大学院の授業割り振り -- このエントリーを含むはてなブックマーク


明日は、来年度の大学院のコースの割り振りを決める日だ。

経営的には、専任教員は大学院に特化させ、
学部教育は安い賃金で人を雇って教えさせればいいのだが、
どこの大学もそこまで分業化は進んでいない。
数学や統計学科の場合、研究大学の教員は年間4コース教えるのが一般的だが、
うちの大学の場合、年間4コースのうち大学院向けは1コースのことが多く、
時折2コースになる程度だ。
(1コースは週4時間なので日本のコマ数とは異なる)

大学院向けと言ってもアメリカの大学だと修士向けの授業は
それほど難しくないのでうまいことそういうコースを担当しまえば、
それほどの手間はかからない。
逆に、そういうコースを選べなかった場合、
どのあたりまで教えられるかも見当をつけておかなければならない。

実はコースの内容をまだあまり把握していないので、
今日はWS大に長くいる同じ分野の教授に話を聞きに言った。

自分「Advanced Stat ってコース、以前はどのテキスト使いました?」
K教授「あー、そのコースね。自分で本書いたんだけど、
   そろそろ出版されるはずで…(パソコンの画面に出して)ほらここにあるよ。
   昔教えた時に、こんなのも書いたんだ。あとこんなも。」
自分「(あー、このコース、当面この人に任せれば大丈夫そうだな)
   なるほどー。そういえば、線形モデルってどのテキスト使ってます?
   あんまりいいテキストないですよねー。」
K教授「あー、それも自分で書いたよ。今学期教えてるんだけどね。ほら。」
自分「(あ、それ使ったら僕でも簡単に教えられそう)
   それ、良さそうですねー。」

どのコースも自分でテキスト書いちゃってるのには驚いたが、
取りあえず誰も教える人がいなくて難しいのを押し付けられるのは
避けられるかもしれない。
いや、何とか避けたいと思う、ほんとに。


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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

あせるチューター -- このエントリーを含むはてなブックマーク

教えてるクラスの過去問を貰おうと思って数学科のチューター室へ。

学部生がたくさんいて、チューターが二人。
あまり使ったことがないので、そのへんにいる学部生に
「チューターってどこ?」と聞く。どうも二人いるらしく、
院生Aは教えている最中で、院生Bは寝ている。

しょうがないから、寝てる院生Bに
「あ、ちょっとすみませんが」
と言ったら、ごにょごにょ言って起きたが、まだ寝ぼけていて
僕と向かい合わないまま下を向いて、
「…あ、ちょと待って。2~3分…。用事はなに?」
と聞いてきたので、
「えーっと、解析のクラス教えてるんだけどここに過去問ある?」
と尋ねた。

どうやらそこで初めて話している相手が教員であることに気づいたらしく、
超慌てる院生B。あまりに慌ててるので、
「いや、全然気にすることないって。過去問ある?」
となだめてたら、
「Of course!」
なんて答えながら、もう声がほとんど裏返ってる。
小田和正みたい(つまんね、、)。

別に僕は悪いことしてないんだが、申し訳ない事をしたような気がした。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

たくさん稼いでもカツカツなアメリカ人 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

オバマ政権は年収25万ドル以上の世帯の所得税を
引き上げようとしているが、富裕層からあからさまな反対の
声がたびたびメディアで取り上げられている。その内容はおおよそ
「年収25万ドル超だが生活はカツカツだ」というものである。

以下は、シカゴ大学法学部教授のTodd Henderson氏の主張を
Himaginaryさんの日記経由で引用したものだ。
ちなみに、この教授の世帯所得40万ドル超と推定されている。

オバマ政権は、ブッシュ減税廃止により、25万ドル超の収入を得ている家計の
税金を引き上げようとしている。自分は法学教授であり、妻も医者として働いて
いるので、その25万超のカテゴリに入ってしまう(ただし、大幅に超えている訳ではない)。
だが、家計内容は火の車に近く、増税を賄う余地は無い。

家計の最大支出項目は税金で、連邦税と州税を合わせて10 万ドル近くに達する。
2番目の支出項目は不動産関連。また、固定資産税に1万5000ドル、
子供の私立学校の学費、奨学金ローン(妻は25万ドル、自分はそれよりは少ない)
を支出している。おまけに愛国的行為として株式市場に投資しているが、
そこでの損失もある。


日本で世帯収入2500万円超の人が出てきてメディアで
同じ事を言う状況はちょっと考えられない。
何か日米で状況が違うのだろうか?

