国債格付けはママゴト~因果関係を勘違いした人達 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

4月18日にS&P社が、米国債の長期格付け見通しをネガティブに引き下げた。
4月18日のマーケットは、株価は下落、米国債は逆に上昇という結果になった。
いずれにしても、初めてのイベントにしてはインパクトは大してなかったと言ってよい。

私はこういうニュースを聞くと、
格付け会社は相変わらずくだらない作業をしているのだな
と思ってしまう。

流動性の高い金融市場では、
世界中のあらゆる情報がリアルタイムで価格に反映される。

米国債の信用リスクは、米国債価格、外国為替レート、CDS価格
といったものに、人間が知りうる限り100%反映されていると考える他ない。
少なくとも民間の一企業である格付け会社の社員が鉛筆なめながら
書いたレポートの内容は全て価格に反映済みで
発表するまでもないことなのだ。

格付け会社による格付けが有用なのは、
適性な価格が付かないほど流動性が低かったり、
その金融商品自体が現存していない場合に限られる。

最近はどうしようもないことに、格付け会社によるレーティングが
正式にリスク管理指標として使われてしまっているため、
一定のテクニカルなインパクトが生じてしまうが、
そうした金融システムの制度的な欠陥を除けば
格付けの存在は一片の塵(ちり)未満の価値しかない。
塵の動きは予測できないなので金融市場に影響を与えないとも言えないが、
格付け会社の発表は既存の情報を書き直したものにすぎないからだ。

格付け会社を含め、金融市場を取り巻くいくばくかの人たちは、
どうも因果関係の必然性を勘違いしている。

流動性の高い金融商品の価格は全ての情報を反映しており、
その時点で利用可能な他の変数で将来を予測する事は原理的に不可能だ。
例えば、株価が将来のGDP、物価、失業率といったものを
予測できる可能性はあっても、その逆はありえない。
稀に予測できるという結果がでるのは、
事後的に説明変数を選べることによるバイアスか、
事前にそのモデルを知り得なかったからである。

国債の格付けをしている格付け会社、
為替予測や株価予測を行うエコノミストやアナリスト、
財政破綻を騒ぎ立てるブロガー、
ギリシャは絶対にデフォルトしないと言い張る政治家などが、
自分の言ってることを本当に信じているとしたら、それは
Dカップのブラジャーをプレゼントすれば女性はみんな巨乳になる
と思っているのと同程度の誇大妄想狂と言ってよいだろう。

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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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No title

Willy さん

ご存知の通り、私は「財政破綻を騒ぎ立てる」系ブロガーなのですが、破綻が突然起きるまでは、世の中は普通に回っているのではないでしょうか?

もし、津波とか原発事故とかは、必ず起きるのですが、いつ来るかを当てて、今回市場で儲けた人はいないはずで、財政破綻を市場が今の段階で読む事は出来ないと思います。

さて、格付けは、まあ、美人コンテストの様な物でしょう。美人を見るのを商売にして無い人には大いに参考になるという事では。

アメリカ最近、不細工になったねと言われて、納得する人は多いという事ではないでしょうか?

No title

YSJournalさん:

津波とか原発事故とかはそもそも人間が事前に知りえない情報です。
それが「人間が知りうる限り100%反映されている」と書いた理由です。
(ただし、一部のインサイダー情報は除外されるでしょう。)
格付けはアウトサイダーが知りうる情報を元に書かれています。

財政破綻について人間が事前に知りうるかどうかは確実でないとしても、
知りうるのであれば価格に反映されていますし、
知りえないのであればαブロガーにも分かりません。

「大国の債券に対するクレジット・スプレッドは、そのリスクを
分散する方法が限られているため過大に評価されている」
というような考察には意味がありますが、
「GDP比の国債残高を見ると財政は近々破綻する!」
と言っている人には、
「その前に、あなたの論理が破綻してるよ。」
と言いたいところです。
彼らには、財政破綻を定義した上で、
何パーセントの確率でそれが起こるのか聞いてみたいです。

No title

市場の価格は参加者の価値観の集合体です。参加者は一様の分析を行うわけではなく、内部には様々な面において相反する分析手法/結果が存在します。

インサイダー情報であれ公開情報であれ、何がしかの情報を元に分析を行い、結果、このような評価であると述べることは、とある市場参加者の分析手法を知りうるという面において意味があるのではないでしょうか?


