怪しい自動車整備工場 in 米国
日本と違ってアメリカには車検がない。
だから車の整備は自分である程度知識を持っていないと
いろいろ直した方がいいと言われてぼられる。
そもそも、あらゆる修理はほとんど言い値に近い。
緊急のもの以外は2箇所以上から意見をもらってから
整備するのが車に詳しくない人の賢い選択だと思う。
整備は正規ディーラーに持っていけば
(日本ほどのクオリティではないにせよ)
それなりにちゃんとやってくれるのだけど
やはり値段は若干高くなる。
事故率の高い作業でなければ、
零細の自動車修理工場に持って行った方が安い。
前々から、98年式のホンダのタイミングベルトと
ブレーキライニングを換えなければなあと思っていたら
ちょうどAll Tune & Lube という名前の工場のチラシが入っていて
タイミングベルト交換が199ドルだという。
ブレーキライニングの交換は59.90ドル~らしい。
タイミングベルト交換は、
アメリカでディーラーに頼めば800ドルくらいするので
199ドルは破格の安さだ。電話して確認すると、
「その車のタイミングベルトは266ドル。
同時にウォーターポンプも一緒に換えた方がいい。
今なら、合わせて399ドルだ。」
とのこと。確かにウォーターポンプはタイミングベルトと
同時に換えることが多い。399ドルでも半額だ。
ブレーキライニングの交換は、車種によって
メタリック製のものになるので79.90ドル(2輪)という。
そんなに高くはないだろう。早速、
この二つの整備を頼んで予約を入れた。
今朝9時の予約だったので、工場に行くと…
…とにかくボロい。
まず、駐車場に停めてある車が古い。
一台は、多分80年代初頭のリンカーンか何かだと思うのだが、
助手席の窓がないので透明のビニールを張って代用している。
整備工場は既に中で作業が始まっていたが、
不要になったエンジンが所狭しと並べられ雑然としている。
どうしてそんなに大量のエンジンが並んでいるのか理解できない。
まさか、廃品から部品を取っているわけではないだろう。
反対側の受付に回ると部屋は閉まっており、
ドアの下の方にやる気なさそうに
「横の入り口から入ってくれ」と書いてある。
工場の中に入ると、高校出て間もないくらいの白人の
若い兄ちゃんが出てくる。
9時に予約していた者だけど、と話しかけると、
奥に案内される。別に普通の人なのだが、
そんな工場にいると妙に礼儀正しい人のように
思えてしまうから不思議だ。
「いやー、今事務室が使えなくてね。」
と事務室の方を指差すのでちょっと目を遣ると、
整備工場から事務室への扉に仰々しい張り紙がしてある。
役所の張り紙だ。よく読むと、
検査不合格につき立入禁止
-- xxxx city, building department
と書いてある。工場内の汚さから考えても
きっと防災基準か何かに引っかかったのだろう。
まあ、家賃不払いで差し押さえ中の
物件で営業しているよりはマシだろう…。
なんだか、自分の判断基準が下がってきた。
彼は、奥の方の小さい作業机の所に行って
整備票みたいなものを記入し始めた。
名前を聞かれたので伝えると、
「君、日本人?」
などと意外に気の効いたことを言ってくる。
電話で話した整備内容を伝えると、
「じゃあ、値段を聞いてくるよ。」
と言う。いや、既に話はついていて、
と遮って値段を伝えると、
それをそのまま伝票に書き込んでいる。
79.90ドルは面倒なので79ドルと
言ったらそれもそのまま書き込んでいる。
どう見ても、予約をちゃんと管理しているようには見えない。
修理は4時間くらいだという。案外早いなと少し驚く。
アパートまで車で送ってくれる約束に
なっていたのでそう伝えると、
「もちろんOKだ。」
と言って、90年代後半のジープ・チェロキーを指して、
あれで送るよ、と言う。
しかし、車に乗るとエンジンがかからない。
バッテリーが上がってるらしい。
ちょっと頑張っていると、
セルモーターは結構な勢いで回るようになったのに
エンジンがかからない。
こんな状態ははじめて見た。
「これは、バッテリーだけの問題じゃないじゃないな…」
なんて、不穏なことを言い出す男。
繰り返すが、そこは自動車整備工場である。
その男は埒があかないので、奥の中年の整備工に
相談しに行った。戻ってくると、
「別の車で送る」
というので、今度はどんな車なんだと思っていると、
なんと、ピカピカの アウディ TT quattoro のクーペだ。
この工場の賃金体系はどうなっているんだ、等と考えつつ、
まあ確かに、整備工は車が好きだろうからな、
と無理やり自分を納得させる。
アウディに乗って家まで雑談していると、
その男はやはり日本に興味があるらしい。
「高校の友達が日本の International University (IUJ)
に行った。彼は、日本語が全く話せないんだけどね。」
とか言っている。
IUJは財界がお金を出して新潟県浦佐に作った
ヘンテコな大学なのだが、
アメリカ人がたくさん行っているため、
アメリカではかなりの知名度がある。
しばらく話していると、
「日本は stable な社会だからいい。」
とか言っている。いやーそうでもないんだよ、
なんて本気で否定しながらも、
苦しいアメリカ人には遠くの国がよく見える
んだろうな等とぼんやり考えた。
家で、いろいろやってると午後1時に電話が鳴る。
結構早いな、と思って電話を取ると、
終わったわけではないらしく
中年の整備工と思われる男が滔々と話しかけてきた。
「ブレーキ・ローターは錆びてなきゃいけないのに(←そうなの?)、
ツルツルになってて危ないよ!換えた方がいい!