どうやら、アメリカ人の経済的な柔軟性は所得水準調整後で
日本よりも大幅に低い
のではないかと思われる。

主な理由は
アメリカ人はかなり多くのものを消費ではなく投資と捉えているからだ

典型的なのは医学部への進学費用だ。
アメリカ医大協会(AAMC)によれば、2009年にアメリカの医学部を卒業した
学生のうち58%は15万ドル以上の貸与奨学金残高を抱えている。
金利に関して政府の補助が出る Stafford loanの上限は65,500ドルであり、
多くの学生が民間の高利のローンを利用していることが分かる。
こうした莫大な額を借りるのは、医師になったあとに費用を
回収できるという計算があるからだ。
60代まで奨学金の返済に追われるのも医師の間では珍しくない。

不動産にしても、これまで安定的に不動産価格が上がっていたアメリカでは、
多くの一般人が、将来的にも同程度の値上がりを仮定して多額のローンを組んだ。
不動産の下落が大きかった州では、自宅保有者のうち50%以上が水面下、
すなわち、ローン残高が持ち家の価値を上回っている状態にある(Calculated Riskの記事)。

アメリカ人の硬直的な経済状況は、米国経済の大きな制約となっている。

例えば、含み損を抱えた持ち家所有者の引越しは困難を抱えるため、
失業した際の職探しが大きな障害となることは想像に難くない。
例えば、水面下の自宅保有者の割合が最高のネバダ州の失業率は
14.4%と一年前に比べて1.8%も上昇している。
これは、不動産業界ではなく実需の影響を強く受けたミシガンの
失業率が足元で低下していることとは対照的である。

医師が持つ多額のローン残高は、医師の報酬水準を通して
医療費の抑制を難しくしている。

もちろん、個別事例を見ていけば、
経済的に問題を抱える世帯の多くは経済的な意思決定に
問題があるケースが大半だろう。
例えば、夫婦で恐らく30~40万ドルもの奨学金を抱えながら、
60万ドル(*1)もする家をローンで買ったり、
「愛国的に」株式市場に投資したりするのが妥当な判断だろうか?
しかし、そんな個人の判断ミスを攻めても仕方がない。
それは教授よりも一枚上の金融機関や不動産業者が
教授世帯から利益を奪うといういわば自然の摂理だ。

(*1) アメリカの固定資産税の実効税率を2.5%程度と仮定

投資はそれに見合うリターンがあれば結果としては望ましい。
しかし個人の場合、投資は大抵負債によってファイナンスされる一方で、
リターンの方は不確実である。

これまでの判断の良し悪しにかかわらず、投資に失敗して
負債だけが残ってしまった人が増えれば
そうした人の経済的な柔軟性の低下を通して
アメリカの国としての柔軟性も低下してしまう。

アメリカの長期的な経済見通しは比較的明るいが、
こうした柔軟性の低さには注意する必要がありそうだ。


テーマ : アメリカ合衆国
ジャンル : 海外情報

液晶テレビを買う時に思ったこと -- このエントリーを含むはてなブックマーク

え、まだブラウン管だったの?
との声が聞こえてくるが、
先週末に、次に引越す際の懸案となっていた
70kgくらいある32型ブラウン管テレビが運よく売れたので
すぐに液晶テレビを買いにいった。
というわけで、テレビを買う時に思ったこと。

1.家電量販店が終わってる

まず前日の夜にBestBuy という量販店
(日本で言うヤマダ電機のようなもの)の
サイトを見て分かったことは、
Amazonの最安値などに比べて
値段が一割くらい高いことだ。

家電量販店は昔の日本のデパートのような業態になりつつあるのかもしれない。
店員の商品知識は豊富だしサービスも安心感があるが、価格は割高だ。
唯一デパートと違うのは「あそこにいけば安い」という「ブランドイメージ」
が未だに残っている点だろう。
そんな幻想に基づいて商売しているようでは
もうこの業態は先が長くないのではないかと思う。
業界2位の Circuit City が昨年潰れたが、
Bestbuyはそれを喜んでいる場合ではない。

もっともテレビは見てから買いたいので、結局
Sam's Club という会員制のWare Houseに行くことにした。
Ware House は店舗の運営コスト等をかなり削っているせいか
まだそれなりに競争力のある価格になっている。


2.日本メーカーが終わってる

6年前にブラウン管を選んだ時は、
日本メーカーの高い製品と米国メーカーの安い製品の
二者択一だったし、はっきりと品質に差があった。

3年前にBestbuy に液晶テレビを見に行ったときも、
日本メーカーの製品は発色のキレイさなどで
他国メーカーの製品を上回っていた。

それが今回見にいったら逆転していた。
予算やサイズの制約から、検討したのは以下の3種類:
1) Samsung 製 40インチLCD, 120Hz $748
2) ソニー製 40インチLCD, 60Hz $598
3) 日立製 42インチLCD, 120Hz $598

画質を比べた結果、日立製は動いている被写体の
境界が綺麗に写っておらず対象外に。液晶の方式の差だろうか。
ソニー製は悪くないが、Samsung製に比べると
ちらつきが若干気になる。周波数の違いのせいだろう。
Samsung製は黒のボディーに透明の強化ガラスを
合わせており外装の質感もソニー製よりも高い。

ソニーや日立もあと150ドルかければ
同じ製品が作れるかも知れないが、
現実はSamsungの方が高品質の製品を高い値札をつけて
売る販売力を持っているということなのだろう。

