分布を一つの統計量で表すこと -- このエントリーを含むはてなブックマーク

経済問題を分かりやすくかつきちんと分析する
Rionさんのブログに
ジニ係数と相対貧困率の記事が載った。

ジニ係数と相対貧困率はいずれも、
国の所得のばらつきを表す指標だ。

基本的に分布に関する情報は無限次元なので
一つの統計量に押し込むことには無理がある。
従って、いくつかの角度から眺める必要がある。

それが金融市場であれば、
平均分散アプローチとバリュー・アット・リスクだし、
所得の格差問題であれば、
ジニ係数と相対貧困率なのであろう。

実際、所得の密度関数を f(x)とするとき、
ジニ係数は、x f(x) の2回積分の1次関数であり、
相対貧困率は基本的に分位点の関数なので、
(前者がモーメント法、後者が分位点を用いると意味で)
平均分散アプローチとバリュー・アット・リスクに
大まかに言えば対応している。

なお、一つの統計量を使うことの限界は、
統計量の大きさに何らかの意味を付与したい時には
常に付きまとう問題だが、
目的が統計的検定のみであればその限りではない。

例えば、相関係数 r は、
線形の関係しか描写できないので
XとYの相関係数 r が 0 だからといって
この2変数が無関係と結論付けることはできないが、
例えば、Szekely (2007)(*1) の 距離相関係数
を使うと、任意個の変数のあらゆる従属性を検出できる。
ただし、こうした統計量を定義するためには、
より計算量の大きい統計量を
使わなければならないようだ。

Szekely は、
論文発表の翌年にW大M校に講演に来たのだが、
プレゼンテーションはなかなか盛況であった。
彼は、モルガン・スタンレー証券と共同で
この手法を金融市場のアノマリーを見つけるのに
活用したそうだ。

(*1)
GÁBOR J. SZÉKELY,1 MARIA L. RIZZO AND NAIL K. BAKIROV,
"MEASURING AND TESTING DEPENDENCE BY CORRELATION
OF DISTANCES,"
The Annals of Statistics
2007, Vol. 35, No. 6, 2769–2794.



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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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色覚

人間の色覚は波長に対する輝度の分布という無限次元の情報を、赤、青、緑の強さという3つの数字に圧縮している、という話を最近物理の院生仲間としていました。話を可視光に限っても、同じ色に見える分布が無限にあるという事で、なかなか面白いです。

元はと言えば、色の三原色というのは本当に赤、青、黄なのか、という話でした。

物理は全く知らないのですが面白い話ですね。しかし、全ての色を表すために3色必要だということは、人間が識別可能な色の集合というのは3次元多様体みたいになっているのですかね?

数学屋さんから見ると、三原色は基底の取り方でいくらでも変わりそうに思えますが、これもきっと誤りなんでしょうね。

むしろ生物学の話なので、物理学者にとってもこれは専門外です。

>人間が識別可能な色の集合というのは3次元多様体みたいになっているのですかね?
そういう事になると思います。

基底の取り方について気を付けないといけないのは、視神経をマイナス方向には刺激出来ない事です。なので、3色の選び方によっては、組み合わせる事で作れない色が出てきてしまいます。

会計ではマイナスは赤だけど

なるほど、マイナスにはできないのですね。
要素をマイナスにするってのは素人にはイメージが沸きにくいのですが、物質的には作ることが可能なんですかね。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
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