「若者の内向き志向」に感じる論点のズレ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

日本では「若者の内向き志向」が話題になっているようだ。

留学する人が減っているとか、
海外赴任を嫌がる人が多いとか、
海外で日本人のプレゼンスが低下している、
というのが主な理由として語られている。

いろいろな記事を読んでいると
個々の根拠については怪しい点がたくさんある。

留学生の数は、若年人口の減少や
90年代半ば以降の円安の影響、
国内の大学入試の競争緩和などを考慮したうえで
有意に減っているのかどうかは疑わしい。

海外赴任の希望者が減少しているのは、
年功序列・終身雇用の不確実性の増加、
海外勤務者の待遇の悪化、途上国勤務の増加、
といった要因を考慮する必要がある。

海外での日本人のプレゼンスが低下したのは
他国からの人材流入が増えたことが主因だろう。

しかし事実関係について反論するのは、
どうも論点がずれているような気がしてならない。


問題の本質は「今の若者が内向き志向かどうか」ではなく
「今の若者に外を向かせる必要がある」ということだろう。


その理由は以下の通りだ。


1.グローバリゼーションの進展

90年以降、発展途上国や旧共産圏から
米国などに急速に人材が流入している。
そうした中、英語圏の国々が人材集中を背景に
研究・開発面でアドバンテージを強めており、
そこに遅れを取らないために日本人も積極的に
海外に出る必要が強まってきた。

なお日本人のプレゼンスが米国で低下しているのは、
日本人が減っているからというよりも、
他の外国人が圧倒的に増えた影響が大きい。
例えば、トップスクールのMBAなら、
昔はアジアを理解するために喜んで日本人を取ったが
今は優秀なアジア人がたくさん応募してくるので
日本人を取る必要性が低下している。
競争に敗れれば結果として日本人は減少することになる。

つまり「若者の内向き志向」というのは
日本人の若者が昔に比べ大きく変わったのではなく、
世界の若者が積極的に海外に出て行くようになったのに
日本人は昔のまま変わっていない、

ということだ。


2.日本経済の規模縮小


バブル崩壊後に高成長した日本企業のほとんどは
外需を取り込んだ「国際優良企業」だ。
20年経ってそれは誰の目にも明らかな事実となった。
日本経済が今後縮小する中、
海外のマーケットを取りにいかざるを得ない。

つまり「若者の内向き志向」というのは
今までは内向きで上手くいってたけど
これからは内向きのままではうまくいかない、

ということなのだ。


3.内向きなおじさんの穴埋め


これまで内需に焦点を絞ってガラパゴってきた
おじさんたちが、急に国際派にはなれるわけではない。
歳を取れば、新しい環境に適応する力は落ちるのだ。

一方で、日本にはおじさんたちが作ってきた
立派な組織や技術がたくさんあり、
豊かな日本を支えるためにはそれを
海外に売り込んでいかなければならない。
そのためには、おじさんたちと同じような
若者ばかりでは役に立たない。

つまり「若者の内向き志向」というのは、
おじさんが内向きなのに若者も内向きだったら
キャラかぶっちゃうでしょ!

ということに過ぎない。
おじさんが既に組織にいる以上、
キャラが被らないようにするのは双方にとって
メリットがある。


もちろん、若者が内向きになった事を裏付ける
データを故意に探してくる事はいくらでもできるし、
どこかの週刊誌のように、逸話をいくつか並べて
もっともらしい社会現象に仕立てることもできるだろう。

しかし、社会にとっての利益は
若者に状況を正しく認識させることだろう。

本当の論点を隠したままキャンペーンのように
若者を叩く方法は建設的でない。
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テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

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No title

「若者の内向き」を、海外でなく国内の大学(院)に進学することと捉えると、若者が内向きすぎるので国内の大学(院)教育をぐちゃぐちゃにして相対的に魅力を下げてやる、そして『今の若者に外を向かせる』ということであれば、修論廃止といった提案も合点がいくできるように思います。

文科省は国内の大学(院)の魅力向上に努めてきているはずなので、「若者の内向き」はむしろ自分たちの政策がうまくいっていることの証左ではないでしょうか。文科省が修論廃止などによって、国内の大学(院)の魅力を増すことが出来れば、ますます若者は内向きになりますね。

皮肉はさておき、産まれてからずっと経済が停滞、ゆとり教育で学習内容を勝手に削減される、気付くと景気悪化もあって就職超氷河期、という経験をしてこざるを得なかった20歳前後の人に対し、「若者の内向き志向」といって妙に煽るのはちょっと酷ではないかと最近思いました。

