アメリカ就職活動〜主婦編・・・(6) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

妻「ねえ、メール来たよ。電話面接だって!」

私「まじで?!すごいね、Willy妻。
  聞かれそうなこととかちゃんと答えを準備しておくんだよ。
  何で今働きたいと思ったのかとか、職歴のこととか、、、。
  家族の事は向こうから聞けないから、
  自分から全部説明するんだぞー。」

妻「うん分かった。求人に、日英バイリンガル、ってあるけど、
  どのくらい英語できればいいんだろうね。。。」

私「分からないけど、向こうに判断してもらうしかないよ。
  能力不足だって思われたら、採用されないだろうし。
  英語どのくらいできますかって聞かれたら、
  自分では判断できないので英語で面接/試験して下さいって言ったら。」

妻「じゃあそうするよ。」

このポジションがどういう採用プロセスになってるか知らないけど、
大学のポジションだったら1つにつき、3〜4人を現地で面接するのが
普通だ。電話インタビューはその2倍くらいすることが多い。
採用される可能性はせいぜい20%と言ったところだろう。



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ジャンル : 海外情報

TOEFLを大学入試で義務づけるとどうなるか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

自民党の教育再生実行本部が、英語試験のTOEFLで一定の点数を
大学入試で義務づける案をまとめたようだ。
この案にはプラスの面もマイナスの面もあるが、私の第一印象は
「あー、TOEFL受けたことがない人が考えた案でしょ」
であった。

1.英語能力試験として優れるTOEFL

まず、TOEFLの最新の形式である TOEFL-iBT について簡単におさらいしよう。
この試験は、米国のETS社によって作られた、ノンネイティブの学生の
米国大学における英語運用能力を評価するための試験だ。
120点満点で、Reading, Listening, Writing, Speaking
の4科目に30点ずつ配分される。
口語と文語、インプットとアウトプットを均等な点数配分で見るテストで、
大学に進むための正に総合的な英語力を試す試験となっている。
基本的に「米国で学生生活を送るのに支障がないレベル」
が満点に設定されていると考えれば良い。
米国の大学院に入るための基準点は90点前後であることが多いが、
これは「学生生活に支障はあるけど、何とかやっていけるレベル」
だと考えると良いと思う。

この試験は、米国の大学が留学生に求める英語力を測るために、
改良を積み重ねて作られており、大学入試や英検やTOEICなどの
試験と比べても断然、英語の運用能力がきちんと測れるように作られている。
難しいけれども、意味のないマニアックなクイズや「無理ゲー」の
ような試験ではないのだ。

こうした点で、TOEFLは大学生に求める英語力を測る試験として
適していると言える。


2.英語教育体制に問題

TOEFLはきちんと英語を勉強してきた人ならそれなりに良い点を取る事ができる試験だ。
もちろん得点を上げるために対策もできる。
しかし、問題は日本にTOEFLの対策をできるような教育体制が
整っているかという点にあるだろう。

日本人は、一般的にライティングやスピーキングなどの
アウトプットが苦手だと言われるが、これは日本人が生まれ持った性質ではなく、
アウトプットをきちんと評価できる中学・高校の英語教員が少ないせいだ。
毎週、宿題などで短いエッセイを書いてその表現や構成を英語教員が添削する、
というような授業が行われていれば、生徒のライティング能力は飛躍的に
向上するだろうが、そこまで力量のある教員が少ないのではないか。

スピーキングに関しても同様だ。
近年はALT(英語指導助手)が導入されていると思うが、
その質や時間数、生徒数に対する教員数の比を考えると、全く十分とは言えない。
私の感覚ではスピーキング能力の上達速度は、1クラスの生徒数に比例する。
例えば、4人のグループで会話を習うと、上達のスピードは1対1の
4分の1程度だということだ。
これは人数に反比例して話す時間が短くなることに加え、
トピックが最大公約数的なものにならざるを得ないことにも起因する。
意味のあるスピードで上達するには、インターネット経由でもいいから、
自分の興味にあった会話を1対1でできるということが必須の条件だと思う。

要するに、これまでの文法や読解重視の英語教育というのは、
必要性から生まれたというよりは、日本の英語教育のリソースの制約下で
考えた次善策という側面が強いと言えるだろう。

