アメリカの大学の授業は易しくて厳しい -- このエントリーを含むはてなブックマーク

アメリカの大学における数学の授業は、
日本より2~3年分遅れている。
アメリカの学部向けの教科書は大雑把で
難しいところがあるとすぐに証明が省かれたりしていていい加減である。
昔はそうでなかったのだと推察されるが、今は書くほうも
「アメリカの学部生にはこの程度が適当」
という諦めの境地で書いているのだろう。

一方で成績のつけ方は厳しい。
日本の大学では内容を理解していなくても、
温情でよい成績をもらうということは日常茶飯事だが、
アメリカの大学は、ある程度内容をきちんと理解しなければ
ほぼ単位はもらえない。


今学期の統計入門の授業には、
学期が始まって1ヶ月くらい経ってから
ごり押しで登録していた社会人学生が一人いる。
彼女は別の有名な大学からの聴講生で、
どうしても統計の単位を一つ取らなければならないので
その大学の先生に勧められてWS大の統計の授業を
取りたいのだと言う。
一旦は断ったのだが、
大学の教官に勧められたということであったし、
どうしても、ということなので履修を認めた。

彼女の1つの問題は
最初の1ヶ月分が抜けているということであったが、
もっと大きな問題は数学の基礎知識が欠けていたという点だ。
WS大の学生であれば、Prerequisite と呼ばれる受講資格を
満たしていなければならないが、彼女の場合は聴講生という
ことでそこを上手くすり抜けていた。
しかも、彼女は前回、数学のコースを取ったのが
10年も前のことであり内容を
ずいぶん忘れてしまっているようなのだ。

彼女は遅れを取り戻すべく、宿題を真面目にやり、
ノートも完璧に取って復習しており、
週に2回は一時間くらい質問に来る。
それを2ヶ月続けているが、前回の中間試験も
クラスの最低点を取ってしまった。
一応、最低ランクの成績で単位は取れそうだが
コこのースは明らかに彼女にあっていない。

ついつい登録を認めてしまったが、
条件を満たさない学生の登録は認めるべきでない
というのが今回私が得た教訓だ。
本人も大変な思いをしなければならないし、
教員の方も余計な負担を強いられる。

昔の日本の大学は、厳しい入学試験によって
入学者のレベルはそれなりに確保されていた。
大学は自分で勉強をするところだったし、
教員は学生を大人として扱った。

入学の基準が非常に低いアメリカの州立大学で
その仕組みは成り立たない。
今は日本でも少子化によって一部の大学を除けば
似たようなことが起こっているだろう。
どの先進国も大学の大衆化に合わせて
授業の運営方法を適切なものに変えなければならない。


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テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

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No title

 専門書にも違いが顕著に表れている気がします。日本人が書いた専門書は行間が空いていて読解が難しいものが多いですね。

 物理学科のケースですが、学部2年目、3年目の解析力学や電磁気学の授業はアメリカの大学院レベルの本を指定されることがありますけど、それでも日本人が書いた学部向けの本よりかはつまづかないように書かれていると感じます。学部卒に限定するのであればハーバードやMITにコンプレックスを持つ必要はないという事実が日本人にあまり知られていないのが残念です。

No title

ぺこぽんさん:

英語の本はよく書かれているものもありますが、数学の学部初級程度の教科書は冗長なだけできちんと書かれておらず、単なる粗大ゴミみたいのが多いです。確か、ビル・ゲイツ氏が何ヶ月か前、「アメリカの数学の教科書はひどすぎ。他の国のはもっと薄くてもちゃんと書いてあるのに。」と発言していたと思います。

No title

ビル・ゲイツ氏の発言は:『(教科書は)「分厚くて強圧的なんですよ」とゲイツは述べる。「中身を見てもいったいなんのための本なのかちっともわかりません」。』(http://jp.techcrunch.com/archives/20100806bill-gates-education/)ですね。

英語の教科書は、よく言えば丁寧、悪く言えば冗長、と言う印象があります。もっとコンパクトにまとめて欲しかったと読み終えた時に思う時が多いです。

No title

こ@元ロンドン さん:

ソースありがとうございます。日本などでは在庫のためのコストが高いらしいので本を薄くするインセンティブがありそうですね。また、電車と徒歩の通学なので重い本は不都合です。

アメリカの学部生に「証明しろ」とか「説明しろ」という問題を出すと、やたらとたくさん書いてきますが、要点が書いてなければ0点なので意味がないです。日本は日本で白紙で出す人が多いので困りものですが。

