双方向イマージョン教育とは -- このエントリーを含むはてなブックマーク

YS Journal さんの
「バイリンガル教育講演会 2方向イマージョン教育」
というブログ記事でも触れられているが、
先日、デトロイト郊外の Livonia 市で
日英バイリンガル教育についての講演会が行われた。
講演者は、トロント大の中島和子名誉教授である。
講演会に行くまで知らなかったのだが、この人は
日米のバイリンガル教育の第一人者の一人のようだ。

日英バイリンガル教育を専門に研究されている方なので、
実体調査と考え方の両面から大変ためになるお話であった。


アメリカの比較的大きな都市に住んでいる日本人の子女の場合、
平日は現地校に行って授業を受け、土曜日に補習校に行って
主に日本語で国語と算数を習うというパターンが多い。
2か国語を学べるのは子供にメリットがある反面、
一方の言語が苦手になることで
様々なストレスを受ける可能性も高く、
場合によっては、ダブル・リミテッドと呼ばれる
「両方の言語ともきちんと使えない状態」
になる恐れもある。

そんな中、近年、イマージョン教育という二つの言語を
効率的に習得するためのプログラムが注目されている。
このシステムでは、あるクラスでは午前中は全て英語を使い、
午後は全て日本語を使うという方式である。
2つの言語を一つの学校で学ぶので、年齢に合わせて
使用する言語の比率を最適化することで効率的に学べる
ということが一つのセールスポイントであるらしい。

通常、イマージョン教育はアメリカであれば例えば、
「英語圏の子供が英語と日本語を学ぶ」
ということになるが、さらに、
英語が母国語の子供と日本語が母国語の子供を混ぜて行うようなケースを
「双方向イマージョン教育」と呼ぶ。
日本語と英語の双方向イマージョン教育は、講演会によると
たったの3校(フロリダ、イリノイ、バージニア)でしか
行われておらず、今年の秋からミシガン州 Livonia に新たに
イマージョンスクールを作る計画、とのことである。


しかし、私は双方向イマージョン教育に関しては
今のところあまりポジティブな見方をしていない。
イマージョン教育では、両言語とも高度なレベルでの
言語習得が難しくなるという意見も聞くからだ。


講演の中で中島氏もイマージョンスクールに通わせたとしても、
日本語は補習校のような日本語ネイティブを前提とした水準には
達しないということを認めておられた。
イマージョン教育が、二言語をほぼ平等に扱うという前提に立てば
日本人がこのプログラムに参加しても、現地校の英語レベルには
遠く及ばないことになる。
授業が、最大公約数的に行われるとすれば、他の科目の教育も、
言語面で制約を受けるので、ある程度の負の影響は免れないだろう。

また、双方向イマージョン教育を実施した場合、
生徒間の人間関係が母言語に依存して分かれることも予想されるので、
敢えて同じ学校で二言語を教えることが
デメリットになる恐れも大きいように思われる。

私はアメリカでは tenure-track という
一時滞在でも永住でもない曖昧な立場にいるので
娘にはやはり日本語と英語の両方を
きちんと使用出来るようになって欲しいと思っているが、
今のところ、
日本語教育はなるべく全員が日本語ネイティブの環境で
英語教育は日本語をしゃべれる人がいない環境で

受けて欲しいと思っている。

この方針が妥当なのかはよく分からないが、
一応、そうした考えを元に、住まいを決める際も、
センサスの2000年調査で日本人比率が
1%以下の学区を選んでおいた。

ただ、日本語に関しては5歳から週一回の補習校だけに
なってしまうので、どこできちんと教えるのかは
「現在、深く考慮中」wである。

ブログ内の関連記事:
― 初等教育を丸投げする米国(教育制度比較1)
娘の算数教育
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引用ありがとうございます

個人的には、数学科の処*女*率の統計的研究の掘り下げをお願いしたい所です。(コメントの転載もありがとうございました)どう考えても高すぎると思います。(私、コメント場所間違えてますね)

No title

YS Journal さん:

バイリンガル教育は経験者が身近にいないだけに難しいです。

統計のバイアスの問題については、面白いものがあった時に取り上げます。

親の関心

知人で、娘さん2人が小さい時(6歳と2歳の時)にデトロイトに来られて、そのままこちらで成人させれた親御さんがいるのですが、完全なバイリンガルは難しそうです。お嬢さんお二人とも U of M 卒業なので優秀なのですが、結局は働く環境で ドミナントになる言語にいっちゃうそうです。(苦手な方も、結構高いレベルのバイリンガルは間違いないですが)

一番面白かったのは、2歳で来た小さい子の方が大学を出るまで日本語の方が強くて、ずっと英和の辞書を引いていたそうです。

アメリカに住む限り、英語(現地校の宿題や成績)、日本語ともに親が関心を持って接すれば、何とかなるのではないかと思っております。(教育パパ、ママではなく、普通(?)と言った感じで)永住するので、日本の義務教育が終わったら補習校も良いかなーと考えている所です。そこまでいけば、必要に応じて本人次第でしょう。放任する気は無いのですが、過保護にはなりたくないと思っております。