現在の教育体制を放置したまま、大学入試の英語をTOEFLに代えると、
教育環境の整った大都市圏の裕福な家庭、
子供を留学させたりイマージョンスクールに入れられる家庭
親が英語を話せるような家庭の子女などが更に有利になることは間違いない。
もちろん、英語力が高い子供が有利になるのは一向に構わないわけだが、
ある程度、教育体制を改善して機会の平等を図ることも必要だろう。


3.TOEFLの大規模かつ公正な運用には疑問

もっと実際的な問題は、TOEFL iBT が日本の大学入試ほど発達した大規模な
仕組みに耐えるほどのシステムになっていないということにある。

TOEFLのライティングは、私が受験した当時、
出題されうる問題は200題程度に限定されており、
原理的には全ての問題を「予習」しておけば解答できるようになっていた。
実際には200のエッセイを準備する時間はないので、
典型的なパターンを練習をするだけで終えるのが普通だが、
英語力が足りない子が何とか高得点を取ろうと思えば、
200のエッセイを暗記させる塾が現れることは想像に難くない。
しかし、それでは英語力向上の点では本末転倒である。

その他のセクションにしても、基本的には同じ問題が繰り返し使われる。
TOEFL受験者は守秘義務にサインする必要があるが、
他の受験者に問題を漏らしたとしても、その捕捉は容易でない。
また受験者個人だけとっても、何度も受験すれば、
同じ問題が出題されることもあるのである。

留学熱が高い中国や韓国では試験問題の情報交換が頻繁に行われ、
ETS社は、これらの国で受けたコンピューターベースの
試験スコアを無効にしたことがある。
その結果、裕福な韓国人などは、
わざわざ大阪までTOEFLを受けにやって来ていたのである。
韓国人の友人によれば、大阪の受験会場の近くのスタバは、
韓国人受験生の溜まり場になっていたそうだ。

もしも政府が英語教育を本当に改善したいのであれば、
実用的な英語試験の開発を自ら行うべきだろう。

現状のまま、TOEFLの受験を全受験生に義務づければ、
受験者は大学受験生だけで50万人程度になる。
各受験生が5回試験を受け、毎回約2万円の受験料を払えば、
それだけで毎年500億円の受験料がETSに落ちる計算になる。
政府が少しばかりの予算をつけて検討すれば、
TOEFLと同じ程度に英語の運用能力を図ることのできる試験を開発し
公正に運用することも十分できるのではないだろうか。



(かつてやった参考書)


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ジャンル : 学校・教育

アメリカ就職活動〜主婦編・・・(5) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ベルリッツは時給制のパートタイムの募集だったが、
当然、フルタイム、準フルタイムの求人もある。

フルタイムで週5日となると、
主婦の時間的な制約からしても勤務場所がかなり重要になってくる。
しかしすぐに2件ほど自宅から車で15分以内で行けそうな
求人が出ていることが分かった。

一件は、日本の大企業の事務関係のお仕事。
こういう職場環境がどうなのかは良く分からない。
日本の大企業だから、福利厚生などのベネフィットが
整備されていて働きやすいのかも知れないが、
一方で、駐在員と現地採用職員の軋轢もよく聞く。
待遇格差という問題もあるだろうし、
いわゆる日本企業特有の「空気読んでやって」、
「業務じゃないけど生活のセットアップ手伝って」
的なあいまいな依頼が火種になっているのかも知れない。
しかし、そうこう考えているうちにこの求人は埋まって
しまったようだ。

もう一件は、米国企業だが日本法人との連絡が主な業務
であるアシスタント的な仕事。
妻は秘書をやっていた事があるので
経験が活かせるという意味では良いし、
勤務場所も妻がよく行く近所のスーパーよりも近い。
ただし他の仕事より要求水準は高そうで、
もっと優秀な応募者がいそうだ。

