若者が草食化した本当の理由 -- このエントリーを含むはてなブックマーク

近年、日本では草食化男子なんてキーワードが一般的になった。最初の頃こそ「モテない肉食系女子の言い訳」などと揶揄されていたが、下のグラフを見て欲しい。ほんとうに最近の大学生は草食化しているようだ。

草食化
      (出所:中日新聞)

かつて理系大学生のマジョリティーであった「肉食系コミュ障非モテ」に属していた僕としては(彼女がいないという結果は同じなわけだが)驚きを禁じ得ない。なぜ若者はこんな風になってしまったのだろう。中日新聞はこれについて「相手に束縛されるのを嫌がったり、勉強を優先したいからとの理由」などと何だかほんわりと耳あたりの良い理由でまとめている。

しかし、本当の理由はそんな生易しいものではない。断言しよう。「大学生は恋愛できないほど経済的に貧しくなってしまった」のだと。次のグラフはその状況を如実に表している。

仕送額
(出所:不動産ジャパン

大学生が受け取る仕送り額から家賃を引いた、いわば「可処分所得」は、過去20年あまりの間に、7万3800円から2万7700円となんと6割以上も下がってしまった。いくら恋は盲目といえど、「彼女にアクセサリーをプレゼントする代わりに食費は月1万で抑えよう」などというのは「一ヶ月1万円生活」の濱口なんかを見れば、本当に自分で魚を捕まえに行くくらいの「肉食」でなければ無理であることは一目瞭然だ。更に駄目を押すように、20年前に比べて、携帯代やネット接続料など必需品の項目はむしろ増えている。

「仕送りが減ったのは親が自己チューになったから?」かと言えば、もちろん答えはノーだ。下の大学生のいる世帯の世帯年収は、過去約20年でなんと200万円も減少している(物価は多少下がっているがこの減少率ほどではない)。むしろ、仕送りを減らしたくらいではまだまだ家計が苦しいという状態なのである。

世帯年収
(出所:私立大学新入生の家計負担調査、東京私大教連)


「昔だって大学生は貧しかったよ。でも、バイトしてなんとか恋愛してた。」なんて声も聞こえて来そうだ。僕が大学生だった頃、仮眠の取れるバイトなどを組み合わせて月300時間バイトしていた友人がおり、しかも彼は4年できっちり卒業したのだが、現実はそんなに甘くないようだ。

調査は昨年10月、全国の大学生4070人を対象に実施、インターネットを
通じて大学生活全般や社会観について尋ねた。それによると、1週間の平
均通学日数は4・4日で、授業への出席率は87%。授業で出された課題を
きちんとこなしていく学生も87%と高率だった。

近年は単位認定に当たり、教員が出席を厳しくとったり、リポートの提出状
況を重視したりする傾向にある。これが影響して出席率は上方で推移する
ものの、積極的に授業に参加しようという意欲は低いことがわかった。

(出所:読売新聞調査、「大学教員の日常・非日常」経由)


つまり、大学が真面目に授業をやるようになったし、大学生は就職のためにも成績は大事だからという事で、止むを得ず授業には出席するようになったので、バイトする時間も限られるという状態なのだ。また、かつては、大学生の花形バイトといえば家庭教師や塾講師だった。私が大学生の時は塾で5000円以上の時給をもらっていたし、私の知り合い等は山梨在住で「有名大学生が回りにいないから」という理由で家庭教師ですら時給5000円もらっていた。しかし、所得の低下と少子化が進んだ今では夢物語だろう。

今では、週10時間くらいのバイトはむしろ生活費を補うために必須であり、彼氏・彼女と遊びに行って散財するなどというのは、叶わない贅沢なのだ。生活費は仕送りで賄い、サークルや恋愛の出費は少し授業をさぼりながらバイトで賄った20年前の大学生の経済事情とは隔世の感がある。

「でも、もしかしたら、娯楽の値段も下がっているかも?」などと考えた読者には、その一縷の望みも叶わないという冷酷なデータが以下だ。

TDL入場料

なぜ、若者がそんなに貧しくなる中で、入場料は上がっているのだろうか?理由は簡単、ディズニーランド(ディズニーシー含む)の入場者数は1984年の一千万人から2013年には三千百万人とうなぎ上りだからなのだ。

そういえば近年、大学には留学生は増えているが、ディズニーランドにも外国人観光客が増えた。そのうち裕福な男子留学生が見た目華やかな肉食系の日本人女子と恋愛し、女子留学生は積極的でない草食系男子から将来有望な結婚相手を捕まえる、などという構図になるのは想像に難くない。

結局、経済成長しない国というのはそういう運命なのである。
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統計の母体の時間に伴う変化

初コメント失礼します。

記事を拝読して思ったのですが、進学者の母体は関係ないでしょうか?

