書評:Estimation in Conditionally Heteroscedastic Time Series Models -- このエントリーを含むはてなブックマーク

書評は、Amazon.co.jpにも同じペンネーム(Willy)で書いているが今後は当ブログにも載せていきたい。

Daniel Straumann 著
"Estimation in Conditionally Heteroscedastic Time Series Models (Lecture Notes in Statistics),"
Springer.

本書は、GARCHモデルの漸近理論についての2004年末までの結果の集大成と言って良い内容である。

GARCH(Generalized Autoregressive Conditional Heteroscedasticity)モデルとは、分散をモデル化するのに考案されたパラメトリックな時系列モデルである。統計的な観点から述べれば、時系列の1次モーメントの推定を行うARMAモデルを2次モーメントに拡張したと言っても良い。金融時系列に於いては資産価格そのものを予測するのは難しいため、リスクの大きさ=分散を推定することは特に重要である。その原形はARCH/GARCHモデルの原型はR. A. Engle (1982)によって考案され、1980年代から1990年代にかけて主に計量経済学者らによって多くのバリエーションが考えられた。しかしながらその漸近的性質は、Weiss(1986), Lee and Hansen (1994), Lumsdaine (1996)らの基本的な成果を除けばあまり明らかにされて来たとは言えず、21世紀に入ってから、Berkes, Horvath, Kokoszka, Francq, Zakoian, Giraitis, Robinson, Zaffaroni, Hall, Yao, Mikosch, Straumann と言った主に数学系の人々によって明らかにされてきた。

本書の構成は、初めの4章でGARCHモデルの基礎となる事柄を理論・応用の両面から俯瞰し、5章ではQMLE(擬似最尤推定量)の漸近的性質、6章では標準化後誤差項分布の推定と最尤推定量の性質、7章では裾の厚い誤差分布の時のQMLEの性質、8章ではFrequency Domain を用いた Whittle推定量の性質を明らかにしている。5章はBerkes, Horvath (2003, Bernoulli)の結果の一般化、7章は Hall and Yao (2003, Econometrica)の結果の別証、8章はGiraitis and Robinson (2001, ET)の結果のARCHからGARCH(1,1)への拡張になっている。本書はGARCHの漸近理論の結果を数学的に最も精緻かつ簡潔にまとめており、理論の全体を俯瞰するのに最適である。ただし、あくまで漸近理論に興味がある人向けの内容であり、実務家やモデラーの興味の対象を扱っているわけではない点に言及しておきたい。


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日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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