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アメリカ各地のデモの本当の原因 -- このエントリーを含むはてなブックマーク


アメリカが州の財政の問題で揺れている。

事の発端となったウィスコンシン州マディソン市
(私はこの町に5年間住み、娘はそこで生まれた。)
では、州知事が州職員の団体交渉権をほぼなくす法案を
提出した事から、労組などが反発し2週間にわたるデモが起こっている。
(参考:保守系の記事(WSJ日本語版)、リベラルの記事(CNN日本語版))


州政府職員に団体交渉権が認められている方が望ましいのかどうかは私には分からないが、
経済的に考えると州財政に関する現在の議論はまだ本質的な部分に達していない。

問題の本質は、連邦政府と各州からなる財政のシステムが
大きな景気変動や構造変化に対応できるものとは言い難いことだ。
問題は以下の3点の組み合わせに集約される。


1.地方政府の固定費用は大きい

地方財政は公共財の中でも、
初等教育、警察・消防、除雪といった
基本的なものを担っており固定費用が大きい。
医療保険に関しても一部は地方政府が担っている。
連邦政府はお金がなければ、火星に行くのを諦めたり、
イランや北朝鮮に攻め込むのを諦めたりすることができるが、
義務教育を3年間短縮したり、警察・消防費用を半減したり
することは非常に困難だ。

2.地方政府の歳入は景気に大きく依存する

地方財政は固定費が大きいにも関わらず、
歳入は大きく景気に依存する。
州に入る法人税は景気に大きく依存するし、
市の歳入の大部分は地価税であり、
地価の下落の影響を大きく受ける。
所得税や売上税のような安定した収益源のない
市政府などは特に影響が深刻だ。

3.地方政府の財政は均衡を強いられる

事実上、総務省を経由して日本政府が
債務保証している日本の地方政府の財政と異なり、
アメリカの州の財政や市の財政は独立している。
各州や各市の規模は連邦政府に比べて圧倒的に小さく
特定の産業に依存しているケースが多いため
信用力や安定性の面では連邦政府に比べ大きく見劣りする。
そのため地方政府のファイナンス能力は限られ、
より小さい自治体(例えば市町村)ほど財政は均衡している必要がある。

上記の1~3は大きな景気ショックがあった時には並存しえない。
地方財政の問題を解決するには、
上記のうち少なくとも一つ以上を変えなくてはいけない。

1.歳出の削減

まず考えられるのは、今まで過剰だった職員数や
給与・福利厚生水準を切り下げることだ。
長い目で見ればこれは当然必要なことである。
しかし、不況時の政府の役割としては適切でないだろう。
不況時には、失業関係の事務コストも増えるし、
失業に伴って犯罪の数や学校に行く人の割合も増えるのだ。
歳出を削減すれば、雇用や所得も落ち込み
負のスパイラルに入る危険性が高くなる。

連邦政府がなかなか有効な景気対策を打ち出せないのは、
本当にお金が必要なところを州政府が担っているのが
主な原因の一つだ。


2.歳入の安定化

法人税や地価税の計算方法を変更することにより
歳入を安定化させることも考えられる。
しかし、法人税の歳入安定化は景気の不安定化に繋がるし、
地価税を硬直的にすれば、不動産価格はより不安定化する。
例えば、40万ドルの家が20万ドルに下落した時、
地価税が年1万ドルのままだったら誰が住むだろうか?
そういった不動産は極端な価格下落に見舞われるのが常だ。

3.連邦政府からの債務保証

連邦政府は、経済状態を安定化させるために
地方政府への債務保証や所得移転を通じて景気対策を打つことができる。
景気変動や構造変化のショックをならすために連邦政府と州政府の間に
よりよい仕組みを作るべきだ。


米国の州政府の問題は構造的なもので、州政府だけで解決するのは困難である。
デモに参加している米国民は、より良い社会を目指したいならば
州議会ではなくむしろ連邦政府に批判の矛先を向けなければならない。

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テーマ : アメリカ合衆国
ジャンル : 政治・経済

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No title

日本でも法人2税を地方から国に回収し、代わりに消費税の地方取り分を増加するほうが財政規律を守りやすい。
ということを地方財政の教授から良く聞きますが、どれぐらい実現性があるのでしょうか?

No title

izuさん:

そんな議論もあるんですね。確かにもっともです。
実現可能性は…分かりません。財務省の官僚は反対しそうですが。
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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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