私「詳細は分からないけど、練習も兼ねて応募してみたら?」

妻「うーん。これ、もし働くことになったら
  ちゃんと家のこと手伝ってくれるんでしょうね?」

私「あー、大丈夫だよ。」 ← といいつつ自信は無い。
 「そもそも、そんな簡単に採用されるのかな。」

妻「私、面接まで行けそうな気がするんだよね。」← 根拠のない自信

私「昔、試しに受けたTOEICの点数とか書かないんだよ。
  それくらいの点数じゃプラスにならないだろうから。」

妻「うん、分かった。」

応募の処理が保留のままのベルリッツを除けばまだ2件目の応募である。
大丈夫だよ、そんなにすぐ通ったりしないってば。
ちょっとググっても、アメリカで日本人の初めての就活って
半年くらいしてようやく決まるとかじゃん。


『さあ海外で働こう』


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アメリカ就職活動〜主婦編・・・(4) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ベルリッツの仕事に応募する準備をしている妻だったが、
求職というのはたくさんの仕事に応募してようやく1つ決まる
という類いの物だろう。それには能力もあるが運や巡り合わせが大きい。

私「まあ、仕事なんて決まるかどうかは運だから、
  良さそうだと思うのにはどんどん応募しなよ。」

妻「そうだね。一つ面白いの見つけたんだけど。」

なんとその求人とは、
うわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp

...(中略)...

妻「ベルリッツも応募したんだけど、いつまで経っても under review
のままなんだよね。あんまりとる気ないのかな。」

私「上手く処理できてないのかもね。
  生徒集まってから先生決めるとかいう場当たり的なのもあり得る。。。
  まあ次、行きなよ。」

1件目の応募はいろいろと大変だが軌道に乗ってしまえばどんどん出せる。
独自書式の少ない英語圏の応募は特にそうだ。
そう、私も4年前の就職活動で75通のアプリケーションを送ったのだった。


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アメリカ就職活動〜主婦編・・・(3) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

今や仕事の募集も応募もほぼ全てオンラインだ。
もちろん手書きの履歴書を用意する必要もない。

米国のレジュメは、基本的にフォーマットが自由だ。
名前や学歴、職歴などは書くが、基本的に何を書いても良いので
自分をきちんとアピールすることも重要となる。

学歴や職歴は変えようがないので、妻は、
ウィスコンシンにいた頃、プリスクールで毎週ボランティアをやっていたこと、
デトロイトでは日本人会がらみの役員をやっていたこと、
などを書いた。このあたりはまだ良い。

妻「えっ?リファレンス?これ、誰の名前書けばいいのかな。。」

仕事への応募に当たって、3人分のリファレンス(応募者の適性について
照会できる人物)を書く必要があるようだ。
日本人が一番苦戦するのがこのリファレンスではないかと思う。
米国では、仕事への応募に当たり前職の上司や同僚等3〜4人を
リファレンスとして記載し、求人した企業が問い合わせをできる
ようにするのが普通である。ただし、実際に照会を受けるのは、
せいぜい応募者を一番良く知っている1人くらいというのが相場だろう。

新卒で応募するなら大学の教官に頼めるが、夫の仕事についてきた
主婦の場合は、結構悩みどころだ。

妻は、私と相談した結果、以下の3人を選んだ。

1.ウィスコンシン時代にボランティアをしていたプリスクール
  の校長。メールでお願いしたところすぐに承諾。

2.以前に私の勤務先の大学に東日本大震災についての短いエッセイ
  を寄稿した際に担当だった日本語の先生。メールでお願いし
  すぐに快諾。

3.娘のキンダー時代の先生。ボランティアで子供に折り紙を教えた
  ことがあったため。直接話をしに行きOKをもらう。

リファレンスがどのくらい重要なのかは仕事内容にもよるだろうが、
こうして見ると、アメリカではコミュニティーとの小さな繋がりが
いかに大事かということを痛感させられる。

どうやら、ようやく1件目の応募にこぎ着けられそうだ。


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アメリカ就職活動〜主婦編・・・(2) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本人の主婦が米国で就きやすい職業として
人気があるのが日本語の教師である。

一般的には実入りの良い職業ではないだろうが、
大学等で教えればそれなりの収入にはなるだろう。
講義の時間以外はどこでも準備できるから時間の融通も効く。
ただし、大学で教えるには最低でも修士号が必要になってくる。

