【五月病になる前に】大学なんて辞めちゃったっていいんだよ -- このエントリーを含むはてなブックマーク

数日前に書いた「【大学新入生に告ぐ】大学は4年で卒業して就職しなさい。絶対にだ。」
には思いのほか反響をたくさん頂いた。
頂いた批判のほとんどはもっともであるし、
逆に思ったより賛同の意見が多かったということもあるのだが、
いま一度強調しておきたいのは私が言っているのは決して極論なんかじゃなく
大学に入る人やその親の誰もが考えておかなきゃいけない事なんだよということである。

もう20年近くも前のことだが、私は某大学の理工学部数学科に進学した。
当時の理工学部は、大学入学時に完全に学科を分ける方式を採用しており、
大学に入学した瞬間から4年間の生活が決まるという仕組みになっていた。
数ある学科の中で数学科は「極楽」と言われ、
単位の取得が最も楽な学科であるという評判であった。
実際、時間のかかる実験もなく単位の認定も厳しくないので
卒業が楽という意味ではこれは確かに正しかったのであるが、
実のところ、半数近い学生は地獄の4年間を過ごす事になる。

学問としての数学は、
高校での数学とは異なり高度に論理と様式で固められた学問である。
高校生の時に、教科書や板書に論理的な誤りがないかを丹念に
確認していたような学生なら全く問題がないが、
入試問題をパターンと認識してゲーム感覚で答えだけ出してきたような
学生には敷居が高い。

数学科に入学した学生はそのことに一年生の5月頃には気付き、
半数以上の学生は自分に数学は向いていないのだと悟って途方に暮れる。
中退して、才色兼備の美女の多い文学部にでも入り直すか?
そんな事が頭をよぎったとしても、実行する学生は一人もいない。
厳しい入試をくぐり抜けてせっかく入った有名大学を
2ヶ月で中退するなどというエネルギッシュな学生はそうそういないものだ。
辞めてしまっては親に見せる顔がない、と考える学生だって多かっただろう。
比較的ハードルの低い転科を考える学生ですら極めて例外的であった。
まだ18〜9歳の子供である。

難しい入試をくぐり抜けた人たちだけあって、
3年生くらいになるとようやく数学に独特な作法に慣れてきて
実力を発揮し始める人も結構いるのだが、
それでも半数弱の人は4年間、耐え難きを耐え、凌ぎ難きを凌ぎ、
数学の事はほとんど分からないまま
なんとか卒業して潰れることは無さそうな会社に就職する。
数学を十分に活かせるような仕事に就かない人も多い。

私はそういった数学科の友人のことを考えるたびに、
彼らにとっての幸せとは何なのだろうか、と考えさせられた。
彼らが知的能力の面で、数学が出来る学生に比べて
そんなに劣っているわけではない。
ただ進路の選び方を間違えてしまったということなのだ。

彼らがその後うまくやっているのか、と言えば幸い答えはほぼイエスだろう。
途方もない苦難に耐えて、4年で卒業して就職した人たちが
そんなに簡単にへこたれるはずはない。
しかし一方で、もし数学が向いてなかったのなら、
1年間を棒に振ってでももう一度別のことに挑戦した方が
ずっとエクサイティングな大学生活を送れたのでは
という気がしてならないのである。
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テーマ : 大学生活
ジャンル : 学校・教育

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No title

日本では、「決断する」場面が一度もないまま
一生を生きる人が多いですね。
大学入試も就職も、決断した結果とは言えませんよね。

その人にとって、決断する人生が幸せか、
しない人生が幸せなのかはわかりませんが、
ひとつ言えるのは、決断しない人生を歩んだ人間の
他者への決断に対するアドバイスは、まるで役に立ないってことです。

先日の話題にも通じますが、
そういう人ほど、そういうアドバイスをしたがる、
というのが、日本の嫌な風土だと思っています。

上記の Wolf さんに同意です。 何でこんな奴の言う事を黙って聞かなきゃならんのだと思うオッサン達ばっかですよ。。。 専門は違いましたが、解析の授業を取ってみた時に、えっw みたいな感じが最後まで続いてたのを覚えています。。。

No title

Wolfさん、Sさん:

なるほど、そう言われるとしっくり来ますね。
長く生きている方がいろんな決断をしているわけでもありませんしね。

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No title

なるほど、納得、

考察と統計の妙、

素敵なブログですね。

きっと、美しい心の方ですね。

ヾ(@^(∞)^@)ノ

No title

確かにやめていく学生ってごく少数だった気がします。
自分の場合、他の学科に変わっていったり、方向性変えて大学やめて行く子は本当、手で数えられる限りだったはずです。
自分の場合は、初めて進学して、ちょっと方向性に違和感を感じてるところです。

No title

Dehmelさん:

大学なんて、入ってみないと全く分からないところなわけで、
ほとんどの入学者がそのまま卒業していくということが異常です。
もしかすると日本では就職も、結婚も、あらゆるものがそうなのかも知れません。

日本人は、うまく行かなくなったことに耐えることにエネルギーを消費しすぎている
と思います。

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No title

『統計学が最強の学問である』 っていう書籍をご存知ですか? アマゾンのレビューは何とも言えない感じが漂ってますが。。。

No title

Sさん:

題名は知ってますが読んでません。つまんないんでしょうか。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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