相撲は真の日本の国技だ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

朝青龍引退が引退するそうだ。
横綱審議委員会が(1名の欠席はあったもの)満場一致で引退勧告を決定し、
朝青龍は協会に引退を届け出た。

私は、この一連の事件を見て相撲は真の国技であると確信した。
相撲は外国人が日本を理解する上で今後も素晴らしい教材であり続けるだろう。

まず、横綱審議委員会の引退勧告書を見てみよう。

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朝青龍関引退勧告書
平成22年1月16日未明に発生した横綱朝青龍関の一連の不祥事は、
畏敬(いけい)さるべき横綱の品格を著しく損なうものである。
示談の成立は当事者間の和解にすぎない。
横綱に対する国民の期待に背いた責任を免れるものではない。
よって横綱審議委員会規則の内規5、ロ、の「横綱としての体面を汚す場合」
により横綱引退を勧告する。
平成22年2月4日 鶴田卓彦

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トッププレーヤーの朝青龍が暴行事件を起こしたことは、
もちろん重大な問題であるし、事件を隠蔽することなく、
きちんとした調査をした上で処分をすべきだろう。
刑事罰が課されるようなことがあれば、別途定めた規定に
従って、懲戒解雇などの措置を取るべきだ。
今回の朝青龍の事件はどうだろう。
被害者と示談が成立し、民事訴訟にすらなっていないそうだ。
引退勧告は「国民の期待に背いた」ことらしい。

ちなみに、若手力士を組織的に集団で監禁・暴行したあげく
死亡させた時津風部屋の事件においては、親方が逮捕される直前まで
なんの処分もなかったと記憶している。

「国民の期待」とは何なのだろうか。
国民投票を行ったという話も聞かないので、
単に横審の総意で決定したということに過ぎないのだろう。

横審は、業界関係者であるマスコミから5人と、
有識者と称した素人7人で構成されている。
私には作曲家や映画監督が相撲界の有識者である理由がよく分からない。
ちなみに、定例会や稽古総見など
決まった活動は年に10回程度しかない。
また、横審は理事長の諮問委員会でありながら、
協会と意見が食い違うことはほとんどない。
横綱昇進に関し、相撲協会理事長が諮問して昇進が否決された
ことは、過去40年間に一度しかない。それも、貴乃花の横綱
への昇進が少し遅くなったという程度の影響しか与えなかった。
ようするに横審は、御用学者を抱えて「国民的な議論を尽くした」
ことを示すための日本政府の委員会と同じだ。

多くの昇進が満場一致で決まるのも、
「12人くらいの委員会なんだから空気読めよ」
という「日本文化」を象徴していると言えるだろう。


引退勧告という制度は、日本企業の希望退職の制度にそっくりだ。
朝青龍は自ら引退を届け出たことになっているが、
実際は引退を届け出なければ解雇であったという。
こうした形を取ることで、協会は各方面からの批判を回避するのに役立つ。


相撲協会では横綱というのは特別な存在で、
「力量」だけでなく「品格」も抜群でなければならない。
今回の引退劇も、朝青龍が横綱であったことが大きな理由である。
横綱に対してだけは協会は横審を通して生殺与奪の権利を握っている。
一言で言えば、協会には「出る杭を叩く権利がある」ということだ。
これは、ある意味分かりやすくて良い。
日本も総資産1000億円以上の企業オーナーを「横綱」と認定し
いつでも逮捕できるという法律を作っておけば、ホリエモンのような
人物を逮捕した時も、「横綱だから仕方ないか」と「国民の総意」が
取り付けられるに違いない。


相撲協会にこれほど、外国人が増えたのは別に相撲協会が国際化を
進めたいからではなくて、各部屋が強い力士を部屋で育てることで
協会から資金を獲得できるからだ。
一方で外国人勢力が強くなってくると
横綱昇進の基準を微妙に厳しくしたり、
「外国人は各部屋に一人まで」とお得意の自主規制を作ったり、
二つの部屋を合併(二子山部屋と藤島部屋)させて外国人に対抗したりと
セコイ参入障壁を作るのは日本のお家芸だろう。


相撲協会の運営があんなにだめなのは、
内部からしか人材を登用しないサラリーマン組織だからだ。
しかも組織内での昇進は土俵という「現場」での実績で決まる徹底した現場主義だ。
経営者としての能力というのはあまり重視されない。
もちろんいくら強くても最初は序の口(大卒は幕下)から
全体主義のクソ労働環境で修行を積まなければならない。
「若い頃の苦労は買ってでもしろ」という諺があるからだ。