一人っ子と兄弟姉妹がいる場合の違いもある様な気がします。上の娘は、最初苦労していた感じでしたが、すっかり英語に馴染んでしまいました。したは少し英語に馴染むのに時間がかかっている様な気がします。この9歳の娘が5歳の娘に英語を教えており、5歳の方もキンダーで英語を使いたいのか一所懸命習っています。現在、単語から文章へ進化が急速に進んでいます。

英語、日本語のバイリンガルが有益なのかと言う疑問(どのように働くか)も付きまとい、バイリンガルを活かせる職業を娘のために考えてしまうという様な本末転倒な事を考えたりして、親としては悩ましいとこです。

No title

YS Journalさん:

貴重なお話ありがとうございます。確かに永住でお子さんもこちらで就職するということを決めていらっしゃるのであれば、日本語はある程度の水準まで達していれば問題ないでしょうね。

私は日本で暮らしていたら娘に英語をやらせようとはちっとも思わなかったと思いますが、今は将来の見通しが未定であるということと、こちらにいる以上は環境を活かして差別化すべき、という観点から娘には二ヶ国語をしっかりやって欲しいと思っています。日本にいたら中学受験のようなことをさせるのでしょうが、こちらにいたらその代わりにバイリンガル教育という感じでしょうか。

バイリンガルを活かせる職業という考えはあまりありませんでした。どんな職業でも英語が話せれば勤務地の選択肢は広がるし付加価値になると思いますが、特にバイリンガルを活かせる、となると通訳のような特殊な職業しかないですよね。結局大事なのは「考える力」で、その他の能力はおまけ程度だと思っています。

私は数学以外のことはできないので、13-15歳位になったら取り敢えず娘に数学を教えてみて、だめなら本人が別の分野を探して、それに対して助言できればと思っています。

バイリンガルでの職業

語学という狭い意味ではなく、弁護士とか外交官とかバイリンガルである事で、やれるレベルが全然違ってくる(日米を股にかけてという意味で)職業をイメージしております。(親バカの儚い願いですけど)私の娘達の場合、アメリカベース(英語)プラス日本語になりますので、Willyさんと事情は違いますね。日本ベース(日本語)プラス英語は結構良いかも。

今日ひまわり幼稚園の先生達と夕食をする機会があり、講演会の事、学校の事話題になりました。例の学校、今年の開講は難しいそうです。下の娘の入学は無理そうです。

No title

私たちも、夫婦間でこのことに関してかなり調査しています。今のところ日英語バイリンガルに関しては実証的研究が少ないのですが、スペイン語/英語のバイリンガル研究に関する論文はたくさんあります。

やはり基盤となる第一言語があるていどできてからの第二言語習得でないと、中途半端に終わるケースが多いという仮説が多く見られています。

また、第一子は親の母国語を一番習得しやすく、第二、第三子とふえると、後に生れた子ほど現地語が強くなるという結果も出ています。これは移民2世の同僚の兄弟がまったくそうなので、どの言語でも当てはまる現象かもしれません。

移民2世の友達や同僚をみていて、第二言語(親の母国誤)は発音に関しては完璧でも語彙数やタスク遂行(読み書き)のレベルがいまいちというのは結構一般的かもしれません。また、若いうちは親の母国誤に拒否反応を示し、成人後に習得しなかったことに後悔を示すというのも多いです。

言語習得は親の教育レベル、子供の知能、養育環境、兄弟の有無が作用するので研究対象としてはかなり難しく、たとえ遂行可能でも結果の一般化が難しいですね。

バイリンガル教育

YS Journal さん:

YS Journal さんは奥様が英語圏の方ということですね。確かに母語が英語の場合、日本語で経済的な付加価値をつけるのはかなり難しそうです。弁護士にしても、どの程度の付加価値になるのかよく分かりません。ニッチな市場で需要があれば結構稼げるかも知れませんが。

とよじろさん:

家族構成や何番目の子か、というのは影響しそうですね。ただ、それ以上のことに関しては、英語/スペイン語のバイリンガルからの推論は結構危険な気がします。例えば、翻訳の論理的な構造を考えても全く違うわけで、母国語を習得してから第二言語を学ぶ場合は方法論も全く違ってしかるべきだと思います。音声にしても、母国語と第二言語の音の種類によって学習方法は全くことなるでしょうし。

