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通貨という錯覚 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

近年、通貨のバランスは大きく変わってしまった。
米ドルと英ポンドはほぼ全ての通貨に対して下落し、
その後、ユーロも欧州通貨危機によって下落する一方、
資源国の通貨は高値安定、円とスイスフランは急騰した。

そんな中、メディアで報道されるニュースは
「通貨の名前」にあまりにも依存しすぎており、
そのまま鵜呑みにすると重要な点を見逃す。
2つの例を取り上げてみよう。


1.ギリシャ国債で取引されているのは債券ではなく通貨

ギリシャの国債の利回りの急騰は、
英語のニュースでは日常的に取り上げられている。
このあたりにあるように、
先週末時点で2年物利回りが107.16%、10年物利回りが26.63%となっている。
高水準の利回りはもちろんリスクプレミアムであるが、
非常に大きな逆イールド(短期金利が長期金利より低い状態)を考えると
これをユーロ建て国債の信用リスクと解釈するのには無理があるだろう。
例えば単純な単利計算で、
10年物国債の当初2年間の利回りを107.16%と仮定すると、
残り8年間の利回りは2.07%しかないことになる。
これは、ドイツ国債の同期間の先渡し金利2.15%をも下回る。
つまり、ギリシャ国債は当初2年間さえ乗り切れば
ドイツ国債よりも安全な投資先という結論になってしまう。
この見方は正しくない。

一方、この利回りを額面100ユーロあたりの割引債の価格と考えると、
単純な単利計算で2年物は27.3ユーロ、10年物は31.8ユーロとなる。
最近のギリシャ国債価格の特徴は、
この額面あたりの価格が年限を問わず同じ水準に落ち着く事だ。
すなわち、投資家はもはやギリシャ国債の支払い通貨がユーロで
あるとはみなしておらず、ユーロ脱退を見越してドラクマ
(ギリシャの旧通貨)の取引を「ギリシャ国債を通じて」
行っているに過ぎない。これは現時点でドラクマを取引する最も
簡単で便利な方法の一つだということだろう。

統一通貨ユーロとは、欧州各国が固定相場制におしゃれな名前を付けたに過ぎない。
そして、通貨の闇レートが、国債利回りと呼ばれているにすぎないのだ。


2. 買われているのは円ではなく人民元

円ドル相場は、2007年6月の直近安値124円台から
先月末の75円台まで一気に値を上げた。
対ユーロでもほぼ同率の上昇を見せており、
対ポンドに至っては安値からの上昇率は100%を超えた。
これは、日本と欧米の金利差の縮小、更に言えば、
欧米の経済が悪化した事で日本が相対的に浮上したと解釈されること多いが、
果たして日本経済はそこまで強いのだろうか。

2011年の日本の貿易収支は31年ぶりの赤字が見込まれる一方で、
お隣中国は昨年とほぼ同水準の1700億ドルもの貿易黒字を計上する見込みだと言う。
中国は、為替レートの自由化を頑に拒んでおり人為的に安い人民元を維持しており、
今後人民元は上昇が約束されていると言って良い。

固定相場による将来の通貨下落リスク(ここでは人民元以外の通貨の下落リスク)
は最終的に誰かが負担しなければならない。
通貨取引が制限されていれば中国以外の投資家がそれを負担するし、
介入によりレートを維持していれば外貨を買った中国政府がそのリスクを負担する。
いずれにせよそれを負担する人は何らかの方法でリスクをヘッジしようとするだろう。
人民元が今後上昇するリスクをヘッジするに投資家は何をするだろうか?