一方で低価格帯は、2002年創立の台湾資本の米国企業 Vizio が
あっという間にトップシェアを奪っている。
製品の質も大差があるようには思えない。
「Vizioが売り切れてたから仕方なく日立を買った」
なんてネット上の掲示板に書かれていたりするのだ。

日本メーカーと、台湾、韓国メーカーの差は
一般製品のレベルではもはやないのだろう。

どちらを買うのか迷って奴に意見を求めたところ、
「Samsung の方が綺麗だけど、$150も差があるし
ソニーの方が高く売れそうだからソニー。」
とのことで、結局ソニー製を購入。
奴は買い物の時、妙に冷静沈着だ。
なんで盛り上がったりしないのだろう。


3.結局いろいろかかるよね

テレビが FullHD になったのは良いのだが、
今のところ性能を全く活かせていない。

ケーブルテレビは優良だがHDの放送を見るためには
Comcastでは月9ドルの追加料金がかかるらしい。
そもそもテレビはあんまり見ないので(笑)決めかねている。

一方、Blue-Ray は持っていないのでノーマルのDVDしか見れない。
Blue-ray のプレイヤーは150ドル弱くらいだが、録画機は殆どない
(アメリカではHD用のHDDに録画するのが一般的)。

通常のDVDのレンタルは
月々5ドルのNetflixを使っているが
Blu-Ray を借りたい場合は月々1ドル上乗せされる。
まあ月1ドルくらいなら構わないけど、
見たいタイトルのうちBlue-Ray で
発売されているのはせいぜい4割程度しかない。


いやー、でも大きいテレビっていいねー。


数学をやめてみて分かったこと -- このエントリーを含むはてなブックマーク

高専を中退した後、働きながらもう一度数学や理科を勉強しようと
大学進学を志している方からメッセージを頂いた。
僕自身も、一度数学を辞めて、別の分野で働いた後、
もう一度数学に比較的近い統計学をやっているので、
境遇は少し似ていると思う。
僕のブログの目的の一つは、そうした
非定形なキャリア選択を描くことでもあるので
匿名コメントではあったものの匿名性を保ちつつ紹介したいと思う。
頂いた質問は次のようなものだった:

willyさんは数学や統計学を学ぶに連れて世の中への見方は変りましたか?


これを読んでまず思ったのは、
僕が答えられるのはこれとは逆の質問だけだと言うことだ。
元々、僕は子供のときから数字や論理を通じて物事を考えるのが好きだった。
数字や論理を通じて一段一段積み上げて議論を組み立てることは
僕にとっては自然な方法で、それ以外の方法が特殊であった。
そこで質問を勝手に変えて、

willyさんは数学や統計学を学ぶのを一旦やめて世の中への見方は変りましたか?


という質問に答えたいと思う。
世の中への見方というと話が拡散してしまうので、
数学に対する見方が変わったかどうかについて書く。

一般的に言って、数学のように極めて理論的な学問の場合、
一旦、勉強を辞めてからもう一度やるのはハンディになる。
デメリットは多く、メリットは少ない。

しかし、私の場合に限って言えば
一般的なスキルという意味で役に立ったものがあった。
それは、全体感を掴むノウハウと表現できる。
数学は細部に注意しながら積み上げていく作業という性質が強いので
全体感を掴むのが非常に難しい。
例えば、未解決問題をどこかの数学者が解くと、
特番が組まれたり新書が出たりしてそのアイデアを
一般人に紹介しようとするが
大抵どれもトンチンカンな説明に終始する。
専門家の協力を得ても、
細部を理解せずに全体だけを理解する事は困難なのだ。

しかし、実際に論文を書く上では、細部が分からなくても、
ある程度全体感を掴みながらトピックを探していく必要がある。
頭の良い人はこれを自然にやってしまうが、
多くの(数学科の)人にはこれが難しいと思う。

僕が金融機関でやっていたのは経済や金融関係の調査だったのだが
分からないなりに論文を読んだり分類したりしていくうちに、
全体感を掴むための感覚がある程度身に付いた。
こうした感覚は、数学の教科書をこつこつ読むだけでは
なかなか身に付かないものだ。
そうした感覚は、少なくとも統計学をやる上では確実に役に立っている。

そんなわけで、数学のような純粋理論的な分野でも
他の仕事でやったことが役に立つような機会は十分にある。

キャリアチェンジを目指す人は、
今まで得たものを捨てるのではなく何らかの形で活かしながら
次につなげることができればベストだ。


テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

アメリカで裁判に巻き込まれた巻~2 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

前回の記事はこちら

一度裁判所に行ってみるのも悪くないとも思ったが、朝8時半からはつらい。
少し余裕をみると7時半前には家を出なければならない。

しかも前日の夜になって平方根の取り忘れという重大な凡ミスに気づき
結果を慌てて修正するはめに。もっとも、運よく集計の結果が割と
望ましかったのでとりあえず何とか格好はついた。

裁判は、ふざけた連中の割に結構真面目な内容で、
フリント市長のリコールに関わる署名を提出した私のクライアント側と
市長側が、署名の有効性について争うというものであった。