この修士を取るという選択肢は、
状況によっては結構リーズナブルかも知れない。
多く州立大学では、学生が永住権を取得できれば、
州居住者用の学費が適用されて州外出身者の6割引程度になる。
うちの大学なら総額で年間1万ドル程度だろう。
さらに私の大学では教員の家族は学費が半額なので、
年間5000ドルで済む(医学部などは除く)。
つまり1万ドル(2年間)で修士が取れる計算になる。

知り合いの中国人はまず大学の職員として雇ってもらい、
学費を全額免除してもらって学位(こちらは博士だが)を取ろうとしている。
いろいろと裏技があるものである。

大学院の専攻を調べると、外国語の教師になるために
割と簡単に修士を取れるというコースがちゃんと用意されている。

状況としては、これも一つのキャリアパスとしてあり得たのだろうが、
妻にもその気になれば修士を取るチャンスは今までに何度もあった。
しかし実際には取らなかったわけで、
修士取ってから働くというのは無しだね、
ということになった。

もっとも、大学でなければ日本語を教えるために修士は必要ない。
適当にググると、自宅から車で15分ほどのベルリッツで
日本語の非常勤講師を募集しているではないか。

私「ねえ、ベルリッツで日本語教師募集してるよ。しかも便利な場所。」

妻「へー、面白いね。応募してみるよ。」

いよいよ、応募準備を始める妻であった。


『さあ海外で働こう』


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アメリカ就職活動〜主婦編・・・(1) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

現在、米国のグリーンカード(永住権)申請中の我が家であるが、
グリーンカードの前に取りあえず、
妻と私に無条件のEAD (労働許可証)が発行された。

これで、法律の上では妻も私も無条件に就職や転職活動ができるというわけだ。
無論、新たな雇用主にビザをスポンサーしてもらえば就職や転職は自由だが、
就労ビザを取るのは時間的、費用的、条件的にそれなりに高いハードルがある。

逆に言えば、EADを持っているという事は就職・転職活動の上では非常に有利だ。
日本人が、米国での就労に苦労するのは、まずこの就労ビザを取れるかどいうか
というところが大きな関門なのである。

大学の仕事は休みは多いけどテニュア取るまでは不安定だし
給料も慎ましい生活をするには十分だがそんなに高くもないので、
以前から、労働許可が降りたら仕事探してよ、と妻には言ってあった。
そこで、いよいよ妻も重い腰を上げて仕事探しを始めた。

妻は日本で4年ほど事務や秘書業務等に就いていたが、
結婚前に退職して以来、9年間働いていない。
英国の大学を卒業しているので英語は一応使えるし、
発音や聞き取りは私より得意だが、
留学したのが20歳を過ぎてからだったので
18歳から4年間の学部留学をした人ほどの英語力はない。
(これは、私が高校卒業後すぐの学部留学を勧める理由の一つだ。)
また、専攻は社会学だったので専攻に直結する職業もほとんどない。
特技と呼べるものは、料理とペンキ塗りくらいである。

娘「ママはパンを焼くのが得意だから、パン屋さんがいいね!」

私「うーん、それもいいけどお金を稼ぐには相当な数のパンを売らなきゃいけない。
  しかも、カウンティの規則によって、営業許可を得た商業用の
  キッチンで調理する必要があってだな・・・・。
  とりあえず、日本語を活かせる職業、できれば日本語と英語が
  両方必要な仕事を探すのが現実的なんじゃないかな。」

妻「うん、分かった。探してみる。。。」

こうして、妻の就職活動は始まった。



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アベノミクスの舞台裏(3) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

金融政策は一番大きなアベノミクス劇場の目玉だが、
他にもいろいろな茶番が埋もれているような気がしてならない。

企業に賃上げを要請するという、旧社会主義国真っ青の政策もその一つだ。
企業の内部留保を活用したいというのは分からなくもないが、
常識的に考えれば無理に賃上げさせても企業収益を圧迫するので
投資の減退を招き、株価も下落して、結局賃金も元に戻ってしまうだろう。
ただ短期的には消費にプラスなる可能性が高いし、
ともかく増税まで景気を良くすればそれで目的は達成、
ということなのだ。

ローソンはいち早く社員を対象に3%の賃上げを発表した(*1)。
政府の要請で私企業が賃上げするとは異常な事態だが、
これは食品に軽減税率を適用してもらうための
ロビー活動の一環とみるべきだろう。

