アメリカの寄付金集め -- このエントリーを含むはてなブックマーク

前回の記事で、アメリカ人は寄付が好きと書いたが
恥ずかしながら私自身もほとんど寄付をしていない。
米国に何年住んでも日本人としての思考は抜けないせいだろう。
先日の毒之助さんの記事は、そうした感覚について触れていて面白い。

実は東日本大震災でも頑に寄付をしなかった(*1)私が、
今年唯一したのは、娘の公立小学校への40ドルの寄付だ。
ケチな自分が寄付をしたのには、それなりの理由がある。

一つめの理由は、寄付の意義が明確であるという点だ。
この寄付は主に、小学校の課外活動や芸術科目など付加的な教材費に当てられるのだが、
こうした資金を通常の市からの教育費で賄うことは難しい。
これは、地方自治体が財政難であるということだけでなく、
市からの教育費というのは、人件費や建設費といった強力な
交渉担当者がいる項目に割かれてしまう傾向が強いからだ。

二つめの理由は、対象が適度に小さいという点だ。
正直、私は「世界の貧困撲滅」とかのために寄付をする用意はないが、
頭が良いのに貧しくて数学を学べない子供が近所にいたら100ドルくらい上げても良い(*2)。
対象が狭すぎれば「寄付」と「対価の支払い」の違いははっきりしなくなるが、
費用の総額が固定されおらず、寄付者のインセンティブが十分に高ければ、
支払う額が任意であった方が価格差別の観点から望ましいだろう。

そんな理由で小規模の学校の寄付は集めやすい部類だと思うが、
それでも集めるためにPTAはかなりエグイ工夫をしていた。

まずは古典的な「XXドル以上の寄付をお願いします」というものだ。
昨年は「50, 75, 100ドル、それ以上、のいずれかでお願いします」
という触れ込みだったのだが、50ドルを選ぶ人が多かったせいか、
今年は「75ドル(あるいはそれ以上)をお願いします」という作戦に変わっていた。
アメリカ人は見栄っ張りだから、そう書けば75ドル未満にする人は少ないだろうし、
切りが良い100ドルまで上げる人も結構多いだろう。

次にやっていたのは「額は公表しないけど寄付した家族名を公表します」というもの。
そして更に「寄付をした人の比率が上位のクラスを途中で公表し」
「最後に最も率が高かったクラスには図書費として50ドル支給します」というものだ。
いわゆる同調圧力をシステマティックにかけてたくさんの人から集めようという作戦らしい。
あまりのエグさにAKBの総選挙を思い出してしまったが、
もともと同調圧力が弱い米国社会なのでその程度では大した問題にはならない。
ちなみに今年は総額で10,500ドル超の寄付が集まり好調だったようだ。


寄付が低調な日本でも、
「寄付の意義を明確に」そして「対象を適度に小さく」
という作戦はもっと練られて良い
と思う。
大学であれば、全学で募集するよりも学科レベルで行う方が集まるだろうし、
目的も極力具体的にした方が良い。
一般的な非営利団体であれば、
受益者のメリットを分かりやすくするためにもっとコストをかけても良いし、
地域別に分けるなどの工夫をしても良いだろう。

「寄付は気持ちよりも総額が大事」ということは動かしがたい事実なのだから
寄付金事業にはビジネスセンスが求められる。


(*1) チャリティーイベントを少し手伝ったにもかかわらず。
ただし親戚が被災したため家族で250ドルほど贈った。

(*2) ブログ上での依頼は受け付けません。


スポンサーサイト

テーマ : チャリティー
ジャンル : 福祉・ボランティア

寄付が好きなアメリカ人、嫌いな日本人 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今年は東日本で大震災があり寄付をした人も多いと思うが、
一般的に言うと日本人はあまり寄付をしない。
総務省の家計調査によると、
一世帯あたりの年間平均寄付額(2009年)はわずかに2625円だという。

これに対して、米国人は寄付が好きだ。
非営利団体 Independent Sector の調査(本記事の以下のデータも同様)によれば
米国人は年収の3.2%を寄付しているという。
これは年額に直すと1600ドルを超える。
米国人は日本人の50倍もの額を寄付しているのだ。


所得がほぼ同水準の両国でどうしてここまでの違いがあるのだろうか。


仮説1: 税制の違い

よく言われるのは、
「日本の税制は寄付に対して厳しいから日本人は寄付をしない」というものだ。
しかし、両国の税制を比べるとむしろ日本の方が寄付の税制上の恩恵は大きい

