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こんなんでいいのか、うちの学科の修士課程 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

月曜日に数学科のオフィスにふらっと寄ったら
修士課程の中年の外国人学生から声をかけられ、
「私は数学科の修士課程の学生で、
確率統計の修士を取るためにエッセイを書かなきゃ
いけないんだけど、指導教官になってくれないか?」

と頼まれた。

アメリカの修士課程は修士論文が必須ではないので、
この学生の場合は論文は無しで、20~30ページのレポートを書けばよい。
コースワークは既に終わったとのこと。
しかし、もともと電気工学の学生で、
確率論や統計学にあまり興味がなさそうである。
取りあえず確定的な返事を保留しつつ、
今日少し話をしてみたのだが…

私「今までにどんなコース取ったの?」
学生「これがリストなんですけど…」

abstract algebra,
real analysis,
advanced statistical theory,
control and stochastics, …
と数学科の科目が並んでいる。

私「どのコースが面白かった?」
学生「…」

私「コンピューターでデータ分析したことある?」
学生「ありません。」

私「サーベイとデータの分析ならどっちがいい?」
学生「分析やったことないし、サーベイの方が…。」

私「Advanced Statistical Theory って何やったの?」
学生「A先生のだけど、3年前のだし難しくてあんまり覚えていなくて…。」
私「A先生だったら、minimax の話とかしたのかな?」
学生「そうかも知れません…。とにかく理論だけで難しくて…。」

私「あなたは電気工学の人だし、optimal control のクラスなんか
  とってるから安定性とかには興味あるのかな。僕は時系列だから、
  非定常性のテストのサーベイなんてしたらどうかな?」
学生「?????」

私「今までに統計学で何を勉強した?」
学生「あんまりやってないけど、私一生懸命やるタイプ
   だから大丈夫だと思います。」


私「回帰分析はどのくらいやったことある?」
学生「???」

私「例えば、ここに20人の学生が二つのテスト受けた結果の
  散布図があるけど、スコアには相関があるよね。
  だから、トレンドラインを引くと一方が他方で説明できるわけだけど。」
学生「やったことありません。」

私「うーん、そうか。えーっと、線形代数とかはやったよね。」
学生「線形代数?」
私「(あれ?外国人学生だから用語が分からないのかな?)
  行列とか、線形写像とか、カーネルとかについてのことだけど。」
学生「やったことありません。」
私「3×3の逆行列とか意味分かる?」
学生「…。」
私「うーん、統計の計算って全部行列だからなあ…。」

私「カイ二乗検定とかは分かる?」
学生「カイ二乗??」
私「例えば、こういう風に2×2の表があって、
  そこにパターンがあるかを検定するわけだけど。」
学生「検定??パターンがあるかどうかチェック
  するっていう意味は分かりますけど!」

私「じゃあ、分布って何種類くらい知ってる?
  t-分布とかF-分布とかは知ってる?」
学生「…。」
私「正規分布は分かるよね。」
学生「あ、聞いたことあります。」
私「じゃあ、どんな形の分布かな?」
学生「…。」
私「あ、口で説明するの難しかったら黒板に書いてみて。」
学生「…。」

私「うーん、取りあえず基礎的なこと勉強してから
  レポート書いた方がいいと思うんだよね…。
  とりあえず学部向けの統計入門の
  教科書読んで勉強しておいて。」
学生「私、一生懸命やるタイプですから任せといてください!」

私「レポートか…。そうだなあ…。とりあえずレポートは
1) いろんな統計分布の種類について調べて、
  2) その使用例についてまとめ、
3) ソフトを使って計算例を示す
  ってことでどうかなあ。」
学生「計画を書いた紙を提出しないといけないんですが…。
   題名は…「統計分布」でいいんですか?」
私「もうちょっとおしゃれな名前にした方がいいんじゃないかなあ…。
  "統計分布とその応用についてのサーベイ"ってことでどうかなあ。」
学生「あ、なんかいいですね!概略も書かなきゃいけないんですが…。」
私「(自分で書けるわけないよな…。)
   じゃあ、こんな感じで…。
  (テキストパッドにざっと箇条書きにして体裁を整える。)」
学生「ありがとうございます!E-mailで送ってください。」
私「うーん、でもこれで修士のレポート案として認められるんだろうか…。」
学生「大丈夫ですよ!修士のプログラムの長は、統計知りませんから!」
私「そういう問題でもないような…。
  ちょっと他の統計の人に聞いてみるからしばらく保留にしといて…。」
学生「分かりました!あんまり心配しないで下さい!
   私、一生懸命勉強するタイプですから!」