裁判所は デトロイトの中心部にあり、便利なことに大学から2マイル
くらいの距離にある。
8時過ぎに裁判所につくとセキュリティーチェックがあり免許証を見せる。
「弁護士以外は携帯電話は持って入れないよ」と言われて、
裁判所の中にある棚において置くことに。
棚には鍵がついていないので盗難に会った時は責任を取らないそうだ。
裁判所がそんないいかげんでいいのだろうか。
PCや飲み物は持って入ることができた。

中に入ると、例の運転手と用心棒がいる。
運転手は前回態度が悪かったので無視したが、用心棒の方と話したところ
実は用心棒ではなくてフリント市の職員らしい。前回もつけていた
金色のバッチは趣味の悪いおもちゃかと思っていたが、
実はフリント市の市章(?)のようだ。

原告側(クライアント)の恰幅の良い人が出てきて、
挨拶した後、報酬をもらうことに。裁判所に来るのは手間なので
とりあえず150ドルはくれと言っておいた。
「いくら必要だ?」と聞かれたので、
「元々は150ドルもらうことになってたんだけど」
といいつつ少し渋ったら、
「じゃあ200ドルだ」
と言っておまけしてくれた。気のいい人たちだ。
もっともまだチェックを換金していないので安心は出来ない。

8時半になって、原告側の人たちと一緒に入廷する。
弁護士、用心棒、運転手、に一名を加えた4人が中に座り、
私を含めた数人は傍聴席に留まる。

被告側はなかなか入って来ず、15分ほど遅れて3人が入ってくる。

更にしばらく待たされ、9時頃になってようやく、裁判官と
書記官二人が入廷して裁判が始まる。

みんなピリピリしているが、裁判官だけは気楽な感じで
ぶっきらぼうに被告に質問を始めた。彼にとっては
法廷は日常なので、当たり前といえば当たり前だろう。

詳しい事情は知らないが、被告側は引き伸ばし工作を図って
recallが間に合わないようにしたいらしく、裁判官の心証は
良くないようだ。「スケジュール的に無理」と主張する被告に
厳しい質問が飛ぶ。続いて、原告側の弁護士が話し始める。
普段からそうだが下を向いてやたら早口で話すので聞き取りずらい。
裁判官に、「手元の文章を読まないで弁護しなさい」と言われて
「下を向いて話しているだけです!」
と答えたので少しウケた。

弁護士は少しさえないが、直感的には割りと順調に攻めている
ように感じた。もっとも原告だから当然なのかも知れない。

相手側も 統計屋 を雇っており彼が少し批判的な証言をした後、
僕がしゃべる番になり証言席に呼ばれる。

こちら側の弁護士は、心証をよくしたいのか、
「法廷に一番近いWS大から専門家のWillyさんを呼びました」
とか言っている。そんなこと言っても効果があるかどうかは疑問だが、
空洞化したデトロイトでは「地域密着」を主張するのはお約束である。

宣誓をさせられて、自己紹介を簡単にした後、
分析の結果を説明し相手側の主張との違いとその理由を簡単に説明する。
後半は、被告側弁護士によるお決まりの印象操作も入り、
「君、統計10年やってるって言ってたけどPhD取ったの今年だよね?」
というような質問も入る。事実に抗っても仕方ないので、
単に「correct」と答える。
聞き取れない質問は普段は適当にやり過ごすが
流石に裁判なので「聞き取れません!」
と何度か言って聞き直してもらう(笑)。

多少の問題を抱えつつも無事に証言を終えると、
例のシミ付き青シャツの弁護士が「彼はこれから授業があるので」
と言ってくれて帰れることに。
判事が「何時からですか?」と私に聞き「11時半からです」と答えると、
「開始時刻の信頼区間は?」などと大して面白くないジョークを言う。
それなりに笑いを取っていたのは、やはりみんな判事の心証をよく
したいからなのだろうか。


とりあえずいい経験にはなったものの何だか疲れるバイトなので
あんまり引き受けるもんじゃないな、と思いつつ帰途についた。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

ペイオフのリスクを回避する方法 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先週末、日本振興銀行が破綻し日本で初めてのペイオフが行われることが確実となった。
金融界の信用状態の落ち着きや、振興銀の規模や業務の特殊性を考えると、
金融庁としてはパイロットケースとしてペイオフを行いたかったということなのだろう。
ニュースの大きさの割に取り上げ方は小さかったように思うが、
海外のメディアでの扱いも同様に小さかった。

預金先を分散してリスクを低減することは大事だが、
ペイオフのリスクを減らすには他に以下のような方法がある。

1.決済性普通預金を用いる。
― 預金保険により全額保護される。ただし金利は付かない。

2.とりあえず安全そうな大きな銀行に預金する。
― ただし相対的に安心であるに過ぎない。

3.投資信託や国債の保護預かりを利用する。
― 販売会社、運用会社、信託銀行のいずれが潰れても損失が出る事はない。
  ただし投資する証券の価格変動リスクは避けられない。

