家電量販店に将来はあるのか -- このエントリーを含むはてなブックマーク

この夏久々に日本に帰って思ったことをいくつか書こうと思う。
まずは「本屋が減った。次は家電量販店が減るだろう」ということ。

最近10年で(新品を扱う)本屋が減った。
90年代、実家のある地元には歩いていける大型書店が二つあったが、
両方なくなった。ちなみに一方は牛丼の「すき家」に、
もう一方はブックオフになっていた。
最寄りの二つのスーパーの近くにあった本屋もいつの間にか消えていた。
いま、一番近いのは、古い町並みが残る駅の近くにある本屋だ。
当然ながら、アマゾンを初めとするネット通販の影響が大きいだろう。

ただアメリカのように、今後、実店舗型の本屋が壊滅的な状況になるか、
というと、それはちょっと微妙だと思う。
日本には再販制度があって本の値段はどこでも変わらないから、
ネットで買うメリットは大きくない。
また、電車通勤(通学)で駅前の本屋にふらっと立ち寄るという習慣も根強い。
それに、アメリカの本屋と比べて日本の本屋は品揃えが豊富だ。
それは再販制度があるから売れないかも知れない本も置けるという面もあるし、
本自体が(恐らく在庫コストや紙の質の関係で)コンパクトだというのも理由だ。
実際、駅前の本屋は相変わらずたくさんの人で賑わっている。
古本屋も「自炊」関連の需要で当分の間、潤う可能性がある。

電子書籍のインパクトの大きさはよく分からない。
どの程度、端末や検索技術が進歩するか、著作権や価格の交渉がどうなるか、
など、流動的な部分が多いからだ。
現状のリーダーのスペックや検索の質、そして電子書籍の価格では
全ての本と雑誌が電子化されたとしても影響は壊滅的にはならないだろう。

一方で、より確実に危ないと思うのは家電量販店だ。
米国では2009年に業界2位の家電量販店 Circuit City が経営破綻し清算された。
店舗を引き取る企業がなかったのは、いかに需要がないかということの表れだ。
(ただしネット通販部門は他企業に引き継がれている。)
また、業界トップの BestBuy も経営不振が伝えられている。

家電量販店が不振に陥っているのは、言うまでもなく、
AmazonやEbayなどネット通販の影響だ。
以前 BestBuy は、 BestBuy の店舗で商品をチェックして Amazon で安く買う
という消費者が多いことを嘆いていたが、
今の消費者は BestBuy にすら行かずにネットで注文する。

率直に言って、日本が同じ経路を辿らない理由をあまり思いつかない。
むしろ電気製品については、日本の方がネット通販のに向いているのではないかと思う。

第一に、日本では米国に比べ
価格コムのように実店舗よりも安い価格で買う方法が充実している。
「実店舗を好む消費者が多い」というような記事やコメントを
ネットで目にすることもあるが、例外やテクニカルな点を
指摘している以外には、ほとんど説得力がない。
また、日本の家電は単価が高いので、多少手間をかけても
ネットで安く買おうという人が多くなるだろう。

第二に、米国で未だに実店舗で買う人は、
何らかの理由でインターネットで購入できない人を除けば、
返品が容易であるというのが大きな理由である事が多いが、
日本では米国ほど返品が一般的ではない。

第三に、ネット通販の輸送上のディスアドバンテージが小さい。
米国では実店舗がいまだにやや有利な商品として、
洗濯機、冷蔵庫、オーブンなどの大型白物家電がある。
これは、広い国土を持つ国では、ネット通販拠点からの
配送では経費がかかりすぎるからだ。
一方、国土の狭い日本では、例えば、首都圏在住の人が
新宿のヨドバシで冷蔵庫を買うメリットは何も無い。

それでもなんとなく日本の家電量販店が近年好調だったのは、
地デジ移行に伴って液晶テレビの特需があったからだろう。
「初めての大型液晶テレビ」は、事実上最後の
「見比べて買いたい商品」だったのかも知れない。
ブルーレイ・レコーダーなら店頭で比べてもしょうがないし、
炊飯器なら実際に食べて比べられるわけでもない。

