アメリカの中古不動産の売買形式 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカでは中古住宅市場のプレゼンスは日本よりもずっと大きい。
アメリカの新築住宅販売戸数が住宅バブル崩壊後の今では年間わずか
40万件ほどのペースであるのに対し、
中古住宅は年間500万件を超えるペースで売れている。
つまり家を買う人の9割以上は中古住宅を買っていることになる。

日本には中古住宅販売戸数に関する代表的な統計がないので、
残念ながらうまい比較はできないが、
日本の人口が減少しており人口規模もアメリカの4割しかないにもかかわらず、
日本の新設住宅着工戸数が約80万件もあることからも
アメリカでは新築住宅のプレゼンスが低いことが分かる。

アメリカで市場に出ている中古住宅のうち通常個人が購入するものには3種類ある。

1. Private-Owned

最もオーソドックスな、現在のオーナー兼居住者が買い手に売却する形式。
通常、売り手側および買い手側のエージェントを介して価格を交渉して売買する。
売り手が手数料を節約するためにエージェントを介さずに売却する場合もある。
これを、FSBO (For Sale By Owner) という。

2. Bank-Owned/Real Estate Owned (Foreclosure)

住宅の前オーナーがローンを払えなくなったため銀行が差し押さえた物件。
銀行が買い手に売却する。売り手が違うだけで、基本的にはPrivate-Ownedに似ている。
ただし差し押さえられた前オーナーが、不動産の一部である配管や家電製品を
売ってしまったり、腹いせに壁を壊したりして状態が悪いことも多い。
(ただしこれは違法である)。

3. Short Sale

住宅の所有者がローンを抱えており、ローンの残額以下で売却する形式。
通常、売却額でローンを返しきれない部分は返済が免除されるため、
住宅ローンの貸し手の承認が必要となる。

この3つの形式の他に
銀行が差し押さえをする前にpublic auction というステップがあるため、
そこで購入することもできるが、この方法では
物件の状態を見ることが出来ないこと、cashで支払う必要があることなどから、
投資家以外の購入者にとってはあまり一般的な方法となっていないようだ。

Private-Owned と Foreclosure の方式の売買は、比較的スムーズで
1ヶ月程度で引渡しが完了するとのことだが、Short Sale の形式は
債権者(銀行)の処理に時間がかかり、平均で4~6ヶ月、最長で
2年くらいかかることもあるという。


私は家を探しているところなのだが、
今度オファーを出そうと思っている物件は運悪く、
short sale になっている。

現在の売却希望価格(listing price)は10万ドル(*1)だが、
現在のオーナーは2004年に15万8千ドルでこの物件を購入しており、
ローンがまだ14万2千ドル残っている。
第一抵当権(senior lien)はA銀行が持っており
ローン残高は12万8千ドル、
第二抵当権(junior lien)はB銀行が持っており
ローン残高は1万4千ドルだという。

この場合、売却価格が10万ドルではB銀行は一銭も受け取れないので
short sale に合意するインセンティブがほとんどない。
B銀行が全額損金処理することを決心するか、
A銀行がB銀行に売却代金の一部を渡して納得させるか、
のどちらかでなければ決まらない。
つまり、売買が成立する可能性は非常に低いということだ。

なかなかうまくいかないなあ、とぼやきつつ、
6年で1万6千ドルしか返していない借り手ってなんなんだろう、
と思ってしまう今日この頃である。

(*1) 匿名性維持のため、物件価格を10万ドルに規準化して
他の数字を算出した。
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テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

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No title

なかなかうまくいかないなあ、とぼやきつつ、
6年で1万6千ドルしか返していない借り手ってなんなんだろう、
と思ってしまう今日この頃である。

(*1) 匿名性維持のため、物件価格を10万ドルに規準化して
他の数字を算出した。

……。

No title

匿名さん:

多少数字はいじったものの、いずれにしても10万ドル前後なので
ストーリーに影響はありません。

No title

うわぁ、安い。
そりゃ予想外だった。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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