No title

昔ビジネススクール時代に、必修の経済学(ミクロ、マクロ両方)が、微積分でつまづいた私には全く理解不能で、先生に何度聞きにいっても理解できず、Willyさんの学生さんのように、ぎりぎりの成績で何とかパスしたのを思い出しました。 もっと数学基礎力の弱いアメリカ人学生より成績が悪かったのですから、私の脳には経済学の学習障害があるに違いないと未だに信じています。 (ちょっとトラウマ) 

アメリカの大学の先生も大変ですね~。 

No title

NSさん:
経済学は向き・不向きが大きいような気がします。
そういう私も得意/好きとは言いがたいですけども。

こ@元ロンドン さん(追伸):

電子書籍で教科書とか騒がれてますが、あれだけ歴史のある紙の教科書すらひどいのに電子書籍iPad で良い教科書ができる気がとてもしませんね。大きなビジネスチャンスであることは確かですが。私はむしろ、インタラクティブな特性を活かして他の学習者と競争できる問題集とか、リアルタイムで合格確率が表示される問題集なんてのが良いと思うのですが。最終的にはユーザーが問題を作成して投稿する形式にできれば良さそうです。

No title

私はアメリカ方式に賛成ですね。数学科は特にそうで専攻外の方が例えば院試を解こうと思っても解答のテンプレがないので非常に苦労するそうです。かといって学科内では演習の授業やらで書き方を覚えることからやってるわけで、妙に部外秘にしてるのは恐らく教員が問題を作る労力を避けたいが為でしょう。私はHPで出来るだけ解答を公開するように心がけてますが、全国津々浦々からアクセスがありますし、解答の作り方がわかったとお礼のメールをいただいたりもします。

No title

僕はアメリカのイントロレベルの教科書は目的にそっては良くできているけれど、問題はその目的がイントロの○○を教えるということに特化してしまっていることだと思っています。数学みたいな教科はイントロでもかなりrigorousでないとまったく教える意味がないのかもしれないですが、ツールとして数学は必須だけれど、科学的な解釈を知ってはおくべきな、例えば物理のような教科になると、医学生や文系よりの学生のために「微積分を全く使わない物理」みたいなものが巨大なイントロのコースで教えられているわけですよね。学生数が多いため出版社にとってはこういう講義のための教科書はドル箱になっていると考えられるので、そういう方向で教科書が書かれてしまうのだと思います。でも、微積分がある程度できなくては物理なんて理解出来るはずがないから、まともに勉強している人からすると、何を教えたいんだろう、となってしまうのかなー、と。

ま、しかし僕は日本の大学レベルの教科書を全然知らないので的外れのことを言っているかもしれません・・・

No title

axeさん:

確かにアメリカ式は平均的には教育効果が高いという長所もあります。
ただ、あの方式はあくまで飛び級とセットにしないと才能を潰すでしょう。

日本の数学科の院試というのは、自分で解答を考え、それが正しいかどうか
判断できるかどうか、という能力を見ていると思います。類題なら教科書
にたくさんあるので解答の書き方は分かりますよね。
解答がないと勉強できないなら、そもそも受けるべきでないと思います。

毒之助さん:

おっしゃる通りです。数学の場合、徐々に数式と論理の世界に親しまなければ
ならないのにそれをやらないまま来てしまうんですよ。大学の教科書まで単なる
「物語つきドリル」なんです。数学専攻の大学4年くらいでようやく作法を
教えます。まあ、そのおかげで外国人がアメリカの大学で数学教員を
やったりできるわけですが(笑)。

No title

英語の教科書は、なぜか大きさがまちまち、中古でなく最新版を売りつけるためと思しき頻繁な改訂、が困りものです。内容面ではないですが。

Willyさんが書かれているように、「インタラクティブな特性を活かし」たリソースへのアクセスが教科書の質を補うかもしれません。。ただ、日本では、教科書の質を変えても、結局、分析可能なデータが出てこなくて知識がまったく蓄積されないように思います…。どんな政策でもそうですが。

過去のエントリと関連しますが、高校文系数学では、いわゆる文系の経済学・統計学あたりで有益というのを進路指導の時に知りたかったです。

No title

こ@元ロンドンさん:

ほんとに改訂が多いですし、値段も高すぎですね。
お金のない学部生には厳しそうです。中古を買って学期が終わったら
売ってしまう人が多いですね。

高校数学は、純文学や古代史のような分野を除けばほとんどの分野で役に立ちます。
もちろん全く使わないで生きていくことも可能ですが。

No title

「アメリカの大学における数学の授業は、日本より2~3年分遅れている。」
というよりも、Willyさんが卒業された大学が日本のハイレベルな大学で、現在教鞭をとられている大学がレベルの低い大学だということではないでしょうか?

