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アメリカの大学の授業料はどこまで上がるのか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカの大学の授業料は過去30年間、もの凄い勢いで上がっている。
US News (日本でいうサンデー毎日みたいなもの)などの週刊誌でも
これは毎年の様に取り上げられる国民的な関心事である。

本日の、アイオワからの報道によると
1982年に1,000ドルを超えたアイオワ大学(U of Iowa)の年間授業料は
2010年度には年間7,417ドルとなる予定だそうだ。
28年間に約7.5倍にもなったことになる。
これはアイオワに限ったことではなく、全米的に見られる傾向だ。

米労働統計省(Bureau of Labor Statistics)によると
この間にアメリカの消費者物価は約2.25倍になっているが、
物価変動を除いた実質で見ても約3.30倍である。

アメリカで子供を育てている身としては、
今後もこんなに凄い勢いで授業料が上がるのかどうかは
大変気になるところだ。
順調に行けば娘が大学に通っているはずの
15年後のアメリカの大学の授業料はどうなっているのだろうか?

私立大学は寄付やその収益が景気と共に大きく変動する上、
奨学金のシステムが複雑で平均的な学費を分析するのが
難しいこともあるので、ここでは州立大学に関して考えよう。

もちろん、アメリカの大学の予算に教育のもの、研究のもの、
その他のものと色々あるが、授業料が関係している一般教育予算
(General Education Fund)は比較的単純で、
収入側は「授業料収入(Tuition and Fees)」と
「州政府からの補助金(State Appropriations)」で9割超を
占めるのが普通だ。
そして、支出側は例えばアイオワ大学の例では、
教員やスタッフの人件費が7割程度、設備費が2割程度、
奨学金などが1割程度を占めている。

上の記事にある過去28年間の間に授業料が高騰した最大の
理由の一つが、この一般教育予算における州政府からの補助金
が減り、授業料の割合が高まったことだ。

以下のグラフは、アイオワ大学の一般教育予算における
授業料収入と州政府からの補助金の割合を示したものだ。
授業料収入の割合は、1981年の20.8%から上がり続け
グラフには含まれていないが直近では54%となっており、
一方で州政府からの補助金は38%になっている(*1)。

(*1)アイオワ州は、全米で11州しかないS&Pによる信用格付けがAAAの州の
一つであることからも分かるように財政状態は悪くない。従って、
こうした補助金の割合が特に低い、あるいは、下がっている州ではないようだ。
例えば、オレゴン大学ではこの割合は5年前の時点で既に30%を切っている。


StateAppropriation.jpg

つまり一般教育予算が実質ベースで変化していないとしても、
授業料は約2.60倍になったと考えられる。
実際に上がった3.30倍と2.60倍の比である1.27倍が、
28年の間に大学の一般教育予算が拡大した倍率だとみなすことができる。
従って年率で見ると、年0.9%の割合で大学の教育費用は
一般物価の上昇よりも早く増大していることになる。


それでは、州政府からの補助金は今後どうなるであろうか?
アメリカは日本と異なり、州の財政には国の保証がついていない。
そのため、州政府は財政を均衡させる必要性が非常に高く、
今後も高等教育を受けるような社会的に恵まれた層に対する
補助金を増やすのは政治的に難しいだろう。
これを定量的に予測するのは難しいが、
例えばミシガン州では近年名目で見た補助金の額がほぼ横ばい
となっているようなので、これを前提に試算してみよう。
名目で補助金が横ばいだと、
近年(最近8年間)の物価上昇率が年2.5%、
一般教育予算の実質伸び率が年0.9%と仮定した場合、
この補助金の割合は年率3.4%程度の割合で減少することになる。
すると 現在38%を占める補助金は、
15年後には23%程度にまで低下すると予想される。
これが全て学費に転嫁されるとすると
学費が一般教育予算に占める割合は15%上昇して69%となる。

すると実質ベースで見た15年後の学費は
この上昇分と年率0.9%の実質伸び率を加えて、

(69%/54%) × 1.009^15 = 1.46

となり現在と比べ1.46倍となることが分かる。
つまり2010年度に年間7,417ドルのアイオワ大学の学費は
15年後には現在の通貨価値に直して約10,900ドル、
年2.5%のインフレ率を仮定するなら15,700ドル程度になる。

もちろん、この試算はあくまで他の諸条件を一定とした場合のもの
であって実際には学費の上昇は、大学入学者の需給や
大学教育による賃金上昇の程度といった点に大きく依存するだろう。
また、短期・中期的には連邦政府がどの程度の補助金や奨学金を
提供するかといった点にもかなり依存する。

しかし、そうした点を考慮したとしても、
・今後も大学の学費の一般物価に対する相対的な上昇は続くこと
・ただしそのペースは伸び率で見れば長期的にはかなり緩やかになること

は比較的確度が高いことではないかと思う。


ブログ内の関連記事:
米国の有名私立大学の学費に大きな変化
弱小大学の方がお得なアメリカ
アメリカの学校情報 (高校以下)