アメリカでも経営不安が大きい銀行では、
FDIC(預金保険機構に相当)の保証を盾に
高金利で預金を集める作戦は一般的だ。
FDICの保証上限は一人当たり25万ドルだが、
これより多額の預金を効率的に集めるため、さらに
CDARS (Certificate of Deposit Account Registry Service)
と呼ばれるシステムが存在する。
このシステムは、数百万ドル単位の預金も
自動的に多数の金融機関に振り分けて
FDICの保証が適用されるようにしてくれる。

日本でもペイオフが解禁されたので、
同じようなサービスが可能であればビジネスチャンスかもしれない。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

アメリカで裁判に巻き込まれた巻~1 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

午後5時くらいに喫茶店でマッタリしていたら、
数学科のメーリングリストから"statistics"という名前のメールが。
開けてみたところ、
「弁護士が裁判で署名の不正が少ない事を示すために
今晩、統計ができる人を大至急探している。報酬は"generous"。」

とのこと。

おー、なんか面白そうなプロジェクトじゃないかー
ということで早速電話したら、
とりあえずトロイ市の日本食レストランでクライアントと会うことに。

食事でもおごってもらえるのかなー♪
とレストランで待っていたら定刻に電話がかかってきて
「外にいる」とのこと。
外に出たら荒い運転のワゴン車に人相の悪い人が3人乗っている。

屋外駐車場の通路部分に一時停車したので名前を伝えたら
「おまえ名刺持ってる?」とぶっきらぼうに言ってきた。
とりあえず、渡そうとしたら車に乗ったまま受け取った。
しかも、自分達の名刺は出さずに。
ほんとに無礼な奴だな(怒)
と半ば切れ気味になっていたところに、
「どこで話をする?」と聞いてきた。
「え?レストランじゃないの?」
と思いつつ「別にどこでもいいよ」と伝えたら、
いきなり車から降りてきて駐車場でミーティング開始(笑)。
本当にあり得ない人たちだ。

無礼者は運転手らしく、一応スーツを着ているが
痩せていて薬中になったような鋭い目つきをしている。
もう一人は、ぼろいスーツを着た落ち着きの無い弁護士で
大きな染みのついた原色の青のワイシャツを着ていて、
スーツの上着の横ポケットにはマクドナルドの紙ナプキン
みたいなのが一杯に詰まっていて外から見えている。
後部座席に乗っていた3人目はがたいの良い黒人で
Tシャツに黒のスーツを着ており用心棒のように見える。
なんだか、学芸会かZ級映画のgangstarみたいで笑いそうになった。

途中で弁護士から名刺をもらったが、どうやらFlint から来ているようだ。
Flint は マイケル・ムーア作の Roger & Me でも知られるとおり
デトロイトを凌いで失業率が全米最高で
最も荒んだ街として知られる。

3人が交互にデータの説明を始めるが、支離滅裂で意味が分からない。
雰囲気がなんか殺気立っていて、弁護士に「ペン!」と言われてから
ボールペンを間違って地面に落としてしまった用心棒が叱られたりしている。

とりあえず、残りの二人(クライアントだろうか)が来るのを数分待つことに。
二人が来て、とりあえずやりたいことは分かったが、
薬中運転手と用心棒が途中で横から補足しようとして、
「お前はいいから!」とまた怒られている。
そもそも何で5人で来たんだろう。本当に効率の悪い人たちだ。

分析自体は大した事はないが、
何故か紙に打ち出した500件のデータをもう一度手入力しなければならない。
「そんなのメールで送れないのかよ!」
と聞いたら、また5人で揉めているので、
「あ、手入力します。」
とつい言ってしまった。

とりあえず結果は送っておいたが、
「来週火曜の朝8時半から裁判あるんだけどそれも来てくんない?」
と言うので、
11時半から授業あるんだけど…と思いつつも
裁判って面白そうだなーとも考えて渋々OKしてしまった。
すぐ終わるらしいし。

そういえば、報酬っていくら貰えるのか聞いていない。
これで総額50ドルとか言われたら本気でキレようと思う。


テーマ : アメリカ合衆国
ジャンル : 海外情報

日本における医師の養成費用について -- このエントリーを含むはてなブックマーク

職業の人気と賃金で取り上げた、日本における医師の養成費用について
コメントも頂いたので補っておく。

例えば浜松医科大学の損益計算書における平成21年度の大学部門の経費を見ると、
教育経費317百万円、研究経費863百万円、教育研究支援経費85百万円、人件費3153万円、
一般管理費319百万円、その他2百万円となっており委託研究(費用と収益がほぼ等しい)
を除く総経費は4739百万円である。これを単純に医学科の定員の115名で割ると
医師一人の養成に4,121万円かかることになる。
これは教育・研究に関わる総経費である。
(自然科学系において教育のみを取り出して経費を計算
することは机上の空論と言えるだろう。)
ただし、この大学には看護学科および大学院もあることから、
実際のコストはこれよりはやや低い
と考えるのが妥当だろう。

