意外と困る一時帰国時の健康保険
日本は基本的に「住民皆保険」(*1)なので
健康保険の加入について意識することはあまりないが
海外に在住している日本人の場合は日本の住民票は抜いているので、
日本に一時的に滞在しても無保険ということになる。
(*1)長期滞在外国人にも加入義務があるので、一般的な
「国民皆保険」という表現は適切とは言えないだろう。
保険に加入する一つの方法は、
住民票を入れて国民健康保険に加入する事だが、
住民票を移す条件が「1年以上継続して生活の本拠が移る」であることを
根拠に自治体によっては断られることもあるようだ。
そもそも住民票が国内の他所に存在していないのに転入を断るという事は
行政判断としておかしいように思われるが、
今のところ原則としてはそういう運用になっているようだ。
また、住民票を入れる事で税制上いろいろと面倒になることもある。
「現地で普段入っている保険を使えば良い」というわけにもいかないのが現状だ。
例えば、米国でポピュラーなHMOという仕組みは、
基本的に保険会社が複数の病院と提携して診療費を標準化するものであり、
生死に関わる緊急の場合を別として、そもそも、米国内ですら
ネットワークの外の病院を利用する事を認めていない。
それなら滞在国で「海外旅行保険」に加入してから日本に「旅行」すればいい、
と思いつくわけだが、事はそう簡単ではないらしい。
被保険者の母国における保険の適用は著しく制限されていることが多いからだ。
私が米国のいくつかの「海外旅行保険」を調べたところ、
そもそも「海外」を「被保険者の母国以外」と定義していたり、
「被保険者の母国への滞在期間は保険期間の六分の一までしか認めない」
としていたりする。
また、高額な保険料を払ってこの条件をクリアしたところで、
日本の医療費を請求するには、日本語の請求書に翻訳専門家による
訳をつけて提出することが必要な場合が多い。
1万円程度の医療費を請求する事は現実的でないだろう。
「それでは仕方がないから無保険で行こう。日本の医療費は非常に安いし。」
ということを考えるわけだが、これまた簡単ではない。
日本の通常の保険診療では医療費は点数によって料金が決まっており、
1点あたり10円、国民健康保険であればそのうちの3割を自己負担すれば良い、
ということになっている。
例えば、千点の治療であれば医療費は1万円で、
そのうち3千円は自己負担、7千円は保険組合から支払われる。
しかし、無保険の場合は自由診療となり、
医療費は病院・診療所が任意に決めることができる。
良心的なところは1点あたり10円をそのまま適用し
自己負担を1万円としているようだが、
営利主義の病院では1点あたり15~50円を請求することもあるようだ。
しかも、こうした病院に対する風当たりが強いかというと、
必ずしもそうとは言えないのが現状だ。
「無保険者」の大半は保険料を滞納した人達や外国人であり、
社会的にはむしろネガティブなイメージを持たれているからである。
滞納した人にペナルティがないのはおかしいという考えもあるし、
お金持ちの外国人には高額な請求をした方が日本の国益にかなう
と考える向きもあるだろう。
こうした状況は、私のような立場の者からすれば非常に理不尽に映る。
私に限らず、日本人留学生、海外企業や大学等に就職した日本人、
海外から海外へ転職する日本人などが一時帰国する際には
必ず発生する問題である。
規模は小さいものの、年々その対象者の数は拡大しており、
社会的に無視できる問題ではないだろう。
日本への一時帰国者を国保に加入させる必要があるとは言わないが、
少なくとも合理的な理由のある日本人無保険者に対しては
10割負担でも良いから、国が保険診療の料金体系で
医療を受ける権利くらいは保障して欲しいものである。
かつて、海外在住日本人と言えば、日本の大企業の駐在員など、
日本の制度によって保護されている人たちが多く、
経済的にも裕福で、社会的な保護の対象とは見なされなかった。
しかし、否応無しにグローバル化が進む冷戦後の世界において、
そうした昔の常識は通用しない。
社会保障制度を現状に即した、全ての日本人にとって
合理的なものにして欲しいものである。
健康保険の加入について意識することはあまりないが