はたから見ていると、
スポーツ界や芸能界に多くの知人を持つ朝青龍は、
協会の発展にずいぶん貢献しているように見えるが
もちろん、日本ではそういう派手な活動はご法度だ。
大学の教官がテレビや政界に進出すると
やっかみから同僚から袋叩きにされる国が日本である。


日本の社会の仕組みというのは外からは少し分かりにくい。
これをきちんと世界に示すためには
伝統・文化という隠れ蓑のもとに
ある程度、本音を建前として表に出す必要があるだろう。
その意味で、
相撲界は日本の仕組みを世界に発信するのに
極めて重要な役割を担っている。




追記:
横審の仕組みに関しては、文科省が意向を反映したいという側面もありもう少し複雑なようだ。
お詫びして訂正させて頂きたい。

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テーマ : 朝青龍、引退表明!どう思う?
ジャンル : スポーツ

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No title

えぇっと、アメリカ在住ですから状況がよく呑み込めてないんだと思いますが、実状は微妙です。
引退発表の当日に木曜発売の週刊誌の広告がでましたが、示談自体強制的だった嘘だった闇というようなニュアンスのものでしたし、実際に「示談した」→確認しようとしたら示談確認取れなかったというのが一回あってからの示談提出だったり。山口組がバックにいる朝青竜と稲川系がバックにいる川奈とでは金で解決(ヤクザは基本的に立ててあげたら金で動きますので……)せざるをえなかったなどといううさんくさいのまで。またその暴行も車の中に連れてその中で脅しながら時間をかけてのことだそうなので酔った勢いとしてはちょっと厳しい。
また、横審が実質意味がないのはともかく、
「だが、朝青龍が事件の経緯について「私は殴ってません」と否定すると、出席メンバーは一斉に反発した。吉野準監事、外部理事で元東京高検検事長の村山弘義理事(弁護士)らが「解雇にすべきだ」と激しく追及。理事会に「解雇」についての決を求めたが、賛成と反対が同数の6人だった。解雇反対派は「5場所出場停止」「大幅な減俸処分」などを提案したというが、午後1時35分に理事会は再び中断。一度退席した朝青龍は無表情で控室に戻り、再開を待った。

 午後2時30分に理事会は再開したが、今度は解雇を求める声が過半数の7人に増えた。午後2時56分、業を煮やした九重親方らが朝青龍の待機する部屋に出向き「このままなら解雇になるぞ」と迫ると、横綱はついに引退を決断。最後は高砂親方が「引退します」と切り出した。引退しなければ解雇。解雇となれば1億円を超える退職金も手にできなくなる。形の上では引退でも、その実は、限りなく解雇に近いものだった。」
http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2010/02/05/01.html
というような状況ですし、日本は空気がのようなわかりやすい単純な話はよくいわれますが(これに限らず)どうも無理がありますね。空気って世界中にありますし。

No title

あたたたさん:

うーん、書いてみてから更に調べてみて少し後悔したのですが、今回の引退劇はかなり複雑なようですね。しかし、暴力事件の事情が複雑であるなら尚更、処分の過程がおかしいと思いますし、バランスを欠いていると思います。私は黒田勇関西大副学長(スポーツ社会学)の以下の談話に共感します。

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男性に暴行したとされるが、示談で済んでいるので謝罪して出直すのが普通であり、引退は残念だ。相撲界の伝統や格式を重んじる一部の世論に追い込まれた形で、日本社会の寛容さが狭まっている中での犠牲者だ。彼は日本人の正しい美徳を守らない外国人というレッテルを張られながら、よく頑張った。伝統も時代ごとに変わるもので、ファン全体から見れば引退の必要はなかったのではないか。日本相撲協会も伝統の一点張りではない現代的な力士教育に努めるべきだ。
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>真相究明の前に、「私は殴ってません」と否定すると、出席メンバーは一斉に反発した。

の部分も、その理不尽さに呆れます。真相究明した上で罪の重さに応じた処分をするのが本来の姿でしょう。その間は無期限謹慎にでもしておけば済むはずです。元高裁検事長でも同調圧力に勝てない国が日本なのでしょう。空気は日本にしかありませんよ。空気は重いもので、air は軽いものですから同じではありません。

日本の慣習

>相撲は外国人が日本を理解する上で今後も素晴らしい教材であり続けるだろう。

今回の記事を英訳して、日本に来日する外国人に読ましてあげると
日本の慣習を理解するのに最適です。ただ日本にいかなくなってしまう可能性も
ありますので、注意が必要かと思います。

