海外から振り返る3・11 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

東日本大震災が起こってから間もなく1年になる。
亡くなった方のご冥福を改めてお祈りするとともに、
いまなお震災による被害に苦しんでいる方には
前向きに頑張って頂きたいと心から願う。
今日は、海外に住む日本人から見た3・11について書きたい。

1.全ての関心は日本に

震災は米国時間では金曜日の未明に起こり、
金曜日から春休みでハワイのカウアイ島に行く予定であった私は
インターネットニュースで震災のことを知った。
大きい地震ではあったが、
震源が比較的地震に強い東北地域であったこと、
また、取引中であった東証に大きな混乱がなかったことから、
被害は限定的なのではないか、
というのが最初の印象だったのを覚えている。

空港に行くとニュースでは津波のことを大きく取り上げており、
ロサンゼルス空港につくと日本の報道関係者が、
日本行きの便に乗れなくなった人を探して
インタビューをしていた。
ハワイのコンドミニアムに連絡すると、
津波の危険があるので一晩閉鎖して全員避難しているという。
幸運にも中西部の雪による飛行機の遅延で
ロスで一泊足止めを食らったため混乱に巻き込まれずに済んだ。

ハワイに着くと、ニュースは震災と津波、原発事故一色で
その重大さに気付き、部屋にいる間はテレビに釘付けになった。
震災一色だったのは最初の4~5日だっただろうか。
その後も関連ニュースは多く流れたが、
リビア関連のニュースなども増えるようになってきた。


2.日本と感覚がずれはじめる

1~2週間ほど経つと、
主要な問題が原発事故であることが明白となり、
エネルギー供給問題と温暖化CO2削減問題に影響が出るだろう、
ということが分かって来た。

CO2削減問題に注目している人はいるだろうかと検索すると、
(確かブルームバーグが)
日本が京都議定書に対するのモラトリアムを要求するのでは
という記事を配信しているものの、日本発の記事が無い事が
分かり、さらに1週間ほど経ってからブログ記事を書いた。

事故のなかった原発は止めずに稼働させる方が
無難な判断であろうと思ったが、
同時に日本人のリスク感覚からすれば
過剰反応が起こるに違いないとも思った。

民主党政権はずいぶん叩かれていたが、
リスクに敏感な日本であれだけの大事故が起こっているのに
パニックにならなかった点を鑑みれば
割とうまくやった方ではないか。

一方でこの時期、米国で良かったと思う事は、
日本を支援するための募金活動やセールが頻繁に行われ
米国人にとって日本を身近に感じる機会が多かったことである。
大学でも、ベークセール(手作り菓子の販売収益を寄付するセール)
や講演会などが行われた。


3.日本に対する違和感と無関心

私は、日本から東洋経済などを送ってもらって読んでいるのだが、
震災を境に、状況が落ち着いた後も、雑誌は震災関連記事ばかりになり、
おしなべてつまらなくなった。

例えば、
太平洋側の沿岸部や福島の農業は甚大な被害を受けたが、
その経済規模は小さく元々競争力の低い産業である。
大事な事は、そうした地域にいた方々を
なるべくスムーズに新しい土地や産業に移す事であり、
そうしたことを支える上でも、
それ以外の地域・産業を強化して、
被害地域を支えることが必要がある。

しかし、世論の関心はほとんどいつも「復興」にあった。
大前研一などこうした動きに異を唱えた人も多いが、
私も「復興」というアイデアに賛同できない。

何かを持っていることと、
それがなくなった時にもう一度手に入れることは別だ。
過去のしがらみがなくなった時、
往々にして最良の選択肢は
かなり異なる方角に進むことだ。

多くの日本人が勤勉で優秀であるにもかかわらず、
長期にわたって日本の経済停滞している原因の一つは、
新しいことをやる勇気が足りないことにある。
朝から晩まで一生懸命働く事は尊いが
時として、頑張りすぎずに失業して全く別の仕事に移る方が、
社会のためになるということが少なくない。
それが社会や経済の柔軟性につながるからだ。
日本には、「柔能く剛を制す」ということわざがあるのに
過去半世紀の日本は「剛」ばかりだ。

政府主導で沿岸の被害地域の高台に
新しい町を建設する「エコタウン構想」に至っては
日本の為政者の感覚は、旧社会主義国のそれと大して
変わらないのだな、という印象を抱くに至った。

昨年夏の節電に関する動きも、
被害を受けた地域・産業以外を強化して被害地域を支える
という感覚からすると違和感を感じざるを得なかった。
震災直後の大規模停電の恐怖をテコにした
集団ヒステリーのようなものであったと思う。
叩かれるのを承知で何度か節電反対のブログエントリーをしたが、
その後出てきた電力使用量や供給能力のデータ、
貿易赤字の推移や、製造業の新製品の遅れなど
何を見ても当時の日本の世論と政治判断は常軌を逸していた。

全般に震災後の日本は、
外から見ると以前にも増して不可解になった。


4.紅白

娘は年末の紅白が好きなので、
日本から録画してもらったものを毎年送ってもらっているのだが、
これまた震災一色で日本に対する違和感の総決算という感じであった。
「フクシマ」を歌詞に複数回入れれば誰でも紅白に出れるというのは、
明らかに便乗だろう。

紅白初出場の少女時代は、
AKBよりもスタイルが良くてダンスもうまい。
AKBが勝っているのはきわどいランジェリー姿の時の
セックスアピールだけで、
アジア諸国から見た現在の日本の姿にぴったりである。

思えば2011年は、震災以外にも、円高やタイの洪水もあり、
製造業を初めとした日本企業は大きく苦しんだ。
いまや米国では、テレビのブランド力トップはサムスンだし、
CESでも存在感があるのは韓国企業のようだ。また、
ヒュンデやキアの車はトヨタやホンダより遥かに見栄えが良い。
(日本の独壇場になっている分野もあるにはあるのだが・・・。)


一方で、一年の区切りを大事にする日本人は、
紅白で2011年を最後に振り返ることで
きっと2012年からはまた気持ちを新たにして
頑張るに違いないと感じた。
実際、今年になって日本の雑誌も少し外に目が向き始め
面白いと思えるようになってきている。



震災から1年を迎えた今、海外から分かりやすい形で
存在感を示せる日本に戻って欲しいと願っている。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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節電の夏

今年も夏は節電で乗り切る方向のようですね。需要ピーク時の価格付け等を考える時間はあったように思うのですけど、節電と称してピーク時以外も冷房を切ったり地下鉄等のエスカレーターの一本を止めたりすることになりそうです。正直、本気でカンベンして欲しいです…。

No title

こ@さん:

ここまで来ると、CO2削減に必死になっている環境保護論者たちが暴走して工作しているとしか思えないですね。今年は夏に日本に帰るんですが、値上げや使用制限に至らない限り、冷房ガンガンに付けられるので助かります。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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