次のようなことが、自分の頭に浮かびました。

仕送りのピークの平成2年に比べると、今は大学(や学部学科)も増えた。
大分差別的な表現ですが、増えたのはおおむねFラン大学である。
これもずいぶん差別的な仮定ですが、今Fラン大学に進むのは平成2年の高卒層である。
よって、統計の母体には従来の高卒層が加わったのみであって、以前からの大学進学層の動向は分からないのではないか。

まぁ、大学院生の自分が平成2年に大学生であれたとして、モテる気は全然しないのですが。w

また、一回り、二回り前の世代のメディアに触れたとき、例えば真面目に大学生活を描いた小説を読んだときに、(経済的な意味で)こうは行かないよなぁ、と思うことも多々あり、この記事には個人的に説得力を感じるのですが。

No title

軽々さん:

母集団の変化は十分に考えられますね。もっとも、家賃を除く仕送りの平均額は急激に減少していますので、大部分が母集団の変化によるものとは、私は考えておりません。

No title

昔も大学生は貧しかった、の昔とは、もっと前の大学生のことだろ
4畳半で風呂なしで暮らして、よこちょの風呂屋に行くような
そのころの大学生のド貧乏話とか今の比じゃないじゃん

ディズニーランドの値段だけで娯楽の話ししてたり、若干50人の大学生のアンケートを軸に話を進めてたりと、なんかいろいろ突っ込みどころの多い記事な気はしますが。

その辺は置いておいても、お金がないから恋人を作れない!って結論にたどり着くには、21人の「欲しくない」は「彼氏・彼女が欲しい」に入ってないと辻褄が合わないような。
お金がないから欲しくない。
では無く、お金がなくても欲しいものは欲しい。でしょ。

て、最後の〆の感じだと持論を展開ってより、手元のソース引っ付けて、それっぽい事言いたいだけぽいですね。失礼。

2つの反論と新たな視点

興味深く読みました。
そして記事には2つの反論があります。

1.経済的に貧しい国や地域であっても恋愛は盛んである
2.グラフのピークはバブル好景気という特殊な時期

しかしこれを考えている上で面白い視点を見つけました。

「何をするにもお金を使う」
という思想(洗脳?)が行き渡ってきた。
   ↓
人々はお金を使い、経済が上向いた。
   ↓
不景気になり(格差・二極化?)
「お金がないから何もできない」
と言う思考になる若者が増えた
   ↓
これが草食男子増加理由かも知れない

お金ありきで発展してきた大きな副作用かも知れませんね。

貧困と草食との相関性

貧困と草食との相関性全く説明してませんよね?

学生の可処分所得が増えれば肉食になる?

統計の名を借りて、単なる仮説をもっともらしく書くのは学問に対する侮辱に見えますが

No title

月~金2時間ずつ、土曜10時間。
どんぶり勘定ですが、週20時間働いても日曜に遊ぶのとサークル出る時間・費用ぐらいはなんとかなるかと。
あと、時給5000円の家庭教師、普通にありますよ。
今の若者は時間の使い方が下手だ!って結論なら納得しますが・・・

現在大学生の意見ですが、実際に恋人との交際費として使えるお金はほとんどないです。マスコミがいう「近頃の若者は〜」論調よりもとても納得がいきます。

ゆーさん 統計さんに同意見

なるほど恋愛しにくい経済状況ですが、恋愛する時は多少の障害や困難はつきものなのはどの時代も変わらないように思います。むしろだからこそ燃えてきた思い出がありますw
草食系の問題は幼児期よりあれしちゃダメこれしちゃダメ入っちゃだめと教育されていることにこそ問題があるとおもいます。 思考パターンが消去法になってしまっているんでないかと
金がなくても楽しいことなんていくらでもありますから

No title

単に半身で思考するバカが減ったって事じゃないんですか

No title

コメントをたくさん頂いたので、個別に全てお返事はできませんがいくつかコメントを。

BLOGOSなどに転載されるようになってから、統計の使い方が恣意的であるとか、なってないといったご指摘を度々受けています。こうしたご指摘は理屈としてはもっともではあるのですが、言ってみれば筋違いなご指摘です。別に、私はブログで統計の論文をプレビューしているわけではありませんし、逆に最善の統計処理をした内容であれば、論文誌に発表すれば良いのでブログには載せません。今回の若者の草食化にしても、大規模アンケートを長期にわたってとって「若者草食化指数」でも作れば、相関関係を定式化することもできるでしょう。しかし、それには膨大な時間と手間がかかりますし、それは当ブログの目的ではありません。このブログは、きちんとした数字による裏付けが得られなくても新しい視点を提供できればそれで良いと考えております。こうした方針をとっているのは、職業柄、世の中にはきちんと数字で示すことができる事が非常に限られていることを知っているからです。