ブレーキシューも交換だね!」
とか言っている。あー、ブレーキの検査は過去1~2年で
2回くらいしたし異常はなかったんだけど、、と言葉を濁す。
「それに驚いたんだが、スパークプラグが古いし外れてた!
新しいのをつけなきゃいけないよ。エンジン外してるから
今やった方が安いよ!270ドルだ!」
とか言っている。
スパークプラグが外れてるなんてあり得るのか?(笑)
さっきまで走ってたんだぞ?と思いながら、
急いで過去の整備記録をチェックする。
今、スパークプラグが新しくないって言った?
と確認すると、
「NO!」
と返してきたので、
それは信じられない。昨年、正規ディーラーの90,000マイル点検で
スパークプラグを交換したし、その整備記録が残っている。
と指摘すると、少し怯んだので、
今回、頼んだのはタイミングベルト交換が安かったからだ。
他のことは、今後考えるから記録だけつけといてくれ。
と言って何とか押し切った。
午後5時頃になって、遅いな、と思ってこちらから電話すると、
エンジニアに状況を聞いてくる、と言ってしばらく間が空いたあと、
「タイミングベルトは終わったんだが、ブレーキ交換で
xxx(注:聞き取れなかった)がタイトで手間取っててね。
あと、20分くらいだと思うよ。」
と言う。じゃあよろしく、と電話を切る。
他のことに夢中になっていていたら、
5時55分になっていた。もう一度掛けると、
「ほとんど終わったんだがちょっと手間取っててね。
あと、20分くらいだと思うよ。」
とさっきと同じことを言っている。要するに蕎麦屋だ。
営業時間は午後6時までらしいけど今日中に受け取りたいんだけど、
と言うと、分かった分かった、6時ちょっと過ぎでも
営業してるんだよ、とか言っている。
内容が修理なのであんまり急がせるのは得策ではない。
6時30分になっても連絡がないので更に電話をかける。
中々でない。畜生!あいつら黙ったまま帰りやがったか!
と思っていると、23コールで相手が出た。
最初から、
「君はもしかしたら何コールもしてたかも知れないけど
電話機から遠くて気付かなかった。」
とか妙な事を言っている。そして続けざまに、
「IT'S RUNNING!! IT'S RUNNING!!」
と力強く言った。何事かと思って聞き返すと、
車が走っているという意味らしい。
要するに、今までのは全部嘘で、
今ようやくエンジンを装着したところなのだろう。
よく聞くと、まだブレーキの交換の最中だという。
どうやったら RUNNING なんだ(笑)と少し戸惑うが、
整備工場では車体を持ち上げて修理するから、
不可能と言えなくもないな、とわざわざ僕の方が
言い訳を考えてしまう。
もう今日は遅いから明日の朝10時の受け取りにできる?、
と尋ねると、
「それは、お互いにとってグッド・アイデアだ!」
とか言っている。それは、お前にとってだけだろ、
と心の中で突っ込んでいると、
「明日の受け取りで良ければ、試運転も出来るから安心だ。」
と奴はまた不安なことを言い出す。
もちろんそれは必要だ、と返した後、
10時は、firm deadline だよ。
10時までにアパートに迎えに来れる?
