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確率と統計、数学と科学 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

WS大では4月の終わりに高校生を対象にした講演会があって、
S教授、K教授、それに私の3人が30~40分ずつ
統計のコースを履修している11年生、12年生(高校2、3年生)の前で話をした。

私は自分が高校生の頃を思い出して
「統計学に興味を持った理由」を話して学生の興味を惹きつつ、
「統計学でウソをつく法」という有名な本からタイトルをもらって
最近の雑誌記事を元に統計でどういうトリックが使われているか、
という話をした。

それに対してK教授はもう少しアカデミックに、
確率論と統計学の違いについて説明した。彼の答えは
「統計学はギャンブラーのためのもので、
確率論はカジノの設計者のためのものだ」

という簡潔なものであった。
これはなかなか上手い説明だと思う。
すなわち、統計学とは、真実が分からない中で
利用可能な情報からどうそれを解明するかを研究する学問で、
確率論とは所与の数学構造の系として性質を導く学問である。
この二つの分野は、数学的手法という意味ではほぼ同じものを
使っているが目的意識にはかなり大きな隔たりがあるように思う。

私は、確率論の難しい理論はあまり知らないけれども、
例えば確率論の人の数理ファイナンスに関するプレゼンを聞くと、
「それはお前の脳内の話だろw」
と思ってしまうことも少なくない。
一方で、確率論の人がファイナンス統計の発表を聞く時には、
「お前は、研究者なのか証券マンなのかどっちなんだw」
と思っているに違いない。

私は「数学は科学ではない」と考えているが、
統計学を科学と呼んで良いかどうかにはちょっと自信がなかった。
しかし、科学(science)の定義を、

Science is an enterprise that builds and organizes knowledge in
the form of testable explanations and predictions about the world.
科学とは一種の試みであり、知識を積み上げたり体系化したりして、
世界に関する検証可能な説明や予測の形をとるもの。(Wikipedia)

とするならば、数学と科学の境界の一部は、
どうやら確率論と統計学の間あたりにあるのだろう。


そう考えると、確率論と統計学はとても近いようで、
その溝はとても深いもののようにも思える。

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テーマ : 数学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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確率・統計

こんばんは。Willyさん。
高校生のころ「確率・統計」という数学の授業がありました。
てっきり、確率と統計は兄弟以上の関係だと思っていました。
私は大学で、物理の勉強をしていて、驚いたのが量子力学と統計力学でした。
どちらも確率と統計の考え方を元にしていたので、厳密な理論によって成り立つ
物理学が確率と統計でしか記述できないなんて・・・とショックを受けたのですが、
あまりにも様々な事象が説明できるので、確率統計ってすごいんだな~と感心
しきりだったことを覚えています。
それが、Willyさんが「確率と統計の間には深い溝がある」とのこと。
学問ってのは深いんですね。
会社に入って、別の意味で統計の大切さ(情報の収集、分析、データ解析等)を
しみじみと感じています。機械設計の公差計算では必須ですし。
学校でもっと確率と統計を勉強させるべきだと思うのですけどね。
(個人的には物理が大好きなので、量子力学と統計力学は高校生で勉強できない
かな~と思うのですが・・・)

No title

量子力学と統計力学って、勉強したことないんです。
そのうちやってみたいものです。何年先になるやら…。

No title

僕はシンプルに、現時点で観測しうる自然との整合性を問われるのが科学、と考えてます。確率もベイズとfrequentistの違いとか主観が入る余地がおおいにあるようですから、なにをもって「真実」により近づいているかを判断する場合の指標が必要ですね。それが自然との整合性であるなら科学、厳密に論理的に正しくさえあればよいのなら、数学とか論理だとかいった感じで。

どちらにしろそういうことばかり考えていると貧乏になります。

No title

毒之助さん:

もう難しすぎですね。どこまでを「自然」や「世界」と解釈するのかによります。

No title

悪用できるのが科学ですよ。統計は完全に科学ですね。
確率論はおっしゃるように微妙なところに位置してると思います。

No title

axeさん:

なるほど。悪用できるのが科学ですか。
でも、経済学は検証可能でない理論が多いのをいいことに悪用されている!
政治学とか、多くの社会科学もそうですね。
まだ成熟はしていないけど本来的には科学、という感じでしょうか。

No title

willyさんにお尋ねしたいのですが、日本で統計の研究をしたいとなるとどうすれば良いのでしょうか。大学は数学科で、シミュレーションをしていました。

統計学を何かに使うということよりも手法の洗練に興味があります。
適切な言葉かはわかりませんが統計学の基礎研究とでも言えば良いのでしょうか。
無論、使うことが嫌だというわけではなく、軸をそこにという意味です。

例えばいくつかの手法の誤差解析をやって極限を取ってみたら実は同じだった。
といった感じです。

大学時代の様々な現象をシミュレーションは微分方程式に落としこんで計算機を回して検証という感じだったので、特定のキーワードにこだわる必要があまりありませんでした。
例えば人間のヒフの再生であろうが雲の動きをであろうが方程式を上手く立てれば+αの生物だったり地球に関しての知識はほぼ必要ありませんでした。

なので『統計学を使ったモデリングは何でもやります。今、手がけているのはこれです』
といったスタンスでやりたいという気持ちがあります。

総研大に統計学の学科があり、これが日本唯一だと思うのですが、ここに進学するというのはどうでしょうか。

よろしくおねがいします。

No title

azalさん。

総研大で統計学というと、統計数理研究所のことですね。
いわゆる統計学科はそこしかないので、第一候補になるうると思います。

統計学に関連する研究ということであれば、東大の情報理工学研究科や各大学の数学科や情報学科、経済学科などでもやっています。阪大の基礎工学部などもあるかも知れません。あとは、個別に自分の興味のある事をやっている教官がいるかだと思います。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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