格付け会社がその評価を商売にするのは彼らの勝手であって、買い手がいなくなれば淘汰されるでしょう。

No title

>とある市場参加者の分析手法を知りうるという面において意味があるのではないでしょうか?

平均ではなく個別参加者の意見を知りたければそうですね。
例えば、予想の分散を知ることにはそれなりの意味があるかもしれません。
しかし、格付けがその役割を果たせるとはあまり思えないです。
格付け会社は分析手法どころか、
格付けそのものの定義すらきちんとしていませんので…。

>買い手がいなくなれば淘汰されるでしょう。

国債の格付けは勝手格付けなので初めから買い手はいないです。
余ったお金でやっているということですね。宣伝代わりかもしれません。

No title

Willy さん
「必ず起こるとは分かっているが、いつ来る分からないし、直ぐには来ない」思うと、行動としては、来ないのと同じ事になるのでは?

これが、私の思う(「人間が知りうる限り100%反映されている」)です。つまり、リスクはゼロで考えている。破綻は、リニアーではないで、予想不可能という事ではないでしょうか?

工学で言う破壊試験の様な物で、それぞれのピースの破壊点はやっていなければならないのでやっていしまえば壊れて使いもにならないので、やる訳に行かないので、予想も出来ないという事と同じでは?でも破壊は起こるという事では。


No title

YSJournalさん:

例えば国債価格の下落にしても、通貨の下落にしてもリスクが高まるほど、
徐々に多くの人が買わなくなっていくので、シグナルがないまま突然暴落という
可能性は非常に低いと思います。(政府が価格操作していれば別です。)

ギリシャやポルトガル、アイルランドはもちろん、スペインやイタリアだって、
ドイツや北欧と比べて既に信用リスクは顕在化しているわけです。
そういうシグナルがないのに、リスクが高いと主張するのは、
絶対間違っているとはいえませんが、少なくとも非科学的であると思います。

No title

いつも興味深く読ませて頂いています。

金融危機発生以来、格付先の企業から支払いを受けるという構造に問題がある点が指摘されてきた格付機関ですが、分析方法もきちんと定義されていないというのには驚きました。規制当局が代わりを躍起になってさがしても見つからず、とりあえず格付機関に頼るしかない状態のことをWSJで読みましたが、この構図事態、何かが間違っているような気がしました。

No title

>この構図事態、何かが間違っているような気がしました。

まったくその通りです。各国の政府や国際機関がもっとコストをかけて
リスク管理の基準くらい自前で決められるようにしなければなりません。
今のリスク管理は、ブラジャーの公称サイズでry

No title

馬鹿だねwww

No title

>Dカップのブ◯ジャーをプレゼントすれば女性はみんな巨◯になる
>と思っているのと同程度の誇大妄想狂と言ってよいだろう。

実を言うと子供のころ駅で夕刊フジみたいなものを拾って大人の世界を研究するのが趣味だった時期があるんですが、その昔はA◯女優たかがCカップで◯乳だとか騒いでいたことを思い出します。それが今ではなんですか、HだとかJだとか言ってませんか?インフレ状態ですよ。一世代も経っていないのに栄養の行き届いた女性の体格が変わるとは考えられないので、情報がまったくウソという可能性もありますが、社会で使われるスケールが実際に変化した可能性もありますね。

なにが言いたいのかというと、Dカップのブラ◯ャーを女性がみんなつけ始めれば、それが普通なのだという社会的圧力が存在するようになり、それが信じられ続けるといずれ真実になる、という可能性があるわけです。

注:不正な投稿だと判断されたので一部伏せ字です。

No title

毒之助さん:

マーケットの自己実現性はあくまで「多くの人が価値を認める」ことによって達成されるものだと思います。例えば格付け会社がCを付けるのは、毒之助さんがTシャツを着ている女子院生を見て「Cくらいだろう」と値踏みするのと同様であまり意味がないと思うのです。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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