米州立大学部数学

はじめまして.数学をやらずに高校・大学を日本で卒業,三十過ぎてから渡米し,工学部で二年間数学・物理等をフレッシュマンのクラスから Junior 程度まで履修後,引続き米国で工学系の修士課程に居ります.

数学,苦労したのでこの記事の話はよく理解できました.渡米直後の Calculus I の最初の試験は 40点でした...しかしその後なんとか Cal III では A を取れるように盛り返しましたが.ただ,いまだに数学への苦手意識は依然残ります.そのせいだと思うのですがコメント欄の議論のうち,特に以下の内容がどういうことを指しているのか理解できないでいます.

>おっしゃる通りです。数学の場合、徐々に数式と論理の世界に親しまなければならないのにそれをやらないまま来てしまうんですよ。大学の教科書まで単なる「物語つきドリル」なんで。数学専攻の大学4年くらいでようやく作法を教えます。

試験問題の解法しか低学年では教えていないという意味でしょうか?都合よろしければ解説頂けると幸いです.

No title

感想さん:

妥当な比較においては日本の方が進んでいることは間違いないと思います。
例えば、東大の自然科学系とハーバードの自然科学系の学部生を比べても、
地方国立大と米国の大規模州立大を比べても、日本の方が進んでいると思います。
数学科同士で比べてもそうです。

アメリカは大学の授業の水準が比較的統一されており大学間の差は大きくありません。
ただし、一流私大の学生は、最初から難しいコースを取る人が多い、という意味に
おいては差がありますし、飛び級している学生も多いわけです。従って、
アメリカの学生が日本の学生に比べて劣るというわけではないのです。

No title

>試験問題の解法しか低学年では教えていないという意味でしょうか?

それもありますし、記号で論理を扱ったり、式を見てよく考える訓練が
できていないと感じます。個人差も大きいと思うんですが、そういう訓練って
二十歳前後までにやらないと一生身につかないんじゃないかといく気がする
んですよね。。。

No title

コミカレで数学を専攻しております。

文系中心の高校であったため、高校時代、全く数学を勉強したことがなかったのですが、
父親の職業の影響もあってか、後に数学に対して興味がわいてきたので今の大学で数学を専攻し、編入先の州立大でも勉強する予定です。

今学期の数学のクラスでは、高校で習うべき基礎知識を問う問題が多く、どのように勉強を進めていいのか全く分かりませんでした。 他の数学のクラスでなら、教科書にある問題を何度も解き、公式を理解すれば満点近く取ることが出来たのですが、今学期の数学のクラスの場合、教科書にはのっていないし、先生も高校で習っているであろうことを前提に授業を進めていくので、どこを重点的に勉強すべきかの全体像が掴みにくいクラスでした。結果はBでしたが。

また基礎知識を補うとしても、高校レベルの数学のクラスまで戻って、一つ一つクラスを上がって行くのは遠回りですし、クラス登録が難しいクラスであれば最悪半年や1年は単位履修に時間がかかるので面倒です。 

基礎知識が足りないなら、自分で勉強してそれを補うべきですが、
どこからが「基礎」なのか、その線引きが曖昧であるような気もします。 

No title

数学は基本的に積み重ねですので、基礎がしっかりしてないと次を学ぶ事は困難ですし、効率も悪いです。コースを取り直すのは確かに時間がかかりますが、少なくとも自分でやり直す必要があると思います。

基礎知識とは、学んでいる科目の一段階前までのことです。個別の科目については先生に聞いてみてください。数学の場合、特定の科目を学ぶのに必要な基礎知識はかなりはっきりしています。それを曖昧だと感じること自体、何らかの問題があることを示唆しています。

公式を当てはめて対処することの最大の問題は、自分の数学の知識を有機的に結びつけることができないという点です。単純に記憶しただけの内容はしばらくすると忘れてしまいますし、覚えていたとしても次に学ぶ科目と結びつけることができません。長い目で見ると、とても効率が悪いのです。

いずれにしても数学を専攻されているとのこと。頑張って下さい!

No title

この記事を読むとアメリカは
高校までに人格を育てて、大学から勉強させるという形だな
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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