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ハーバードじゃないとだめなのはだめ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

東大に受かるくらいの学力の高校生が、
ハーバード大など米国の一流大学を目指すケースが増えているらしい(記事)。
ツイッターでは批判的な意見も多いようだが、
私は基本的に良い動きだと思うし応援したい。

別に優秀な人がみんな海外を目指すべきだとは思わない。
東大に入れるくらい頭の良い人はきちんとした人生計画さえ立てれば、
一生、日本で余裕のある暮らしが送れるだろう。
いや、そんなに保守的にならなくても、
日本から世界に新しいモノやサービス、研究成果などを
発信することだってもちろん可能だ。
今までだって、日本はそうやって豊かになってきた。

しかし人材交流がグローバル化する中で
日本人が相対的に孤立する傾向が強まっていることは
日本社会にとってリスクファクターとなっており、
若くて優秀な人の一部が積極的に海外に出ていくことは望ましい。


「大人になってからだって海外に行くチャンスはあるのだから、
わざわざ学部から行かなくても
大学院からでもいいし働き始めてからでも良い。」
というような意見もよく聞く。
しかし、私はこの意見に諸手を挙げて賛成はできない。

実際、私は社会人になってからの大学院留学組だが、
英語力の面でも、社会への適応という面でも、
学部からの留学と大学院からの留学では決定的な差があると感じる。
(さらに言えば、留学時の年齢によっても異なる。)
その差は、小学生と中学生の学力差とか、
東京出身者と地方出身者の感覚の違いよりもずっと大きい。

もちろん、英語力は努力や才能による部分も大きいし、
社会への適応能力は個人差や性格による差も大きい。
しかしそれは、「極めて優秀なら」、「多大な努力を惜しまないなら」、
「とてもアメリカ的な考え方の人なら」、
挽回できるという程の大きな差である。

例えば、米国のトップスクールのMBAプログラムには
日本人が毎年50〜100名程度が入学しているはずだが、
MBA関係者の話などを聞く限り、
そのうち純粋に米国内で就職しているのは10名未満だろう。
もちろん、留学生の中には日本からの派遣留学や
日本国内で良い条件で就職する人が多いが、
これらトップ校のMBAの卒業生でさえも大半は、
米国社会で英語圏からの卒業生と
互角にやっていく事は難しいのだ。

18歳で海外の一流大学に入学するメリットは非常に大きい。
唯一例外があるとすれば帰国子女など、
大人になる前に十分な海外経験がある場合だろう。

もちろん、18歳で全く違う環境に飛び込むのは相当なエネルギーが必要だろう。
しかし、そのエネルギーはペイする可能性が高いと思う。
確かに、留学した学生が幸せになるかどうかは本人次第だが、
社会的な成功に関して言えば、それは金融市場の裁定取引のようなものだ。
まだ多くの人が気付いていないことをきちんと考えてやれば、
誰もが気付いていることに労力を費やすより大抵の場合成果は大きい。
しかも日本企業は現在、明確に海外で活躍できる人材を求めている。

もしも日本からアイビーリーグへの志願者が1万人、
東大への志願者も1万人ということになれば、
その時はもはや留学は良い選択肢ではないかも知れない。
しかし現状では、かなりの先行者メリットを享受できるだろう。


最初に、日本の高校生が海外の大学を目指すのは
「基本的に」良い動きだと述べた。
ここで、2つほど懸念材料を述べておきたい。

1つは、米国の一流大学が「大学受験ゲーム」の延長として
「優秀な受験生」の興味を引くだけで終わってしまうことだ。
首を傾げたくなるのが「ハーバードと東大を併願する学生」がいることだ。
米国式の教育を受けたいのならば、
ハーバードでなくても良い大学はたくさんある。
なにしろ米国の研究大学の規模は、日本の10倍なのだ。
それに加えて、質の高いリベラルアーツカレッジも多くある。
選択肢を広げれば高い確率で入学許可をもらえるだろうし、
例えばそのレベルの学生が州立トップ校にも入れないとは思えない。
そうした大学でも質の高い教育を受ける事は十分に可能だし、
大学院で一流私立に移ることもできる。
「ハーバードやイェールじゃなければ東大」というのは、
「フィレミニオンがないなら寿司」というような滑稽さがある。

国際化の点で望ましいのは、
予備校が「ハーバード大20名合格!」と書いて
宣伝できるようになることではなく、
どこの有名大学に行ってもちょっとした会が
開けるくらいの数の日本人学部生がいて、
他国の社交的な学生の多くが卒業までに
2人位は日本人の友人を作れるような
状況を作り出すことではないか。


もう1つの懸念材料は、格差の固定化である。
東大(京大でもいい)がすごいのは、
日本人であれば本人の努力と能力次第で誰でも入学できることだ。
学費は年50万ほどだし、貧しい家庭であれば貸与奨学金を受ける事もできる。
幼い頃からお金をかけて、楽器やマイナースポーツ、
英会話などを習う必要もない。
真面目に学校で勉強し、問題集で練習し、少しばかり塾に通えば良い。

一方で、米国の大学はそうではない。
有名私立では学費と寮費だけで年5万ドルを超えるケースも珍しくない。
入学にはペーパーテストだけでなく、芸術やスポーツ、課外活動の実績が必要だ。

英語学習に関しても、日本で生きた英語を学ぶ環境は平等ではない。
裕福な家庭は、子供をインターナショナルスクールにいれることもできる。
また大都市圏の中流以上の家庭であれば
ネイティブの家庭教師を雇うことは難しくないかも知れないが、
そうした機会がどれほど与えられるかは親の情報力や英語力にも依存する。
小さな町や貧しい家庭では(インターネットが問題をある
程度解決したにせよ)そうした機会も限られる。

必死でこうした困難を乗り越えてたとしても、
アイビーリーグのアドミッションオフィスが、
あなたが睡眠時間を削って手伝った娘の願書と、
教育コンサルタントがアドバイスした現職大臣の令嬢の願書を受け取ったら
どちらに入学許可が与えられるだろうか?


繰り返すと、全ての優秀な高校生が海外の大学を目指す必要はないし
それは現実的でもない。
しかし、一部の優秀な高校生が海外の大学を目指す事には、
本人にとっても、社会にとっても、大きなメリットがあるのではないか。


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テーマ : 海外留学
ジャンル : 学校・教育

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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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