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アメリカ社会と道徳と宗教 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

Rionさんのブログに、経済と道徳に関する話が出ていたので、
私が感じているアメリカ人と日本人の道徳観の違いを少し。

アメリカに来て驚いたことの一つは、
教会の社会奉仕活動の影響力が非常に大きいことだ。
地域のコミュニケーションの場としての役割だけではない。
貧しい人たちのために炊き出しをやったり、
外国人のために英語教室を開いたり、
幼稚園(preschool)に無償で場所を提供したり、
と社会的な弱者のために資本主義社会の枠組みと政府の
活動で対応しきれない部分を見事にカバー
している。

一方で、宗教を除く道徳教育というのは
上手く行っていないようだ。例えばアメリカの大学は
入学選考に社会奉仕活動の実績を考慮しているが、
学生の間では良い成績を取るための不正は横行している。
ビジネススクールで倫理の授業を義務付けても、
倫理にもとる経営は後を絶たない。

その結果、意識的にせよ無意識にせよ、
アメリカ人は社会道徳というものは宗教なしには
成り立たないと考えている傾向がある。


以前にRionさんのブログで紹介された
「無神論者の不人気ぶり」
にはそうした背景があるだろう。
また、フリー・メイソンは発祥はアメリカではないが、
彼らが、会員の信じる宗教に寛容であるにも拘わらず
無神論者の入会を認めていないのは、道徳観念と宗教の
混同が一つの原因になっていると解釈できる。

私がここから感じる事は三つある。

一つは、社会に貢献しない宗教など無意味であるということ。
日本の寺や神社は、社会に貢献する努力を怠ってきたことを
深く反省する必要があるだろう。

もう一つは、アメリカなどの文化圏で自分が無神論者で
あることを告白する時は、同時に宗教と道徳が別の物である
という考えも主張した方が良さそう
、だと言うこと。
私の高校時代の歴史の先生は、
「アメリカ人の前で「自分は無宗教だ」と主張すると
メンドクサイ議論になるから、とりあえず
「俺は神道を信じてる」と言っておけ。」

とアドバイスしていた。
実際にはアメリカは多様性を是としているので、
表立って批判されることは少ないが、
少なくとも文化的な違いを理解して発言する必要がある。

三つめは、宗教や全体主義を伴わない資本主義社会の
構築は案外難しい
だろうということだ。
日本でも、少なくとも自民党はアメリカ型の資本主義社会を
目指しているように思える。資本主義の枠組みで対応しきれない
問題には、政府が適宜、規制を作って対応するだろうが、
ダイナミックに適切な規制が設置できると考えるのには
無理がある。その際に、全体主義を主張する勢力が台頭
することには注意が必要だろう。


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テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

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道徳と宗教

道徳と宗教は似たようなもんですが、後者の方が成文化されていて一段と世の流れに取り残されがちな気がします。

道徳と宗教

うーん、どうなんですかね。成文化されているのは主に信仰の部分で、慈善活動の部分ではないので。社会に存在する問題の多くは、組織的に対応する必要があり、応えるのはNPOでも宗教でもいいわけですが、組織力や規模の点で宗教にも強みがあると思っています。

ちなみに、私は無宗教ですが、信者の方の意見も聞いてみたいものです。
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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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