高すぎる日本の住宅リフォーム -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本では、過去20年あまりの間に様々な物やサービスの値段が安くなった。米国に住んでいると、文房具、外食、衣料品など、日本に比べて質が低くて高いと感じるものが多い。しかし、日本で相変わらず手つかずのまま残っているのが住宅リフォーム市場である。現在の日本の住宅リフォーム市場は、衣料品に例えるならば「ジャケットから靴下に至るまで全部、伊勢丹で定価で買ってるような状態」と言えば良いだろうか。とにかく値段が驚くほど高いのだ。

例えば、トイレの修理。日経新聞1月29日付の記事によれば、便器の交換費用は工賃込みで20〜30万円が目安だそうだ。米国では、便器が100ドル、工事が100ドルで計200ドル(約2万円)くらいである。日本の便器が、ウォシュレットなど各種最新装備で最高性能であることはよく知られるが、それにしても10倍である。ネットで日本では最低限の設備に交換したとしても6万円程度はかかるようだ。それでも3倍だ。

高いのは便器の交換に限らない。洗面台や内装を全部やり直すと日本では40〜50万円はかかるようだ。一方、我が家では、便器の交換に加え、床材をクッションフロアからタイルに張り替え、壁の塗り直し、洗面台やタオル掛けなどの全交換を行ったが、工賃込みで1300ドル(13万円)弱程度だった。ちなみに面積は2.3平方メートルほどと日本の平均的なトイレの1.5倍ほどある。

窓の交換も驚くほど高い。同記事によれば、窓枠を含む二重ガラス窓への交換は(一窓あたり)20万円が目安だという。米国でコンドミニアムを購入した際に17の窓を二重窓に交換したが、工賃込みで5100ドル、一窓(二枚)あたり300ドル(約3万円)であった。日本の方が一窓あたりの面積が広いことが多かったり、雨戸のレールがあったりと費用がかかる点はあるにしても、6〜7倍というのは極端な差である。

どうしてこんなにも、値段に差があるのだろうか。もちろん、便器をはじめとして品質の差で説明できる部分もあるだろう。しかし、それならばなぜ日本ではそんなに「高品質」なリフォームが行われるのか。

最大の理由は、顧客が非常に裕福であるというものである。いま、リフォームを発注するのは50〜60代の経済的に恵まれた世帯が中心だ。また、同記事によれば、老後、現在の家に住み続けたいと考える人は64%に上るが、その内訳を見ると、リフォームせずに住み続けたいと考える人が37%、リフォームして住みやすくしたいと考える人が27%となっている。つまり、現在のリフォーム市場は、経済的に恵まれた世代の持ち家世帯の中でも、経済的に比較的余裕のある層が顧客になっていると言える。実際、同記事によれば、リフォームを契約した人のうち2割以上が1000万円超の契約をしており、半数前後が500万円超の契約をしている。米国でも大規模なリフォームはあるが、数千ドルでトイレや浴室、地下室、屋根などを少しずつ改装するということがもっと頻繁に行われる。

価格差には他にもいくつかの理由があるだろう。プロに丸投げという感の強い日本のリフォームに比べ、細かい出来ばえを気にしない米国人は、基本的に何でも自分でやろうとする。自分でやらないにしてもポピュラーなDIYの本を買えば窓枠の交換工事の仕方から新しい壁の作り方まで全部載っているので、少なくとも仕組みを考えてから工事を発注する。同じ様な仕上がりでも古い配管や骨組みをどこまで利用できるかで、工事の費用はかなり違ってくる。例えば、日本のリフォームでは、トイレの位置や浴槽の場所や向きをいじっているものも多いが、単に工事費を上げるためなのでは、と首をひねりたくなるような間取り図が多い。

今後、非常に割高な日本のリフォームはどうなっていくのだろうか。経済的余裕のある層は引き続き、業者に丸投げで高品質高価格のリフォームをしてもらえば良い。それは、10万円の炊飯器や5万円のオーブンレンジが売れているのと同様に、今後もそれなりの需要が見込めるだろう。一方で、米国に近い水準までリフォームの費用が下がれば、これまでリフォームを諦めていた層にも需要が拡大して大きな成長が見込めるのではないだろうか。要は、全ての日本人が用をたすためだけに何十万円もするリフォームをしたいと思っているわけではないだろう、という事である。



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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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