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安易に目標を決めるな -- このエントリーを含むはてなブックマーク

普段拝見しているブログに相次いで
やみくもに「海外脱出」を目指すことに疑問を呈する記事が載った。
「海外脱出アドバイスのダメなところ」 (経済学101)
「それは日本で出来るのか、そこの15歳」(理系脳毒の助Diary)
酒井英禎さんという方のブログに
「15歳の君たちに告ぐ、海外へ脱出せよ」
という記事が載ったのがきっかけのようだ。
酒井さんの記事は全文読んだが、
内容やそれについての考察は大変なので上のブログに譲ることにして、
題名だけw考察してみよう

「15歳の君たちに告ぐ」「海外へ脱出せよ」


15歳の冬に戻った気持ちでもう一度、

「15歳の君たちに告ぐ」…「海外へ脱出せよ」…。

なぜ15歳でなければいけないのか?


それは将来やりたいことが決まっていると著者に不都合だからだろう。もしこれが
「25歳の商社マンに告ぐ。ハーバードでMBAを取得せよ。」だったら、
「MBAの機会費用が回収できる時代は終わったでしょ。」
と反論されてしまう。

さらに、なぜ「海外」へ脱出しなければいけないのか?

それは場所が決まっていると著者に不都合だからだ。
もし行き先が「アメリカ」だったら
アメリカ一人勝ちの時代は終わったと反論されるだろう。
「ヨーロッパ」だったら、社会が硬直的だ、ユーロ圏の
シンクロナイズがうまく行っていない、
「中国」だったら、人件費が上がってブームの峠は過ぎた、
「インド」はインフラ整備の遅れが深刻だ、
「ベトナム」や「タイ」は賃金が安すぎる、
「中東」は政治的な不安がある、
「シンガポール」や「香港」は過密化で暮らしにくい。
著者の言う海外というのはユートピアの比喩なのだ(*1)。

(*1)子供の頃、友達と
「"ドコカトオク"っていう場所があったら、
どこか遠くへ行きたい時に便利なのにね。」
と話した事があるのを思い出した。

面白い統計がある。日本企業が、今後世界のどの地域を有望な
マーケットと見なしているかを複数回答で毎年アンケートしたものだ。
最近5年間のトレンドを見ると、ASEANはかろうじて横ばいだが
あとは世界の全ての地域について、
有望と回答した企業の比率が低下している(下図)


有望市場
出所:Fole 2010年1月号

OK。海外に行くのは止めにしよう。
15歳から将来のキャリアを考えて日本で戦略的に生き残ろう。
さて何になったら良いだろうか。


医者か、弁護士か、会計士か、
官僚か、外資金融か、大企業の正社員か?

医師には、社医や、整形外科や皮膚科の開業医、
フリーの麻酔科医など一部にうまみのある職種もあるが
政府が医療費をドラスティックに削っているせいで
ほとんどの勤務医は大して高くない給料で長時間働いている。

弁護士は、時間とお金をかけてロースクールに行っても
なれるかどうか分からない。なれても、これから弁護士は
供給過剰になるかも知れない。

会計士は相変わらず激務でストレスの高い仕事だ。

官僚は天下りができなくなってからうまみは失くなった。

外資金融は景気が良いときはいいが、不安定なので
すぐ解雇される可能性もある。殺人的に忙しい部署も多い。

大企業は、マスコミや新聞社は完全に終わった。
金融も業績不振で昔のような輝きはない。
多くの製造業は低賃金だ。一方で製品開発の
プレッシャーも昔より上がっているだろう。
賃金の高い製薬会社では
研究職は大学の化学系研究室のように閉鎖的だし、
技術がないなら営業に甘んじる可能性が高い。

上位総合商社の総合職みたいな
比較的条件の良い職種も確かに残っているが、
別に彼らの待遇が昔対比で良くなっているわけではない。
他の「おいしい職業」の魅力が失われ
相対的に良く見えるだけだ。

