経営のできないオタクをどう活かすか -- このエントリーを含むはてなブックマーク

私は、起業を促進する社会の仕組みという意味では、雇用流動化、金融インフラの整備、規制緩和の3点が肝だと思っている。別の詳細な分析は、Lilacさんの記事「日本や欧州にシリコンバレーが出来ない理由とその対策」などで取り上げられているが、こうした問題はどれも一朝一夕に解決できるようなことではない。特に雇用流動化は政治的なフィージビリティを考慮すると、少なくとも数十年を要する可能性が高いと私は思う。もっと簡単にできて効果的な施策はないだろうか。

私が考えるのは以下の3点だ。

1. 経営のできないオタクと経営の出来る一般人を交流させる

オタクが会社を始めないのは、規制の複雑さ、事業の見極め能力の不足、保守的な価値判断などのせいだろう。そうであれば、経済的な洞察力に優れた血気盛んな企業家と交流させれば良いのではないか。こうした交流に大してお金はかからない。例えばオウム真理教は教団の頭脳をスカウトするために、駒場のアパートに匿名のアジトを作りスナックや飲み物を無料で提供して東大生を勧誘したが、その経費は微々たるものだっただろう(これは実際に入り浸った友人に聞いた話だ)。今後インターネット関連の起業が必要なことはほぼ間違いないから、通産省なりNPOはオウムを見習って、有名大学の電子工学科や情報学科あたりを決め打ちして、毎週金曜日に寿司パーティでもやって企業家と学生を交流させれば良い。主観的で不公平な方法だが、特定産業に補助金を出して産業振興を図るよりはよっぽどマシだろう。また、新しい産業の育成には複数分野の融合が大事なので、同様の方法で、そうした分野間の交流会を積極的に開くことも大事だろう。

2. 自治体が場所と事務員を提供する

起業する際にネックとなるのは、高い家賃と人件費だ。商業用賃貸物件の保証金は非常に高いし、人を雇うのにも相当なコストとノウハウが必要だ。今や日本中で設備も雇用も過剰なのだから、政府が借り上げてスタートアップ企業に対して遊休設備を貸したり、ある程度スケールメリットを活かせる形で複数のスタートアップ企業が共同で使える事務員を提供すれば良いのではないか。制度を悪用する企業は出てくるだろうが、補助金の不正受給のリスクに比べればよっぽどマシに思えるし、摘発も容易なように思われる。

3.コンサルタントを提供する

会社設立が容易になったと言っても、設立にはかなりの手間がかかるし、税理士や公認会計士を雇う必要に迫られることも多い。新しい企業がそうした専門的なアドバイスを安価で受けられるよう、国が資源を投入すべきだ。会計や法律関係のビジネスを官業が圧迫することになるが、もともと会計も法律も他の産業の付加価値に依存して成り立つ商売なので、そんなもののために新規産業が妨げられるのは本末転倒だろう。

コンセプトとして大事なことは、オタクは社会の財産だと認識することであり、蔑むのではなく温かく可能性を見守ることだ。例えばあなたがケータイをこよなく愛す女性だとしたら、パソオタと付き合ってあげれば彼は将来画期的な携帯用恋愛コミュニケーションツールを開発してくれるかも知れない。彼が少しキモかったとしても、Facebook の Zuckerberg並の金持ちになってくれれば、きっとあなたは満足だろう。

ブログ内の関連記事:
― 日本に足りないのは経営のできるオタク

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テーマ : 政治・経済・時事問題
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意見

オタクを尊重するべし、とする主張には全面的に賛成です。詰まるところ、世界を変えるのはオタク以外にはあり得ないので。

僭越ながら補足させていただくなら、2点あります。一つは、起業経験のあるエンジニアを政府機関で優先的に雇用するなど、セーフティーネットの拡充を行うことです。上記の政策は国家として起業を奨励するメッセージにもなり、一石二鳥かと思われます。

もう一点は、オタクをトップに据えること、あるいは「技術のわからない経営者をトップに据えないこと」です。GoogleもFacebookも、技術の素人は経営の指揮をとってはいません。

No title

>起業経験のあるエンジニアを政府機関で優先的に雇用する

これはちょっとイメージが湧きません。どういう仕事をさせるのでしょうか。

>技術のわからない経営者をトップに据えないこと

日本には複雑な組織を経営出来る人材がそもそもほとんどいないですよね。その結果、上手くいってるのは自動車メーカーとかカメラメーカーのように、特定の物だけを作っている会社だけのような気がします。つまり、「技術が分からなくて経営もできない人」と「技術は分かるが経営も出来ない人」がほとんどのような…。その辺をなんとかしなくてはならないではないのかと思います(どうしたらいいのか私には分かりませんけども)。
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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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