アメリカの治安は本当に日本より悪いのか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日、ルーマニアで日本人女子大生が殺害された事もあって、
海外の治安に対する関心が高まっている。

少し探せば、犯罪率の国際比較をすることは簡単にできるが
全米一危険かも知れない大学に勤めている私が感じるのは、
国によって治安に対する感覚が違うということに
気付いていない人が多いのではないかということだ。
その結果、逆にリスクを過大評価していることもあるように思われる。

事始めに、単純に犯罪率を比べてみよう。
日本の凶悪犯罪(殺人、強姦、強盗、暴行)は
人口10万人あたり(以下全て同じ)で5.9件、
刑法犯総数は同じく1238件である(2010年警察庁調べ)。
一方、米国では凶悪犯罪が403件、総数が3466件(FBI)なので、
重犯罪に関しては約70倍、窃盗などを含む犯罪総数では約3倍弱ということになる。
こうして見ると、改めて米国は犯罪が多いことが分かる。

米国の犯罪についてみるときに注意しなければならないのは、
場所によって治安がかなり異なるということだ。
私は郊外のT市に住んで、車で25分ほどのデトロイト市に勤務しているが、
デトロイト市の凶悪犯罪が1887件、犯罪総数が5312件なのに対して、
T市の凶悪犯罪は74件、犯罪総数は2165件である。
少なくとも凶悪犯罪に関しては、地域によって非常に大きな差があることが分かる。
ただし、比較的犯罪の少ないT市でも発生率は日本の10倍を超えている。

これにはいくつかの理由がある。
もちろん、銃が規制されていないという面もあるし、
実際に凶暴な人が多いというのもあるだろう。
しかし、法的な意識がしっかりした米国の方が犯罪が実際に
報告される割合が高くなるという面も大きい。
例えば、日本で電車内の痴漢行為は相当な頻度で行われているが、
もしこれが報告されれば focible sex offence にあたるため、
凶悪犯罪とみなされる。
全例が、あるいは少なくとも米国並みにこれが報告されれば
日本の凶悪犯罪件数は統計上急増するだろう。
実際、日本の痴漢行為と同程度の犯罪が、
米国ではfocible sex offenceとして多数報告されている。

一方、凶悪でない犯罪の大半を占める窃盗などについてはどうだろうか。
統計上は、比較的治安の良いT市でも、2000件余と
日本全国平均の1200件余に比べてると若干多いように見える。
しかし、これは実際に住んだ時の実感とは大きく異なる。
感覚として、侵入窃盗に関しては米国は日本よりも安全だ。
犯罪率の違いは、報告率の違いを抜きに考えると、
主にリスクに対する許容度の違いではないかと思っている。

少なくとも私が住む地域には雨戸がある家はほぼないし、
窓に格子がはめてあるようなこともほとんどない。
窓に鉄格子がはめられるのは、シカゴやデトロイト市内の
貧困地域の一部など見るからに危険な地域だけだ。
玄関の鍵も極めて簡素なものでドアノブに鍵を差し込む形式のものである。
もし、日本に同じ様な家があったら即座に泥棒に入られるだろう。
日本では少し用心深い人は、
侵入可能な窓には格子をつけるか強化ガラスにし、
夜や少し遠くに出かける時は雨戸を閉め、
鍵はピッキングができない防犯性の高いものにしている。
しかし統計上日本より犯罪率が高い米国人はそれをしないで
状況を放置している人が多いのだ。
つまり、米国人は感覚的に、現在の犯罪率は許容範囲で
それより低くする必要はあまりないと考えているのではないか。

私の家の防犯性は他の家並みに低いが、
仮に不在中に強盗に入られても、盗んで意味があるのは、
マックと液晶テレビくらいだ。現金もほとんど置いていない。
侵入されるのは気味が悪いが実害はおそらくそれほど大きくならない。
他の多くの家も同様だろう。

先日、コンドの同じ区画内で、白昼堂々トラックを使って
オートバイを盗まれた人がいたが(しかも私は作業を見たような記憶があるのだが)、
その人は新しいバイクを買ってまたその場に置いている。