そうやってどんどん小さくなる「おいしいパイ」を
優秀な学生たちが奪い合っている。

世界は貧しくなっているのだろうか?そうではない。
世界経済はついこの間の金融危機まで歴史的にも
最高水準の成長を達成していた。
いまだって成長率はプラスだ。
日本が貧しくなったといっても、実質GDPで見れば
ほんの5年程度前に戻ったにすぎない。

それでは何が起こっているのだろうか?
要するに、特定の目標に向かってみんなが競争することによって
豊かになれる時代はもう終わったということだ。

金融市場では2008年の金融危機以来、
将来は米ドルが基軸通貨でなくなる、
という見方をする人が増えてきた。
米ドルが基軸通貨でなくなった時、基軸通貨は何になるだろうか?
私の答えは「基軸通貨はなくなる」だ。これには割と自信がある。
もはや、単一の価値が絶対的な基準となる時代は終わるのだ。
抽象的な思考に耐えられない人だけが、
いつまでも米ドルを信じたり、他の基軸通貨を探したりする。


もう何かを目標に競争するのは止めにしよう。
これから人々を豊かにするのは競争ではなく差別化だ。

全ての若者が目標にすべきものなんてもう存在しないし、
全ての若者におくるアドバイスなどもう無いのだ。


ブログ内の関連記事:
海外流出ってえらいの?
日本で資格は取るな
海外を目指す人は英文科だけは避けるべき



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テーマ : 海外で働く
ジャンル : 就職・お仕事

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相変わらずいい話ですね。最近ツッコミが自分の芸風になりそうなので、こんなポストを書きたいなぁと思います。

詭弁

>Rionさん

コメント早っ!私の日本のサラリーマン時代の同期には、弁が立つA君という人がいたのですが、別の同期によると、「Aが言う事は屁理屈で、Willyの言う事は詭弁だ」そうですw

No title

海外、というのはユートピアの比喩ではなく、単に日本以外という意味だと思いますよ
日本以外で働ける能力を得るべきだという主張ですし
日本の大学を出るよりは日本以外の大学を出た方がそういったことは楽でしょう
日本の大学はほとんどの人が日本の企業に就職しますしね

No title

「どうでもいい」なんでしょうけど、いい商売はあります。

まったく、新しい、キリスト教徒もイスラム教徒も、すべての宗教がなっとくできる、宗教の教祖になればいいんですよ。

みんな、心が荒んでいるだけですし。実際、ネットは、もう、宗教みたいな状況で、現実てきい解決策は何一つなく、みんなで、絵に描いた餅を、ああでもない、こうでもないってやっているのだから。

大川隆法氏も、東大卒なので、さきがけだったんでしょうね。

No title

みんな教祖に見えて気持ちがわるい、かも?

No title

こんばんは。
私が10年前に夢想したことと同じ事を(笑)。
宗教ですね。当時、徹底的に調べた結果が、特許とか病院ネットワーク等ががんじがらめに固められて、新規参入者に旨みが無いことに気付きました。新規参入者が利益を出そうとすると、某宗教のように過激になって顰蹙を買うだけという結論でした。
それで、切り替えたのが、田舎暮らしです。なんだか、アメリカのアーリーリタイヤを夢想するホワイトカラーみたいで、当時、少し虚しくなりました。

No title

私もこれからの時代、絶対的な価値観など存在しなくなると思っています。同時に、今まで「何か絶対的な価値観があってそこに向かって努力すれば幸せになれる」と信じてきた人にとっては受け入れがたいものなのかもしれないとも感じています。
私の場合、考えの根拠として決定的なものはないのですが、一つはマズローの欲求5段階説です。たぶん今は自己実現の欲求を基盤にした社会に変わっていく過渡期なのではないかと感じています。そしてその自己実現の欲求というのは人間が100人いたら100通りあるはずで、それを基盤にする限り万人が納得する価値観など無くなるなという論法です。

>全ての若者が目標にすべきものなんてもう存在しないし、
>全ての若者におくるアドバイスなどもう無いのだ。

その通りだと思います。答えは若者自身にのみあってそれは決して他者と同じではないと思います。

宗教?

