日本人のノーベル賞受賞に浮かれるな -- このエントリーを含むはてなブックマーク

ノーベル化学賞が発表され、
北海道大の鈴木章氏とパデュー大の根岸英一氏という二人の
日本人(を含む三人)の受賞が発表された。
受賞自体は日本にとって喜ばしいことだが
ノーベル賞に拘りすぎるのは危険だ。

ノーベル賞はあくまでも過去の業績に対して与えられるものであり、
鈴木氏、根岸氏の受賞にしても約30年も前の研究業績が受賞の理由である。
これは日本人が行った過去の研究が素晴らしかったことは示唆するが、
今後の研究レベルを保証するものでは全くない。
ノーベル賞は遅行指標であり、過去の結果を確認するに過ぎない。

例えば、今回の両氏の研究はパデュー大時代の研究が重要な役割を
果たしていると言われているが、現在のアメリカの主要大学における日本人の
プレゼンスの低さ、中国など他国出身者のプレゼンスの高さを考慮すると、
(国籍というテクニカルな問題を除けば)50~60年後の日本人受賞者が
中国人受賞者よりも多いとは到底考えられない。

小泉政権時代には、日本人のノーべル賞受賞者が増えるようにロビー活動を
繰り広げたが、これはあくまで政治的な意思から行われたもので
科学技術政策の一部としての意味は極めて薄弱であろう。

経済政策の為政者が統計のなかから先行指標を探し出すように
教育政策の為政者は、露出の多い賞に惑わされることなく
将来の研究成果のために注視すべき指標は何なのか
論文の引用数、研究者数、院生の数、研究予算、産学連携の仕組み、
など研究の質や量を測る方法はいろいろあるが、
それらをどう政策に繋げるかを真剣に考えて欲しいと思う。

特に人と人との繋がりは研究において主要な役割を果たし、
世代を超えた研究者同士の繋がりが一旦失われれば、
それを回復するには膨大な時間がかかる。

政府や文科省は場当たり的に予算をつけるのではなく、
長期的な視野で研究基盤を保護してほしいものだ。
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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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No title

>今回の両氏の研究はパデュー大時代の研究が重要な役割を果たしていると言われているが

「The Mizoroki-Heck Reaction」について調べてみられてはいかがでしょう

論文の引用数については
[ISI Highly Cited Researchers Version 1.5]
http://hcr3.isiknowledge.com/formBrowse.cgi

No title

ずばりそうですよね
うれしい気持ちはありますが「まだまだ日本もいける!」という確認ができる賞ではないですよ

No title

 あなたの言い分は一理あります。

 なので、もしあなたが受賞するようなことがあれば、ぜひこの文章を使わせていただこうと思います。

No title

darry129さん:
おっしゃる通りです。

切った刀で一言さん:
全文読んで頂いていればお分かりかと思いますが、
受賞者を批判しているのではなく、
「ノーベル賞学者輩出できる日本はすごい!」
と考えるのは違うでしょ、ということです。

No title

これって誰に向けて書いている文章なの?
実際学問に携わってる人なら言わずもがな十分承知している内容だし、
一般の人なら浮かれ気味に騒いでくれたほうが、
学業従事者の将来的なモチベーションにもなるし、
科学に興味を持ってもらえるしで、むしろ都合がいい。

教育政策の為政者に向けて書いたなら、
ここに書くより文科省にでもメールしたほうが確実に読んでもらえると思う。
確率高める意味でも文科省にメールしたらどうでしょう?
多分同じこと考えている人は内部にいるでしょうが。

No title

匿名さん:

概ね同意です。ただ、提案としては漠然としているので文科省にメール打って真面目に読んでくれるレベルではないと思います。

No title

研究者たちは浮かれることなく日々己の研究をコツコツと積み重ねていると思いますよ。
一般人が浮かれたところで何が不利益になるのか、逆に浮かれて明るい気持ちになることはとても有益だと思いますが。

>過去の結果を確認するに過ぎない。

それを言い出したら金メダルも何もかもがむなしいですね。
その時くらい国民が浮かれて喜んだっていいじゃないですか。



同意します

同意見です。

確かに日本の科学者が認められること、有用な科学的成果を挙げたことは賞賛に値することだと思いますが、だからと意って現在を必要以上に肯定するのはどうかと思います。

個人的には特に、その研究で注目を浴びた人が教育のあり方についてあれこれ話すのは良くないと思います。それは、そのような研究者を生んだ教授が話すべきことではないかと思うからです。優秀な科学者が優秀な教授である、優秀な教育者であるとは限りません。

No title

匿名さん:

研究者はそうでしょう。「一般人が浮かれたところで何が不利益になるのか」って、
国家予算の配分は国民が決めるのですよ。一般国民が正しい認識をしなかったら
不利益は非常に大きいです。

オリンピックはもともと商業的なものですし、結果が出るまでのタイムラグも
ずっと短いです。同列には扱えません。

totoronさん:
>研究で注目を浴びた人が教育のあり方についてあれこれ話すのは良くないと思います。

同意です。いや、話す事自体は構わないと思いますし、まともな事を言う人も
中にはいるでしょうが、文科省がそれに無条件に乗って権威付けするのは頂けません。
正直、素人の思いつきレベルとしか思えない提言も過去にありますね。

北大による事前キャンペイン

1)朝日新聞によると、北海道大学は、数年前から、鈴木教授の受賞を狙って、組織的に日本とスエーデンなどで、キャンペインを行っていたと。受賞がもたらす将来の受験生などへの内外の反響を考慮すると、十分にペイすると。
2)最近の大学もアグレッシブですね。この「明るい」ニュースのお陰で、中国との小競り合いに由来する、日本側の「閉塞感」が少し緩和されました。

No title

snowbeeさん:

なるほど。確かに、ノーベル賞の影響は大きいですからね。大学ランキングなどにも効いてきますし。
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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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