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コアの能力をじっくり育てよう -- このエントリーを含むはてなブックマーク

このところ、日本の大人社会が
若者を見る目は非常に厳しくなっている。

若者は良い大学を出るだけでなく、
アルバイトやサークル活動でリーダーシップを発揮し、
夏休みはインターンシップを経験し、
英語を勉強してTOEICのスコアを出し、
できれば短期留学なんかも体験し、
面接では礼儀正しく好感を持てる態度で、
コミュ力と行動力と責任感を
見せることが求められる。
そうした能力はどれもあるに越したことはないが、
求められることが多すぎて学生が気の毒になってしまう。

自分のこれまでの経験を振り返ると、
世の中で生きていくために本当に必要な事は
もっと素朴で単純なことだ。

日本で大学院に進んだ時、金融機関で働いた時、
米国でPhDを取る時、大学で働くようになった時、論文を書いている時、
自分の強みの源泉はつまるところ、
高校時代の3年間、そして大学の数学科で4年間
数学を勉強したことだけだった。

大学1年生の9月頃だっただろうか、
大学で授業を受けていると3年生の先輩が中庭のベンチで寝ている。
3年生は気楽でいいなあ、と思いつつ授業が終わって外に出ると
ベンチから先輩に話しかけられた。

先輩A「おーい、Willy君!元気か!」
自分「あー、はい、まあまあです。」
先輩A「今日はいい事教えてやろう。いいか Willy よく聞け。」
自分「あー、はい。」
先輩A「一日3ページは教科書読め。後は一日何しててもいい。分かったか?」
自分「3ページですか。うーん、分かりました。」
先輩A「俺、今日はもう3ページ読んだ。飯でも食いにいこうぜ!」
自分「うーん、今度にしときます。それじゃまたゼミで。」



理論系の学問を専攻しなかった人は冗談だと思うかも知れないが、
この先輩の言った事はこの上なく正しい。
毎日3ページ、良い教科書をきちんと理解して読み進めれば、
1年で約3冊の専門書を仕上げることになり、
大学の成績はほぼ全てAが取れるし、東大の大学院にも楽勝で入れる。
ほとんどの一流企業も喜んでその学生を採用するだろう。
そして、キャリアを積む上でもコアの能力になることは間違いない。

1日3ページのペースできちんと読んで理解し
復習して自分のものにするためにはおそらく3時間くらい必要だが、
それは、家でやってもいいし、公園でやってもいいし、
好きな喫茶店でやってもいい。
朝9時からやれば昼までに終わってしまう計算なので
あとは友達と遊ぶなり、バイトするなり、好きにすればいい。

しかし、一見途轍もなく簡単そうなその計画は、
授業、バイト、サークル、スポーツ、友達、恋愛、麻雀、ゲーム、旅行
といったものに邪魔され、
実際はほとんどの人が達成できないまま終わるのだ。

私が数学者になれなかった(※)最大の原因の一つは、
一時期、他の事に気を取られて毎日3ページ進むことが
できなかったからだ。
アドバイスをしてくれた先輩は立派な数学者になった。
(※私はいまは統計屋であって数学者ではない。)


翻って、一般的なキャリアの問題を考えてみる。
「希望の会社に入社するには何をすればいいですか?」
という一般的な質問に無条件かつ具体的に答えなければいけないなら、
それはコミュ力、行動力、英語力のような
一般的なものにならざるを得ない。

しかし、本当に大事なのは自分のコアとなる能力を磨くことだ。
自分のコアとなる能力では全人口の上位1%に入らなければならない。
それは途轍もなく難しいことではない。
世の中に100種類の異なる能力があれば、
どの能力でも上位1%に入れない人は
0.99の100乗と考えれば、わずか37%に過ぎない。

「そうは言っても何でもできる人と何も出来ない人も大勢いる」
という文句が聞こえてきそうだが、
「何でもできる人でも結局何か1つ選ばなければならない」
というのもまた事実だ。
途中で諦めて進む道を変えた時も、
二つの経験を上手く組み合わせることができれば
より大きな強みになりうる。

そうした偏った能力を身につける事は、
人に自信とアイデンティティを与えて幸せにする。
0.99^100 = 0.37
は幸せなキャリアを実現するための等式だ。

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[教育] ドイツにおける才能教育 大学飛び入学

国際競争力を上げるために、高い潜在能力を持つ子どもを特別に支援しようという動きがドイツでも高まっている。 ドイツの公教育にはもともと小学校から飛び級-留年制度があり、各生徒の習熟度に応じた授業を受けさせるという考え方だが、その他にドイツ語でhochbegabt(英語

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No title

>>一日3ページは教科書読め。
あー、もっと早くに言ってほしかったです~!!

その先輩はどういったテキストをお使われてはったんですか?

No title

>その先輩はどういったテキストをお使われてはったんですか?