多くの国や地域で、食料品の軽減税率適用は極めて複雑だ。
食料品に軽減税率が適用される反面、
外食は課税されるという方式が多いからだ。
例えば、私の住んでいた米国ウィスコンシン州では、
その場で食べられるバー型のアイスクリームは箱詰めでも課税されるが、
大きめのカップに入ったアイスは家庭用食料品と見なされて課税されない。
同じハーゲンダッツを二箱かっても一方が課税、一方は非課税となる。
同様にして、コンビニで売っている牛丼は軽減税率だが、
牛丼屋の牛丼は課税されるという可能性も出てくる。
中食産業を支えるコンビには、そうした法律のさじ加減が
一番大きく影響してくる業態なのだ。

もちろん、そんな事情はマスコミでは決して報道されないだろう。
新聞も軽減税率の対象となる可能性が高いからだ。
実際、多くの諸外国でもそうなっている。
マスコミは業界を挙げて政府に協力し、
軽減税率を勝ち取るに違いない。

もちろん、実際に来年から軽減税率が導入されるかはまだ予断を許さない。
政府には、2015年9月の8%から10%への消費税引き上げという
「ボーナスステージ」が残っているからだ。
今年何もかもがうまく行けば、
この強力なカードはボーナスステージで使う事になるだろう。

賃上げも軽減税率も、あくまで消費税引き上げゲームの駆け引き材料に過ぎない。

(*1) 全国どこにでもあるコンビニなら影響が大きいように見えるが、
実際には正社員のうち3300人だけが対象で
所得が低い18万人のアルバイトは対象にならないようだ。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

アベノミクスの舞台裏(2) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日銀の物価目標や総裁選びも、
消費増税という一大イベントを考えると全てが茶番に見えてしまう。

最近、白川総裁叩きが流行っているようだが、
過去5年間の金融政策を見てみれば政策の方向を間違えたようなことはしていない。
ただ政策があまりに漸進的すぎて宜しくなかったというのが真っ当な見方で、
要するに5年間金融緩和しましたがデフレ(あるいはゼロインフレ)を
脱出できませんでした、ということだ。
これは主にデフレや低インフレ下で
利下げが遅れたり利上げした総裁が3〜4人いたせいであって、
過去5年を誰がやってもインフレにするのは難しかっただろう。

今度の黒田総裁候補や岩田副総裁候補は、
2年で必ず2%インフレにすると言っているが
実現の可能性はかなり低いだろう。
まだ決まったわけではないから手の内は明かせないのかも知れないが、
国債の買取を積極化するというような従来の延長線上の政策以外に
特に良い案が出ている訳でもない。

グラフを見れば分かるように、2008年頃のエネルギー高騰という
特殊要因をならして見れば、過去にインフレ率が2%近傍で推移したのは、
ドルが200円台だったようなプラザ合意前の時代と
バブル期の数年くらいである。
為替が1ドル150円になるとか、
企業の生産設備を大量に廃棄させる、
物価を統制して強制的に物価を上げるというような
相当手荒い手段を政府が取らない限り2年で2%近傍は難しい。
CPI
(縦軸は前年同月比)

そして就任から2年という期限は消費税を上げたちょうど1年後、
消費税引き上げの景気への影響がだいたい反映された頃にやってくる。
要するに2年後、2%のインフレ目標を達成できずに説明責任を問われる日銀総裁は、
結局、消費増税後の景気悪化の責任を取らされる可能性が高い。
しかも、その総裁候補は財務省出身なのである。

全てが茶番なのだ。

恐ろしい事に政府は、構想から19年かかった5%超の消費税実現のわずか
1年半後に更に2%の消費増税を計画している。
これは流石に財務省も「ボーナスステージ」と位置づけているだろうが
ひょっとすると、金融政策にプレッシャーをかけ資産バブルを引き起こして
2%のボーナスゲットを企んでいるのかも知れない。

個人的にはインフレ目標はアカウンタビリティの一環として立派な政策だと思うが
昨今の急激な金融政策のシフトには危険な香りがする。

なんだかこれから日本経済は、怖いもの見たさの2〜3年になりそうである。


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アベノミクスの舞台裏(1) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