私「…。」

名誉のために言っておくと、修士でも凄くできる学生もいて、
一流大の統計学科の博士課程にそのまま入っても、
間違いなくトップクラスの成績を取れるだろうという人もいる。
また博士課程は学科が学費や生活費を出すので
優秀な学生以外は呼ばない。

しかし、こういう学生を見てしまうと、
数学科に表向きだけ統計コースを作って
統計学の名前をつけた修士号を与える代償はあまりに
大きいと感じるのであった。

注:
自分の大学のことなので書くかどうか迷ったが
どうせ日本語だし書いてしまった。
日本の大学にいたらとても書けない(笑)。
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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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No title

学部4年でも線形代数や回帰分析や正規分布がわからない学生がいるとは思えない
一生懸命頑張るというのでそこに期待しましょう

No title

darry129さん:

回帰分析や正規分布はともかく、線形代数は言い訳不可能な感じがしますが、
まあそこは突っ込みなしと言うことで…。

No title

まず彼が入学できた事が不思議です。
admission requirementとかで基礎的なクラスを
していないのですか?

No title

今、すっごくその気持ちがわかります…
こういう人にどうやって教えたらいいんでしょう?頭が爆発しそうです><

No title

tacさん:

修士の受け入れは財政的にメリットがあるので全入に近いのでしょうね。

松本さん:

その学生について何人かの教員から意見を聞いたのですが、
「学科にとって懸案事項なので一刻も早く卒業させるべき」という意見と、
「君が教えるかどうかは選択の問題だ(教える必要はない)」
という意見があり、悩むところです。

どうも、その学生は特殊な点が多いようで、
他の学生でそこまでひどい人はいないようです。

どこの国の人だろう?

Willy さん
『中年の外国人学生』と特定していない所が気になります。

普通に考えると、中国人かインド人という結論ですが、インド人だと「私一生懸命やるタイプだから大丈夫だと思います」というセリフは口が裂けてもいわない様な確信があります。中国人にも似合わない気がします。

という事で、ベトナム人の予想でいかがでしょうか?(もしくはシンガポール、ちょっと拡げて、その間の半島のどこかの国?)

非公開なら、こっそりメールで教えて下さい。

No title

確率統計って就職がよかったりするのですか?
その学生を言い回しからは とりあえずこの学位があったら後はどさくさで何かなるんでお茶を濁したい みたいなノリを感じます。

No title

axeさん:

いやぁ…別に卒業したところでどうにもならないと思うんですが、
「どうしても○○学の大学院を卒業したい!」みたいな変な学生、日本にもいません?
そういうノリです。

学科のほかの教員に話を聞いたところ、ずいぶん特殊な人のようなんです…。
エッセイを書くのはどうも厳しそうだという感じなので、
おそらく指導はしないことになりそうです。
うちの大学ではいくつか余計に単位を取ればエッセイなしでも修士は取れますので。

No title

なるほど.
日本の大学にいたら,やはり自分の大学のことを
日本語で書くのはマズいんですねっ!
最近,インターネット上で要らぬこと言って干される人が多いようなのですし,
Web以外に愚痴の吐き捨て場を作らないといけませんね.
今日も勉強になりましたw.

No title

カメさん:

それは内容によるんじゃないかとは思いますが。

No title

こんにちは。経済学の博士課程にいまして、労働、医療と経済統計をやっています。今年から、統計学の修士もとり始めます。数学とか工学系の院生で、何も知らないとはすごいですね。特殊な例なのでしょうが、こちらでも、「こんなんでいいのか」という課程・学生は修士でも学士でも沢山あります。博士でも修士レベルの論文のことも多々あるし(自分の論文もなんですけれど)、うちの学科でも、人数だけ欲しいというのが見え見えで嫌になってきます。

No title

だ さん:

米国の博士は日本の修士と博士の中間くらいだ、
という人がいますが、概ね当たっていると思います。特に理系は。

No title

こんにちは。全く関係ないものを検索していてこのブログにつきました。

>こんなんでいいのか

学校としては駄目な気もしますが、学生の方は就職目的なら「卒業」しちゃえばあとは
その人のコミュニケーション能力の方が大学在学時の成績より大事かもしれませんね。
それを言うなら卒業なんてしなくても交渉能力が秀でていれば在学時からたいした業績を
あげなくてもそれなりの地位についたり、職にありつけたりすると思いますが。
その学校では、学科はともかく14歳ぐらいで卒業した子もいたし、18歳以下ぐらいならかなりの数の生徒がいたと思いますが、ああいう子たちのその後ってあまり聞かないですね。14歳でミシガンの大学を卒業するより、17歳でハーバードに入学した方がやはりいいんでしょうね。ロウスクールなんかだとその傾向が顕著だと聞きますよ。どこを卒業したか、が大切でどうやって?はどうでもいいそうです。そのあたりは日本と少し似てますね。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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