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教養をいつ学ぶべきか -- このエントリーを含むはてなブックマーク

職業の専門化・高度化が進む一方で、
情報の入手が極めて容易になった現代においては
教養を学ぶ意味をもう一度見直すべきなのではないか、
とつくづく思う。

教養について包括的に議論し尽くすことは難しいが、
私がよく考えるのは教養をいつ頃に学ぶのがベストかということだ。
時間が無限にあればいつ学んでも良いが、
実際には他の技能の習得との兼ね合いでスケジュールを決めなければならない。
特に、言語や定量的な思考の訓練は特定の時期に必要なものだと考えられるので、
それとの兼ね合いで制約はかなりタイトなものになるだろう。

そこで教養を学ぶ時期を考えるために
教養以外のことをいつ頃学ぶべきかを考えてみよう。

人が初めに学ぶのが母国語であることに異論は少ないであろう。
恐らく2~10歳頃までに母国語を集中的に学ぶ必要がある。
もちろんボキャブラリーの数といった付加的な部分は、
20歳くらいまでは継続的な努力が必要だろう。

もし、外国語を学ぶ必要があるならば、
習得に関して重要な時期は4~15歳くらいだろう。
音の認識に関しては1歳の段階でもネイティブとは差が
つくという研究結果もあるし、
19歳前後までなら比較的ネイティブに近いレベルまで
達することができると言う研究者もいるが、
母国語より後で比較的早い時期に習得するのが望ましい
というのはコンセンサスになっている。

数学は15~20歳前後の最も思考スピードが速い時期に
学ぶのが大切だと思っている。この時期に数学を真面目にやった
人とやっていない人では決定的な差があると感じる。
語学に例えるなら、ネイティブと
流暢なノンネイティブくらいの違いがある。

もし、体系的な科学を学ぶ必要があるならば、
習得に関して重要な時期は18~25歳くらいだろう。
分野によっても千差万別だが、理論的な体系を学ぶのであれば
数学より後で比較的若い時期に習得するのが望ましいのではないだろうか。

それでは、教養をいつ学ぶのが望ましいだろうか?

教養には、
比較的単純な知識と哲学のような抽象化された思考の二つの側面がある。
順序としては、第一に莫大な単純な知識を蓄積する過程が必須であり、
第二に、知能が十分に発達した時に、そうした知識を
より包括的な枠組みの中で位置づけたり関連付けたりするために
抽象化された思考としての教養を学ぶことができるようになる。
第一段階の知識の蓄積は年齢によらずほぼいつでも行える一方、
第二段階の位置付けや関連付け、抽象的な思考は年齢が高いほど
得意になっていくという面が強い。

第一段階は15歳までに学ぶのが望ましいと思う。
それは、高度な数学や科学を学ぶのに十分に知能が発達していない一方、
単純な知識の蓄積と言語能力の発達に相乗効果が見込まれる
と考えられるからだ。同時に単純な知識の定着に関しては、
10歳前後の子供の方がむしろ優れているというメリットもある。

第二段階は数学や科学について学んだ後で学ぶのが望ましいと思う。
それは、例えば社会に出て働き始めた後でも良いだろう。
一つの理由は、より多くの分野での知識や経験が、
知識を帰納的に判断して一般化する上で大きなアドバンテージになると
考えられるからであり、
もう一つの理由は、数学や科学といった体系的なものを学ぶ期間は
よりリソースを集中させた方が望ましいということである。

私は上記のような理由から、
現在の高校や大学の教養教育は過度であると思っている。
もちろん、学ぶスケジュールは個人のキャパシティや趣向に
大きく依存しているので、全ての人にとって過度とは言えないかも知れない。

ところで、私が、教養のある人を羨ましく思うのは、
あまりある才能と恵まれた環境によって
職業的な専門能力と教養を同時に身につけている人を見た時だ。
その意味で教養とは、全ての人に重要なものというよりは
圧倒的な能力を見せつけるバロメーターとしての役割を
果たしているようにも思える。


ブログ内の関連記事:
大学って教養のためにあるの?(その1-高齢層編)
大学って教養のためにあるの?(その2-若者編)
双方向イマージョン教育とは

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テーマ : 教育
ジャンル : 学校・教育

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結果として

Willyさんの勧めるような順番で勉強した気がします。単なる知識のインプットはそれこそ中学受験で行い、大学入るまでは理数系を勉強、大学入ってから哲学思想をやったように思います。