留守中に窃盗に入られるのは精神的にはショックだろうが、
米国人は、そこまで深刻に考えていない人が多いのではないか。

一方、一般的な日本人はというと、防犯対策を万全にしつつ、
冷凍庫にへそくりを100万円隠したりしている。

アメリカ人は実害が小さければあまり深刻に考えないのに対し、
日本人は不確実性そのものを嫌う傾向にあるのだろう。

どちらが賢い行動なのかは一概には言えないが、
単純に数字の比較だけでは分からない治安の違いもあるということだ。


余談だが、最後にデトロイトの治安に関する小咄を一つ。
A:「デトロイトって治安悪いの?」
B:「いや全然安全だよ。10年住んで車を2回盗まれただけだ。」


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テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

全ての学生に数学は必要か? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ニューヨーク市立大の政治学の教授 Hacker氏が書いた
"Is algebra necessary?"(代数は必要か?)が話題になっている
原文 と 評論つき日本語記事)。

氏の述べていることを簡単にまとめるなら、

-- 学校での数学の教え方は旧態依然としており社会のニーズに即していない。

-- 多くの学生が、数学のせいで高校や大学をドロップアウトしたり、
  良い大学に入れなかったりしている。

-- その結果、数学以外の才能を持つ人材を無駄にしている。

-- 多項式の計算や微積分などは自然科学を学ぶ学生など一部のものとすべき。

-- 一般の学生向けには、消費者物価がどう作られてるとか、
  量的感覚を重視した科目を教えるべき。

ということのようだ。
そんなに無茶苦茶なことは言っていないように見えるが、
多くの数学者は記事に激しく反応しており
うちの数学科のメーリングリストもハチの巣を突いたようになっている。

そこで論点を整理してみよう。

1.数学科の教授達は何故激しく反発するのか?

人が怒っている時は大抵、相手の言うことがある程度正しいと思っていることが多い。
私の仮説は、数学科の教授達は、社会でどのくらい数学が有用かについてあまり
自信がないのではないか、ということだ。例えば、上の記事で出ている消費者物価に
ついてきちんと知るには、線形回帰分析 や ラグ作用素の多項式の操作は必須だし、
日本の高校レベルの代数計算の知識なしにまともな理解ができるとは思えないが、
現にある数学科の教授はそのことを知らなかった。数学の実社会での必要性を本当に
理解しているのは、企業や研究機関の研究・開発担当者や企画立案担当者であって、
数学を専門にやっている研究者とは限らない。

次に、仮に数学が社会にとって非常に重要だとしても、数学力が活かせる職業に
つく学生が少ないのは動かし難い事実だ。Hacker氏は、多項式の操作程度の
数学を必要とする職業に就く学生は5%程度しかいない、と主張している。
もちろん「数学の知識が活用可能な仕事」は5%よりはるかに多いだろうが、
進学率が上がる中で、いわゆる知的な職業に就かない大卒が増えているのは確かだろう。
このことは、大学の存在意義を危うくしている。数学科に限らず大学教員は、
いまのところ「大学は知的職業に就くための学びの場である」という
大義名分を維持しなければならない。

第三に、現実問題としてHacker氏の提案は数学科の財政に直結する問題を含む。
数学科の財政は、全学生や全ての理工系学生に向けた必修科目で支えられている。
大学院向けの授業等は基本的にそこで作った貯金で運営しているに過ぎない。
そうした科目が大幅に削減されれば学科の存亡に関わるし、
内容を変更するにしても、それが特定の分野寄りであった場合には、
他の学科が設置科目の獲得に乗り出す可能性がある。
したがって立場上は反発せざるをえない。


2.授業の内容は古くて役に立たないのか?

恐らく改善の余地はあるだろう。それは科目の内容に限らず方法論に及ぶ。

例えば、関数のグラフの極値や交点、接線などは、実社会でも応用できる場面が多いが、
必ずしも全ての式変形を理解できなくても、コンピューターを使って数値的に
扱う事でも、かなりの部分まで対応できるだろう。

急進的な改革派は、それにも満足せず、定量的な説明の代わりに定性的な説明
で教えることを求めるかも知れない。「比例」を例にとれば、
(x,y) = (1,2), (2,4), (3,6), (4,8), ...
といった具体的な数値による説明が、
「二つの量の比が一定の時に、この二つの量は比例するという」
といった説明に置き換わる事になる。そういう教科書は実際に存在する。
恐らく「一定」とか「比例」とかを穴埋め問題にしてテストをすると
数値例の「6」や「8」を穴埋めにするより高得点になり、
「理解が深まった」という結論になるのかも知れない。

ただし、こうした方法論は、
カリキュラム全体として今までのところあまり確立しておらず、
特に後者の例ではうまく行きそうにない。
今回のHacker氏のような提案も真剣に検討する価値はあるが、
本人も具体的にどうすべきか分からずに丸投げしているというのが実態だろう。