と念を押す。相手は力強く、
「もちろんだ。10時までに終わらせて電話する。」
と言っていた。
まあ、明日10時までに電話が掛かってくる
可能性は25%くらいだと思っている。
みなさん、自動車整備は
きちんと正規ディーラーに
持って行きましょう。
続きはまた明日。。。

だから車の整備は自分である程度知識を持っていないと
いろいろ直した方がいいと言われてぼられる。
そもそも、あらゆる修理はほとんど言い値に近い。
緊急のもの以外は2箇所以上から意見をもらってから
整備するのが車に詳しくない人の賢い選択だと思う。
整備は正規ディーラーに持っていけば
(日本ほどのクオリティではないにせよ)
それなりにちゃんとやってくれるのだけど
やはり値段は若干高くなる。
事故率の高い作業でなければ、
零細の自動車修理工場に持って行った方が安い。
前々から、98年式のホンダのタイミングベルトと
ブレーキライニングを換えなければなあと思っていたら
ちょうどAll Tune & Lube という名前の工場のチラシが入っていて
タイミングベルト交換が199ドルだという。
ブレーキライニングの交換は59.90ドル~らしい。
タイミングベルト交換は、
アメリカでディーラーに頼めば800ドルくらいするので
199ドルは破格の安さだ。電話して確認すると、
「その車のタイミングベルトは266ドル。
同時にウォーターポンプも一緒に換えた方がいい。
今なら、合わせて399ドルだ。」
とのこと。確かにウォーターポンプはタイミングベルトと
同時に換えることが多い。399ドルでも半額だ。
ブレーキライニングの交換は、車種によって
メタリック製のものになるので79.90ドル(2輪)という。
そんなに高くはないだろう。早速、
この二つの整備を頼んで予約を入れた。
今朝9時の予約だったので、工場に行くと…
…とにかくボロい。
まず、駐車場に停めてある車が古い。
一台は、多分80年代初頭のリンカーンか何かだと思うのだが、
助手席の窓がないので透明のビニールを張って代用している。
整備工場は既に中で作業が始まっていたが、
不要になったエンジンが所狭しと並べられ雑然としている。
どうしてそんなに大量のエンジンが並んでいるのか理解できない。
まさか、廃品から部品を取っているわけではないだろう。
反対側の受付に回ると部屋は閉まっており、
ドアの下の方にやる気なさそうに
「横の入り口から入ってくれ」と書いてある。
工場の中に入ると、高校出て間もないくらいの白人の
若い兄ちゃんが出てくる。
9時に予約していた者だけど、と話しかけると、
奥に案内される。別に普通の人なのだが、
そんな工場にいると妙に礼儀正しい人のように
思えてしまうから不思議だ。
「いやー、今事務室が使えなくてね。」
と事務室の方を指差すのでちょっと目を遣ると、
整備工場から事務室への扉に仰々しい張り紙がしてある。
役所の張り紙だ。よく読むと、
検査不合格につき立入禁止
-- xxxx city, building department
と書いてある。工場内の汚さから考えても
きっと防災基準か何かに引っかかったのだろう。
まあ、家賃不払いで差し押さえ中の
物件で営業しているよりはマシだろう…。
なんだか、自分の判断基準が下がってきた。
彼は、奥の方の小さい作業机の所に行って
整備票みたいなものを記入し始めた。
名前を聞かれたので伝えると、
「君、日本人?」
などと意外に気の効いたことを言ってくる。
電話で話した整備内容を伝えると、
「じゃあ、値段を聞いてくるよ。」
と言う。いや、既に話はついていて、
と遮って値段を伝えると、
それをそのまま伝票に書き込んでいる。
79.90ドルは面倒なので79ドルと
言ったらそれもそのまま書き込んでいる。
どう見ても、予約をちゃんと管理しているようには見えない。
修理は4時間くらいだという。案外早いなと少し驚く。
アパートまで車で送ってくれる約束に
なっていたのでそう伝えると、
「もちろんOKだ。」
と言って、90年代後半のジープ・チェロキーを指して、
あれで送るよ、と言う。
しかし、車に乗るとエンジンがかからない。
バッテリーが上がってるらしい。
ちょっと頑張っていると、
セルモーターは結構な勢いで回るようになったのに
エンジンがかからない。
こんな状態ははじめて見た。
「これは、バッテリーだけの問題じゃないじゃないな…」
なんて、不穏なことを言い出す男。
繰り返すが、そこは自動車整備工場である。
その男は埒があかないので、奥の中年の整備工に
相談しに行った。戻ってくると、
「別の車で送る」
というので、今度はどんな車なんだと思っていると、
なんと、ピカピカの アウディ TT quattoro のクーペだ。
この工場の賃金体系はどうなっているんだ、等と考えつつ、
まあ確かに、整備工は車が好きだろうからな、
と無理やり自分を納得させる。
アウディに乗って家まで雑談していると、
その男はやはり日本に興味があるらしい。
「高校の友達が日本の International University (IUJ)
に行った。彼は、日本語が全く話せないんだけどね。」
とか言っている。
IUJは財界がお金を出して新潟県浦佐に作った
ヘンテコな大学なのだが、
アメリカ人がたくさん行っているため、
アメリカではかなりの知名度がある。
しばらく話していると、
「日本は stable な社会だからいい。」
とか言っている。いやーそうでもないんだよ、
なんて本気で否定しながらも、
苦しいアメリカ人には遠くの国がよく見える
んだろうな等とぼんやり考えた。
家で、いろいろやってると午後1時に電話が鳴る。
結構早いな、と思って電話を取ると、
終わったわけではないらしく
中年の整備工と思われる男が滔々と話しかけてきた。
「ブレーキ・ローターは錆びてなきゃいけないのに(←そうなの?)、
ツルツルになってて危ないよ!換えた方がいい!