一方で、付属病院の施設は研修にも使われているのであるから、
実際の総経費はもっと高いという意見もある。

そこで、大学の経常費用から付属病院と委託研究の収益を差し引いた全ての費用が
教育・研究に使われているとみなした場合はどうだろうか。
(この方法は妥当ではないだろうが費用の上限を見積もるには有用だろう。)
経常費用の20,993百万円から
付属病院収益12,906百万円、受託研究収益771百万円を除くと7,316百万円となり、
同じく単純に医学科の115人で割ると6,362万円となる。

念のために書いておくと、コストは安いに越した事はないが、個人的には
高度な専門職の養成費用がこの程度かかるというのは概ね妥当な結果であると思う。
日本社会は寛容性が低下しているので、殊に世論やマスコミはこの手の話題に敏感だが、
一般的に言って人的資源にどんどん投資しなければ日本の未来はない。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

日本の労働時間は何故長いか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本の労働環境を揶揄した「ニートの海外就職日記」が相変わらず面白い。
そこで、今日は米国ではレイバー・デーだし
日米両方で働いたことがある人間として
日本の労働時間がなぜ長いかということに関して
いくつか理由を考えてみよう。

1.スキルに対する考え方の違い

スタッフレベルの労働生産性に関して
日本の生産性が低い一番の理由は
スキルに対する考え方の違いであると思う。

日本企業では業務に必要なスキルは従業員が業務時間を使って習得する
傾向にあるが、米国企業では各社員のスキルを所与と仮定して
遂行能力のある人材に仕事を振る傾向にある。


例えば、比較的大きな企業で社長が売り上げの季節性や構造変化を
統計的に分析せよと部下に命じたとしよう。
伝統的な日本企業であれば、総務部の社員がちょっと本やネットで
統計のことを調べ、統計ソフトの使い方を何とか理解し
(分からなければExcelでも使って)分析して上司に結果を報告する。
大半の時間は、未知の事を調べたり試行錯誤のために費やされる。
社員にとっては良い経験になるだろうが、時間当たりの仕事の効率
という面では最善の方法とは言えないし、分析の質も確保できない。

一方、米国では、統計を重用する企業であれは統計部署を設置して、
あらゆる分析をそこに依頼するようになるし、統計屋がいない企業
であれば、外部に委託するというのが自然な経営判断となるだろう。
その結果、調整に関わるコストは日本より大きくなるし、
場合によっては委託先に多額の手数料を払うことになるが、
結果として所要時間が短縮されるので、労働生産性は向上する。

こうした考え方は、求人そのものにも色濃く反映さている。
日本では特に新卒採用に関しては潜在能力が重視されるが、
アメリカでは極めて実践的なスキルが重視される。
例えば1週間もあれば習得できるようなスキルが
採用の決め手になるようなことも珍しくない。
即ち、採用直後から高い労働生産性を求めているのだ。
ただし、これはアメリカの労働者の流動性が高いためであり、
日本の雇用制度の下で同じことをやっても最適とはならない。
逆に言えば、
スキルの習得を大学にアウトソースしているのがアメリカ
ということもできる。
(参考:「日本で資格は取るな」アメリカでは資格を取れ」)


2.社員と企業の利益の一致

伝統的な日本企業の正社員は、年功序列と将来の昇進によるインセンティブ
によって、社員と企業の長期的な利益がほぼ一致している。
したがって正社員というより「給料が安くて部下のいないプチ経営者」
と表現した方が適切である。
日本の就職面接で、理不尽なほど全人格や勤労意欲の高さを求められるのも
「正社員は従業員ではなく経営者だ」と考えれば説明がつくし、
正社員と派遣社員の軋轢や賃金格差も同様に説明がつく。

日本のこうした企業形態は
トップの統率力無しに社員が有機的に企業の利益を最大化する
という優れた面がある。

一方でこの仕組みの問題は、正社員が労働時間を抑えようという
インセンティブが働きにくいことだ。
長く働ければ、とりあえず
その分だけ生産する付加価値は増えるので、それが常態化する。
長期的には、この労働時間短縮のインセンティブの欠如が、
業務の非効率化を通じて労働生産性の低下を招く。


3.非効率業務の温存

日本では中小企業を除きの解雇が事実上困難なため、
非効率な部門や業務を大胆に削減することが出来ない。
そのため、非常に非効率な部門で限界的な生産の向上のために多くの
労働時間が浪費されることが多い。

日本では倒産寸前の企業でも社員は一生懸命働いていることが多い。
転職市場の厚みが十分にないのでこれは社員にとっては合理的だ。
ただ、そのベクトルは間違った方向を向いていて、
利益の出ない業務に拘って時間を浪費しているに過ぎない。
アメリカなら、潰れそうになった時点で社員が逃げ出して
業務が回らなくなるだろう。


上記の事を踏まえると、
労働生産性を上げるために日本に必要なことは、
専門性の重視と雇用の流動化だ。


大学の専攻が就職にも仕事にもそれほど影響しないという
日本のモデルは、欧米はおろか、中韓にも遅れを取っているように思える。
ベトナムからの留学生と話した時に、日本とベトナムの
大卒の雇い方が似ていると意気投合したことがある。
この点は、経営者の意識の問題でまだまだ改善できるだろう。

