米国の年金は経済問題、日本の年金は政治問題 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本では高齢化に伴う年金問題は十年以上から話題だが、
これは日本だけの問題ではないし、高齢化だけが問題でもない。
世界各国で似たような問題が噴出しているし、
人口が安定的に増えているアメリカでさえも、
2037年には年金基金(social security)の積立金が枯渇する
(NY Timesの記事)という。
いかにアメリカ政府の制度設計が無茶苦茶であったかが分かる。

日本はどうなってたっけ?というと、
厚生労働省が真面目に試算していないので
年金がいつ破綻するかは公式には分からない。
例えば2009年2月の彼らの試算によれば、
超高齢化が進んだ2060年頃には、
日本は厚生年金の収入規模・支出規模が共に現在の
3倍以上の「年金大国」になる。
積立金は現在より400兆円以上も増えて560兆円超となるそうだ。
つまり、例えば団塊ジュニア世代の年金問題とかは全くの杞憂で
むしろ積立金が多すぎて困っちゃうくらいの状況になるという。

要するに、年金問題というのは
「各国政府が仕掛けた人類史上最大の詐欺」
というのが実体で、極論すれば高齢化は枝葉末節の問題なのだ。

21世紀は、この詐欺の後始末をしなければならないのだが、
その解決策は国によって結構異なるかもしれない。
それを端的に表現すれば
米国の年金は経済問題、日本の年金は政治問題
ということになる。

すなわち、英語圏にあるアメリカは、
常に他の英語圏の国々と労働者を奪い合っており、
労働者に魅力的な条件を提示し続けなければならない。
これは極めて重要な経済問題で、
高齢者たちがちょっとごねたくらいで
政治的に何とかなる問題ではない。
経済を回すためには否応なく、
低福祉・低負担の制度に切り替えざるを得なくなる。

一方で、唯一の日本語圏である日本では、
社会保障の再分配問題はアメリカほど喫緊の課題とは
ならないと思われる。
同時に、これからの日本はますます高齢化が進むので
高齢者の権利を縮小するのは政治的にはますます困難となるだろう。
こうした状況下では、
過半数の国民が納得できるマイルドな制度改正を積み重ねていく
という政治的に非常に舵取りの難しい状況が
何十年にもわたって続くのではないかと思う。
結果としては、現実的な改正を加えつつも
徐々に高福祉・高負担の国になっていくと私は予想する。
もちろん、日本だけが特殊な状況であるわけではない。
例えば、イタリアなどは、高齢化の進展度合いや
言語圏の狭さという点で日本と似た状況にあるだろう。


現在の社会保障制度は日本もアメリカも似たようなものだ。
しかし、今後の後処理の仕方は必ずしも同じにはならなそうである。

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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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No title

>「各国政府が仕掛けた人類史上最大の詐欺」
確かに!と思います。。。

しかしながら、日本の有権者の年齢層がますます上がっていく中で、将来を見据えた政策を推進できるのか大いに疑問です。。。

現在、僕はスペインに住んでおりますが、この国は非常に恵まれていると思います。
スペイン人の教授は平気で「我々にはSex factoryがある!」と旧植民地のことを言っています。
事実スペインにおける移民政策は機能しているように思います。
同時に、ブルーカラーだけではなく、南米の有能な層も巧みに取り込んでいるようです。
たとえば、Telefonicaのようなスペインから南米に展開したスペイン語圏多国籍企業のトップマネジメントが南米人であるケースも多々あります。

日本は、、、国としての運営モデルのどのように変遷させるかイメージしにくいですね。

No title

日本の年金制度を維持するためには保険料を上げ、国庫負担割合を増やし、
給付水準を下げる必要があります。
資料によれば、10年後に厚生年金保険料を15.704%→18.30%、
国民年金保険料を14700円→16900円、国庫負担割合を36%→50%、
給付水準(所得代替率)を62.3%→50.1%(現役世代の半分)に
しなければ年金制度は維持できないようです。

昔の日本は低負担高福祉でしたが、今は中負担高福祉。
これからは
1. 超高負担高福祉(重税国家路線)
2. 高負担中福祉(中道路線、資料どおり)
3. 中負担低福祉(経済成長路線)
の中から一つを選ぶことになります。

ちなみに、これは日本が財政破綻しないという前提です。
財政危機になれば国債の暴落で年金制度は民間のものも含めて
あっという間に破綻するでしょう。

No title

daisukeさん:
>日本は、、、国としての運営モデルをどのように変遷させるか

やはり、50%以上の人が賛成できる漸近的な改正を繰り返していくしかないのでは
と思います。

>資料によれば、

いやいや、ここは発言小町じゃないですから、厚労省のネタにマジレスしなくてもいいですよ。賃金上昇率や運用利回りの前提に無理があるでしょう。あれは100年後に積立金がプラスになるように、賃金上昇率と運用利回りを逆算しただけだって分かりますよね。定性的には「中負担高福祉から高負担中福祉へ」っていうのは路線としてはそうなりそうですね。

各国政府が仕掛けた人類史上最大の詐欺

Willyさん
「各国政府が仕掛けた人類史上最大の詐欺」には激しく同意。

但し、アメリカが経済問題とする説明は理解出来ず。英語圏からので、グローバルに競争に曝されているので、年金のレベルが高くなっておらずリカバリー可能という意味でしょうか?もう少し説明していただければ助かります。

日本の年金は遠からず破綻、アメリカはやや縮小するものの継続と予想してます。財政の健全化が出来る可能性とイコールです(当たり前ですけど)

No title

YSJournalさん:

アメリカでは、労働環境を英語圏の他国対比でcompetitive な水準に保たなければいけないので政治的な選択は無いだろうということです。それが良いことなのかどうかは分かりません。

日米社会保障協定

私、今、45歳なので、現行の年金制度が奇跡的に持続されたとしても支給開始は2030年。もう諦めてますよ。(笑)
Willyさんは米国の年金貰う資格が有るんですか?老後のことを考えると破綻しそうにない年金制度のある国で働く方がいいかも知れませんね。(笑)

No title

野田一丁目さん:

アメリカの年金が破綻しないかどうかは微妙だと思いますね。確かに、人口構造が割と安定しているという意味では日本よりマシかもしれませんが。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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