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キャリアチェンジは今までのキャリアを捨てることではない -- このエントリーを含むはてなブックマーク

松本孝行さんという人材サービス業を自営されている方がいる。
彼は、大学を卒業して既卒からサラリーマンになり、
1年半働いてから現在の事業を立ち上げて1年半になるそうだ。
氏がブログの最新記事で起業とこれまでのキャリアの関連を述べている。

もちろん、サラリーマンをやってから大学院に行った私とは経歴が違うのだが、
一度サラリーマンをやってからキャリアチェンジをしたという点では共通している。
そこで、「起業」を「留学」に置き換えるとどうなるかという視点から
キャリアについて考えてみたい。

氏は起業について次の様に述べている:

> もしも私が3年サラリーマンを続けていたとした場合、
> そのノウハウやスキル・能力などは格段に違っていたのか?
> と考えると、そうでもないように思うのです。

私は起業のことは知らないが、感覚としては納得できる。
一度、正社員になって企業社会の仕組みをきちんと理解する
ということは起業にも大いに役立つのは間違いないだろうが、
何年も正社員をやっていたからといって、
限界的な理解の深化が逓減していくことは容易に想像できるからだ。

一方、留学の場合はどうか?

確かに、就労経験の一部は役に立ち、一部は役に立たない、
という意味では似ているが、役に立つ部分はかなり異なる。
就労経験の中で一番役に立つのは、実際にどんな仕事をしてきたかだ。
もちろん就労年数が長くなったときの限界的な効用が逓減することは
ある程度避けられないが、経験した仕事が多様であるほど、そして
深ければ深いほど、留学後の経験とシナジーを発揮しやすい。

忘れてはいけないのは、大学院に留学する場合には、
あなたが働いていた間もずっとその分野を勉強してきた
強力な競争相手が多数存在するという点だ(*1)。
そういう人に、単にアカデミックな専門能力だけで勝つのは難しい。
もちろん、個人差や専門分野による違いはあるだろうが、
少なくともこれは意識しておかなければいけない点だ。
そのためにも、社会人からの留学を志す人は、
自分のそれまでのキャリアを何らかの形でアドバンテージ
にしなければならない。
以前のエントリーの繰り返しになるが、
キャリア形成で必要なのは競争ではなく差別化だ。

(*1) MBAのように職務経験が本質的に必要な分野は別だ。

やや抽象的になってしまったので、ここで私の例を出そう。
私が統計学を専攻しようと思ったのは、
仕事でデータを扱ったり、きちんとした理論的背景は
知らないにしてもいろんな統計モデルを使ったりしたのが理由だ。
それでも、当初は大学院に留学したら統計学の中では全く違う分野を
専攻しようと意気込んでいたのだが、
結局は経験を活かせる分野に進むことになった。

もちろん、個々人の置かれた状況次第で、
これまでの経験をどれだけ活かせるかは変わってくるだろう。
しかし、意識の問題として、
「キャリアチェンジは今までのキャリアを捨てることではなく
これまでのキャリアを活かすことだ」
と言う事は心に留めておくべきだ。

この指針は、専門職のようないわゆる目的意識のはっきりした知識階層の
留学に限らず「自分探しの留学」のような場合にも当てはまる。

日本で、ごく普通の学生生活を過ごし、ごく普通の会社員になって
自分の生きがいを見失っているとしよう。今までの人生をリセットして
留学すると自分の生き甲斐が見つかるだろうか?ごく普通の留学生と
なって宿題に明け暮れ、自分の生き甲斐を再び見失うだけではだろうか。

例えばあなたが、プログラマーとして下請け会社で典型的なIT土方
として昼夜を問わず働いているとしよう。もうコードなど見たくもない。
そもそも、いくらでも替えがきく仕事で自分がやる必要なんてない。
徹夜でデバッグなんてするくらいなら、本当の土方になって土手に
サンドバッグでも積んでいる方がまだましだと思えてくる。
どこか遠くへ行きたい。海外なんてどうだろう?

しかしそんなあなたが、人生をリセットのための留学先は、
またもやコードを見ながらデバッグを続けなければいけない
コンピューター・サイエンス専攻でなければならない。
そして、卒業後は運良く日本企業の業務を知っていることが
どこかの会社の目に止まり、シリコンバレーで毎日定時に
帰れる仕事に高待遇で就けるかも知れない。
あなたは、もはやアイデンティティクライシスには悩まない。

「でも、先の事ばっかり考えたってつまらないじゃない!」
肉食系女子の25歳OLは叫ぶかも知れない。
しかし、彼女が何もかも捨てて留学したいと思うとすれば、
それは人生に悩みすぎているからだ。
朝から何も食べずに、お腹が空きすぎた時に
レストランに入るとつい重い物を頼みすぎてしまうものだ。
食べきれない量の肉。あとで後悔しても、代金は返ってこない。

心配しなくても、海外に渡るだけでも十分な開放感があるし、
仕事を辞めて学生に戻るだけでも最高に楽しいはずだ。
全てをリセットする必要はない。

キャリアチェンジは今までのキャリアを捨てることではない。
そして、それは留学の場合も例外ではない。

ブログ内の参考記事:
日本で資格は取るな
アメリカでは資格を取れ
大学院留学の機会費用とリスク1



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テーマ : アメリカ留学
ジャンル : 海外情報

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No title

トラックバックありがとうございます。
仰る通りだと思います。やはり前々からのキャリアをゼロにしてスタートすることは不可能でしょう。私はまだ20代ということもあってか、あまり専門特化するレベルまでは行きませんでした。
それでも商社・卸売で働いていた経験もあって、人と人を結ぶとか間に入って仲介するという業務が多いように思います。やはり最初のキャリアが影響しているのは間違いありません。

今後もキャリアについての記事をドンドン読ませてください。大変参考になります!

キャリア

>松本さん

コメントありがとうございます。やはり、無理してやらない限り、前のキャリアを活かすのが自然だと思います。

半分ネタみたいな記事が多いですが、適度に受け流して楽しんで頂ければと思います。私も松本さんのブログは楽しく拝見しております。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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