海外に在住している日本人の場合は日本の住民票は抜いているので、
日本に一時的に滞在しても無保険ということになる。
(*1)長期滞在外国人にも加入義務があるので、一般的な
「国民皆保険」という表現は適切とは言えないだろう。
保険に加入する一つの方法は、
住民票を入れて国民健康保険に加入する事だが、
住民票を移す条件が「1年以上継続して生活の本拠が移る」であることを
根拠に自治体によっては断られることもあるようだ。
そもそも住民票が国内の他所に存在していないのに転入を断るという事は
行政判断としておかしいように思われるが、
今のところ原則としてはそういう運用になっているようだ。
また、住民票を入れる事で税制上いろいろと面倒になることもある。
「現地で普段入っている保険を使えば良い」というわけにもいかないのが現状だ。
例えば、米国でポピュラーなHMOという仕組みは、
基本的に保険会社が複数の病院と提携して診療費を標準化するものであり、
生死に関わる緊急の場合を別として、そもそも、米国内ですら
ネットワークの外の病院を利用する事を認めていない。
それなら滞在国で「海外旅行保険」に加入してから日本に「旅行」すればいい、
と思いつくわけだが、事はそう簡単ではないらしい。
被保険者の母国における保険の適用は著しく制限されていることが多いからだ。
私が米国のいくつかの「海外旅行保険」を調べたところ、
そもそも「海外」を「被保険者の母国以外」と定義していたり、
「被保険者の母国への滞在期間は保険期間の六分の一までしか認めない」
としていたりする。
また、高額な保険料を払ってこの条件をクリアしたところで、
日本の医療費を請求するには、日本語の請求書に翻訳専門家による
訳をつけて提出することが必要な場合が多い。
1万円程度の医療費を請求する事は現実的でないだろう。
「それでは仕方がないから無保険で行こう。日本の医療費は非常に安いし。」
ということを考えるわけだが、これまた簡単ではない。
日本の通常の保険診療では医療費は点数によって料金が決まっており、
1点あたり10円、国民健康保険であればそのうちの3割を自己負担すれば良い、
ということになっている。
例えば、千点の治療であれば医療費は1万円で、
そのうち3千円は自己負担、7千円は保険組合から支払われる。
しかし、無保険の場合は自由診療となり、
医療費は病院・診療所が任意に決めることができる。
良心的なところは1点あたり10円をそのまま適用し
自己負担を1万円としているようだが、
営利主義の病院では1点あたり15~50円を請求することもあるようだ。
しかも、こうした病院に対する風当たりが強いかというと、
必ずしもそうとは言えないのが現状だ。
「無保険者」の大半は保険料を滞納した人達や外国人であり、
社会的にはむしろネガティブなイメージを持たれているからである。
滞納した人にペナルティがないのはおかしいという考えもあるし、
お金持ちの外国人には高額な請求をした方が日本の国益にかなう
と考える向きもあるだろう。
こうした状況は、私のような立場の者からすれば非常に理不尽に映る。
私に限らず、日本人留学生、海外企業や大学等に就職した日本人、
海外から海外へ転職する日本人などが一時帰国する際には
必ず発生する問題である。
規模は小さいものの、年々その対象者の数は拡大しており、
社会的に無視できる問題ではないだろう。
日本への一時帰国者を国保に加入させる必要があるとは言わないが、
少なくとも合理的な理由のある日本人無保険者に対しては
10割負担でも良いから、国が保険診療の料金体系で
医療を受ける権利くらいは保障して欲しいものである。
かつて、海外在住日本人と言えば、日本の大企業の駐在員など、
日本の制度によって保護されている人たちが多く、
経済的にも裕福で、社会的な保護の対象とは見なされなかった。
しかし、否応無しにグローバル化が進む冷戦後の世界において、
そうした昔の常識は通用しない。
社会保障制度を現状に即した、全ての日本人にとって
合理的なものにして欲しいものである。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
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