政権交代以来、アベノミクスが流行語になった。
円は急落、株は急騰、政治家は日銀総裁選びに慌ただしいが、
マスコミの論調を見てもネットを見ても何だか
経済論議のポイントがずれているような気がしてならない。

はっきり言って、今の経済政策のポイントは来年の消費税増税に尽きる。

消費税は、高齢社会を見据えての直間比率の是正という
大義名分から89年4月に初めて導入された(税率は3%)。
ようするに、働く人の割合が減ると働いて得たお金から
税金を賄うのは負担が大きすぎるので、
みんなで平等に負担しよう、というわけだ。

数十年単位の方向としては間違っていないかもしれないが、
現在の日本で消費税を導入する、あるいは税率を上げる、
というハードルはとても高い。

一つの理由は、日本では年末調整が自動的になされることである。
官僚や政治家は、国民に税金の使い方についてあれこれと
注文を付けられては面倒なので、
税金をなるべく目立たないように集めようと考える。
年末調整はそのために一役買っている制度だ。
しかし所得税の納税が自動的だと、
所得税のような直接税を下げ、間接税を上げた時、
納税額は同じでも増税だけが非常に目立ってしまう。
特に、女性の専業主婦比率が高かった日本では、
増税だけが余計にクローズアップされることになる。
そんな状況で、消費税を導入したのは快挙だと言って良い。

もう一つ重要な理由は、日本が慢性的な需要不足の国であるということだ。
消費税は、いわば、財やサービスの購入に対して
ペナルティーをかけることと同じなので、
需要が不足している世の中では経済的なコストが非常に高い。

「高齢社会に備えた直間比率の是正」という大義名分があっても、
自然な流れは、供給不足になってからそれを行うことだ。
つまり、まず働く人が減る一方、
政府が借金をして社会保障でどんどんお金をばらまくと、
物やサービスの需要が不足して物の値段が上がり始める。
その時に「消費には税金をかけますよ」とすれば、
インフレも抑えられるし、財政収支も改善する。

日本の高齢化は急速なので、
多くの人はそうした事態がもっと早く訪れると思っていた。
消費税が35年も前から断続的に議論されてきたのもそれが一因だろう。
だが実際には、導入から24年経った今も
日本で全般的な供給不足も、物価上昇も、労働者の不足も起っていない。
これは、やはり低コストの物資が新興国からどんどん輸入されたり、
サービスを低コストで海外にアウトソースできるようになったことが大きい。
もしこうした影響がなかったら、例えばIT革命の結果、
システムエンジニアは花形の高給取りになっていたかも知れない。

しかし、財務省としてはともかくこの消費税を上げたくて仕方がない。
金融市場に気を配らなくてはならない政府債務の膨張は気分が悪いし、
何より税収が増えれば歳出面でも余裕が出て権限が拡大するからだ。

一方で、これを上げるのが難しいのを一番良く知っているのも財務省である。

消費税を5%より高い水準にする案が最初に出たのはいつだったろうか。
私の記憶が正しければ、それは19年も前の
94年早々に細川内閣が発表した国民福祉税構想で税率は7%〜10%。
まだ高校生だった私は、財務省(旧大蔵省)が
「5%では社会保障を賄い切れない」と強気に発表したのを新聞で読んだ。
数十年ぶりに自民党一党支配が崩れて生まれた
正に右も左も分からない寄せ集めの連立政権は結局
この構想を実現できずに短命に終わったが、
政治が弱いところに財務省がつけ込んだことは想像に難くない。

97年には政策を総動員して何とか5%への引き上げを果たしたが、
その後日本は15年にわたるゼロインフレに沈んだ。

その15年後、依然として需要も物価も雇用も弱いままだが
政府債務危機を巧みに煽った財務省の戦略が功を奏し、
ついに消費税増税法案を通すことに成功した。

私はこの増税が更に物やサービスの需給を悪化させると思うが
増税後の野田前首相の自信に満ちた表情を見たとき、
ともかく政府は「増税が必要」という「コンセンサス作り」に
成功したのだな、と感じた。