>若いうちは親の母国語に拒否反応

これはいわゆる言語の社会的地位の問題なんでしょうね。

読み書きに関しては、そもそも何歳になっても習得出来るという説もあると思います。知能や学習環境が主な問題なのではないかという気が私はしています。

訂正

家内は(英語苦手な)日本人です。アメリカに永住という事で、アメリカ(英語)ベースになると言ったまでです。

私の娘達の場合、バイリンガルの実利を考えるのは難しいですね。日本人の私の場合は、英語が出来る事でいろいろ得した気がしますが、アメリカに来て覚えたので、先にアメリカに来るがあって、英語も覚えたという感じです。よって特殊事情の2乗なので悩みは尽きない所です。

No title

YS Journalさん:

上のコメントに書いた通り、やはり「バイリンガルを活かした職業」というアプローチには、あまり意味がないように思えます。言い方は悪いですが、そういう職業は基本的に「語学しか得意なものがない人」がなるものではないかと。それはそれで良いと思いますが。特に、母語が英語の場合、日本語圏と英語圏だと規模が違うので難しいですね。

細かい違い

Willyさんは「バイリンガルを活かした職業」とされておりますが、私は「バイリンガルを活かせる職業」と書いております。つまり先に職業ありきです。

細かい違いなのですが、何か一番大事な所のボタンの掛け違いがある様な気がします。「せる」から「した」への意識の違いが、私の本末転倒的な発想になったり、Willyさんのご意見になったりすると思います。

細かい所が、上手く伝わらず済みませんでした。

No title

確かに「活かした」と「活かせる」では違いがあると思いますが、いずれにしてもそれを起点に職業を考えることは少々難しいと思っています。例えば「英語と日本語が話せるから自動車業界で働こう」というようなことなのだと思うのですが、エンジニアリングなど基幹業務に興味を持てないならば、結局、社内で語学に特化したスキルを活かすくらいしか道がないですよね。バイリンガルを起点に職業を考えるためには、自分のやりたいことを器用に変えられる能力が必要で、それは結構難しいのではないか、と私は思っています。

職種を興味や適性に従って決めた上で、特技を活かしてどんなニッチを埋めていくかを模索するくらいが無理のない線かな、と思います。例えば、証券アナリストになると決めた後なら、日本語ができれば自動車アナリストをやるのが有利かも知れない。

その辺りの感覚が、YS Journal さんと私で違うのだと思います。

実例w

僕はバイリンガル教育してきたものですが(土曜日本語補修校)、生徒の間では日本語能力にかなり拡散がありましたね。生徒の構成を三つに分けると、①日本生まれの日本人②アメリカ生まれ家庭では日本人③アメリカうまれ家庭では微妙w(お母さんが日本語で話しかけても子供は英語で返す確率が高かったり)。もちろんその順に日本語ができる訳ですが、③の人で酷い場合は勉強なんてほとんどせず、ただ友達と会っていた感じでした。

②の人が一番malleableですね。得に中学生+になると山脈のてっぺんからボールを落とすみたく「どちらかに」転がる可能性が高くなる。元々小学生では結構いい成績とっていた②の人が中学生になるといつの間にか日本語能力が欠けていた場合も少なくありません。つまり日本語能力はやはり日本への興味に凄く繋がっていて、持つ人持たない人とはっきり別れます。

正直親が英語グダグダだとアジア人は凄くprimitiveに感じるwのでそれをoffsetするために教育以外の何かが必要なのだと思います。僕の場合、親が日本(文化)と関わる仕事している+幼なじみも同じような環境+みんな近くに住んでいる+日本のニュース、風潮に[疎いの対義語]、クイズ番組に強いw、と日本人らしさを育んでいたんだなぁっと今ながら感じます。

誰かが言っていた言葉ですが、バイリンガル人の言語は「純」の人と比べて「half the vocabulary, twice the grammar」。イマージョン教育は新しい人種が作れそうですね(笑)。

No title

apeescapeさん:

なるほど。いろいろと興味深いですね。私の知り合いには長い期間(10年以上)アメリカで育った日本人はあまりいません。まあ、それが普通だと思いますが。

日常使うレベルを超えるとその先は習得が難しくなるというのはありそうですね。娘にはスパルタ教育で、たくさん本を読ませることにしますw 日本のテレビも契約しようかな。

話はそれますが、日本育ちの純日本人で大人らしい1000字以上の作文ができる人というのは全人口のうちどのくらいいるんでしょうね。私は、5~6割くらいしかいないのではないかと思っています。日本で働いていた頃、某省庁の人とメールを交換したのですが、文章が日本語として意味をなしていなかったのでショックを受けたことがあります(本省の常勤の職員のはずです)。ホワイトカラーについていない人を含めて調べたら、恐らく結構な割合でちゃんと文章をかけない人がいそうです。ダブルリミテッドなんていうとバイリンガルがダメみたいな感じですが、「シングルリミテッド」も結構いそうです。



No title

色んな意見が拝見できて、勉強になります!!☆

バイリンガル

1ファンさん:

こちらも、これから手探り状態になりそうです。もしろ色々とコメントを頂いてこちらの方が参考になりました。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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