>匿名さん
>単に日本以外という意味だと思いますよ

そう思わない理由を本文に書きました。

>えっとさん

大川隆法が有名になった頃僕は高校生でしたが、僕も宗教家になりたいなーと思いました。でもあれはカリスマ性という才能がないとダメですね。

>yukishiさん

絶対的な価値観も宗教もない国って、ある意味危険ですよね。右傾化を懸念しています。

医者のうまみとは byフリーの麻酔科医

>医師には、社医や、整形外科や皮膚科の開業医、フリーの麻酔科医など一部にうまみのある職種もあるが

「うまみのある職種」=「低リスク、高リターン」ということでしょうか?

・社医(保険会社書類審査など)現在希望者が多く報酬減少傾向 低リスク中リターン

・開業整形外科・眼科 手術をすれば初期投資大で訴訟リスク高、外来のみだと過当競争ぎみでビジネスセンス要 よって新規開業は中~高リスク低~高リターン、継承なら低~中リスク低~高リターン

・フリーの麻酔科医 並以上の高い技術力と独立心が必要、高収入が報道されるせいか新規参入は多いが3年続くのは半分以下、メール一通で契約終了もあり、外資金融と類似 中~高リスク中~高リターン

私は「フリーの麻酔科医」3年目ですけど、一応東大理I~IIクラスの医大卒、PhD、日米専門医資格有、です。だれでもできる商売じゃありません。

個人的には、今の日本の医者でうまみ(低リスク高リターン)があるのは、公立病院ママ女医だと思います。最近では「育児時短最大10年」などという病院もあり、「1200万残業・重症・当直なし」も可能で、医大の女子学生率は増加の一途です。もっとも、それで日本の医療が維持できるかどうかは別の話です。

医師という職業

>clonidine さん

コメントありがとうございます。以前にブログを少し拝見致しました。

>「うまみのある職種」=「低リスク、高リターン」ということでしょうか?

基本的にはそうです。労働条件も加味しての話ですが。ただし日本の医学部の場合、入学時点の敷居が高いということは承知していますので、そういう適性があった場合ということになります。

社医の希望者が多いという報道は、このエントリーを書く前に調べましたが、現状ではリスクや労働量の割にリターンが高いので希望者が多いと私は解釈しています。開業医は、新規開業の場合にリスクが大きいのは確かですね。しかし診療報酬体系の歪みを見ると、一般的には開業医は良い商売だと思います。

麻酔医の労働市場は外から見ると謎が多いです。現場からの情報、とても参考になります。しかし、独占資格の必要な商売であり需給がタイトである以上、仕事が見つからないリスクはそれほど高くないと言うのが一般的な見方かと思います。その点で外資金融と同類とは思いません。

>一応東大理I~IIクラスの医大卒、PhD、日米専門医資格有です。だれでもできる商売じゃありません。

これは「フリーの麻酔医は高度な知識が要求されるので大半がこのレベルのqualificationを満たしている」ということでしょうか。そうであれば納得なのですが、もしclonidineさんが特に優秀な麻酔医であるという場合には、職種自体のうまみがそれほどないという論拠にはならないと思います。

No title

ちょっとしたアンケートなんかによると、逆に有名大学ー>大企業で終身雇用というパイにありつきたい若者や、子供にそういう道を歩んでほしいと考える親の割合は増えてるようですけどね。

単に不景気だからかもしれませんが、こういった思考回路は内的要因からはなかなか変わるものでもないだろうし、本当に最終ゴールであるはずの日本企業がバタバタやられるか、あるいは不本意にでも移民が増えたりだとかして、より多様な価値観を受け入れざるをえない状況になるまで変わらないかもしれません。

