大数の法則と中心極限定理を恋愛小説風に語ってみる
拓也「ごめん、ちょっと遅れちゃったよ。課長が話し好きでさ。」
麻衣「いいのよ、私も今、一杯目のカクテル頼んだとこ。」
ウエイター「飲み物は何になさいますか?」
拓也「あ、僕はウォッカのロックで。」
麻衣「今週もお疲れ様!」
拓也「麻衣の方こそ、お疲れ様。今週はどうだった?何か変わったことあった?」
麻衣「いろいろあったけど、いつも通りだよ。インドに出した注文
また納期遅れたけど、そんなのしょっちゅうだし。」
拓也「僕の方もぼちぼちかな。クライアントの希望する仕様が少し
変更になって残業が少し増えそうだけど、よくあることだし。」
麻衣「・・・ねえ、拓也。」
拓也「なに?」
麻衣「こうして週末にバーで会うの、もう何回目かしら?」
拓也「そうだな、もう30回くらいにはなるかな。」
麻衣「私が拓也と会うときは、すごくテンション高い時もあるし、機嫌が悪い事もある。
だから言い合いになっちゃたりすることもあるよね。」
拓也「そりゃあ、僕も麻衣も人間だからね。」
麻衣「でも、こうやって何十回も会ったのを今振り返ったら
私はやっぱり拓也の事が好き。」
拓也「ありがとう。僕ももちろん麻衣のことが大好きだよ。」
麻衣「でも、毎週同じように会って、飽きたりしない?」
拓也「そんなことないよ。むしろ毎週会えることが僕は嬉しい。
はじめて麻衣と会った時より、今の方がずっと麻衣のことが好きだ。」
麻衣「でもさ、私が今日実はすごい機嫌悪かったとするじゃん。
それで、拓也に、何で遅れて来たの!、って言って怒って帰っちゃったらどうする?」
拓也「あれ、もしかして遅れて来た事、怒ってる?」
麻衣「いえ、あくまで仮定の話よ。」
拓也「じゃあそう信じることにして・・、そうだね、
もし初めてのデートがそうだったら麻衣のことが嫌いになったかも知れない。」
麻衣「30回目ならOKなの?」
拓也「それはそうだよ。」
麻衣「どうして?」
拓也「だって、麻衣とは今まで30回も会って、麻衣が魅力的な人だって分かっているから。
それが一度くらいうまく行かなくても、麻衣に対する気持ちは変わらないよ。」
(↑大数の法則)
麻衣「なんか今の、すごく嬉しかった!でも、初めての時ってもっと気持ちが高ぶって、
もっと、恋してるーって気分になるよね。」
拓也「それは、あくまで幸運な偶然に支えられてる部分があると思うんだよね。」
麻衣「どういうこと?」
拓也「もちろん僕は、麻衣を魅力的だと思ったから食事に誘った。
それは初めて会ったときの印象が良かったからなんだけど、
二人で会ってみたら合わなかった、ってこともありうるよね。」
麻衣「もしかして、私は地雷だったってこと?」
拓也「そうじゃないよ(笑)。ちょっと語弊があったかな。
本当に魅力的な人だったら、また会いたいと思うことが多いだろう。
でも、巡り合わせや第一印象の一部が幸運に支えられていたことも事実だ。
でも何回も会ううちに、僕が麻衣に惹かれたのは単なる偶然じゃなくて、
必然だったんだっていう確信に変わってきたということだよ。」
麻衣「相変わらず、語るねー。」
拓也「あ、自分ばっかり話してごめん。」
麻衣「別にそういう意味じゃないよ。ありがとう。」
拓也「ところで、麻衣はどうしてこんなおじさんばっかりいるバーが好きなの?」
麻衣「ちょっと、声大きいよっ。」
拓也「あ、ごめん、。」
麻衣「私ね、他にカップルがいるバーが嫌いなの。」
拓也「どうして?」
麻衣「付き合いの浅いうちって、自分たちの恋愛がすごくドラマチックな感じがするじゃない?(*1)
でも長く付き合ううちに、現実が見えて来て、
どのカップルも結局似たようなもんだなー、って。
バーでお酒飲んで、
レストランで食事して、
彼氏の部屋に行って、
時々は翌日ドライブにいって、
友達呼んでBBQやテニスして、
そのうち緊張しながら親に紹介して、
雑誌見ながら個性的な結婚式計画して、
バリあたりに新婚旅行に行って、
たまひよ読みながら子育てして、
フラット35で家買って、
子供が大学出て
苦労して就職して恋人でも見つけたら、また(*1)に戻るだけ。」
拓也「随分先まで読んだね・・。(*1)ってどこ?」
麻衣「文脈から判断しなさいよ。」
拓也「分かった。でもさ、それもまた必然だと思うんだよね。」
麻衣「どういうこと?」
拓也「もし一度しか会っていなかったら、その思い出は人によっていろいろだ。
一緒にテニスをしたのか、合コンしたのか、仕事をしたのか、
によってだって随分印象は変わるよね。
でも何回も会った男女関係の形って結局そんなに変わらないんじゃないかな。」
(↑中心極限定理)
麻衣「でも、映画やドラマの中だともっと劇的なことってあるじゃない?
"今まで意識した事の無かった男性と、溺れた時に助けてくれたのをきっかけに結婚!"
"順風満帆の結婚生活が夫の事業の行き詰まりと共に破綻!"とか。
そういう人生って、やっぱり他の人とは違うと思うのよね。」
拓也「"両想いの二人だったが、ある日フィアンセが突然交通事故で死亡"とかね。」
麻衣「・・・・・。」
拓也「例えが良くなかったかな、。
でも今迄の全てを覆すくらい本当に大きな出来事があれば、
積み重ねた愛の姿も変わってしまうっていうことはあるよね。」
(↑大数の法則、中心極限定理のモーメント条件)
麻衣「そんなことは滅多に起らないと信じるしかないわね。」
拓也「そうだね、きっと大丈夫だよ。」
麻衣「やっぱり、拓也の話って奥が深くて面白いわ。」
拓也「そうかな。」
麻衣「私、拓也に収束したくなっちゃった!」
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