一方で、本来、別の目的でつけた「統計学+ε」というブログのタイトルが一人歩きしてしまい、あたかも、統計屋がいい加減に統計を扱っている、という印象を与えるのは本望ではありませんし、それによって同業の方にご迷惑をおかけするのも避けたいと思っていました。そこで、本日よりブログタイトルを変更させて頂きます。これからはタイトル通り、根拠のない「脳内ソース」も存分に活用し、ますます独りよがりなブログを目指して参りますので、ご愛読のほど、よろしくお願い致します。

No title

ゆーさん、もつさん:

90年代の豊かな時代がなければ、若者の行動も違ったかも知れませんね。
貧しいという状態よりも、豊かさを失ったことによるインパクトが大きいのだと思います。
それに、ご指摘のように、いまの若い世代がボリュームの大きい世代の価値観に
押されて萎縮しているということも大いに関係があるのでしょう。

お久しぶりです。

気づくとブログのタイトルが変わってますね!面白く見てたのに、良いタイトルが変わってしまってなんだか残念です…

もしかしたら、すっぱい葡萄の若者が多いかもしれませんね!

最終的に「経済成長しろや」と言いたいがための論理の運び方だった。くだらない。

授業をちゃんとやる様になったからとかアバウト過ぎますよ。少し前大学生でしたが実感も違います。
娯楽費としてディズニーだけ挙げるのもおかしい。単にネットやスマホの普及で独り娯楽が充実したからの方が正解に近い気がします

No title

dehmelさん:

お久しぶりです。
継続性、連続性の重要性を知っている統計屋としては、タイトルはあまり変えたくなかったのですが、やはり内容と題名の乖離が大き過ぎるのは好ましくないと思って決めました。そのうち、また変える可能性もありますが。

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選択肢の多さ

はじめまして。

記事、おもしろく読ませていただきました。昨今の日本における出生率の低下、晩婚化など、若者に限らず異性と交際する(果ては家庭をもつ)ことのプライオリティが下がっているように思います。それ以外に、人生を楽しむための選択肢が増えたせいでしょうか。

追伸
WS大学のCollege of Engineeringに2年弱在籍した経験(15年程前)があります。過去記事も楽しく読ませていただきました。

No title

TDさん:

選択肢は増えていますね。次元を超えちゃう人もいますし。
WS大にいらしたとは奇遇ですね。最近、日本人が減っている
ような感じもしています。

No title

匿名さん:

ご指摘ありがとうございます。誤記を訂正しました。

No title

ああ、タイトルが変わったのはこういうわけですね。
「恋愛できないほど経済的に貧しくなってしまった」
という文をみて、なんとなく分かったような気がしました。
「草食系」は実は中国語の「屌絲」に近いかもしれません。

No title

yx_whさん:

お久しぶりです。「屌絲」ですか。すこし検索して調べてみたら、日本語で言う「負け組」「負け犬」に近いイメージでしょうか。確かに、日本でも「一億総中流」の社会が崩壊して、勝ち残れなかった人が、悲観的になっているという側面はあるのかも知れません。

しかし、米国人は激しい経済格差•知識格差が存在するのに、ほとんどの人は自分が一番かのように振る舞っており、そのあたりに東アジアとの国民性の違いを感じます。

No title

大学生ですが、実感としては経済的に余裕が無いのと恋人がいないことに全く相関関係は無いです。
周辺を見ると比較的経済的余裕のある実家生よりも下宿生の方が恋愛していますし。

経済的な余裕より、むしろ時間的な余裕の無さの方がより大きなファクターであると感じます。

No title

からあげさん

現場からの貴重なご意見ありがとうございます。あくまで、昔と比較した場合の問題だと思います。私の時代の下宿生は、バイトなんてしなくても仕送りで生活しながら半同棲状態みたいのが多かったですし(注:私は非モテ自宅生)。それに比べたら、今はバイトと授業に追われている学生が増えている事をデータは示しています。
プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の某大数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。2016年、准教授。

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お勧めの本
1.ルベーグ積分30講
―― 統計学を学ぶために。
   小説のように読める本。
   学部向け。


2.Matematical Statistics and Data Analysis
―― WS大指定教科書。
   応用も充実。学部上級。

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