雇用流動化は高度な政治問題でもあるし、
製造業の品質改善では日本のモデルが上手く機能している面もある。
しかし、制度疲労はかなりのレベルに達している。
共産主義が崩壊したように、日本のシステムもいつか
大きな変革を迫られるだろう。


テーマ : 人事・雇用制度
ジャンル : 就職・お仕事

クレジット・スコア~もう一つの格付け利権 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカの消費者向け信用市場では、
消費者それぞれに与えられるクレジット・スコアと
呼ばれる指標が重要な役割を果たす。

FICO社(旧 Fair Isaac社)が開発した FICO スコアと呼ばれるモデルが
業界標準となっており、この手法を元にクレジット・ビューローと呼ばれる
Experian, TransUnion, Equifax 3社(営利企業)が
寡占的に情報の収集と提供を行っている。

渡米したばかりの日本人が、初めにアメリカでクレジットカードを作るのが
困難なのは、クレジット・スコアの元となるクレジット・ヒストリーが
存在しないためだ。

このスコアは、クレジット・カード、自動車ローン、住宅ローン、
公共料金の支払い遅延といった個人に関するあらゆる信用情報を
ソーシャル・セキュリティー番号(SSN)などを使って紐付けて
信用力を算出したものだ。ただし、職業や年収は考慮されずせず、
純粋に支払いの履歴、ローンの多様性といった情報だけによって
統計的に算出されている。
元FICO社員によると、このスコアに人種、職業、年収を反映
することは法律で禁止されているようだ(*1)。

(*1) ただし、クレジットカード会社は、カードの申し込み用紙で
年収や職業を聞くことがあるので、果たしてどれほど効果が
あるのかは定かではない。

このスコアの問題は、
スコアリングを行う企業が顧客である金融機関の意向を反映し易いこと、
そして消費者を合法的に脅して商売することが出来る点だ。

FICOスコアは300点から850点のスケールで表され、
アメリカ人の最大の関心事である住宅ローンを
最も低い金利で借りるためには 780点程度必要であると言われている。
しかし、このスコアは、カードや公共料金の支払いを期限通りに行って
いるだけでは達成することが難しい。
たくさんのカードを作って総与信枠を上げたり、
自動車ローンを組んでローンの多様性を高める必要がある。

「車を買った時、全額現金で払えたけど敢えてローンを使った。
金利を100ドルほど払ったけど、これでスコアが15ポイント
上がるなら払う価値があるよ。」
(CNN Money, Sep 2010)
というような話になるのである。

800点以上のスコア(全人口の18%しかいない)を目指す人々は
クレジット・カードの総与信枠の10%以下しか使わないように
努めていることが多いようだ(同じく CNN Money, Sep 2010)。
つまり、毎月3000ドルをカード決済(*1)していれば、
決済までの時差を考えれば、少なくとも4~5万ドル程度の
与信枠が必要になる。これはカード会社にとっては大きな
宣伝効果になる。

スコアが高い層は滅多に支払いに遅れないので、一件の支払い遅延
(30日以上)が100ポイント近くスコアを下げることも珍しくない。
長期出張で数ヶ月、家を開けた時に病院の支払いが
あったら…。郵便事故で請求書が届かなかったら…。といった
ことを考えると、事故のリスクは結構高い。データの入力ミスで
下がってしまうことも多くあるようだ。
そこで、万全を期すため、完璧主義者はクレジット・ビューローに
毎月10~15ドル程度の手数料を払って、クレジット・ヒストリー
をモニタリングしている。

このようにクレジット・スコア自体が一つの利益の源泉と化しているのだ。

ある銀行は、クレジットスコアが800点以上の人々のカードの申し込みを
「借金をあまりせず利益にならない層だから」という理由で却下したことが
あり、裁判で訴えられている。こうした事例は「クレジット・スコア業界」の
根幹を揺るがすので、原告の支持者が簡単に集まる事は容易に想像がつく。

消費者不在の、こうした事実上の独占的なスコアリング・システムが
長期的に望ましい結果を産むとは思えない。
企業や自治体の格付けを行う某M社の格付けは
最早ジョークとしか言いようがないが、
クレジット・スコアがその二の舞になる可能性も高いだろう。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

新年度の授業開始 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

WS大は今日から授業開始だった。

アメリカの大学の授業は9月からだが、
オリエンテーションやら事務作業は8月に終え、
Labor Day (9月の第一月曜)の前後には授業を開始する大学が多い。

日本の統計関連学会連合会は9月の一週目頃にあるのが普通だが、
アメリカの大学は新年度の最も忙しい時期なので参加できないのは残念だ。

今学期の授業は、
月火水金の昼前の授業と月水の夜の授業なので
水曜日の今日は朝から晩まで大学にいなければならない。

朝の授業は微積の授業。
よく考えるといわゆる純粋数学の科目をアメリカで教えるのは初めてだ。
もっとも、日本の高校数学の数Ⅱ、数Ⅲの
微積分のカリキュラムとほぼ同じ内容である。
高校数学は日本の予備校でさんざん教えたので
言葉が違う以外は教え慣れた内容だ。
バイトで高校生に教えていたのは10年以上前だが、
人生、何が役に立つか分からないものだ。