秘密

> 毒の助さん

まあ、そうでしょうね。私が働いていた金融業界は90年代後半に山一證券、長銀、日債銀、日産生命とかが潰れて「もはや大企業でも安泰とは言えない」という「綺麗事」が語られたりしましたが、本音では「より良い大学に行って、より安全な野村、三菱UFJ、日本生命とかに入ろう」という流れですからね。雇用の流動化なしにこの流れを変えるのは困難です。

> 子供にそういう道を歩んでほしいと考える親

こんな記事を書いておいてアレなんですが、一応私にも「今後の世の中でお得なキャリア・パス」の案はあります。別に大したものではないですが、取り敢えず娘が進路に困った時のために秘密にしておこうw

フリーランスの医師とは

フリーランスの医師というのは、フリー通訳やフリーアナウンサーみたいなもので、医師免許さえあれば誰でもなれます。ただし、フリーランスとして成功(=時給が前職の倍以上と仮定)できるかどうかは別問題です。

麻酔科医は患者を直接受け持たず、手術毎に仕事が完結するので、医師のなかでは出来高による報酬制度が成立しやすい分野です。具体的には1件とか時間単位で報酬をもらう業務形態で、手術1件あたりの報酬は常勤雇用に比べて高くなり、長時間労働・重症・夜間勤務は金銭的に補償されますが、雇用の安定はありません。病院側のメリットとしては、「仕事量に応じて労働量を調整できる」「ダメな医師の解雇が容易」です。

という訳で、「腕に自信があり、働き盛り」はフリーランス、「腕がイマイチ、ワケアリ(高齢・持病持ち・ママ女医)」は公立常勤という流れが、麻酔科業界ではできつつあります。当然のことながら例外もあり、公立病院でも有能な麻酔科医はいますが、無能なフリーは市場が淘汰します(仕事がなくなるので)。

海外留学は必須ではありませんが、成功したフリーに海外留学経験者は多いです。私が思うに「終身雇用信仰が薄い」「単身で知らない人ばかりの職場に乗り込む」「自分のトラブルは独力で解決」「相手の気配りを期待せず、わかりやすい言葉で指示を出す」といった仕事スタイルが自然と身についていることが(英語力よりも)留学経験者の強みではないかと思います。

PhDも必須ではありませんが、「一般的な医者の仕事と同時進行で、論文博士はサクッととれるような要領のよさ」は、長くフリーランスを続ける上で必須かもしれません。

勤務医ならば無縁の税務・財政・会社設立といった勉強もしなければならず、ついでに経済関係のネットサーフィンをしてたらこのブログにたどり着きまして・・・

No title

Willy さん、お邪魔します。

>clonidine さん
ほんとに「旨み」があって、ウハウハしてる人は、ひっそり隠れてて絶対表に情報出したりしないんじゃないかな~、なんて。

>個人的には、今の日本の医者でうまみ(低リスク高リターン)があるのは、公立病院ママ女医だと思います。最近では「育児時短最大10年」などという病院もあり、「1200万残業・重症・当直なし」も可能で、医大の女子学生率は増加の一途です。もっとも、それで日本の医療が維持できるかどうかは別の話です。

医師でも仕事にこういういろんな選択肢が会った方がいいと思うんですが。
米国の方が日本より臨床研修はずっとキツイですが、女性の進出により医師の働き方も大分変わり、今はいろんな働き方ができるようです。それでも対GDP比の医療費はうなぎのぼりになってるから、十分まわっているようです。
それにしても、日本では流産してしまう女医が多かったんですが(どう思うこれ?今違う?)、こちらでは見かけませんね。少子化や人権が問題ならそういうことまで気にかけて欲しいものです。そして日本でもその方向に向かっているようで、良いことだと思うんですが、どうでしょう。

