池田信夫氏らの政治姿勢 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

最近、池田信夫氏と池尾和人氏が経済問題に関してよく
発言しており、それなりに人気も高いようだ。
また、金融日記の藤沢一希氏も知名度の点ではやや劣るが同じ思想を共有している。
その主張は一貫しており、大雑把に言うと次のようなものだ。

1.国債残高が高水準なので財政政策に出来ることはもはやあまりない。
2.短期金利はすでにゼロなので金融政策に出来ることももはやあまりない。
3.マイルドなデフレは大して悪くない。
4.日本は構造改革でサプライサイドを強化すべきだ。


1~3は現在の日本のマクロ経済の状況の下では根拠が薄弱だが、
彼らは持ち前の知識を活かして、読者をうまく煙に巻く事に成功している。
例えば、以下は池田信夫氏の最新のブログ記事

>日銀の白川総裁が、テレ東のWBSに出演した。おもしろかったのは、
>冒頭の「あなたはインフレとデフレのどっちがいいですか?」という
>街頭アンケートで、答が半々だったことだ。
>老人は「年金は増えないので値段が下がったほうがうれしい」と言っていたが、
>インフレがいいという若者は「賃金が上がるから」と答えていた。
>どっちが正しいだろうか?
>正しいのは老人のほうである。これは実質残高効果(ピグー効果)といって、
>デフレによって資産が実質的に増えるので需要も増え、経済を安定化させる効果がある。
>ユニクロのような価格競争は望ましいのである。
>他方、若者は名目賃金と実質賃金を取り違えており、これは貨幣錯覚と呼ぶ。


老人に関する発言の部分では資産を持っている人が
デフレによって得をするということについて述べている一方、
後半部分では、賃金の上昇を貨幣錯覚であるとしており、
労働者の購買力が年金生活者に比べて相対的に増大することは無視している。
話を単純化するとトリックがばれてしまうので、
「ピグー効果」、「貨幣錯覚」といったテクニカル・タームを無理やり
挟むことで、読者を煙にまいている(*1)。

(*1)「ピグー効果」、「貨幣錯覚」が冒頭の老人と若者の発言の背景を説明するのに
適切な概念だと思う方は、今後も池田信夫ブログを読んで頂くと良いと思う。


まあ細かい技術論はともかくとして、私が「上手いなぁ」と思うのは
彼らが重要な政治的勢力と仲良くやっている点だ。


緊縮財政は、財務省の将来的な予算配分権限を増大させるので、
財務省を見方につけることで情報の上で優位にたつことができる。

金融政策の手段がないと主張することは、
まだまだタカ派的で非伝統的な政策でリスクを取りたくない
日銀と仲良くするのに一役買うかもしれない。

デフレ容認は、有権者の最大勢力である高齢者を囲い込むのには最適だ。

構造改革は総論賛成・各論反対の人が多いので、
ブロガーや学者が総論を語るのには非常に適切な場と言える。
構造改革はいまや労働市場の流動化と切っても切り離せないので、
非正規労働などで低賃金に甘んじている労働者階層を取り込むこともできる。

彼らにとって唯一の敵は既得権益者である中年以上の正社員だが、
その数は減少の一途であるし、彼らの既得権益を破壊することが
日本経済全体にとっては良い方向であるのは確かであろうから、
その部分は声を大にして主張することができる。

彼らは5年後も国債の金利が低位安定する中で
財政破綻やハイパーインフレの到来を訴えたりしていると思うが、
おそらくその前に彼らのどちらかは、
迷走する自民党を取り込んで政界に進出しているのではないか

と私は予想している。


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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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No title

私は、貸し借りの金利は基本的にほとんど0がいいと思いますね。

全ての成長しないと…という強迫観念は貸出金利が高いのが元凶と思っています。

貸出金利

>足立さん

それは、かなり鋭い直感だと思います。個人や小さな法人など、信用力の低い主体の貸出金利がゼロになる状態というのがこれからやってみるべき価値のある金融政策の一つだと思います。もちろん、全ての金利がゼロになると借り手の信用力によって金利が変わらなくなってしまうので、モラルハザードを招きやすいという一面もありますが、いろいろ考える余地はあります。

No title

住宅ローンなどは倍以上返さないといけないでしょう?

正直者は大体どんなことをしても返すもんなんです。借りた分だけならね。

住宅を担保にするのでしょうが、そっちはどんどん価値が減るというのがおかしいことになりうる、ということは言うまでもないでしょう。

リーマンショックで膨大な無駄金を使うなら、はじめから金利はできるだけ低くすべきなんですよ。

金利規制

>リーマンショックで膨大な無駄金を使うなら、はじめから金利はできるだけ低くすべきなんですよ。

金利(価格)を規制するということは通常の経済の原則
からすると効用が下がるわけですが、明らかに合理性を欠く金利を規制することや、それと同時に国が再分配政策として低利で融資をする、あるいは低利融資に保証をつけるというのは政策的には「あり」だと思います。

サブプライム危機/リーマンショックは、全部を議論するにはかなりの文字数が必要なので、このくらいにしておきます。

池田氏の主張

会社を経営している人にとっては、池田氏の主張は
正しいと思われます。理由については以下の通りです。

1.雇用の流動化によって、社員を解雇しやすくなる。
2.税収入が直接税から間接税に移行することで、企業負担が少なくなる

民主党が自爆している中、3年後には上記の主張が法案化されているかもしれません。

雇用流動化

>20代さん

少なくとも企業にとってはメリットが大きいでしょう。雇用の流動化はいつかやらなければいけないと思うので、この手の法案はいずれ通ると思いますが、いつになるのかは全く想像がつきません。今年の中頃に霞が関は懐古主義に大きく舵を切って、正社員の既得権を保護し、たとえ生産性が多少落ちても不確実性を小さくすることで世界不況を乗り切ろう、という戦略を明確化したように思います。民主党が野党になるまでは雇用の流動化は難しいでしょう。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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