まず日本だが、2011年より認定NPO法人等への寄付には、
(寄付金額 - 2000円) × 40% の所得税の税額控除が受けられるようになった。
つまり10万円寄付した場合には、3万9200円の税額控除が受けられる。
また、認定NPO法人等以外の場合でも、特定公益増進法人への寄付は、
(寄付金額 - 2000円)の所得控除が受けられる。
日本の所得税の限界税率は、5%, 10%, 20%, 23%, 33%, 40%の
6区分なので所得水準によって5-40%の減税が受けられる事になる。
また寄付を受けた非営利法人が寄付金に課税されることはないようだ。

一方の米国では、寄付は通常、所得控除(itemized deduction)
として算入されるが、そもそも一般人にとっては所得控除を積み上げる
(itemize する)こと自体が容易ではない。
例えば、夫婦合算で申告する場合、
標準控除額の11600ドルと、積み上げた場合の控除額を比べて大きい方を
申告することができるが、積み上げた方を大きくするのは容易ではない。
積み上げられる金額は主に、寄付金、支払済みの地方税や固定資産税、
支払利息、年収の7.5%を超える医療費等だが、
これが11600ドルを超すのが容易ではないことは想像に難くないだろう。
仮にこのハードルを越えても、米国の所得税の限界税率は
10,15,25,28,33,38%の6種類であり、
メリットは日本に比べて大きいとは言えない。

米国の方が勝っている点をあげれば、
日本では寄付の控除を受けるには確定申告が必要だが、
米国では寄付の有無に関わらず確定申告が必要ということくらいだろう。


仮説2: 貧富の格差の違い

米国は貧富の格差が大きいから金持ちがたくさん寄付をする、
というのもよく言われることだ。
しかし、裕福でない米国民が寄付をしていないかというとそうではないようだ。
年収25,000ドル以下の人が年収の4.2%を寄付しているのに対し、
年収75,000ドル以上の人は年収の2.7%の寄付しかしていない
(NY Times の記事)。
もちろん、退職後の裕福な低所得者層による効果を考慮する必要はあるだろうが、
裕福な退職者は往々にして多額の年金を受け取っていることも事実である。
また、アメリカの全世帯の89%が何らかの寄付を行っているとの調査結果もある。

米国では主に、お金持ちが寄付しているというのは正しくないようだ。


仮説3: 米国では寄付が名誉になる

確かに、米国では大学の施設や小学校の名称など
あらゆるところに寄付した人の名前が冠されている。
以前に訪れたオレゴン大学のビジネススクールでは、
オフィスの一部屋一部屋に寄付をした人の名前が冠してあった。

日本でも、高額の寄付をした人は施設に名前を冠することができるし、
記念碑に名前を掲載するという習慣も一般的だが、
この点に関しては米国の方がうまくやっていると言えるだろう。

しかし、仮説2のデータから判断するに、
こうした差は普通の経済水準の米国民が多くの寄付をすることの
大部分を説明することはできないように思う。



結局のところ、米国民に比べ日本国民が寄付をあまりしないのは、
文化や習慣の違いによるところが大きく、上のような合理的な
理由だけで説明することには無理がある
ように思われる。

日本人が寄付をしないのは、
「社会に不条理な不平等があまり存在しない」
と感じているせいなのかも知れないし、
「そうした不平等が存在しても政府が社会保障政策として行うべきだ」
と思っているからなのかも知れない。

最も資本主義的と思われている米国で、
寄付にせよ、宗教にせよ、社会の歪みを別のところで直そうとする国民が
多いのは必然
と言えるだろう。


テーマ : チャリティー
ジャンル : 福祉・ボランティア

北朝鮮に食料支援を -- このエントリーを含むはてなブックマーク

金正日が死去したらしい。

反日教育や拉致問題、核開発疑惑などで日本での北朝鮮の評判はすこぶる悪いが、
私は、日本政府は北朝鮮政府が少しでも長く存続するように
食料支援などを行うべきであると思う。
なぜなら、北朝鮮の現体制が崩壊した場合の国際情勢の変化が
日本にとって好ましくないものになる可能性が高いからである。

北朝鮮の独裁体制が崩壊した場合、
1) 中国に併合される、2) 中国寄りの政府が樹立される、
3)米韓寄りの政府が樹立される、4) 韓国に併合される、
といったパターンが考えられるが、
1) と 2) のパターンになれば、
中国の東アジアでの影響力が強まる事で日米韓などの旧西側諸国のいずれにも好ましくない。
一方、4)の場合には統一朝鮮の東アジア地域での軍事的プレゼンスが相当高まり、
やはり日本にとって好ましくないだろう。相対的に良いのは 3)のケースだろうが、
そのケースでも長期的な韓国のプレゼンス増大は避けられない。