そうは言っても、景気があまりに悪ければ増税中止は避けられない。
だが都合の良い事に、
財政再建を掲げる民主党は先の衆議院選で大敗し、
新たな自民党政権の下、大盤振る舞いの経済政策で
ひとまず増税する来春迄のまでの景気の心配はなくなったようだ。

現在の状況は株式市場がバブった89年、97年の消費増税前と瓜二つである。


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慢性的な財政問題を抱える米国の地方自治体 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ミシガン州では、2〜3月は固定資産税のための不動産評価の季節だ。
2月に市政府から固定資産税のための不動産評価額が送られてきて、
不満がある人は3月にアピールを行う。

米国で住民が負担する税金には大まかにいって
連邦税、州税、地方自治体の税(以下、市民税)と3種類があるが、
連邦税が主に所得税、州税は所得税と売上税、という比較的安定した
財源であるのに対して、市税などの地方自治体の税は主に
不動産価格の動向に大きく作用される固定資産税で賄われる。
これは法人に関しても同様で、法人が払う固定資産税が
市の主な収入となる。

地方自治体は歳入が不安定な上に、常に財政の均衡を強く求められる。
連邦政府は国債を発行することによって財政赤字を補填することも難しくないが、
地方自治体の債務には、日本と異なり実質的な連邦政府の保証がないため、
通貨発行権限がない地方政府が自力で資金を借り入れることが
難しいからである。

私の住むT市では、固定資産税のための不動産評価額は基本的に
過去2年間の売買情報を元に計算される。
そのため、1〜2年の遅れはあるものの、
地価の変動が税収にかなりダイレクトに反映されることになる。
現在住んでいる不動産の過去の固定資産税額を調べて見ると、
不動産バブル直後の2007年頃には税額が年3300ドル程度だったのが
昨年は年2000ドル程度まで下がっている。

市政府は激減した歳入から、公立学校の運営や消防、警察といった
生活の根本的な部分を担わなければいけないという状況になっている。
その結果、公立学校では1クラスの人数を増やしたり、
授業日数を減らして人件費を削ったり、
小中高の授業時間をずらして通学バスの台数を減らしたり、
といろいろな施策を打っている。
高校では授業開始が早くなりすぎて、寝不足になる生徒も多いという。
(なお高校の授業開始を一番早くしたのは午後にアルバイトを
しやすいというのが一つの理由のようだ。)
図書館や公共施設は閉鎖になったり時間を短縮したりしている。

良いニュースは昨年あたりから米国の不動産市況が
回復してきたことだが、問題の解決はそう簡単ではない。
例えば私が住んでいる家の固定資産評価額は今年8%上がるが、
税額の上昇率はわずかに約2%ほどである。
これは「継続して居住している住民の税額は物価上昇率を
超えないようにする」という法律があるためだ。
つまり市況が回復しても、新たに住宅を購入した人の数が
増えなければ、実質的な税収は増えない。
しかも、需給逼迫で住宅の流動性は低下している。
当面の間、歳入が低い水準にロックインされてしまったということだ。

なぜ、このようないびつな税制にになってしまっているのだろうか?
結局の所、その理由は不動産神話にある。
先日、学科の年配の同僚と話した際に彼は
「地方政府の財政は連邦政府とか州に比べれば安定してるんだけど、
最近は不動産が下がっちゃったから大変だよね。」
と言った。

「あれ?」というのが私の最初の感覚だった。
不動産価格が不安定なものという意識が米国人にはなかったようなのだ。
皆が不動産価格は物価を上回って上昇すると固く信じていた。
そうした仮定の下では、一番生活に直結する地方自治体の財政が
固定資産税で賄われるという税制は理にかなっていた。

不動産バブルが崩壊して、そうした前提は
あまり機能しなくなったように思える。
近年、将来の買い手である米国の若者は親に依存する傾向が
強まっており、なかなか一人暮らしをはじめない。
また、若者の借金に対する姿勢が慎重になっている
という調査結果も出ている。
人口増加率もここ数十年の最低水準で推移している。
こうした状況は、将来の不動産価格の上昇が
必ずしも約束されているわけではないことを示している。

先週、米国の平均株価は史上最高値を更新したが、
財政の構造的な問題の解決にはほど遠いというのが現状である。


テーマ : アメリカ生活
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プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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