経済学より先に英語と数学を

やはり現在中1の自分は英語をやった方がいいんですね…。
経済学に興味があり勉強中なのですが、英語・数学にもリソースをつぎ込みたいと思います。
結果的にTwitterの時間が削られてしまうわけですがw

No title

Rionさん:

上の順序は、外国語を除き自分の経験に基づくものでもあるのですが、やっぱりこの順がベストだと、今のところ思っています。

GkEcさん:

経済学は、詳しくないのであまり自信を持って言えないのですが、体系的にやるのは大学生くらいなってからで十分ではないでしょうか。経済の博士を取る人の中には、学部が理系だった人と学部から経済だった人がいますが、「経済学の掟に対する感覚」みたいな部分では後者にアドバンテージがある気がします。しかし理系でも難なく経済学に溶け込める人もいるので、そのあたりは何とも言えません。

No title

今はいろいろなものに触れる時期だと思うので、経済学や数学や英語だけでなく…、ってWillyさんによる「知識吸収期」は終わってる気もしますが。
勉強頑張ります。

An outlier

GkEcさん:

Tumblogを拝見しました。中学1年生が私のブログを見てくれているというのも衝撃でしたが、
拝見したブログも中学1年生が書いたとは思えませんでした。そういう方は統計学で言うところの outlier であると思いますので確かに一般的なガイドラインは参考にならないかも知れません。

教養と中学性

Willyさんが教養のある人だと思う人の定義を教えていただけますでしょうか?
知識がある人というのは、教授、博士といった具体的な定義があるので
理解できるのですが、教養のある人の定義が理解できておりません。

中学性がWillyさんのブログを見ているので、恋愛関係の記事は18歳以上
推奨にした方がよいかもしれません。経済的には合理的でも、恋愛の面白さが
なくなってしまう可能性があるかもしれません。

No title

僕は残念ながらあまり知的な方面の好奇心が旺盛になる環境では育ってこなかったし英才教育も受けなかったので、もっと早い時期に広範におよぶ知識とか社会のことなんかに対する露出がもっとあれば、まったく違った人生を歩んでいたのだろうなと思います。ガキのころはネットもなかったですしね。この歳になっても新しいことを知る度になんでこんなおもしろいことを俺は知らなかったんだ、と口惜しい思いをしています。

ただ子供は「第二段階」を自らできないからこそ、詰め込み教育の時点で競争にさらされると、そこで勉強に嫌気がさしてしまう悪影響はないでしょうか。中学受験とか通信簿だとか自然に出来る子ならいいですけど、出来ない子に挫折感とか勉強に対する反感が残るのはどうも、というか。

僕は納得できるモーチベーションがないとほとんどなにもしない子供でしたからね。子供がそれでは、たかが知れてます。例えば数学的なものの社会での有用さを早い次期から知っていたら、もっとしっかり数学を勉強していたと思う、ということですね。「第二段階」を知っている先生と「第二段階」でとどまった先生が行う教育では質が違うわけで・・・。

いや長文ごめんなさい。

教養

元SEさん:
> 教養のある人の定義

確かに難しいですね。第一段階の教養は、質の高い文化に対する造詣ということでしょうか。世の中の知識階層の一定以上が持っている、音楽、芸術、文学、歴史、政治など広範な分野にわたる知識だと考えています。それ自体に価値があるというよりは、知識階層の社交に関する手段であると共に、お互いのスクリーニングのための手段としても使われているという風に私は感じています。

第二段階についてですが、世の中にあるものというのは最初は生活上の身近なところから始まるのであらゆるものが結びついていますよね。それが徐々に細分化していくわけですが、更に進むとまた一つに統合していく。その統合していく様子を学ぶのが第二段階だと思っています。例えば、経済学の入門コースを取るのに数学は必要ないけど、ミクロ経済学の難しいところなんかはほとんど数学だったりする部分もあるようです。社会科だって、高校の時はバラバラに学びますけど、日本史も世界史も地理も経済も政治も、全て日本現社会とそれを取り巻く環境をいろいろな側面から見ただけですよね。

