高校時代に一番印象に残った授業 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

先日の記事のコメント欄で日本の中等教育の話をして、
自分の高校時代の事を少し思い出した。

以前に少し書いたことがあるが、私の高校は
卒業すれば全員が大学に進学できる仕組みだったので
とてものんびりした高校時代だった。
そんな中、授業が後々の人生に影響を与えたのは
往々にして雑談の部分だったように思う。

一番印象に残っているのは高校3年のドイツ語の読解の授業だ。
この授業は、"Wissen ist Macht (知は力なり)" という哲学書の
ような文章を一年間かけて読むという授業である。
僕はドイツ語が一番の苦手で全く分からなかったので、
文系のO君が作ってくれた日本語訳を暗記して
なんとか落第点を取らないように努めた。
難解なので、日本語訳を一度読んだくらいでは意味が分からない。
2度、3度と読むうちにおぼろげながら意味が分かる、
そんな感じの本だった。

こんな感じの一節があった:
「科学はあらゆる方向に広がりながら一点に収束していく。」
生徒は何のことだか全然分からない。
そもそも発散と収束は全く反対のものだ。
それに先生がいろいろとコメントをつけていく。
授業中は殆ど寝ていたので詳しく覚えていないが、
私の最終的な解釈は、
「知は専門分化の過程を辿りながら
最終的には一つの真実を解明するためのものだ」
というような感じであった。そして、
「高校でつまらない科目がたくさんあったり
大学で専門の勉強で行き詰まったりすることはあっても
真実に近づけば見晴らしの良い場所が開けているのだろうなあ」
と当時の自分なりに感心した。
これは、自分の世界観に影響を与えた。

また、別の日にうとうとしながら授業を聞いていたら、
先生がどこかの文の注釈として
「人生っていうのは、要するに"問い"ですね。
"問い"がなくなったら人生はもう終わりなんだよ。
そうでしょう、佐藤君。」

とか言っている。
この先生は、生徒の名前を覚えておらず、
ありがちな名前を適当に言っていくので、
質問に答えなければいけないのは
いつも田中君や佐藤君なのだ。
「ああ、いい言葉だなあ…。」
と最初はぼんやりと思ったが、
これも僕のその後の思想的な部分に深く影響を与えた。
究極的な目標があるにしても大事なのは過程を楽しむことだ、
というのはあの高校の教育のテーマであったように思う。

そんな先生も時々やる気を出して、
佐藤君や田中君以外にも質問してくる。
僕が授業をきかずにぼんやりしていると、
「Willy君、デデキントって知ってる?」と聞いてきた。
無理難題を吹っかけれられたと思って同級生が苦笑している。
「実数の切断を考えた人ですか。」
と答えたら、その先生は
「じ、じっすうの切断って言うのは、
き、極めて重要な概念でね、、、!」
とか言ってびっくりしている。
その後、その先生は私をひいきにしてくれて、
ドイツ語の質問はされなくなった。
得意な事があると得をすることもあるなあ、
と思ったのを覚えている。

期末試験が近づいた頃、
クラス一の秀才がその難解な本を開いていたのをたまたま見た。
なんだかあちこちが塗りつぶしてある。
よく見ると、彼はなんと、
僕が全く読んでもいないその難解な哲学書のドイツ語の
前置詞を全部塗りつぶして覚えている
のだった。
絶対敵わないくらいすごい奴がいる、
ということも知った授業でもあった。
今頃きっと立派な科学者になっているに違いない。

今から振り返れば、
高校時代にもっと真面目に勉強すべきだったと思うが、
そんな雑談ばかり印象に残った高校時代は楽しかった。
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テーマ : 高校生
ジャンル : 学校・教育

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No title

デデキントって、set of rational から、set of real numberを構成する方法のことですよね?(あれ、違う?)学部三年生レベルの数学科のクラスで学んだのを覚えています。Walter Rudin のPrinciples of Mathematical Analysisが教科書だったんですが、付属高ではこれらの内容は高校で触れられるんですか?レベルが違う。。。

No title

いや触れないです。僕が勉強したのも大学生の時でした。

当時、理由は忘れましたがゲーデルが流行っていて、一般人向けの解説本がたくさん出たんですよ。それを読んで歴史だけ知っていたということです。
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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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