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テーマ : 教育問題について考える
ジャンル : 学校・教育

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No title

はじめまして。私もアメリカで学部留学しております。
Tuitionが安いという理由だけで、Deep Southに来てしまい、
なかなか宗教文化的になじめない生活をおくっております。

私の大学は州内学費が6500ドル程度で、同レベルの大学と
比べたらかなり安いのですが、やはり年々授業料は上がっていきます。
私は奨学金で州外学費分は免除してもらっているのでなんとか助かっていますが。

アメリカでは、日本のように親が学費を出すのがある程度当たり前みたいな風潮はなく、
ローンを組んだり働いたり自己責任で遣り繰りするという意識が顕著で、
私のように親のすねをかじっているのが恥ずかしくなりました。

しかしやはり学生が卒業時に巨額の借金を抱え込むのは、現在のような不況時であれば特に、一種の社会問題だと思われます。
Huffington Postでも記事が紹介されていました。http://www.huffingtonpost.com/2010/02/22/college-debt_n_471023.html

これはもはやEducation Bubbleとでも言うべきで、Higher Educationにそもそも年間何万ドルも払う価値があるのかという問題だと思います。Engineeringなどの手に職がつく専攻の人たちを除けば、機会損失を含めると明らかに投資額を回収できない人がいっぱいいるはずです。

それはもはや明らかなのに、大学レベルの教育を受けないと良い職に就いて高い給料が得られないという社会的ジレンマのせいで、投資のリスクを考慮せずむやみに大学に進学する人たちがいっぱいいると思われます。その弱みを利用して生徒に高利でお金を貸し付ける金融機関はやはりずるいですね。

私が思うに、ほとんどの企業においては経営層を除いて大学で学ぶようなCritical Thinking能力は求められておらず、実務的な知識はわざわざ大学でお金をかけて学ばなくても仕事をしながら学んでいけることがほとんどだと思われます。
企業側がそういった意識を持って、学歴に関わらず積極的な雇用をしていかなければ、こうした風潮はなくならないのかなと思います。

長文失礼しました。



No title

学生の自己負担が増えた分奨学金の方の総量は上がっているのかが気になります。KKさんが仰る通り、僕も周りの学生達がみんな働きながら大学に通っているのが気になっていました。親のすねかじりで学部時代を過ごせた自分はすごく恵まれている層の人間なのだな、とその時は実感しましたね。まあ、働きながらでないとなかなか学業を治めることもできないことが効率的なのかはわかりませんけど・・・。

学費

KKさん:

はじめまして。おっしゃる通りでアメリカは企業が学歴にお金を払うという傾向が顕著です。ただ、これは企業だけの問題ではなく、政治的な圧力もあるようですね。以前、ある会社が博士卒を修士卒と同じ給料で雇ったところ訴えられて負けたという話を聞いたことがあります。

教育ローンは、政府からも金融機関に補助金が出ており、非常においしい商売のようです。本来はもっと学費が安ければ良いのですが、比較的恵まれた大学に進学する層に税金を投入するというのは、今のアメリカでは難しそうです。

学費を親が払うか、子が払うかというのは文化の違いが大きいですからKKさんのせいではないでしょう。学部で留学する経済力と学力がある日本人は少ないですから、チャンスを活かして下さい。

学費の価格差別

>学生の自己負担が増えた分奨学金の方の総量は上がっているのかが気になります。

いわゆる価格差別というやつですね。お金がある人はたくさん学費を払ってより良い大学に行き、貧乏な人は少しレベルの落ちる大学に学費を免除してもらって行く、というのは、程度問題もありますが、悪くないような気もしています。

大学のスクリーニング機能は少し落ちてしまいますが、学部の成績が比較的重要なアメリカでは、その辺りはある程度うまくコントロールできていそうです。

はいあがれない

<「大搾取!」*より引用> 第11章 はいあがれない=starting out means a steeper clime

QTE 4年制公立大学の授業料その他の納付金は、2002-3年度から2007-8年度までに40%も値上がりしている。インフレを計算に入れても、どの5年間より大きい値上がり率となっている。
注:下記資料のP.11参照。
*例のYSさんのブログで年金記事において、私のコメントでURLなどを紹介してある。

http://www.collegeboard.com/prod_downloads/about/news_info/trends/trends_pricing_07.pdf

若者はまた、ここ15年にわたる住宅費の高騰によっても、厳しい状況に置かれていると。
http://www.usatoday.com/money/perfi/credit/2006-11-19-young-and-in-debt-cover_x.htm

なお、日本でも、高校、大学を通じて奨学金を貰うと、約400万円の負債となるので、無償化が選挙の政策マターとなった。

授業料

snowbeeさん:

リンクありがとうございます。過去数十年の授業料の高騰に関しての記事はたくさんあるのですが、将来に対するまともな予測と言うのは英語でも見たことがなかったので今回自分で試算した次第です。こういうオリジナリティの高いエントリーに注目が集まると嬉しかったのですが、やや期待外れでした(笑)。ブログは難しい。。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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