ブレーキシューも交換だね!」
とか言っている。あー、ブレーキの検査は過去1~2年で
2回くらいしたし異常はなかったんだけど、、と言葉を濁す。
「それに驚いたんだが、スパークプラグが古いし外れてた!
新しいのをつけなきゃいけないよ。エンジン外してるから
今やった方が安いよ!270ドルだ!」
とか言っている。
スパークプラグが外れてるなんてあり得るのか?(笑)
さっきまで走ってたんだぞ?と思いながら、
急いで過去の整備記録をチェックする。
今、スパークプラグが新しくないって言った?
と確認すると、
「NO!」
と返してきたので、
それは信じられない。昨年、正規ディーラーの90,000マイル点検で
スパークプラグを交換したし、その整備記録が残っている。
と指摘すると、少し怯んだので、
今回、頼んだのはタイミングベルト交換が安かったからだ。
他のことは、今後考えるから記録だけつけといてくれ。
と言って何とか押し切った。
午後5時頃になって、遅いな、と思ってこちらから電話すると、
エンジニアに状況を聞いてくる、と言ってしばらく間が空いたあと、
「タイミングベルトは終わったんだが、ブレーキ交換で
xxx(注:聞き取れなかった)がタイトで手間取っててね。
あと、20分くらいだと思うよ。」
と言う。じゃあよろしく、と電話を切る。
他のことに夢中になっていていたら、
5時55分になっていた。もう一度掛けると、
「ほとんど終わったんだがちょっと手間取っててね。
あと、20分くらいだと思うよ。」
とさっきと同じことを言っている。要するに蕎麦屋だ。
営業時間は午後6時までらしいけど今日中に受け取りたいんだけど、
と言うと、分かった分かった、6時ちょっと過ぎでも
営業してるんだよ、とか言っている。
内容が修理なのであんまり急がせるのは得策ではない。
6時30分になっても連絡がないので更に電話をかける。
中々でない。畜生!あいつら黙ったまま帰りやがったか!
と思っていると、23コールで相手が出た。
最初から、
「君はもしかしたら何コールもしてたかも知れないけど
電話機から遠くて気付かなかった。」
とか妙な事を言っている。そして続けざまに、
「IT'S RUNNING!! IT'S RUNNING!!」
と力強く言った。何事かと思って聞き返すと、
車が走っているという意味らしい。
要するに、今までのは全部嘘で、
今ようやくエンジンを装着したところなのだろう。
よく聞くと、まだブレーキの交換の最中だという。
どうやったら RUNNING なんだ(笑)と少し戸惑うが、
整備工場では車体を持ち上げて修理するから、
不可能と言えなくもないな、とわざわざ僕の方が
言い訳を考えてしまう。
もう今日は遅いから明日の朝10時の受け取りにできる?、
と尋ねると、
「それは、お互いにとってグッド・アイデアだ!」
とか言っている。それは、お前にとってだけだろ、
と心の中で突っ込んでいると、
「明日の受け取りで良ければ、試運転も出来るから安心だ。」
と奴はまた不安なことを言い出す。
もちろんそれは必要だ、と返した後、
10時は、firm deadline だよ。
10時までにアパートに迎えに来れる?
と念を押す。相手は力強く、
「もちろんだ。10時までに終わらせて電話する。」
と言っていた。
まあ、明日10時までに電話が掛かってくる
可能性は25%くらいだと思っている。
みなさん、自動車整備は
きちんと正規ディーラーに
持って行きましょう。
続きはまた明日。。。

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