政府は震災を機に京都議定書の再交渉を -- このエントリーを含むはてなブックマーク

福島第一原発はいまもなお緊張状態が続いているが
今後、問題になるのは
原発の停止で失われた発電能力をどう取り戻すか
ということだ。

事故が起こった日本では、
世論を考えると原発の新設はおろか、
既存の原子力発電所の再稼動すら危ぶまれている状況である。
電気事業連合会によれば、2008年時点での日本の発電量は
石炭・石油・天然ガスを用いた火力発電が約66%、
原子力が24%、水力その他が10%となっている。
早期の能力回復と安定供給を考えれば、
火力発電を増やさざるを得ない状況だ。

火力発電の問題のひとつは
今後の発電コストが天然資源の価格により影響されやすいことだが、
もう一つの問題はCO2の排出量が増加して
京都議定書によって拘束されたCO2排出削減目標が危ぶまれる
ことだ。

発電方法の変更によるCO2排出量の違いは極めて大きい。
環境問題研究会の論文によれば、
2009年時点の現状の原発を維持したケースでは
発電によるCO2排出量は1990年対比で8.8%増加するが、
2020年までに8基の原発を作り63基とし
稼働率を既往ピークをやや上回る88%まで上げるという想定の下では
発電によるCO2排出量は現状対比で年約1億トン減少し、
1990年対比では0.7%減となる。
(更に全ての火力発電を原子力に置き換えた場合は同25.2%減となる。)

裏を返せば、原発の新規計画の中止だけでも
CO2排出量は年間1億トン前後増えることになり、
これを全て排出権取引で賄えば2,000億円の負担増になる。

温暖化は進まないに越した事はないが、
以前に述べたとおり、京都議定書は世界の
二酸化炭素排出量削減に意味のある効果があるとは考えられず、
いわば政治的に仕組まれたゼロサム・ゲームによってお金が
動いているに過ぎない。つまり、
日本政府は、今回の原発事故でこのゲームの参加費用に
少なく見積もっても2000億円支払うことになる。
馬鹿馬鹿しいというほかない。

幸い、京都議定書を主導する欧州諸国でも
今回の原発事故を機に原発の見直しが進んでおり、
この条約を厳格に守るメリットは少なくなっている。

これを機に日本は、脱退も視野に入れつつ、
条約の枠組み変更の提案を含めた交渉を進めるべきだ。
日本での具体的な報道はまだなされていないようだが、
海外では震災直後からこうした可能性は話題になっている。

事故が解決していない現在は
関係者も多忙を極めていることは理解できるが、
政府は震災の印象が強く残っているいまだからこそ、
先を見据えて戦略的に動くべきだ。
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テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

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きっと、そうなんでしょう・・・・・ね

温暖化問題がババ抜きゲームなら、おっしゃるとおりなんですよね・・・・・きっと。

温暖化問題にまじめに取り組む日本の排出削減分を、条約を批准しないアメリカや中国といった大量排出国が、お金を払わず穴埋めする・・・・・ということですよね。

が、一方で、この手の問題は、「あいつバカじゃね?」と評される人がいて初めて、ゲームへの参加者が増える気がします。また、資源の高価格維持についても、産油国間での(といっても、産油国は二酸化炭素排出国にくらべれば圧倒的にすくないのですが)、協力体制を構築することがキーポイントですよね。が、これも原油価格が高止まりした場合、まさにその理由で、石油増産に走る国が出てる感じがします。価格の高止まりは、増産へのインセンティブですよね、おそらく。

素人考えでは、経済的な合理性を話の出発点にして、抜け駆けが存在する協力体制の構築するのは、なんとなく難しい気がするのですが、どうなんでしょうか?

日本みたいに?バカ正直な国が増えて、初めて温暖化問題に対処するフレームが有効になる。そして、フレームの有効性を認識した、アメリカや中国のような国が、あとからその手のフレ-ムに参加する、、、、、、という話に展開すれば、天然でおバカさんな日本は、天然バカだからこそ世界リードできるのかも、なんて思いました。

No title

炭素税みたいなスキームの方が、
排出権のような極めて政治的な方法よりはまだ機能しそうです。
そもそも、うまくいくスキームがないからといって、
うまくいかないスキームを正当化する理由にはならないですし。

CO2排出量規制は、うまく活用すれば発展途上国の勢いを抑えて
先進国が優位を維持することに使えそうですが、
現状ではそれも上手く行ってないわけですし、
京都議定書からはもう脱退しちゃってもいいんじゃないかと思います。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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