別の問題として、米国の数学の授業に対する不満は、制度的な問題に起因している部分もある。
米国では全学部を通して、数学科が数学の授業を統括する色彩が強い。
例えば、日本であれば経済学部に設置された「経済数学1」のような科目が、
米国では数学科設置の「解析学1」に置き換わるというような感じである。
講義する側は、特定の応用を視野に入れていないので、「抽象的すぎる」と
いった批判は出やすくなるだろう。
一方で、果たして数学のような科目を「ローカライズ」して教えることあが
ベストなのかも疑問である。


3.全学生に数学は必要か?

答えはノーだろう。
恋愛小説家以外のほとんどの知的な仕事に数学は役に立つだろうが、
残念ながら大卒者全員が知的な仕事に就くわけではない。
この手の疑問に対する私の答えは、以前に「数学を勉強する事は無益」で述べた。
要は、数学力は多くの頭脳系の仕事でアドバンテージになるし、
数学が出来ない人が増えるほどそのアドバンテージも大きくなるものの、
誰でも大学に入れる時代に別に全員が数学を学ぶ必要はない。

数学が選抜に使われすぎているというのは確かだろう。
手先が器用でコミュニケーションもうまい青年が、
数学ができなかったせいで歯学部に
入学できなかったら社会にとってマイナスかも知れない。
しかし、他の方法なら多くの学生の才能がもっと活かせるのかというと、
それは非常に疑問が残るところだ。
数学が選抜に使われているのは、試験実施の簡単さ、公平性に加えて、
潜在能力を測る指標として有用だからだろう。


4.数学の将来性

数学は、自然科学の言語と呼ばれてきたものの、
21世紀に科学の相対的な重要性が20世紀ほど高いままになるのかは分からない。

しかし、仮に人々の生活における自然科学の相対的なプレゼンスが低下したとしても、
人間が、財産なり、寿命なり、幸福なり、何かを最大化しようとして生きている限り、
解析的手法の重要性が低下することは当分ないように思われる。

また、人間やコンピュータの意思決定が離散的である以上、
離散的な構造を研究する学問の重要性も低下しないだろう。

数学の抽象度が科学や工学の特定分野に比べて高い以上、
分野の重要性が急激に変化することは考えにくい。

確かに、将来活用されうる数学は
過去に蓄積された数学的知識とかなり異なる可能性も高く、
教育カリキュラムには時としてダイナミックな変更が必要だ。

しかし、数学や数学教育の有用性に対する疑問は、
カリキュラムの老朽化という点を除けば、
ほとんど学歴に関するインフレに起因していると
いうことを認識しておく必要があるだろう。


テーマ : 教育
ジャンル : 学校・教育

シャープの代わりに新製品を考えてみたぜぇ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

経営危機が騒がれてるシャープは、
もともと多額の設備投資を伴う高リスクの経営をしてきたことに加えて
地デジ移行バブル崩壊後の意思決定が大きく遅れたことが主な原因だろう。

それでは、開発部門に責任が全くなかったのかというと、そうとも限らない。
シャープも、一流企業と呼ばれるようになって久しく、社員の発想が大人しく
なってしまった点は否定できないからだ。

解像度の高い4kテレビで業績回復などと戯言を言っているテレビメーカーもあるが、
イノベーションとは既存の技術のスペックを上げることではない。
そこで今日は、シャープのために新商品を考えてみた。


まずは日本のお家芸、小型デバイスから。

コンタクトレンズ型TV:

史上最小のコンタクトレンズに埋め込むTV。近視用と正常視力用の2種類があり、
近視用は度が変わるたびに買い替えなければならず、常に買い替え需要が発生する。
正常視力用は5万円、両目で別の番組を視聴できるデュアルタイプは9万8千円。

ネイルディスプレイ:

ネイルアートに凝りすぎて疲れてしまった人に朗報!ネイルにはめるだけで
TPOに応じて、好きな柄を表示できる超高精細液晶。ネイルアート風に加え、
健康で清楚な爪、動物の爪なども表示可能。
またスピーチやテスト中のカンニングにも最適。一爪1万5千円。

水晶玉TV:

直径25センチの球型の卓上型TV。食卓の真ん中にインテリアとしてお勧め!
内蔵カメラで人間の目を感知し、見つめる人の向きに合わせて画像を表示。
最大3方向まで画像を表示。8万8千円。
新人占い師用に、予言を水晶内にこっそり表示してくれるソフトは
別売りで1万9千8百円。

スカルプディスプレイ:

髪の毛の悩みはこれ一つで解決!スキンヘッドにしてこのマスク型ディスプレイを
被るだけで、その日の気分に合わせて好きな髪型を表示!
有名俳優からひっぱりだこ間違い無し。オーダーメイド。1個20万円〜。


どうしても既存のテレビに拘りたいなら…。

引き戸型TV:

押し入れの扉をそのままテレビ画面にして、お部屋すっきり!
32V型13万円〜。画面が押し入れ内側を向いたドラえもんTVも同価格で発売。

ウインドーズTV:

部屋の窓の代わりにはめる完全窓型のTV。見ないときは透明で採光可能。
フォトフレームやステンドグラスとしても使える。15万円〜。

イマジネーションTV:

縦18ドット、横32ドットの超低解像度TV。想像力を鍛える効果があり、
子供の能力開発やボケ防止に最適!エッチな画像や残虐シーンもそのまま
見えないので、保護者の方も安心。32V型5万円〜。

LVTV:

その名の通り、ルイヴィトン社との提携によって生まれた高級TV。
枠や台座には、ル社の生地をぜいたくに使用。テレビ視聴中に画面上に
LVのロゴをくまなく重ねて表示することもできる。TV-CMを自動検知して
全てルイヴィトンのCMに差し替えるインテリジェントCM機能搭載。
26V型31万円〜。

アクションTV:

アクション映画やアクションゲームのシーンに合わせて、テレビ自体が
振動する迫力満点のTV! 支柱と台座部分にサスペンションとモーターを
内蔵。あまりに激しいシーンを映すと、テレビが台から落ちて壊れる
ことがあり、スリル倍増!32V型15万円〜。

凹型TV:

画面中央が凹んで、光の反射を最小限に抑えるTV。ただし視野角が狭い
弱点あり。26V型12万円〜。

かおるTV:

食品、動物、植物、煙、化粧をした女性などの画像を感知して、
それに合わせた香りを出すTV。強力換気扇内蔵。32V型25万円〜。


生活のニーズに密着するのはビジネスの基本。

洗面鏡ディスプレイ:

内蔵カメラによる撮影で鏡代わりになるディスプレイ。
左右反転、拡大、縮小、アスペクト比変更はもちろん、
写真修正、問題箇所のズームアップ、後方用カメラで
後ろ姿もばっちり表示。別売り、カメラ内蔵ハブラシ(1万8千円)で
口の中も拡大表示して磨き残しを防止!
幅60cm型40万円〜。高級美容室向け需要も見込む。

うんちTV:

便座裏に内蔵のカメラでうんちを撮影し、トイレの扉内側
のディスプレイに表示。うんちの形、重さ、体積を自動計算し
健康状態を診断。今後5日間のうんちの回数、重さ予測機能付き。
15万円〜。入院病棟用需要も見込む。

4ポスターキングベッドTV:

欧米上流階級に人気のある4隅に支柱のあるベッドの側面と
天井面を全面液晶に。世界各地の有名リゾートホテルの
映像で快適に睡眠。朝も日の出を見ながら心地よい目覚め。
200万円〜。


車もまだまだ進化する。

フロントガラスTV:

車のフロントガラス全面をTVに。カーナビ、スピード表示などの
ほか、レース感覚が味わえる「公道レースモード」も。40万円〜。


大型に拘るメーカーに。

プール埋め込み型TV:

プールの底面全体をディスプレイにし、競泳選手を誘導。
スピードメーカーとコーチ的な役割を果たす事で世界記録続出!

ベースボールTV:

野球場のグラウンド全体をテレビにすることで、ボールや選手の軌跡
をカラーで分かりやすく効果的に表示。乱闘シーンでは球場全体が
燃え上がる「炎上モード」搭載。また観客の目がいくところに、
ダイナミックに広告を表示。野球観戦がますますエクサイティングに
なって、観客数倍増、広告収入10倍増を見込む。


