前になっているのだ。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
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   応用も充実。学部上級。

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