日米中の3カ国を取って考えてみよう。2010年の貿易統計を参考にすると大雑把に言って
中国は、米国に年間3600億ドル輸出し、米国から900億ドル輸入している。
中国は、日本に年間1300億ドル輸出し、日本から1300億ドル輸入している。
なお日本から米国への輸出は1200億ドル、米国からの輸入は600億ドルだ。
また日本と中国の経済規模はほぼ同じで、米国は日本の約3倍の規模がある。

人民元が大幅に上昇した場合、日本は貿易面で大きなメリットを受けるが、
米国の交易条件の改善は経済規模に比して大きくない。
結果、円は人民元に合わせて上昇することが見込まれる。
仮にその上昇幅が人民元の対ドル上昇幅の3分の1と見込まれるとしよう。

米国の投資家にとって、この人民元の上昇リスクを回避する簡単な方法は、
ヘッジしたい人民元の3倍の円を予め買っておく事
だ。
他国の投資家にとっても同様で、
やはり3倍の円を買建ててドルを売り建てることになる。

円は、日本経済の安定感というよりは、
虎(人民元)の威を借る狐といった面が強い
ことも考慮しておくべきだろう。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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No title

この割引債の価格のくだりがよくわからなかったのですが、
額面100ユーロの国債価格が2年物は27.3ユーロ、10年物は31.8ユーロということは
現時点では将来的なユーロとギリシャ通貨の闇レートが1:3~1:4ぐらいにあるということでしょうか?

No title

>人民元が大幅に上昇した場合、日本は貿易面で大きなメリットを受けるが、
>米国の交易条件の改善は経済規模に比して大きくない。
>結果、円は人民元に合わせて上昇することが見込まれる。

ここのロジックが意味不明です。

貿易面メリット享受=貿易収支改善=円高というロジックなのでしょうか?

もしそうであれば、
「2011年の日本の貿易収支は31年ぶりの赤字が見込まれる」のに
歴史的円高となっていることは矛盾になっていますよ。

矛盾したロジックを前提としているので、
そこを解消しない限りこの記事は成り立たないと思います。

No title

izuさん:

大雑把に言ってそういうことになっている、と私は思っています。

はてけんさん:

為替の一部分は、貿易収支や経常収支によって決まりますが、
現在のそれだけでなく将来の期待を反映されて決まることに
注意されて下さい。

No title

前段に関しては「2,3年前まではそうじゃなかった」ですよね。市場のフォーカスが当たって裁定行われている最中ということなんでしょうね。

後段に関しては気付かされた感じでかなり納得感がありました(当然異論のある人もいるでしょうけど)。

とは言え120円の頃と今の中国の為替政策がそうそう異なるわけではない(その時から固定相場で将来通貨高が予想されていた)訳で、それを過信してこれからの取引に反映させるととあっという間にオケラですね。

今後の円相場を予想出来るという話ではなく「現在を説明すると」という感じの話でしょうね(今の相場が上のヘッジを織り込んだ上で既にオーバーシュートである可能性も否定できないですし)。


まぁ正直言えば円高で帰省出来ないので早く虎の威だと市場が気づいて円安になってほしいです(苦笑

No title

マルマルさん:

中国の為替政策は120円の頃と大差ないわけですが、米中間の貿易量、中国の経済規模と外貨準備高はその頃とは様変わりしています。上の説明は、その点では consistent なのです。

ただ、おっしゃる通りそれを以て将来を予測できるというわけではありません。どこかの時点で、日本円は一足早く、人民元の切り上げによる対他通貨でのアドバンテージを反映してしまうでしょうし、オーバーシュートする可能性すらあるわけですから。

No title

いまさらですが2.07%はどこから出てきたのでしょうか?
単利計算では2年物リターンが314.32%、10年物リターンが366.3%になるのでここから2.07がどう導かれるのかわからないです。

それと割引債価格について0.273の逆数が3.663なのでこれは2年物と10年物は逆ではないでしょうか?

No title

2.07%は、2年後受け渡しの8年物先渡し金利を、現在の2年物、10年物金利から逆算した時の
年利回りです。金利は単利計算です。

2年物と10年物の額面に対する価格は確かに逆ですね。おわびして訂正致します。

償還率

逆イールドは単に倒産が確実視されたら信用スプレッドよりも償還率が重要になるというだけです。ゼロクーポン債で考えると、
償還率20%固定で倒産確率1なら価格は20になるので、1年債の利回りは名目上は400%、10年債の利回りは17%です。
これに通常のクレジットスプレッドを適用する意味はありません。

よくわかっていないなら変なエントリを書かないでください。

No title

あー、確かにそれだけですね。ってことは、逆にイールドカーブの形状に
いくつか仮定を置けば、デフォルト確率も推定できるってことなのかも知れませんね。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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