フリー

>clonidineさん

採用時におけるqualificationが高いというわけではないようなので、結局、労働時間と収入、それに、離職率と転職先がどうなっているですね。でも、どの業界でも、その手の情報というのはなかなか手に入らないですね。一般的に言って、フリーの待遇がいいのはその分リスクが高いため、というのは納得のいく説明だと思います。日本の他の業種はなぜかその辺が逆になっていたりしますが(笑)。

適度に働く

>ap_09さん

医師に限らないんですが、雇用側の過度な要求を労働者が頑張ってのむ必要はないと思います。というのは、短期的には確かに個々人が頑張った方がうまく回るんですが、長期的に見ると社会の仕組みが合理化するのを妨げてしまうので。

それと、医師が本当に足りないなら医師の労働条件が悪くなるはずがないです。条件の悪い仕事なら断って、代わりの仕事を探せばいいのですから。もしそうなっていないのならば、医師は reputation risk みたいな特殊なもので縛られているのかなあ、と思ったりするのですがどうなんでしょうね。

reputation risk

Reputation risk っていうのはサービスを利用する側=患者によるというより、医局=「組」の掟、評判という感じです。
教授という組長がいて乱立する組同士で縄張り争いしてるみたいな。「組の掟に反する奴は生かしちゃおけねぇ」のノリでしょうか。学校出てストレートに一つの組に入れられて、それが世の中のすべてだと思い込んじゃうんですね。逆らったら、「お前なんかどこに行ってもきっと潰してやる」なんて平の医局員に言っちゃうようなアキレタ教授も時々いるみたいで。これ海外ニートさんの社蓄洗脳教育に一脈通ずるところがあります。
実際にはWilly さんのおっしゃる通りで、世の中もっとフレキシブルなんですけど、見えないんですよね。
女性は触らぬ神に祟りなしって感じて、異様にチヤホヤ持ち上げて何にもさせないか、そこまでする?って感じで苛め抜いて追い出すかってなところが多かったんですけど (その以前に入れない医局がたくさんあって、臨床訓練を受けられる場が限られていた)、医局制崩壊といわれてどうなったんでしょうね。やめざるを得なくて野に埋もれてしまった女医に、今更医師不足だから帰ってきてコールっていうのも、じゃぁ、あれは一体何だったのかなぁと笑えます。市場の法則じゃなくて、組社会の掟なんですよ。(ちなみに私見では、日本で医者に最も丁重な患者さんは、その筋系の患者さんでした。本能的に類似性を感じて敬意を表してくれてるのかな?)

Re: reputation risk

>医局=「組」の掟、評判という感じです。

あ、「reputation risk みたいな特殊なもの」と書いたのはもちろん、医局とかそういう体制のことを意識して書きました。医師はせっかく資格を活かせる商売なのに、そんな縛りがあったら終身雇用の社畜と一緒になっちゃって意味ないですよね。

旨みは周辺にはバレる、広く知られるとオワル

>ほんとに「旨み」があって、ウハウハしてる人は、ひっそり隠れてて絶対表に情報出したりしないんじゃないかな~、なんて

同感です。ただし、広く社会には知られなくても(=マスコミ報道されなくても)周辺にはバレるので、「旨み」のある分野にはやはり人は集まりますね。保険会社医とか医師国家試験予備校講師なども人気だそうです。新聞報道では「眼科・整形外科開業医」だそうですが、実際の新規開業が激増している訳ではない(診療報酬そのものは10年間下降しつづけているし)ので、同業者では「さほどオイシクない」と知れ渡っているのでしょう。無論「継承開業医」なら旨みはありますが「盛業オーナー社長の息子はオイシイ」のは医師でなくても当然です。