知りません。ただ、3ページというのは数学30講シリーズとかの3ページではなく、
本格的な教科書やGTMなんかの3ページということだと思います。

No title

確かに1年とちょっとで3冊終わりそうです。
達成感は本当半端ないですね。ある意味、麻薬やお酒よりも強い”クスリ”かもしれません。

No title

Dehmelさん:

ほんと一年間に3冊読むだけでも結構大変なことなんですよね。
もっとも経済学部には一冊も読まずに卒業する人もいるようです(友人談)。

No title

とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。

No title

面白く拝見しました。

世の中に存在する100種類以上の職があるにもかかわらず、就職難・求人求職のミスマッチが起きる理由のひとつに、コア能力を見つける機会が少ない、日本の高校普通科の存在があるように思います。商業・農業・工業高校や高専のあり方を見直すことで、大学全入時代と言われ皆同じレールに進む社会が変わるんじゃないかと。
そうすれば、0.99^100 = 0.37 の公式も、もっと現実的になりますよね!

No title

これは素晴らしいエントリーですね。若い人に読ませたい。

No title

COwさん:

同意です。極論すれば高校はいりません。
やってみたいとことが見つかった人から大学なり専門学校へ行けるようになると良いと思います。
僕は高校の授業が嫌でしょうがありありませんでした。
でも、よく調べたら数学とかやるには大学に行かなくてはならず
そのためには(付属)高校を卒業するのが一番早道だと分かったのです。
数学科の友達の中には進学校を1週間でやめた人もいました。

No title

高校教員です。「極論すれば高校はいりません。やってみたいことが見つかった人から大学なり専門学校へ行けるようになると良いと思います。」とありますが、現状の日本の教育システムのひとつとしての高校の問題点や高校とはどうあるべきだと思われますか?Willyさんのお考えをお聞かせ下さい。

No title

>>極論すれば高校はいりません。

この意見に賛成です。
僕も同じく高校の授業は退屈で嫌でした。
高校2年でクラスが文系か理系に分かれるのは絶対におかしいです。
それに文系クラスに進んでそれから理系の大学行きたくなったらどうするんだとも思います。
人から教わるのとそうじゃないってのは結構ハンデが大きいと思います。
そういうコース選択でやりたいこと出来なくする縛りって絶対おかしいです。
そんな感じで、文系選択(笑)をしてしまい仕方なく自分で勉強して数学科入った自分がいます。

No title

Mikanさん:

高校は必修科目数が多すぎること、カリキュラムの難度が統一されすぎていること、
飛び級が事実上ないことなどが個人的には問題だと思っています。

より広範に単位制の高校が広がると良いと思っています。
また、学力の低い生徒が集まる高校では基礎を徹底する一方、
学力の高い生徒が集まる高校ではより進んだ内容を教えて大学入学にも
一定のアドバンテージを与えるといったことがあっても良いかも知れません。
首都圏などでは交通の利便性を活かして、午前中は通常授業、午後は別の高校や
大学に移動して好きな科目の授業を受ける、といったことも考えられます。
少子化の今、大学も喜んで乗る話ではないでしょうか。
米国ではそういう話は結構あります。

あと、これは特別優秀な層限定ですが、飛び級も本格的な導入が待たれます。
優秀な学生も18歳になるまで大学に入れないというのは人材の浪費です。
例えば、15歳で大学に入学して18歳で卒業できれば、例えばその後に、
海外の大学院に留学しても語学力の伸びが決定的に違いますから、
国際的な人材が育ちやすいです。実際、中国人の最優秀層は18歳くらいで
大学院に入ってきます。もちろん、日本の大卒の最優秀層(22歳)ほどの
知識はないですが、長期的に見るとその方が能力開発にプラスかと。

また、知的な刺激が足りないという問題もありますね。
最近はインターネットの発達で情報は入手し易くなっていますが、
高校では社会で活躍している人を呼んで講演させる機会が
もっとあると良いと思いました。そうすれば職業意識が高まると思います。
成績の良い高校生でも、医師、弁護士、大学の研究者くらいしか
良い職業が思い浮かばない、という現状は残念です。

No title

Dehmelさん:

理系、文系に分けるのも良くないですね。
日本は著名な社会科学系の研究者が少ないですが、理系・文系を
区切ってしまうこともその原因の一つかと思います。
高校はとりあえず理系選択にしとけば間違いないと思うんですが、
なんとなく人間的につまんない人が多い気がするのが玉に瑕です(笑)。

なるほど

勉強の本質とはそういうことかも知れません。

Willyさんの記事にはたまにジョークネタがあって翻弄されますが、直球の時は読み応えがありますね。

No title

どうも初めまして 
私は、理系が好きだから高校の時は文系を選択しましたよ。
好きな方はどうせ授業無視して自分で勝手にやるので、授業がないとぜったいやらなそうな文系に進みました。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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