個人交流レベルの問題としても、超のつく反日国の国民が一気に
西側諸国に流入してくるのを考えるだけでもうんざりしてしまう。

また、日本の近年の対北朝鮮政策は強硬一辺倒であるが、
こうした政策が交渉において成果を上げているとは言いがたい。
交渉の行き詰まりは日本の北朝鮮に対する影響力を低下させている。

日本政府は、あからさまに対北朝鮮政策を変更しなくても、
拉致問題とのバーターで食料支援を用意したり、
核開発問題の前進と引き換えに経済制裁の一部解除を提案したりすることもできるだろう。
福島の原発事故の影響で、安全基準値を満たしながら日本国内でさばくことの
できない農産物を支援に回すことも可能かもしれない。

日本から見て北朝鮮が敵国であるのは間違いないが、
国際関係は複雑で、強硬路線が日本の国益にかなうとは限らない。
混乱に乗じて、日本政府は対北朝鮮のプレゼンス強化を狙うべきだ。


  

過去の関連エントリー
【本】日米同盟 vs. 中国・北朝鮮 ~ アーミテージ・ナイ緊急提言


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

プレゼンテーション能力は語学力とは無関係 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今学期、私は学科内でTA(teaching assistant)の評価等をする係に加えられており、
今日は数学科の外国人TAのための英語のテストの試験官をやってきた
おいおい、英語のできない人間に英語の試験官やらせるなんてイヤミかよ、
と思いながらも、割り当てる方はそんなことは気にしていないのだろう。

外国人の院生(のうち英語のスコアが一定点に達していない人)は、
まず最初の学期に英語の授業を取らなければならず、
そのコースにパスしないとTAをやることができない。
こうした決まりはほとんどの大学にあるが、
その基準の厳しさは大学によってまちまちだ。
学費の高い私立などは当然その基準が厳しいし、
うちの大学のように優等生でない学生が多い大学も
ある程度厳しくせざるを得ない。
また、西海岸の大学は学生による評価が厳しい傾向にあるため、
要求される英語力も高いように思う。
ただ全般的な傾向としては、近年は要求水準が高くなりつつある。

今日はそのコースの最終試験の試験官をやってきた。
受験者が質問を含めて10~15分間の模擬授業を行い、
それを様々な分野の教員3人がそれぞれ評価する。
それぞれの教員が、
-- Language Use (文法、流暢さ、語彙、理解力)、
-- Pronunciation(アクセントと発音)、
-- Nonverbal Communicaton (アイコンタクトや生徒とのインタラクション)、
-- Communication of Contents (講義内容)
の4項目を1.0, 1.5, ..., 5.0 の9段階で評価
し、
全ての評価を平均して合否を決める。
3.625点が合格最低点だ。

合格しないとTAポジションを当てにして入学する留学生や所属学科に
とっては一大事なので、大抵は合格する。
しかし今日は3人のうち1人が不合格になってしまった。
私も落第点を付けた。

その学生は、他の学生に比べ英語ができなかったのか
というとそういうわけではない。
実は、合格したうちの1人の方が英語は苦手で、
簡単な文章が聞き取れなかったり、発音が間違っていたりした。
板書は丁寧だったが、冠詞の使い方が違うところもあった。

しかし、大事なことは、
発表が苦手であれば事前によく練習をし、
発音が得意でなければゆっくりはっきりと話し、
分からない事があればきちんと聞き返し、
綺麗な板書と単純化した受け答えで
分かりやすく説明する事だ。
英語が苦手なら、英語力を別のところで極力カバーするという
姿勢が一番大事である、と私は思っている。

そういうことができていないと、試験官の賛同も得られない。
実際、アメリカ人の試験官の1人は、一番英語が苦手だが
きちんと準備してきたTAに最も高いスコアを付けていた。

極論すれば、質疑応答を除いて、
プレゼンテーションは英語力とは無関係だ。
英語が話せなくても、事前に全て準備することができる。

英語が出来ないせいでプレゼンテーションが上手くいない、
と思ってしまいがちだし、実際、私もそう感じることがあるが
それ以外の改善策がたくさんあることを理解しておくことがとても大事だ。



テーマ : 英語・英会話学習
ジャンル : 学校・教育

プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

検索フォーム
Twitter

Twitter < > Reload

お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

全記事表示

全ての記事を表示する

最近のコメント
訪問者数 (UA)
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
海外情報
22位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
北アメリカ
3位
アクセスランキングを見る>>
人気記事Top10


(はてなブックマークより)

カテゴリー
最近のトラックバック
お勧めブログ