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すごい人の人生は何が違うか? -- このエントリーを含むはてなブックマーク

2年前にWS大に来て初めての学期に学部向けの統計入門コースを教えたのだが、
この時、光っていた学生の一人にビクター君という学生がいた。

彼は顔の右半分が大きく変形して硬直しており、
目も一つしかないし歯も半分以下しかない。
だから、話す時もどもってしまってゆっくりしか話せない。

しかし、とても人懐っこい子で、授業が終わった後にいつも質問に来るし、
最後まで残って色々話しかけて来る子だった。
「僕はナイジェリアで生まれんだけど中学生の時にアメリカに来たんだ」
「将来は医師になりたいから、このクラスでもAを取らなきゃいけない」
「学費で借金がたくさんできて大変だ」
「車をぶつけてしまって、今週からバスで通うことになった」
と毎回のようにいろいろ私に話をして帰った。

彼は学期の前半にあった中間試験で平均以下の点を取ってしまい、
理解度もあまり高くないようだったので、成績の話は話半分に聞いていた。
数学力にはそれまでの勉強量やセンスの違いによる個人差が大きいので、
苦手な子が途中から頑張っていきなりAというのは結構難しい。

しかし、彼は相当必死に勉強したらしく、
毎週の小テストの答案の数学表現がみるみる洗練されていく。
二回目の中間試験後でみんなの気が緩んだ時期に、
彼はついに単独の満点を取った。
期末試験でも頑張って、彼は結局Aを取って学期を終えた。

先月、大学のホームページのトップに彼の写真が載っているのをふと見つけた。
彼は今年卒業だが、卒業式でカレッジを代表してスピーチするという。

彼は子供の時に、neurofibromatosis という
顔の腫瘍が際限なく肥大する病気にかかり、クラスメイトから相当な差別を受けた。
東ナイジェリアにある病院に行ったが、
医師たちに「打つ手なし」と言われた彼は
「何でもいいからして下さい」泣きながらと頼んだそうだ。

彼が15歳の時、彼の姿が宣教師の目にとまり、
ミシガンにあるボランティアの医師によって手術を受けられることになった。
彼は一人でナイジェリアを離れて、デトロイト郊外のオークパークのシスター
の家に滞在し、度重なる手術を受けつつ、アメリカの高校で学んだ。

彼は、幸運なことにシスターの知り合いの援助を受けてWS大に通える事になった。
化学科に進んだ彼は、自分の担当外の仕事でも問題が起こりそうになると
進んで解決に当たることから、指導教授から最高級の評価を受け
医学部入学に向けて準備中という。

彼が凄いのは、腫瘍を神からの贈り物だと考えていることだ。
彼の人生は腫瘍のせいで大変な苦難を伴うものになったが、
一方でアメリカに渡って夢をかなえるきっかけと原動力にもなった。
腫瘍がなければ――彼がそれなりに優秀な子供だったとしても――
ナイジェリアで平凡な一生を終えただろう。
彼は、自分の腫瘍に感謝している。

人は普段、二つのファクターがある時、起こりうる結果をその和と考える。
最貧国の小さな村に生まれたことと、重い障碍を持って生まれたこと。
その二つの和は日の目を見ない人生を想像して人を絶望させる。
しかし、すごい人間は二つの特殊な組み合わせを
自分のチャンスに変えてしまう。

線形回帰分析という統計モデルでは、
こうした現象をinteractionとしてモデル化する。
こうしたinteractionは無視できる場合が多いが、
常に注意を払わないと重要なことを見逃してしまうこともある。

正しい判断を行うには通常、物事を単純化する必要がある。
しかし逆境に陥ったときには、
interactionに活路を見出すという可能性も忘れずにおきたい。


ビクター君についての詳しい記事はこちら
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テーマ : アメリカ生活
ジャンル : 海外情報

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No title

彼がそのような優れた人格を持ったのは渡米後なのか、それとも渡米前からなのか非常に気になるところです。渡米後であれば、ピンチがチャンスに変わった運命や環境が人を変えたと言えるのではないかと思います。

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No title

troさん:

あくまで想像ですが、僕は彼がアメリカに来ることができた理由は病気だけではなかったと思っています。

感謝の力?

はじめまして。いつも楽しく記事を拝読させて頂いています、
kumasukeと申します。

不覚にも(?)感動してしまいました(笑)
大変な病(腫瘍)にも関わらず、その腫瘍に感謝しているということに驚き
ましたが、それが人格を形作るのかなと妙に納得するところもありました。
感謝を忘れた人は、とても醜くなりますから・・・。
Willy先生との会話を見ていると、ビクターさんには、どこか人懐こいところが
あるように思います。人が大好きなんじゃないでしょうか?
だとすると、お医者様にはもってこいの方ですね!

WS大学ホームーページにあるビクターさんの優しく、そして自信あふれる笑顔が
とても印象的でした。

半年前から「いっちょやってやるぜ!」とはじめた英語を勉強中でして、
ちょうど今挫けていたところでした(笑)
この記事を読んでガツンときましたよ!当初のバカ高い自分の夢を思い出しました。
かなり反省させられました。
ありがとうございます。ビクターさん。Willy先生。

ところで、アメリカの大学では他の研究を助けるということがあるんですね。
もっと、個人の問題は個人で解決するという考え方で、勉強や研究をしている
とばかり思っていました。ビクターさんの行動は普通なんですか?

No title

kumasukeさん:

アメリカにも他の人の事まで考える親切な人はいますが、日本のような
評判社会ではないので、親切な事をしてもその見返りが少ないです。
だから親切な人はどうしても少なくなってしまう傾向があるように思います。

No title

チベット的な考えというか、自分には到底及ばない世界です。
ビクター君、きっと逆境をばねに立派な医師になりますよね。

No title

tsukiyono さん:

成れると良いと思っています。一方で米国の医師はコミュニケーション能力が特に重視されるので、彼が普通の人と同じスピードで話せない事はやはりハンディになっていると思います。でも仮に成れなくても、きっと彼は素晴らしい人生を歩むでしょうね。

No title

状況がベストでないとき、不平不満を言い続けるか、ポジティブさをキープできるかはもって生まれた性格が大きいような気がしますが、ポジティブに頑張り続けられる人は魅力的だな~と思います。私もそうなりたいです。

No title

ブルースさん:

うーん、私は単にポジティブさを保つというのとは少し違うような気もするのです。
逆境をチャンスに変える適切な主体的な判断がなされているのではないか、
という印象を受けます。

はじめまして。ブログの記事、いつも楽しんでおります。

「人生のスゴい方」と聞くと、僕は飛び抜けた能力・個性を持った方を想像してしまうのですが、逆境をチャンスに変換できる方だったんですね。ビクターさんには是非素晴らしい医師になって欲しいです。

No title

lazybirdtsさん:

いろんなタイプのすごい人がいると思います。
飛び抜けた能力・個性は模倣できないので、
今回のような話の方が読む方に響くのかも知れません。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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