目のつけどころがワイルドでしょ。


テーマ : ビジネス
ジャンル : ビジネス

家電量販店に将来はあるのか -- このエントリーを含むはてなブックマーク

この夏久々に日本に帰って思ったことをいくつか書こうと思う。
まずは「本屋が減った。次は家電量販店が減るだろう」ということ。

最近10年で(新品を扱う)本屋が減った。
90年代、実家のある地元には歩いていける大型書店が二つあったが、
両方なくなった。ちなみに一方は牛丼の「すき家」に、
もう一方はブックオフになっていた。
最寄りの二つのスーパーの近くにあった本屋もいつの間にか消えていた。
いま、一番近いのは、古い町並みが残る駅の近くにある本屋だ。
当然ながら、アマゾンを初めとするネット通販の影響が大きいだろう。

ただアメリカのように、今後、実店舗型の本屋が壊滅的な状況になるか、
というと、それはちょっと微妙だと思う。
日本には再販制度があって本の値段はどこでも変わらないから、
ネットで買うメリットは大きくない。
また、電車通勤(通学)で駅前の本屋にふらっと立ち寄るという習慣も根強い。
それに、アメリカの本屋と比べて日本の本屋は品揃えが豊富だ。
それは再販制度があるから売れないかも知れない本も置けるという面もあるし、
本自体が(恐らく在庫コストや紙の質の関係で)コンパクトだというのも理由だ。
実際、駅前の本屋は相変わらずたくさんの人で賑わっている。
古本屋も「自炊」関連の需要で当分の間、潤う可能性がある。

電子書籍のインパクトの大きさはよく分からない。
どの程度、端末や検索技術が進歩するか、著作権や価格の交渉がどうなるか、
など、流動的な部分が多いからだ。
現状のリーダーのスペックや検索の質、そして電子書籍の価格では
全ての本と雑誌が電子化されたとしても影響は壊滅的にはならないだろう。

一方で、より確実に危ないと思うのは家電量販店だ。
米国では2009年に業界2位の家電量販店 Circuit City が経営破綻し清算された。
店舗を引き取る企業がなかったのは、いかに需要がないかということの表れだ。
(ただしネット通販部門は他企業に引き継がれている。)
また、業界トップの BestBuy も経営不振が伝えられている。

家電量販店が不振に陥っているのは、言うまでもなく、
AmazonやEbayなどネット通販の影響だ。
以前 BestBuy は、 BestBuy の店舗で商品をチェックして Amazon で安く買う
という消費者が多いことを嘆いていたが、
今の消費者は BestBuy にすら行かずにネットで注文する。

率直に言って、日本が同じ経路を辿らない理由をあまり思いつかない。
むしろ電気製品については、日本の方がネット通販のに向いているのではないかと思う。

第一に、日本では米国に比べ
価格コムのように実店舗よりも安い価格で買う方法が充実している。
「実店舗を好む消費者が多い」というような記事やコメントを
ネットで目にすることもあるが、例外やテクニカルな点を
指摘している以外には、ほとんど説得力がない。
また、日本の家電は単価が高いので、多少手間をかけても
ネットで安く買おうという人が多くなるだろう。

第二に、米国で未だに実店舗で買う人は、
何らかの理由でインターネットで購入できない人を除けば、
返品が容易であるというのが大きな理由である事が多いが、
日本では米国ほど返品が一般的ではない。

第三に、ネット通販の輸送上のディスアドバンテージが小さい。
米国では実店舗がいまだにやや有利な商品として、
洗濯機、冷蔵庫、オーブンなどの大型白物家電がある。
これは、広い国土を持つ国では、ネット通販拠点からの
配送では経費がかかりすぎるからだ。
一方、国土の狭い日本では、例えば、首都圏在住の人が
新宿のヨドバシで冷蔵庫を買うメリットは何も無い。

それでもなんとなく日本の家電量販店が近年好調だったのは、
地デジ移行に伴って液晶テレビの特需があったからだろう。
「初めての大型液晶テレビ」は、事実上最後の
「見比べて買いたい商品」だったのかも知れない。
ブルーレイ・レコーダーなら店頭で比べてもしょうがないし、
炊飯器なら実際に食べて比べられるわけでもない。

そう考えていくと、家電量販店の将来は真っ暗に見える。
通販部門はともかくとして、実店舗のほうは、
外国人観光客向けの土産物屋としてやっていくか、
メーカーをテナントにしてショールーム的な店にするか、
取り扱い商品を拡大してドンキホーテのようなカオスな店にするか、
くらいしか生き残る道はないように思える。
実店舗の不動産を保有しているチェーンは店舗数削減の際に
特に苦しくなるかも知れない。

10年後に、大規模家電量販店は何社になっているのだろう。


テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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