20人ほどのクラスなので自己紹介をしてもらったら
結構多くの学生が高校の選択科目で微積の授業を取っているようだ。
日本の初等・中等教育の数学のレベルは
今でもアメリカよりだいぶ高いと思うが
決定的なほどの差があるわけではない。
(WS大は優等生が集まる大学ではないことを考慮されたい。)
しかもアメリカの授業では、
内容を理解しないまま単位を取得する事は難しい

ので授業の内容が同じなら
平均的な理解度はアメリカの方がやや上だろう。


最近は統計を教えるのになれてしまったが、
教える準備という意味では数学の方が楽だ。
論理的にはより明快に説明できるし、
面白いデータを準備したりする必要も無い。

一般にアメリカの大学に勤める上では
どんな科目を教えなければならないかは結構重要だ。
例えば、私は計量経済学っぽいことをやっているので、
経済学部の教授から
「あれ?君、経済学部に応募したらよかったのに。」
などと言われたこともあるが、
英語でミクロ経済学やマクロ経済学を
教えるのは私には大変すぎる。
だから、経済学部には一つも応募しなかった。
アメリカの大学への就職を目指す人は
そんな点も考慮した方が良いだろう。


テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

職業の人気と賃金 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

資本主義が浸透し競争や失業のリスクが高まってから、
多くの国で医師や弁護士といった職業が特に人気だ。
しかし、こうした職業は賃金が高いこともあって
何かと世間の風当たりも強いのも事実だ。

例えば、日本で司法修習生の給料が廃止されたのは、
要するに教育費用が全部国民負担なのは許せないという民意だし
「医学部生は医者以外になるな」という意見も
裏を返せば同じことだろう。

賃金が大きく政策に依存するこれらの職業の賃金は
切り下げられるべきなのだろうか?

確かに、医師や弁護士という職業の専門性は非常に高いが、
賃金は必ずしも職務の困難さだけで決まるわけではない。
人気のある職業と人気のない職業というのは厳然として存在する。

下図は職業の人気と期待賃金のイメージ図である。

職業

例えばプロ野球選手の賃金は高いが、
こうした趣味的な職業の人気は非常に高く、
競争が極めて激しいので期待賃金は低いと考えられる。
「野球選手になりたい」という子供の夢に親が、
真剣に向き合わないのは才能の有無のような先見的な情報に加えて
そもそも(リスク調整後の)期待賃金が低いせいであろう。

概ね人気の高い職業ほど、期待賃金は低くなる。
芸術家から風俗関係にいたる左上から右下への対角線は
妥当な給与水準の業種である。
人間の本能的な欲求を満たす職業ほど人気が高くて期待賃金が低く
また高い名声を得られる職業ほど人気が高く期待賃金が低い。

この対角線よりも下に位置する職業は、
構造問題を抱えているか、
なんらかの利益配分の歪みが生じているケースだ。
例えば、農業やIT土方の賃金の低さは、
主に発展途上国に対する比較劣位から来ている。

一般的に言って、個別事象に直接貢献する職業の人気は、
社会全体に貢献する職業よりも人気が高い。
それは、目の前の客に料理を振舞ったり、
目の前の子供に色々教えて成長を見守ったりする事は、
ビルの一室でGDPの季節調整をするよりも
やりがいを肌で実感しやすいからだ。

医師や弁護士は、社会的地位の高さもさることながら
病気の治療や、紛争の解決という個別案件への対応という側面が強く
比較的やりがいのある、人気のある職業であると考えられるだろう。

こうしたことや
実際に弁護士や医師になりたい若者が多くいる現状を鑑みると、
政府の統制下にあるこれらの職業の待遇を切り下げることは
合理的に思える。

合理的な反論があるとすれば、産業政策として医師や
弁護士育成に力を入れる場合だろう。

例えば、医療の価格を自由化した上で高度医療の発達による
需要創出を図るとか、他国の富裕層に高度医療を提供して
サービス収支の黒字を拡大しよう、というような戦略は考えられる。
(ただし、例えばタイの医療産業に競争力がある理由は
医師の賃金を抑えているからだ。)

もっとも、国内のゼロサムゲームの解決を主たる目的とする
司法に関しては、国が産業政策として力を入れる理由は希薄だ。

要点はあくまで産業政策であって養成費用そのものではない。
例えば、医師一人の養成費用は国立の医科大学の財務諸表から
教育にかかる費用を試算すれば、おおよそ3千~4千万円程度で
あることが推測できる。これは少ない額ではないが、
例えば、東京工業大学の財務諸表を見れば、
経常費用から外部資金収益を引いた額は年間310億円にも上り
学生数を1学年で千人とすれば、理工系技術者/研究者一人の育成にも
3千万円に近い費用がかかることも分かる。
しかし、こうした費用に非難の矛先が向かわないのは、
産業政策上不可欠であると考えられているからだろう。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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