単なる私のイメージですが、知識の全体を球面と捉えると、我々の知識の習得は南極で始まり、北極を目指して進んで行く。赤道のあたりが一番専門細分化が進んだところで、その辺が面積が一番広いし、そこで一番長い時間を過ごすことになる。しかし世の中全体を見渡すためにはそのあたりをちょっと抜けて北極に近いところまで行ってみる必要がある。両極に比較的近い部分が、いずれも教養なのかなあ、と私は思います。

教育

>「第二段階」を知っている先生と
>「第二段階」でとどまった先生が行う教育では質が違うわけで・・・。

これは難しい問題ですねえ。
教育の底上げってマクロのレベルではコスト的に非常に難しいと思います。
初等・中等教育レベルの先生のレベルを全体的に上げるっていうのは
ほぼ不可能なので何とか別の方法でカバーしないといけない。

例えば、数学なんかはゆとり教育なんかでカリキュラムが減った90年代半ば以降に
数学者が危機感を持って良い啓蒙書を随分書きました。
あとは、もっとvividな経験という意味では中学・高校生向けの
講演会みたいなものはもっと増えるべきだと感じます。

全般的に日本の中等教育は受験対策に傾倒しているために、
それ以外の部分に十分な努力が注がれていないですね。

No title

それほしいです! >中学・高校生向けの講演会
あと、 Twitterで@kovayanさんが提唱していたような「学校の勉強の20%は自分の好きなことを勉強する」というのがあったらいいな、と思ったりします。
学校にはもっと勉強の面白さというのを伝えて欲しいと思っています。

逮捕

>中学・高校生向けの講演会

そういえば高3の時、ピーター・フランクルという当時売れっ子の芸人 兼 数学者の公開講演会があるというんで、学校をさぼって友達と行きました。その後、その足で同じ友達と徹夜で鈍行で名古屋まで行って、翌日は名古屋大の高校生向けのとある催しに参加。楽しかったなあ。学校を正式にサボったのは3年間でその時だけでしたが、親にどんな言い訳したのか覚えてません。あと、体育祭の代休とか平日に休みの時がありますよね?中一じゃ早いですけど、高校生くらいになったら大学の授業に潜ってみると楽しいですよ。私がやったときは、数学の授業に潜ってみたらいきなり試験が始まって困りましたが、難しい試験だったみたいでみんなあまり書いてなかったのでばれませんでした(笑)。まあ、ばれても逮捕とかはないと思うし。あ、逆はダメですよ。大学生が、女子高に忍び込んだら逮捕されます。

今の身長だとすぐバレますw

大学の授業に忍び込む、ですか。いいですね。
ただ、150cmの人間が行ったら絶対怪しまれますねw
高校生になってから検討します。

No title

アメリカの大学では専攻や副専攻を複数持って卒業証書・履歴書にも書けますよね。日本では色んな分野の授業を取れても、形としては残りませんね。形に残ると、就職や大学院アプライの際に他と差を付けれるかと想像します。確信はありませんが。。。上手く行けば3~5年で卒業も可能ですし。将来に結び付けたい学問分野が複数あって決めかねてる学生には、教養も含めて、アメリカの大学の長所ではないかと思います。

日米

1ファンさん:

日本だと、授業ではなくて自分で興味のあることを進んで勉強しなさいという雰囲気ですね。私はそういう方が好きですが。ただ、日本でも取りたい科目があれば必要でなくても取ることはできますよね?私の学部は卒業に必要な単位が140くらいだったと思いますが、一年間に100単位くらい登録している人もいました。

反面、アメリカは良かれ悪かれなんでも授業できちんと習うという文化のようです。

教養

教養とは、全ての人に重要なものというよりは圧倒的な能力を見せつけるバロメーターとしての役割を果たしている。
この言葉はいいですね。私が長年思い出したときや関係する出来事にであったときにぽそぽそと考えて来た結果を見事に表しています。オックスブリッジ出身のイギリス人やイェールスタンフォードMBAを持つアメリカ人たちと仕事をして、だんだんと気がつきました。私はBAは全くのリベラルアーツでお恥ずかしいにもかかわらず、彼らはとても敬意を払ってくれたからです。さらに私にもビジネススクールをすすめてくれました。最近こどもをアメリカのプレップスクールに入れたので、さらにアメリカ人の「パワー」という考え方が実感としてわかるようになりました。子供は大学ではやく専門的なことを学びたいようですが、日本よりも教養を重んじるアメリカでは偏らないことが大事なようです。子供にアドバイスしていかなくてはと思っています。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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