米国政府は州政府の債務保証をすべき -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日から日本に滞在していてあまりニュースを見ていなかったが、
久々に新聞を見たらヨーロッパ経済が一層混乱しているようだ。

目下、問題になっているのはハンガリーの財政問題だが、
ギリシャの財政・通貨の問題が引き金になっていることに
異論はないだろう。

流れを整理してみると、
はじめにギリシャで財政不安が起こった。
これは基本的には通貨の問題である。

すなわち、独仏などユーロ参加主要国が
近年、年率1%半ばのインフレ率で推移しているのに対し、
ギリシャのインフレ率は3%台半ばと高い。
ユーロ圏内では通貨価値による為替レートの調整が出来ないため
これがギリシャの国際競争力を低下させ、
国内の景気に対する下押し圧力となった。
ユーロ加盟国は金融政策による単独での景気刺激が不可能であることから、
ギリシャは税収が低下すると共に拡張的な財政政策を取らざるを得なくなり、
財政不安に陥った。

次に、ギリシャの財政不安により、
ギリシャに多額の投資をしていた欧州の民間金融機関、
特にフランスなどの金融機関の経営状態が悪化し、
リスク資産を圧縮する動きが出た。

その結果、相対的に脆弱でユーロ圏との結びつきが強い
ハンガリーの通貨と国債が売られた
ハンガリーは為替と金融政策という二つの面でギリシャと全く異なるのだが、
クレジットを通じて局地的な危機が
全てのものに伝播するのは近年の特徴
であり、
これは、90年代末のアジア危機やブラジルの
通貨危機とも非常に似ている。

今回の問題の興味深いところは、
最初のきっかけが通貨の制度上の問題でありながら、
結果として幅広い信用収縮の問題となりつつある点だろう。

これは、米国の財政の仕組みにも示唆を与える。
米国では各州が独立した地方財政を持っており、
債務の返済も各州の財政運営に任される。
その結果、いずれかの州でギリシャのように大きな債務危機
が発生する可能性もある。それが金融機関の巨額な損失となれば、
信用収縮を招く恐れが強い。

確かに、その場合でも州政府に大量に出資している米銀は
米ドルを基準にリスクを計量しているから
米ドル建ての安全資産である米国債を売却したりはしないだろう。
むしろ、南米諸国の債権とか国内の信用力の
低い企業向けの貸出を圧縮する。
その結果、かつての中南米危機や
国内の急速な信用収縮に悩まされる可能性が高い。

こうして考えていくと、
ヨーロッパの債務危機を教訓として
米国政府は何らかの形で地方債務に債務保証を
つけるスキームを作ったほうが良いと思われる。

また、早晩、市場がそうした制度を催促する可能性も高い。

もちろん、州の財政規律を確保することは大事だが、
金融危機は小さなきっかけで起こって大きな破壊的な結果を産む。
エコノミストはファンダメンタルズに注目するあまり、
重大な変化がどのようなきっかけで起こりうるのかを見逃しがちだ。

確かにその経路を正確に予測するのは非常に難しいが、
重大にならないうちに危機の芽を摘んでおく事は重要であろう。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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No title

追記:そういうネタかと思ってたが……。

No title

タイトルだけに反応してしまうのですが、事前にコミットメントしちゃうとソフトバジェットの問題が出てこないですかね。日本の地方財政なんてリーマンが起こる前から危機的な状況ですが。

No title

dさん:
>事前にコミットメントしちゃうとソフトバジェットの問題

確かにそうなんですが、そもそも論として地方の自治というのは
制度上無理があるような気もするんですよね。

>日本の地方財政

日本の地方債務は政府保証がついてますから悪化し放題ですね。
ただ結局は再建法とかで縛るわけだし、アメリカよりマシな気もします。
道州制なんて言ってますが、あれは中央と地方がそれぞれの幻想を持って
総論に賛成してるだけで実現する事はあまりないと思いますし、仮に実現しても
うまくいかないでしょう。


モラルハザード

Willyさん
いく時は一気にいくので、趣旨はよく分かりますが、モラルハザードが心配です。

州(その他の地方自治体も)の財政再建の為には、公務員のペンション等の再構築が必要なので、ディフォルとして先ずこれらのご破算が必要だと思います。

規律正しく、少しづつディフォルトしてくれれば良いのですが。地方債のディフォルトは始まっている様なので、崩壊しない事を祈るのみです。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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