というわけで「フリーランス麻酔科医」も10年前はともかく、新聞に載るぐらいメジャーになってしまった現在では「(医師なら)だれでも高報酬」とはいきません。
 しかし「フリー」と「成功したフリー」を混同し、「成功したフリーの報酬」のみをきいて「フリーランス麻酔科医はオイシイ」と断言する人(医師・非医師をとわず)が多くて閉口しています。「みのもんたの報酬をきいて、フリーアナウンサーはオイシイ」と言ってるようなものです。
 何かカンチガイして、新規参入する医師も後をたたないのですが、適性のない医師は一年以内に市場に淘汰されますので、実害は(本人以外には)あまりありません。
 個人的にはむしろ、日本の公立病院や大学病院の、「無能医・問題医でも一度常勤になったら降格も解雇もできない(=労働市場の硬直化)」システムの方が問題だと思います。(某国立大麻酔科では教授以外が全員辞職したが、教授が辞めないので再建人事もできず、困っている)

 ママ女医向けの「短時間常勤」も否定するわけではありませんが、その場合の「報酬・昇進」は一般常勤医と差がつくのが当然であり、一定レベル以下の問題医は淘汰するシステムも必要です。今問題になっているのは「公立病院で最低時間のみ働いて、育児時短・病休・介護休暇は最大限活用、報酬や昇進は規定どおり」タイプ(ママ女医に多いが男医でも増加中)です。医局制度がしっかりしていた頃は、こういうタイプは大学に頼んでお引取り願っていたのですが、現在では開き直った公立常勤医につける薬はありません。「女医ってけっこうオイシイ」とじわじわバレているので、気付いて医大受験する女子学生は激増中ですしね。

 あと、女医の流産率は確かに高めですが、高学歴女性はどうしても高齢妊娠になりやすいので年齢で補正すればそんなものかなあと思います。アメリカでは一週間の休みは普通にとれ、いちいち「流産した」と言い訳しなくていいので(日本の勤務医が突然一週間休むとなると、それなりの理由が必要)目立たないんじゃないかと思います。

No title

医師の場合、養成にコストがかかっている分、条件をたくさん付ける人にはやめてもらう、という簡単な話ではないのでしょう。したがって長時間勤務を理由に辞める人が多いならば、短時間勤務を認めるのは正しい方向のように思います。もちろん、「報酬・昇進」に差がつくようにしないと公平でないと思いますが。

「長時間勤務」ではなく「無~低賃金長時間労働」が問題

 勤務医不足の一因は「長時間勤務」ではなく「無~低賃金の長時間労働」だと思います。公立病院や大学病院の多くは、17時以降は無料かコンビニ時給以下の低賃金で、「医師の良心」につけこんだ残業や緊急呼出を強要しています。そういう「高リスク中リターン」な職場からは、元気な医師は逃げ出すか、病気や育児を口実に残業を拒否して「低リスク中リターン」な環境に改変して居直るのも自然な流れです。ただし、ママ女医の場合は30そこそこでノンワーキングリッチ化してしまうので、そういう不良人材をその後30年も抱え続けることは組織を確実に弱体化させます。

 近年では、「毎年契約更新の年俸制、基本給以外にも当直や呼出料はきっちり支払うが無能医は更新されない(=高リスク高リターン)」という民間病院も増えてきましたが「有償長時間労働」だと医師はさほど逃げないようで、それなりに人材は確保できるようです。

 短時間常勤が医者の世界で広まらない一因は、「短時間勤務だとスキルの維持が難しく、医療の進歩についてゆけない」ことも大きいです。無能ラーメン屋は一回ガマンして二度と来なければよいのですが、無能な麻酔科医はしばしば患者に死や後遺症をもたらします。そして、日本の多くの公立病院では、ヤブというだけでは医師を解雇できないのです。

 よって「短時間常勤勤務」は「問題人材の降格・解雇可能」とセットでないと、定着は困難だと思います。

No title

「良心」とか「居直る」とかいう概念で現状を説明するのは科学的ではありません。あくまで、労働市場がどのような制度的な問題を抱えているかを考えるべきです。

一つの問題は、技術に問題がある医師を解雇できないことですね。これは医師に限らず日本社会全体の問題で根が深いですね。(解雇された問題医師は何をして食っていくのでしょうか?他の労働市場が流動的でないと解雇が難しいことが分かると思います。)ただ、ラーメン屋と医師の違いは本質的ではないでしょう。ラーメン屋でも、調味料の入れ方が無茶苦茶な人を30年も雇っていたらそれこそ大問題です。