No title

こ@元ロンドンさん:

若者が内向きなんて今に始まったことじゃないですし、日本だけの問題でもないですね。
台湾の購買力平価ベースでのGDPは日本とほぼ同じですが、やはり最近は留学生が明らかに
減っています。

日本経済が停滞しているからといって、留学したり海外で仕事を得るよりは
日本で大学入試や就活で競争する方がずっと楽勝だと僕は思います。
ただし、30歳以上とアカデミックを除く、かな(笑)。

No title

このデータはご存知ですか?年末に各紙が報道してたのですが
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/12/1300642.htm
これを見ると学生が一番遊んでいたと言われているバブル期より留学生数は今のほうが多いんですね。勿論ここ数年では留学生数が現象して内向きとも云えますが。

留学生数では昔より多いのに内向き志向と批判されるのは、新興国需要で2倍の利益をあげつつも外資はその10倍利益あげてるような状況で「若者のおまえらもっとがんばれよ」ってことなのでしょう。まだまだ頑張り足りない、と

No title

留学生がバブル期より多いのは、東洋経済オンラインの記事にも載ってましたね。むしろ、「内向きな分析だなあ」と思ったのは日本の留学生の推移だけ気にしてる点です。アメリカの統計を見れば、途上国からの留学生が過去20年で爆発的に増えた事がよく分かります。

人類が頑張り足りないのはほぼ常に正しいですね。そもそも、人類以外の動物は必要以上には頑張らないのですから、その方がむしろ自然です。

No title

今の日本の若者が内向きか、そうじゃないかなんて相対的にしか言えないことで、であれば比較対象が問題かと思います。
この点について、多くの議論は以前の日本の若者(今の中年層以上)と今の日本の若者を比較しているにすぎない気がします。まあ、数字に関しては比較に価するものも、意味のない比較もありますが。個人的には、内向きというよりは、安定志向が強いという言葉のほうがしっくりくるかなと思います。
しかし、必要なのはもっと水平的な比較であり、すなわちご指摘にあるとおり世界の若者との比較なんですよね。その結果、課題が見えてくるんだろうと思います。



No title

内向きなおじさんを補完する要員、必要ですね~。 そうはいっても、外向きな若い人たちは、おじさんたちにとっては理解不能な宇宙人、やっぱり入社試験で落とされてしまうような。

昔新卒就活の際に、海外の仕事やりたい!というのは面接で一番の禁句だったのを思い出します。 国内の泥臭い仕事を地道にやりたいとアピールして、やっと大手企業に拾ってもらった過去あります(笑)

No title

いわしくんさん:

同感です。安定志向というのはその通りですね。もっとも、日本は超大企業以外の待遇が悪すぎるので当たり前かも知れません。大企業の方がリスクは小さくてリターンは大きい、ついでに教育もしてくれる、みたいな。僕も日本で就職するなら大企業がいいですね。うーんそうだな、NTTとか。NTTの人、読んでたらよろしくです(笑)。

NSさん:

私がリクルーターやった時に、内定取れるのは優秀な人よりも真面目で使いやすい人だなと思いました。私は優秀そうな人をなるべく押したんですが。僕は新卒の就活の時は海外には全然興味がなかったです。今も別に海外がいいとは思ってないですが。

No title

昔の若者はそんなにガンガン外に出てたのかな?
今の若者はそんなにダメダメなのかな?
と違和感を感じていたので論点のズレに納得しました。

「これからは前例踏襲じゃ駄目で、君らは外を向く必要がある」
ってことが伝われば、「やべぇな、俺らはヤルしかねぇわ」
っていう危機感を持って行動する若者も出てくると思います!

No title

りょうさん:

今の仕組みだと、若者に富が回ってこないですからね。
年齢層別生涯賃金みたいな指標でもあると分かり易そうです。

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No title

>年齢層別生涯賃金みたいな指標

リンク先PDF・p20「(図15)世代による賃金プロファイルの違い」が少し役立つかもしれません。物価水準の変化等、色々調整が必要と思われますが。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/11010011.html

No title

こ@元ロンドンさん:

資料ありがとうございます。この手の推計は相当に難しそうです。将来の賃金カーブは強い仮定を置かないと出なそうなので。

No title

おっしゃる通り、かなり難しそうですね…。書き込んだあと、やっぱりあんまり妥当でないかも、と思っていました(苦笑)。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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―― 統計学を学ぶために。
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―― WS大指定教科書。
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