アメリカで裁判に巻き込まれた巻~2 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

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一度裁判所に行ってみるのも悪くないとも思ったが、朝8時半からはつらい。
少し余裕をみると7時半前には家を出なければならない。

しかも前日の夜になって平方根の取り忘れという重大な凡ミスに気づき
結果を慌てて修正するはめに。もっとも、運よく集計の結果が割と
望ましかったのでとりあえず何とか格好はついた。

裁判は、ふざけた連中の割に結構真面目な内容で、
フリント市長のリコールに関わる署名を提出した私のクライアント側と
市長側が、署名の有効性について争うというものであった。

裁判所は デトロイトの中心部にあり、便利なことに大学から2マイル
くらいの距離にある。
8時過ぎに裁判所につくとセキュリティーチェックがあり免許証を見せる。
「弁護士以外は携帯電話は持って入れないよ」と言われて、
裁判所の中にある棚において置くことに。
棚には鍵がついていないので盗難に会った時は責任を取らないそうだ。
裁判所がそんないいかげんでいいのだろうか。
PCや飲み物は持って入ることができた。

中に入ると、例の運転手と用心棒がいる。
運転手は前回態度が悪かったので無視したが、用心棒の方と話したところ
実は用心棒ではなくてフリント市の職員らしい。前回もつけていた
金色のバッチは趣味の悪いおもちゃかと思っていたが、
実はフリント市の市章(?)のようだ。

原告側(クライアント)の恰幅の良い人が出てきて、
挨拶した後、報酬をもらうことに。裁判所に来るのは手間なので
とりあえず150ドルはくれと言っておいた。
「いくら必要だ?」と聞かれたので、
「元々は150ドルもらうことになってたんだけど」
といいつつ少し渋ったら、
「じゃあ200ドルだ」
と言っておまけしてくれた。気のいい人たちだ。
もっともまだチェックを換金していないので安心は出来ない。

8時半になって、原告側の人たちと一緒に入廷する。
弁護士、用心棒、運転手、に一名を加えた4人が中に座り、
私を含めた数人は傍聴席に留まる。

被告側はなかなか入って来ず、15分ほど遅れて3人が入ってくる。

更にしばらく待たされ、9時頃になってようやく、裁判官と
書記官二人が入廷して裁判が始まる。

みんなピリピリしているが、裁判官だけは気楽な感じで
ぶっきらぼうに被告に質問を始めた。彼にとっては
法廷は日常なので、当たり前といえば当たり前だろう。

詳しい事情は知らないが、被告側は引き伸ばし工作を図って
recallが間に合わないようにしたいらしく、裁判官の心証は
良くないようだ。「スケジュール的に無理」と主張する被告に
厳しい質問が飛ぶ。続いて、原告側の弁護士が話し始める。
普段からそうだが下を向いてやたら早口で話すので聞き取りずらい。
裁判官に、「手元の文章を読まないで弁護しなさい」と言われて
「下を向いて話しているだけです!」
と答えたので少しウケた。

弁護士は少しさえないが、直感的には割りと順調に攻めている
ように感じた。もっとも原告だから当然なのかも知れない。

相手側も 統計屋 を雇っており彼が少し批判的な証言をした後、
僕がしゃべる番になり証言席に呼ばれる。

こちら側の弁護士は、心証をよくしたいのか、
「法廷に一番近いWS大から専門家のWillyさんを呼びました」
とか言っている。そんなこと言っても効果があるかどうかは疑問だが、
空洞化したデトロイトでは「地域密着」を主張するのはお約束である。

宣誓をさせられて、自己紹介を簡単にした後、
分析の結果を説明し相手側の主張との違いとその理由を簡単に説明する。
後半は、被告側弁護士によるお決まりの印象操作も入り、
「君、統計10年やってるって言ってたけどPhD取ったの今年だよね?」
というような質問も入る。事実に抗っても仕方ないので、
単に「correct」と答える。
聞き取れない質問は普段は適当にやり過ごすが
流石に裁判なので「聞き取れません!」
と何度か言って聞き直してもらう(笑)。

多少の問題を抱えつつも無事に証言を終えると、
例のシミ付き青シャツの弁護士が「彼はこれから授業があるので」
と言ってくれて帰れることに。
判事が「何時からですか?」と私に聞き「11時半からです」と答えると、
「開始時刻の信頼区間は?」などと大して面白くないジョークを言う。
それなりに笑いを取っていたのは、やはりみんな判事の心証をよく
したいからなのだろうか。


とりあえずいい経験にはなったものの何だか疲れるバイトなので
あんまり引き受けるもんじゃないな、と思いつつ帰途についた。

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テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

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No title

「開始時刻の信頼区間は?」...お、面白くないジョークですね^^;

No title

darryさん:

裁判官が言えば何でも受けるんでしょう。そういえば、冴えないギャグを言い出しそうな雰囲気を初めから醸し出していました。

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No title

知的ですね。日本の法廷だと「信頼区間???」ってなりそう。

No title

dさん:

なるほど、いわゆる日本語と英語の違い(英語は専門用語が易しい)という奴かもしれませんん。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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