fc2ブログ

社会人の大学院留学の機会費用とリスク2(日本での雇用リスク) -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ここでは主に二つのリスクについて考えてみたい。

1)既卒リスク

大学院留学の機会費用が非常に大きくなってしまうのは、
日本の労働市場が年功序列制であり流動的でないことがひとつの原因であるが、
裏を返せば、日本においてはある程度の規模の企業での勤務経験が
労働市場では非常に大きなスキルになる
とも言える。したがって、
留学によりこれが中断されるのが大きな機会費用だと捉えることもできる。

私は、日本の労働市場でもっとも人的資本が蓄えられるのは、
新卒で入社してからの2~3年間
だと思っている。
これが、新卒で一定規模の企業に就職しなかった人が
転職市場でも不利な立場に立たされる理由とも言えるだろう。

この機会を逸失するデメリットは、
実は一度も就職せずに日本の大学から直接留学する人にとって一番大きい。

しかし、この手の人達はデメリット自体を知らなかったり
明確に将来のキャリアを絞っていることが多いので
意識されることが少ないだけだ。
同様に、新卒で就職しても1年以内に退職するような
ケースにもリスクが伴う
ことには留意すべきだろう。


2)35歳限界説

日本の大企業では年功序列賃金を採用しており、賃金構造が硬直的なので
インサイダーになってしまえば歳をとってから大きなメリットを享受できるが、
アウトサイダーが年齢が上がってから採用してもらうには大きなリスクになる。
これが少し前まで盛んに言われた35歳限界説だ。

これは、社会人が留学を目指す場合に、大きな判断材料になるとおもう。
例えば、大卒後の勤務経験4年、26歳で博士課程に留学した場合、
終了するのは30~32歳前後になる。
何らかの理由でキャリアチェンジに失敗したとしても、留学期間分の
キャリアを捨てれば、比較的すくない経済的損失で済む。

それに比べて、31歳で博士課程に進んだ場合、卒業後は35-37歳程度
になり、キャリアチェンジに失敗した場合の失業リスクは相当大きくなる。

この2点を合わせて考えると、社会人が会社を辞めて留学する場合の
最適な年齢は、勤務経験2年以上で、留学終了時に35歳を超えない、
という極めて月並みな結論が出る。もちろん、これは平均的に「最適な」
年齢であって、個別の事情にも大きく依存するだろう。



スポンサーサイト




テーマ : アメリカ留学
ジャンル : 海外情報

コメントの投稿

非公開コメント

妥当な結論ですね。

>勤務経験2年以上で、留学終了時に35歳を超えない、という極めて月並みな結論が出る。

妥当ですね。アメリカ人で社会人(なんて言葉はありませんが)経験者は概ねこのパターンですね。経済だとFRBが多いです。

留学年齢

>Rionさん

そんな感じですね。統計は全体の平均年齢は低いですが、社会人経由で来る人は25-30歳くらいの人が多いです。50歳くらいの人も1人いましたが、若いときに数学のPhDを取っているという人でした(金持ちの道楽タイプです)。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

検索フォーム
Twitter

Twitter < > Reload

お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

全記事表示

全ての記事を表示する

最近のコメント
訪問者数 (UA)
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
海外情報
34位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
北アメリカ
4位
アクセスランキングを見る>>
人気記事Top10


(はてなブックマークより)

カテゴリー
最近のトラックバック
お勧めブログ