全てを人口減少のせいにするのは無理がある -- このエントリーを含むはてなブックマーク

Chikirinさんが最近のエントリー
「日本の将来を規定する最も重要な要因は、人口構成の変化だよん」と述べている。
確かにそれは、今後50年といった超長期で見たときにはある程度正しいと思うが、
それを、例えば、失われた20年の主な理由とするのは行き過ぎであると私は考えている。


理由1:人口減少は80年代には既に分かっていた

下の人口動態の図を見ていただくと分かると思うが
少なくとも1980年代(昭和55年~平成2年)の半ばには
日本の出生数減少は明確なトレンドとして明らかになっていた。
また女性の初婚年齢は、90年代以降に急速に上がっているものの
トレンド自体は80年代から既に明確であったことが分かる。

人口動態
(出所:人口動態統計速報)


初婚


(出所:http://www.garbagenews.net/archives/1219043.html
元データは人口動態調査)

しかし、80年代を通して日本はこれからの世界をリードする
経済大国としてもてはやされていたし、株価は上昇を続けていた。
これはあくまで世界が、日本が人口規模によってではなく
高い技術力に基づいてハイテク分野や金融での地位を更に確固たるものにするだろう、
という期待に基づいてことを示唆する。


理由2:過去20年の日本の経済問題は人口減少問題と逆

人口減少の基本的な問題は労働力人口の減少と財・サービス需給の逼迫だ。
すなわち、現役世代の比率が低下することによって生産力が落ち、
財・サービスの需給が逼迫する。生産は落ち込む一方
賃金や物価は上昇して、スタグフレーションに陥る。

しかし、過去の20年間に日本に起こったことは正反対だ。
失業率はむしろ上昇し、名目賃金は90年代のピークに
くらべ10%以上減少している。
円は実効レートでは下落しているにもかかわらず、
物価も賃金とほぼ同じペースで下落している。

これらの事実は、日本経済の不振がむしろ、
人口構造の変化ではなく、
新興国の追い上げによる産業競争力の低下によって
引き起こされていることを示唆している。

逆に金融政策がそれほど緩和的でないのに、
大方の経済学者の予想を裏切って
デフレスパイラルに陥らないのも、物価が趨勢的には国内的な要因よりも、
中国産製品の輸入などによる外部的な要因を
大きく受けていることを示唆している。

多くの人々は10年前、団塊世代が引退すれば
労働人口の減少問題が顕在化して相当なインフレが起こるだろう、と予測した。
その速度が一番強まるのは2012年前後だが、
1年前になってもその兆候が全く見られないことを考えると、
人口要因は現時点ではまだ主要な問題とは言えないことを示唆する。


理由3:冷戦崩壊との奇妙な一致

私がどうしても偶然とは思えない出来事の一つが、
日本のバブル崩壊と冷戦終結がほぼ同一時期だったことだ。
日本の株価のピークと冷戦終結が決まったマルタ会談は両方とも89年12月である。

もちろん日本のバブルの直接の原因は、一般的には
プラザ合意後の円高克服と消費税導入のための極端な金融緩和であり、
その後の極端な金融引き締めと不動産の総量規制だったと考えられている。
見たところ、二つが一致しているのは偶然という側面が強い。

しかし、なぜその後資産価格は永久に回復しなかったのか?、
なぜ米国政府は日本の重大な金融危機に大して介入しなかったのか?
といったことを考え合わせるとやはり偶然だとは思えないのだ。


1997年まで人々は、日本はいつかまた昇るのだ、と信じていた。
1997年に金融危機が起こって人々は、
日本の問題は深刻で構造的なものだと気付いた。
2007年以降、アメリカの不動産バブルの崩壊、団塊世代の引退、
若者の就職難、デフレの継続を通して、人々が気付きつつあるのは、
日本にとっては人口問題よりもグローバル化による影響が実は途轍もなく大きかったのだ
ということではないだろうか。
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ジャンル : 政治・経済

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No title

宋文洲氏も、似たような事を言っています。

自信はそんなによいものだろうか: 宋文洲のメルマガの読者広場
http://www.soubunshu.com/article/211401295.html

今の日本がダメだとすれば、それは問題に取り組まず、放置してて来た結果なのだと書いています。

日本の枠内ではなく、外から日本を見ている人は、同じような結論に達するのでしょうか。

No title

KKMMさん:

宋文洲さんは昔から自分の頭で考えるタイプの人ですね。震災後の日本は雑誌をみてもネットを見ても、原発とか日本復活とかそんなのばかりで本当につまらなくなりました。しかもピントがずれています。

原発建てないことにして電気料金が上がれば、工場が海外流出して電力需要も減るから火力発電所を作る必要は多分ないです。「工場を海外に移したら非国民」みたいな馬鹿な同調圧力を無くせば解決ですよ。火力発電所建設の話とか聞くと、むしろ日本人はどれだけ楽観的なんだ、と思います。福島県東部の農業も全然復活する必要ないですよね。作っても売れないか、産地ごまかして売るしかないんですから。食の安全の方が大事でしょう。

そうじゃなくて、工場が海外流出し、元農業従事者が失業した時に、どうやって日本を回していくかを考えないといけない。それは古き良き日本に拘わらずに個人が変わらないといけない、っていうことなんですよ。

そういう事を書くと「人事だと思って」みたいに言われますが、私の親戚には福島の沿岸部で農業やっていた人もいますし、日本で自動車部品作っている人もいます。私だって日本は少子化で大学の仕事がないから、不便な環境で働いてるわけです。
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Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

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