そう考えていくと、家電量販店の将来は真っ暗に見える。
通販部門はともかくとして、実店舗のほうは、
外国人観光客向けの土産物屋としてやっていくか、
メーカーをテナントにしてショールーム的な店にするか、
取り扱い商品を拡大してドンキホーテのようなカオスな店にするか、
くらいしか生き残る道はないように思える。
実店舗の不動産を保有しているチェーンは店舗数削減の際に
特に苦しくなるかも知れない。

10年後に、大規模家電量販店は何社になっているのだろう。
スポンサーサイト


テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

コメントの投稿

非公開コメント

質問

「自炊」とはどういうことでしょう。

No title

アマゾンは必ずしも価格コムの最安値ストアではないが、結局一番売れているのはアマゾンというのが何かを示唆しているのではないでしょうか。

消費者は少しでも安い場所で買いたいものだという傾向は概ね当てはまると思いますが、なんらかのバリューをアマゾンに見いだしており、そのバリュー分の適正スプレッドをアマゾンは分かっていて値付けしていると思います。

ヤマダ電機も顧客がネット直販+実店舗で払えるスプレッドを把握することで、そこに合わせたコスト体系に変わって行くんじゃ無いでしょうか。

あとは洗濯機の設置やエアコン備え付けなど、ネット通販では対応できない部分は残りますよね。パソコン設置サービスは流石に退廃したと思いますが。

No title

足立さん:

本を自分で、もしくは、業者に委託して、スキャンして電子化することです。
電子化してしまった本は不要になりますし、スキャンするだけなら古本でも、
という人も多いはずです。

ukさん:
価格コムの最安値ストアは、数個の商品をごく短時間(典型的には2〜3時間)
最安値で提供するだけですから売り上げが少ないのは当たり前です。
最近もその手の記事を読みましたが、良く分かってない人が書いているか、
宣伝のためにわざと書いているのだろう、と思いました。

信用度に応じた適正価格はあるでしょうね。その意味で、ネット通販における
棲み分けはある程度続くでしょうが、5万円以上の高額商品において、実店舗に
対するプレミアムが運営費をカバーできるくらい高いとは思っていません。

設置サービスの問題は確かにあります。米国では、自分でやる人が多い、
ハンディーマンと呼ばれる便利屋に何でも気軽に頼める、エアコンに関しては
仕組みが違うので電器屋が設置することは稀である、といった事情があります。
私は備え付けの電子レンジを交換する際、アマゾンで購入し、
ハンディーマンに100ドル払って取り付けてもらいました。
しかし、「もしヤマトや佐川急便が電気製品の設置に参入したら」という
風に考えると、見えてくる状況はかなり違ったものになるでしょう。

家電量販店が衰退するもう一つ付け加えたい理由

様々な仮説や現状を踏まえ、家電量販店の衰滅を予測する話に納得させられています。

これに付け加えるような個人的な意見ですが、もう一つ客足を店舗から遠のかせている実情があると思います。

それは、売り場に蔓延している「通信業者」の過剰な勧誘による、家電の購買意欲の衰退です。この勧誘には、本当に参ってしまう始末です。

大手ショッピングモールにテナントで入居している家電量販店に入るや否や、すぐに立ち寄ってくる通信業者の販売員が、私の家電購買意欲を根こそぎ消し去ってしまうのです。この販売員さんはノルマが課せられているのか、とても鋭い目つきをしているし・・・

通信業者からのマージンを吸い取って営業利益をあげて行く家電量販店のやり方に文句を言う筋合いはありませんが、この手の経営手法が顧客目線で行われていない実態は、今一度検討する余地は残っていると思います。

No title

あれはんどろさん:

なるほど。量販店での通信契約とハードの抱き合わせは確かに日本の方が目につくような気がしますね。通信会社によるネット販売での抱き合わせは米国でも盛んですが。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程にてPhD取得。現在、米国の某州立大准教授。

検索フォーム
Twitter

Twitter < > Reload

お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

全記事表示

全ての記事を表示する

最近のコメント
訪問者数 (UA)
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
海外情報
27位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
北アメリカ
4位
アクセスランキングを見る>>
人気記事Top10


(はてなブックマークより)

カテゴリー
最近のトラックバック
お勧めブログ