短時間勤務の問題は技術的な問題と相関があるとのご指摘ですが、問題医師の解雇は、あくまで技術の不十分な人を排除するということに焦点を絞ってやるべきだと思います。

補足

> clonidineさん

長時間勤務でも比例して給料が高ければみな辞めない、というのであれば、お医者さんにはある程度頑張ってもらって長時間勤務をしてもらい、それに応じて高給を払うという方が社会としては良さそうですね。というのも、やはり育成にコストがかかるということは、短時間勤務の人をたくさん育てるのは効率が悪いですから。

解雇された問題医師

急性期病院で使い物にならない低能医師は、(予防接種や献血など)低リスク低リターン分野へ転職してもらうのがいいんじゃないでしょうか。味オンチのラーメン屋を皿洗いに配置換えする、ようなものです。仕事のやりがいは低いでしょうが、文系ポスドクなどに比べれば経済的には恵まれています。健康診断の問診もできない無能医師は、医療界から追放されても仕方ないと思います(皿洗いすらできない人材はラーメン店を解雇されるように)。

本質的には、医者もラーメン屋も大工も、似たような職種かもしれません。しかし、ラーメン屋は大工は自動的に60歳まで昇給し続けることもありませんし、とんでもない問題大工は市場に淘汰されます。とんでもない無能医は公立病院などで散見され(けっこう高給だったりする)、「相手の退職をじっと待ちつつ周囲の医師で仕事の穴をカバーする」うちに、周囲のマトモな医師が耐えかねて退職(あるいは病んでしまって無能医が倍増)→医師大量辞職、というのもよく聞く話です。

解雇を乱発することは私も好みませんが、2SD以下の低能者を排除したり、それをみて「イイカゲンな仕事をすると職がなくなるかも」という緊張感を持つことは職人系の仕事には必須だと思います。

No title

もちろん、本来的には技能に問題がある場合は排除されて仕方ないわけですが、その際、他の職の流動性が高くないと再就職が難しくなるので、それは社会全体の問題の一部として捉えるべき、ということが言いたかっただけです。

医師の場合は、患者に対して情報・知識の面でアドバンテージがあるので緊張感を保つ仕組みは必須でしょうね。ラーメン屋の客は、専門知識がなくても美味いかマズいかはすぐ判断できるわけで。

雇用の流動性

 私は結局のところ、病院と大学でしか勤務したことはありませんが、城繁幸さんの著書のような「雇用の流動化」には賛成です。日本の大学の無能教授を降格・解雇できないことによる被害はそれなりに経験しましたし、近年よくきく公立病院の崩壊も、日本社会特有の「年功序列+下方硬直性」が一因です。
 ただし、医師は中高年になっても(平均下1SDレベルまでの人材ならば)転職が容易なのが、他の職種との相違です。ゆえに医局制度が崩壊した今、外資金融のような「年俸+業績連動ボーナス(+解雇リスクあり)」のほうが上手くいくんじゃないかと思います。

 「フリーの麻酔科医はうまみがある」について検証にはじまって、長々と失礼しました。今後の記事も楽しみにしております。
 

No title

まあ、どの業界も似たような問題を抱えていますね。

今後もブログにお越し頂ければ幸いです。

抽象的思考をする人とは?

本文にて、

>抽象的な思考に耐えられない人だけが、
いつまでも米ドルを信じたり、他の基軸通貨を探したりする。

とありますが、「抽象的な思考に耐えられない人」とは一体どういった人のことを指すのでしょうか。

No title

ああさん:

>「抽象的な思考に耐えられない人」とは一体どういった人のことを指すのでしょうか。

典型的には、何らかの一次元の指標が全般的な
価値判断の基準となりうると思っているような人です。

プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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