>空気は日本にしかありませんよ。空気は重いもので、air は軽いものですから同じではありません

日本で生まれて20年以上経ちますが、いまだに空気の重さに慣れることができません。
日本人としての修行がまだまだ足りないようです。

No title

SEさん:

英語で日本についてのブログもそのうち書いてみたいものです。レベルが低いのじゃなくて、面白いやつを、読んでもらえる方法で。まだまだ、いろいろ修行が要りそうですが。

空気を読むというのはコンセンサスなので、ある程度「言いたいこという奴だ」と周りに認識してもらった方が楽な気がします。

品格ってなんだろう?

ここWillyさんのブログですよね?朝青龍の話題が出るとは思いませんでした。(笑)

大相撲は全く興味ないんですが、相撲部屋ビール瓶リンチ殺人事件の頃から相撲業界ってアブナイ世界だなあ、と知りました。(たまたま現場が近所にあって、揉み消しに協力した警察署の前を通るたび警察も怖いな~と思い出します)
横審というのもマンガ家や脚本家が居たりして、どんな基準で選ばれてるのか全く分かりませんね。
そんな全くの部外者である横審から事あるごとに品格、品格と言われて、朝青龍も死ぬ気で一生懸命戦ってるのに、たまったもんじゃないですね。品格ってなんだよ?俺が嫌いなだけだろ!うるさいよ!と思う気持ちも判ります。(まあ暴行事件の加害者であることは間違いないようですんで庇う気はないですけど)

>日本も総資産1000億円以上の企業オーナーを「横綱」と認定し
いつでも逮捕できるという法律を作っておけば

法律は万人に平等であるべきと思いますけど。
税金沢山払った挙句に罰則規定が厳しくなるんじゃやってらないんじゃないですか?(笑)

No title

>真相究明の前に、「私は殴ってません」と否定すると、出席メンバーは一斉に反発した。
いや、この会の前にメンバーが既にほぼ殴ってること(防犯カメラや本人の鼻)の裏付けをしてるんですね。調査ということで。示談や暴行までの流れはどうだったかはともかく暴行事件の存在自体はもう議論の余地はなかったわけです。
私には、時津風を擁護した人と朝青竜を擁護する人ってのは(詳しくニュースを追った人ではどちらも少数ですが)立場が違うだけで結局同じというふうにしか見えないというのが正直な気持ちです。

しかし、朝青竜はともかく「空気が日本にしかない」わけないでしょう……。Willyさんのまわりだけの話でしたら、私のまわり(日本)も(Willyさんのニュアンスの)空気はあまりないし……。

No title

野田一丁目さん:

>法律は万人に平等であるべきと思いますけど。

おっしゃるとおりです。分かってらっしゃるとは思いますが、あくまでネタですので。相撲は昔好きだったので、思いつきで書きました。ブログタイトルともっとも関係ないエントリーですね(笑)。

あたたたさん:

下調べをしているにしても、それを頼りに何の説明も無しに解雇というのはまともな社会ではありえないでしょう。モンゴルの対日感情は既に悪化しているでしょうし、相撲ファンからは抗議電話がかかりまくりと聞きます。文部科学相も詳しい事情を聞きたい、と言ってるわけですし。まあ、朝青龍は実際に殴って過失があるなら処分すればいいと思いますが、それはきちんとしたプロセスを経ないとダメだと思います。

時津風部屋の斉藤さんの事件と今回の事件を同類という主張は論理的には可能だと思うんですが、不可抗力の少年を集団で暴行して(実質的に)殺害・隠蔽を図ったのと、チンピラ相手に暴力事件を起こして示談で解決したのでは、やはりレベルが違うと思うんですよ。悪いんだからどんな処分を下してもOK、というのはおかしい訳で、ちょっと私の感覚からすると違和感があります。

>「空気が日本にしかない」わけないでしょう……。

もちろんそうです。あくまでネタとお考え下さい。物理的な意味でも雰囲気という意味でも、外国にも空気はあります。ただ、日本の空気はちょっと特殊だよね、ということを比喩的に表現しただけです。

No title

相撲の話はよく分かりませんが、補足的に触れられた政府御用学者や外国人への接し方は、本当にそうだなぁ、と感じました。

No title

1ファンさん:

まあ、ネタで書いた記事ですから、そう思って頂ければ十分です。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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