「移民受け入れに賛成」とはどういうことか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

しばらく円高が続いており、移民問題を再考しても良い時期に
きているかもしれない。しかし、社会には政策的に操作可能な
変数とそうでない変数がある
、という認識は大事だ。

とある友人が、
「グローバル化に反対、という人がいるが
グローバル化というのは状態のことなので、それに反対というのは
"冬が寒いのに反対"と言っているのと同じで意味をなさない。」

と言っているのを聞いて、なるほどな、と思ったものである。

「グローバル化に反対」の正反対とも思える移民受け入れ賛成論だが、
日本に移民が増えないという「状態」に反対しているという意味で
それの持つ意味は曖昧だ。

具体的に「移民受け入れに賛成」とはどういうことなのだろうか?

まず、現在の日本のビザのポリシーでは、
単純労働者の受け入れを原則として認めていないので
「要件を緩和して単純労働者の受け入れを」
ということであれば理解できる。
例えば経団連などが「移民受け入れ賛成」という場合の
文脈は本質的にそういうことなのだろう。
(その是非はここでは議論しない。)

より解釈が難しいのは、例えば Lilac さんがブログで繰り返し述べているような
「高機能移民を呼び込むことに賛成」という意見だ。
しかも、そうした意見は実際、単純労働者の受け入れよりも国民ウケがよい。
有象無象の外国人が大挙して押し寄せて、日本国内の職と治安を奪う、
というイメージのある単純労働者の受け入れよりも安全に思えるからだろう。

しかし、既に日本は、
「外交。公用。教授。芸術。宗教。報道。投資・経営。法律・会計業務。
医療。研究。教育。技術。人文知識・国際業務。企業内転勤。興行。技能。
文化活動。短期滞在。留学。就学。研修。家族滞在。特定活動。」
に関しては既に外国人に労働ビザを発給している。
(また、この他に配偶者や永住権による滞在許可もある。)
こうした仕組みがありながら、高機能移民が増えない「状態」の下で
移民受け入れに賛成するとは何をすることなのだろうか。

考えられる事はいくつかある。

1.ビザ、永住権手続きの簡素化


雇用主にとっては、外国人にビザが認められるにしても
その手続き期間や費用などのコストが大きすぎれば雇用の障害となる。
労働ビザのために数ヶ月かかるとも言われる手続きが本当に必要なのかは
疑問だし、永住権を取るために原則10年以上日本に在留していなければ
ならない、という要件も厳しすぎるように思える。

2.ビザの要件緩和


例えば、投資・経営ビザは起業や貿易を促して経済を活性化するために
重要であるが、一方で矛盾に満ちている。通常、投資ビザを取るためには、
日本国内で投資活動を行っていなければならず、現実的にはビザ申請前に
日本で企業活動をしている必要があるからだ。
これはアメリカでも同様のことが起こっている。
投資金額などの簡素化した基準で投資ビザを発行するなどの案が考えられる。

就労ビザでは、単純労働の一律の受け入れは認めないにしても、
なり手が少ない農業や漁業、建設現場などの労働者を受け入れることの
デメリットは少ない。一方で、機械工学専攻の外国人学生を無理に
「高機能移民」として新卒採用したとしてもところでその効果は疑問だ。
技術ビザというカテゴリーがあるが、
「技術」の意味を国益に見合った形で再考する必要がありそうだ。

3.新たな外国人受け入れ形態の導入


移民の受け入れと充実した社会保障は並存できない。
社会保険料が高ければ移民は来ないし、いずれ年を取る移民に
良い福祉を提供するのは元からの国民の利益に反するからだ。

そういう意味では、ビザと永住権の間に中間的な「定期居住権」
あっても良いだろう。はじめは5年程度の審査期間をおき、
問題がなければ65歳になるまで居住することができるようにする。
あるいは永住はできるが65歳以降は国内の政府による
健康・介護保険の対象外としても良い。
定期居住権を持つ間は自由に職業を選んだり、出入国をしたり、
失業保険や公共サービスに関して永住者と同等の権利を保障する。

良いとこ取りのようだが、退職後祖国に帰って日本の年金を受け取り
ながらより安い物価水準で生活できれば、十分なメリットがある人も
多いだろう。

4.日本語教育環境に投資

もう一歩議論を進めて、初期コストを政府が負担することで
移民を受け入れを促進しようということも考えられる。

英語圏の多くの国が移民受け入れに成功していることを考えると
言語的・文化的な壁を取り除くという事は第一に考えられる
べきだろう。一方で、政治家個人が途上国とのパイプを作る
ために国費をばら撒くという状況にもなりかねず、慎重に進める
必要がありそうだ。



いずれにしても、若年者の失業問題、高齢者の雇用問題、女性の
雇用問題と、むしろ労働者の供給過剰問題が山積する中で
移民受け入れは一部論者が主張するほどメリットは大きくない。
不必要な摩擦や規制を取り除くという観点から問題を
とらえることが有益である。
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テーマ : 日本の未来
ジャンル : 政治・経済

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高機能移民を呼び込むことに賛成

「高機能移民を呼び込むことに賛成」と主張するのは別に個人の自由なんだけど、僕がとっても気に入らないのは外国人移民を物みたいに取り上げている点だ。一人の高機能移民は人間である、しかし、日本は二重国籍を認めていない。移民がたとえ母国を捨てたとしても簡単に国籍を変えられると思います?移民だって、二重国籍ならば日本の政治にも参加できる。僕は日本が大嫌いだけど、それでも日本は母国です。それに、一人の高機能移民を受け入れたとして、今の日本人にその家族、親戚をも受け入れられます?多くの日本の政治家もブロガーも高機能移民を使い捨てできる物のように論じているところが凄く気に入らない。
たとえ、移民が来たとしても中継地にしかならないでしょうね。多くの日本人にとっても、その方がありがたいのかもしれませんが。

No title

Shinさん:

国籍はアメリカでは永住権取得から5年くらい経てば変えられますよ。
私の周りでは、変えている人の割合は永住権取得者の数に比べるとそんなに高くないです。
変えることのメリットはもちろんいろいろありますが。

移民の家族や親戚を受け入れるかどうか、
移民の政治参加をどこまで認めるか(例えば被選挙権)、
他の国からの移住者に社会福祉を悪用されないようにどうするか、
というのはその国の移民政策次第です。
一律じゃなくて二国間毎に決めることだってできるわけです。
そういうところをもっときちんと詰めないといけないと思います。

受け入れ前の移民は選挙権がないという意味で政治的には「モノ」です。
ただし、移民を受け入れるためには移民側にも
メリットがなければならないということです。
そして一旦受け入れたら、基本的に昔からの国民と同じ権利を持つ。
だから、何十年も先を見据えて、現在の国民の利益を最大化する
ように決めなければならないのだと思います。

詳しく書くと長くなりそうです。またそのうちエントリーしたいです。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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